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2010年ねん　6月28日にちの新作しんさく昔話むかしばなし



お釈迦しゃかさまの誕生たんじょう
インドの昔話むかしばなし　→　インドの情報じょうほう

　むかしむかし、ヒマラヤのふもとに、カピラバスツという国こっかありました。
　美うつくしくて平和へいわな国くにでしたが、この国くにの王おうさまは、跡継あとつぎの王子おうじさまが生うまれないのが心配しんぱいでした。
　ところが妃ひのマーヤーが眠ねむっていると、夢ゆめの中なかで白しろいゾウが現あらわれて、マーヤーのお腹なかに入はいってきたのです。
「白しろいゾウの夢ゆめとは、めでたい」
　この話はなしを聞きいた国くに中ちゅうの人々ひとびとは、これはきっと王子おうじさまがお生うまれになるお告つげだと喜よろこびました。
　そして本当ほんとうに、マーヤーのお腹なかに子こどもが宿やどったのです。
　さて、春はるになって一いち面めんに花はなが開ひらく頃ころになると、マーヤーは赤あかちゃんを生うむために自分じぶんの国くにへ帰かえろうとしましたが、でもその途中とちゅうのルンビニまで来きたとき急きゅうに産気さんけづいて、王子おうじが生うまれたのです。
　王子おうじは生うまれると、生うまれたばかりだというのに、すぐに七なな歩ほ歩あるき、小ちいさい右手みぎてで天てんを差さし、左手ひだりてで地ちを指ゆびさして、こう言いったのです。
「天上天下てんじょうてんげ唯我独尊ゆいがどくそん(てんじょうてんげ ゆいがどくそん)」
　すなわち、
『わたしは、世界中せかいじゅうの人々ひとびとが、みんな幸しあわせになるために生うまれてきた』
と、言いうような意味いみです。
　するとこの時とき、どこからか美うつくしい音楽おんがくがなりひびき、天てんから銀色ぎんいろの甘あまい味あじのする雨あめが降ふってきたそうです。
　この王子おうじこそが、お釈迦しゃかさまなのです。
　それは、今いまから二に千せん五ご百ひゃく年ねん前まえの四よん月がつ八はち日にちの事ことです。
　今いまでも、その日ひをおいする『花祭はなまつり』というお祭まつりがあります。
　そのとき、お釈迦しゃかさまをまつる小ちいさな花御堂はなみどうはルンビニの花園はなぞのを表あらわしていて、甘茶あまちゃは天てんから降ふってきた雨あめを表あらわしているそうです。
　さて、カピラバスツの王おうさまはヒマラヤの奥おくへ使つかいを出だして、有名ゆうめいな仙人せんにんを呼よび寄よせました。
「王子おうじの未来みらいを、占うらなっておくれ」
　仙人せんにんは、しばらく王子おうじの顔かおをながめていましたが、やがてポタポタと涙なみだをこぼしたので、みんなはびっくりです。
「このめでたい時ときに、なぜ、泣なくのですか？」
「もしや王子おうじさまに、何なにか悪わるい事ことでもあるのでしょうか？」
　すると仙人せんにんは、あわてて手てをふりました。
「と、とんでもない！　わたしは長ながい間あいだ生いきてきましたが、これほど偉大いだいな方ほうに出会であうのは初はじめてです。もしこの王子おうじが王おうさまになるならば、インド中ちゅうを治おさめる立派りっぱな王おうさまになるでしょう。また、お坊ぼうさまになるなら、尊とうとい仏ほとけさまの教おしえをみんなに伝つたえてくださります。どちらにせよ、こんなにめでたい事ことはございません」
　仙人せんにんはこういって、また涙なみだを流ながしました。
「それでは、どうしてめでたいのに泣なくのです？」
　すると仙人せんにんは、さらに涙なみだを流ながしながら答こたえました。
「わたしは、もう年寄としよりです。あまり長ながい間あいだは生いきられません。出来できる事ことならもっと長生ながいきをして、この王子おうじさまの教おしえを聞きかせていただきたかったのです。でも、それが出来できないとは、くやしくてなりません。それで、泣ないてしまったのです」
　やがて王子おうじさまは『さとり』を開ひらいて、お釈迦しゃかさまとよばれるお方かたになられたのです。

おしまい