花王かおうが販売はんばい中止ちゅうししたエコナ油ゆ
再起さいき狙ねらうも、効能こうのう認みとめられず

「エコナをいつか復活ふっかつさせたい」

　今年ことし4月がつ、花王かおうの尾崎おざき元もと規ぶんまわし会長かいちょうは、自身じしんの社長しゃちょう退任たいにんに当あたり、悔くやしさをにじませながら語かたった。そうした思おもいとは裏腹うらはらに、再さい発売はつばいには黄き信号しんごうがともっていることが週刊しゅうかんダイヤモンドの調しらべでわかった。

花王かおうのエコナは売上うりあげ高だかが数すう百ひゃく億おく円えんに達たっしたが、安全あんぜん性せいの問題もんだいから販売はんばいを中止ちゅうしした

　食用しょくよう油ゆのエコナは、発はつがん可能かのう性せい成分せいぶんが多おおく含ふくまれていることで2009年ねんに販売はんばいを中止ちゅうしした。発はつがん性せいについては食品しょくひん安全あんぜん委員いいん会かいで審査しんさを継続けいぞく中ちゅうだ。同社どうしゃは、「発はつがん性せいの懸念けねんはない」としており、公的こうてきに安全あんぜん性せいが確認かくにんされた上うえで再さい発売はつばいするもくろみだった。

　風向かざむきが変かわったのは昨年さくねん11月がつのこと。花王かおうは欧州おうしゅう食品しょくひん安全あんぜん機関きかん（EFSA）に対たいして、エコナの主要しゅよう成分せいぶんであるジアシルグリセロール（ＤＡＧ）油あぶらを摂取せっしゅすることで体重たいじゅうが減少げんしょうするという健康けんこう機能きのう表示ひょうじを行おこないたいと申請しんせいした。日本にっぽんでの再さい発売はつばいに向むけて、まずは海外かいがいで機能きのうの高たかさについてお墨付すみつきをもらおうという狙ねらいだ。ところがEFSAは、体重たいじゅう減少げんしょうの効果こうかは認みとめられないという結論けつろんを出だしたのだ。花王かおうは「栄養えいよう学がく的てきに見みて、十分じゅうぶんに体重たいじゅう減少げんしょうとの関係かんけいが証明しょうめいされている」と強弁きょうべんするが、後あとの祭まつりだ。効能こうのうなしの烙印らくいんを押おされてしまった。

　エコナは、かつて日本にっぽんでは特定とくてい保健ほけん用よう食品しょくひん（トクホ）として認みとめられ、体からだに脂肪しぼうがつきにくい効果こうかの表示ひょうじを認みとめられていた。一方いっぽう、EFSAが認みとめなかったのは、審査しんさ基準きじゅんが厳きびしいからだ。食品しょくひんでありながら、「医薬品いやくひん並なみの厳格げんかくな審査しんさ」（業界ぎょうかい関係かんけい者しゃ）といわれる。

　ただしEFSAが特別とくべつに厳きびしいわけではない。食品しょくひんによる健康けんこう機能きのう表示ひょうじは、世界せかい的てきに厳格げんかく化かされている。日本にっぽんのトクホもエコナ問題もんだいで信頼しんらい性せいが揺ゆらぎ、誇大こだい広告こうこくが蔓延まんえんしていることから、審査しんさや運用うんようの厳格げんかく化かを検討けんとうしている。

　エコナはピーク時じには数すう百ひゃく億おく円えんの売上うりあげ高だかを誇ほこった製品せいひんだけに、「虎とらの子こ」として環境かんきょうを整ととのえてから、再さい発売はつばいするもくろみだった。だが自みずからの失策しっさくで再さい発売はつばいは遠とおのいてしまった。

（「週刊しゅうかんダイヤモンド」編集へんしゅう部ぶ　野口のぐち達也たつや）