大久保嘉人コラム「一路邁進」⑪
既に公表していますが、今春から家族とともにスペインに移住することを決めました。1月にSNSを通じて自分の思いを明かした際には、いろんな反応がありました。「本当に行くの?」「スペインで何をするの?」と何度も聞かれました。現役時代にスペインでプレーした経験があり、大好きな場所ということが大きな理由ではありますが、とにかくチャレンジしたかった、という気持ちが一番かもしれません。
スペインへの移住は、家族と話し合って決めたことでもあります。みんなで現地に向かいますし、今回の挑戦を全員が楽しみにしています。わが家には4人の息子がいて、昨春に長男はプロサッカー選手になることを目指してスペインに旅立ちました。下の子どもたちも、現地でサッカーをするつもりで、すごく意欲をみなぎらせています。父として、その過程を近くで見てみたい、という気持ちも大きいです。彼らにとっても簡単なチャレンジではないし、苦しいこと、壁にぶつかることも多いかもしれません。そんな厳しい環境に身を置くことが成長につながるでしょう。
もちろん、自分にとっても同じことが言えます。2021年限りで現役を引退して、テレビ出演やイベントの参加など、サッカーとは離れたことに取り組ませてもらいました。スペインでは、また一からサッカーを勉強したいと考えています。どんな形になるかはやってみないと分かりません。最初は帰国することはなかなか難しいでしょうが、将来は指導者として日本に戻ってくることができたら、という気持ちもあります。
引退してからは、趣味でゴルフにはまっていました。毎日のように練習して、多い時は月に8回もラウンドしたことがありました。そんな楽しみも、移住に向けた準備などで多忙となり、最近はなかなか時間が取れなくなっていました。今回、スペインの自宅の近くには練習場もコースもあるんです。ゴルフは人脈が広がる点もいいところ。時間を見つけて、ぜひ楽しみたいと思っています。
年が明けてからは、ありがたいことに送別会の日々でした。みなさんとの思い出話に花が咲くと、本当に楽しくて、スペインに行くことがさみしくなって…。でも、こんな挑戦は簡単にできることじゃない。うらやましい、と言ってくれた方もいました。今度は、きっとみんながスペインに遊びに来てくれるでしょう。その頃には、言葉を覚えて現地を案内できるようにしておくつもりです。
新しい挑戦を前にして、今はポジティブな気持ちでいっぱいです。いつかスペインでの生活を紹介できる日を楽しみにしながら、元気に旅立ってきます。(サッカー元日本代表)
(おわり)