世界せかいの有名ゆうめいな話はなし　第だい１６話わ



シンドバッドのぼうけん
千せん夜や一夜いちや物語ものがたり　→　アラビアンナイトの詳細しょうさい

　むかしむかし、船乗ふなのりのシンドバッドという若者わかものが、船ふねに乗のって商売しょうばいをしながら、島しまから島しまへと渡わたり歩あるいていました。
　そしてそうこうするうちに、ある美うつくしい島しまへたどり着つきました。
　だれも住すんでいない静しずかな所ところなので、仲間なかまといっしょに、けしきをながめながら歩あるき回まわってみました。
　しばらくいくときれいな泉いずみがあり、シンドバッドたちは泉いずみのそばでひと休やすみしました。
　疲つかれていたのか、シンドバッドはそのままぐっすりと眠ねむってしまいました。
　ふと目めがさめてみると、仲間なかまたちはだれもおらず、船ふねはシンドバッドを置おき去ざりにして出でてしまったあとでした。
「しまった！」
　ビックリして高たかい木きによじ登のぼり、海うみを見渡みわたしましたが船ふねはもういません。
「ちくしょう。いったいどうすればいいのだ！　・・・おや？　なんだろう？」
　陸りくのずっと向むこうに、なにかしら白しろい大おおきな物ものが見みえました。
　シンドバッドがいってみると、それはすばらしくりっぱな丸まるい建物たてもので、とてもスベスベしています。
「入いり口くちはどこだろう？」
　建物たてものの周まわりをグルリとまわってみましたが、どこにも入いり口くちがありません。
　そのとき突然とつぜんあたりが暗くらくなったので、シンドバッドが空そらを見上みあげると、とても大おおきな鳥とりが飛とんでいました。
　その鳥とりはルフという名なで、ヒナ鳥とりにゾウを食しょくベさせて育そだてるという、ものすごい鳥とりだったのです。
　この白しろい丸まるい建物たてものみたいな物ものは、このルフの卵たまごだったのです。
　まいおりたルフは、卵たまごをあたためはじめました。
　シンドバッドは頭あたまに巻まいていたターバンをとると、それで自分じぶんのからだをガッチリとルフの足あしにしばりつけました。
　こうしておけば、人間にんげんの住すんでいる国くにへ運はこんでいってくれると考かんがえたのです。
　夜よるがあけると、ルフはカミナリのような鳴なき声ごえをたてて、大空おおぞら高たかくまい上あがりました。
　そしてしばらく飛とび回まわったのち、ようやく地面じめんにおりました。
　シンドバッドは手早てばやくターバンをほどいて、地面じめんにおりたちました。
　ルフは丸太まるたのような物ものをつめにひっかけると、どこかへ飛とんでいってしまいましたが、よく見みると大おおきな大おおきなヘビでした。
　そしてシンドバッドがおろされた所ところは、高たかい山やまと山やまとの谷たにあいでした。
「さて、ここからぬけ出だすには、どうしたらいいかな？」
　シンドバッドが考かんがえながら歩あるいていくと、地面じめん一いち面めんにダイヤモンドがころがって、キラキラと光ひかりかがやいている所ところに出でました。
「わあ、すごいすごい！」
と、シンドバッドはよろこびましたが、前まえにいるものを見みてビックリ。
　なんと目めの前まえには、ゾウでも丸まるのみにしそうな大蛇おろちが、何なん匹ひきも何なん匹ひきもとぐろを巻まいていたのです。
「このままじゃあ、大蛇おろちに食たべられてしまう。どこかへかくれなきゃ」
　シンドバッドはその夜よる、小ちいさなほら穴あなにはいって寝ねました。
　夜よるがあけると、すぐにこの恐おそろしい谷間たにまから逃にげ出だそうと、あちこち調ちょうベて回まわりました。
　すると突然とつぜん、ズシーン！　と、大おおきなヒツジの肉にくが落おちてきたのです。
　シンドバッドは腰こしがぬけるほどビックリしましたが、この肉にくは、ダイヤモンドをとる商人しょうにんが投なげたエサだということがすぐわかりました。
　まず、この肉にくのかたまりにダイヤモンドがくっつきます。
　そこへワシやハゲタカがエサにしようと、ダイヤモンドのくっついたヒツジの肉にくをつめにひっかけて山やまのてっペんまで飛とんでいきます。
　そして待まちかまえていた商人しょうにんたちが大声おおごえあげておどかすと、鳥とりはビックリして肉にくをすてて逃にげます。
　そのあと肉にくにくっついてきたダイヤモンドを、とるというわけです。
　ズシーン！
　また、大おおきな肉にくのかたまりが落おちてきました。
　シンドバッドは近ちかくにころがっているダイヤモンドの中なかから、大おおきいのをポケットにつめこめるだけつめこむと、肉にくのかたまりをターバンで自分じぶんのからだとしっかりとゆわえつけました。
　まもなく大おおきなハゲタカがまいおりてきて、肉にくのかたまりといっしょにシンドバッドをつめにひっかけて、山やまのてっペんにあがりました。
　そのとき、さわぎたてる人間にんげんの声こえがわき起おこり、ビックリしたハゲタカは肉にくをすてて逃にげていきました。
　肉にくのそばへ走はしり寄よった商人しょうにんたちは、肉にくの下したからはい出だしてきたシンドバッドを見みて目めを丸まるくしました。
　シンドバッドは商人しょうにんたちに今いままでの話はなしをしてから、ポケットのダイヤモンドをわけてやりました。
　商人しょうにんたちは喜よろこんで、シンドバッドのために船ふねを用意よういしてやり、シンドバッドはその船ふねに乗のって、無事ぶじに自分じぶんの家いえに帰かえることができたのでした。

おしまい