これが落合竜の底力だ-。2日、セ・リーグの2004年シーズンが開幕。中日は本拠地ナゴヤドームに広島を迎え、5点差をひっくり返す大逆転勝利を収めた。先発・川崎には驚いたが、これも“オレ流”。落合博満新監督(50)には忘れられない1勝。
 | 開幕を逆転で初勝利、井端(右)からウイニングボールをそっと手渡される落合監督 |
あきらめない
ふつうに考えれば絶望的な点差。だが、ベンチの中でうつむいている選手は1人もいなかった。2回表を終わって0-5。それでもあきらめない。そんな気持ちが誰の顔からも表れていた。
「確かに結果的に5点は入れられた。けど、このチームを変えるには川崎が必要だった。3年間けがで苦しんできた男の背中を、チームのみんなで押すということがな。だから、先発に起用したんだ。もう決めていたんだ」
川崎先発は誰の目にも奇襲と映った。しかし、落合監督は約3カ月前の1月3日、すでに川崎に開幕投手を言い渡していた。チームに川崎が持っていたスピリットを植え付けたかったからだ。
結果は出せなかった。だが、川崎の思いは、野球を最後まであきらめない気持ちは、確かに選手たちに伝わった。
2回に2点、5回に1点、そして6回に2点。同点で迎えた7回だ。初めから立浪にはある予感が働いていた。
「きっとチャンスで打席に回ってくる。絶対に打つ。オレが決める」
1死一、三塁。打席には立浪。0-2から高めに浮いたフォークをジャストミートした。右犠飛で、ついに勝ち越し。
「5点をリードされて相手は黒田。ふつうなら、このままというパターン。でも、コツコツと点を入れていくうちに必ず逆転のチャンスがくると思えてきた。最高です。最高の勝ち方で開幕を飾れました」
クールなチームリーダーの声が思わず上ずるほどの劇的な開幕戦。どのチームもエース級を投入する開幕戦で、5点差をひっくり返して勝ったことは、69年のドラゴンズの歴史で初めての快挙。
「選手たちが自分たちの力でもぎとった勝利だ。オレの力じゃない。こういう勝ち方がどれだけ選手たちの自信になるか。とにかく大きな1勝だ。最高の開幕だった」
7人の投手をつぎ込み、指揮官はファイティングポーズをとり続けた。ゲームセットの瞬間まで絶対にあきらめない。それがオレ流野球の神髄だ。 (青山卓司)
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