甲状腺機能低下症は、女性に多くみられる病気です。3月に亡くなった歌手で俳優のいしだあゆみさんもこの病気で、注目を集めました。どのような病気なのでしょうか。発症を予防するには、なじみのある食材がカギを握っていると言います。
新陳代謝に関わるホルモン
甲状腺は、喉仏の下にある臓器で、全身の代謝を維持するのに重要な「甲状腺ホルモン」を分泌しています。甲状腺機能低下症とは、このホルモンの分泌が減ることで生じます。
全身の新陳代謝が落ちてしまい、むくみや体重増加、倦怠 感、抑うつ、脱毛、肌荒れ、便秘などの症状が出ます。昼夜問わず眠くなったり、認知機能が低下したりすることもあります。
この病気になるのは、圧倒的に女性が多いですが、理由ははっきりしていません。特に中高年は多く診断されます。その理由について、にむら甲状腺と消化器クリニック(福島県いわき市)院長の二村浩史さんは「症状は、更年期障害や自律神経障害に似ています。こうした症状は中高年になると出やすくなり、検査を受ける人が多いからではないでしょうか」と指摘します。
橋本病が引き金にも
血液検査をし、甲状腺ホルモン(フリー・サイロキシン〈FT4〉とフリー・トリヨードサイロニン〈FT3〉)や、甲状腺ホルモンの分泌を促す甲状腺刺激ホルモンを調べます。甲状腺ホルモンの数値が基準値よりも低ければ、診断します。甲状腺機能低下症は、自己免疫の異常で甲状腺に炎症が生じる「橋本病」(慢性甲状腺炎)などを患っていると、発症しやすいと言われています。
治療は、甲状腺ホルモン薬(チラーヂンSなど)を服用します。コーヒーは、この薬の吸収を妨げると言われており、服用前後は、飲むのを控えます。
むくみが生じる「粘液水腫」という状態になると、(1)低体温になる(2)昏睡 状態に陥る(3)心不全になる――リスクが高まり、多くて6割ほどの人が亡くなるとされています。そうならないために、二村さんは「しっかりと甲状腺ホルモン薬を飲むことが大切です」と指摘します。
コンブの摂取に注意
甲状腺機能低下症の発症には、「ヨード」の摂取がカギを握っていると言われています。ヨードは、コンブなどの海藻類に多く含まれており、甲状腺ホルモンの原料となります。ただ、過剰に摂取することで、甲状腺ホルモンの合成が抑えられ、甲状腺機能低下症になることがあります。
二村さんは「体がだるい、疲れやすいといった症状が出ている場合は、『年のせい』などと思わず、血液検査で甲状腺ホルモンのチェックをしてみることをお勧めします」と強調します。(読売新聞メディア局 利根川昌紀)