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お月見つきみのお話はなし　第だい ６ 話わ

十五夜じゅうごやの月つきは

おりがみをつくろう ( おりがみくらぶ より) つき 　　　くも

　山寺やまでらの和尚おしょうさんが、小僧こぞうさんに言いいました。
「これ、珍ちん念ねん(ちんねん)や」
「はい」
「今日きょうは庄屋しょうや(しょうや→村長そんちょう)さまの家いえで寄より合あいがあるから、お前まえもついてこい」
「はーい」
「そして、お昼食ちゅうしょくには、このもちを持もっていこう」
「仏ふつさまにお供そなえした、あのやわらかい丸まるい大おおきなもちですね」
「さよう。ところでわしは、住職じゅうしょく(じゅうしょく)。人ひとさまの上うえに立たつ身みじゃ。大勢おおぜいの前まえで『お昼食ちゅうしょくどきじゃ。もちを出しゅっせ』とは、言いいにくい」
「はい。これは、仏ふつさまのおもち」
「まあ、だまっておれ。それでな、わしがお昼食ちゅうしょくになったら『十五夜じゅうごやの月つきは』と、お前まえに言いうから、その時ときはそっと、わしにもちを渡わたすのじゃ」
「はい」
「わかったな」
「はい。和尚おしょうさまが『十五夜じゅうごやの月つきは』と言いったら、もちを出だすんですね」
「さよう、さよう」
　和尚おしょうさんは、
（われながら、風流ふうりゅう(ふうりゅう→品しながある)な思おもいつきじゃ）
と、ニコニコしながら、珍ちん念ねんにもちを持もたせて寄より合あいに出でかけていきました。

　道みちの途中とちゅうで珍ちん念ねんは、こんな事ごとを思おもいました。
（いくら和尚おしょうさまがけちん坊ぼうでも、このもちの半分はんぶんは、分わけてくださるだろう。
　・・・いや、半分はんぶんの半分はんぶんかな。
　・・・いや、ほんの一いち口くちかな。
　・・・いや、ぜんぜんくれないかも）
　すると珍ちん念ねんは、時々ときどきふところに手てを入いれて何なにかをはじめました。

　さて、庄屋しょうやさまの家いえにつくと、もう村中むらなかの人ひとが集あつまっていました。
　色々いろいろと話はなしをしているうちに、お昼ひるになりました。
　和尚おしょうさんは、みんなの顔かおをぐるっと見みまわしてから、
「珍ちん念ねん、十五夜じゅうごやの月つきは」
と、言いいました。
　すると珍ちん念ねんは、ふところがら取とり出だしたもちを和尚おしょうさんの前まえにつき出だして、
「雲くもにかくれて、ここに三日月みかづき」
と、言いいました。
「？？？」
　珍ちん念ねんの言葉ことばに首くびをかしげた和尚おしょうさんがつき出だされたおもちを見みると、もちのほとんどは珍ちん念ねんが食たべてしまい三日月みかづきの様ような形かたちになっていました。

おしまい