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2011年ねん　2月がつ28日にちの新作しんさく昔話むかしばなし



お月つきさまのお使つかい
高知こうち県けんの民話みんわ → 高知こうち県けんの情報じょうほう

　むかしむかし、ある山やまの上うえで、ウサギの兄弟きょうだいが歌うたを歌うたいながら餅もちをついていました。

♪ウサギのもちつき　ぺったんこ
♪ぺたぺたぺたぺた　ぺったんこ
♪おいしいもちが　つけたなら
♪お月つきさまに　あげたいな
　するとそれを聞きいたサルが、よだれをこぼしながら考かんがえました。
(なんて、うまそうな餅もちだろう。どうにかして、あの餅もちを手てに入いれる方法ほうほうはないかな？)
　そこでサルは、偉えらそうに胸むねを張はってウサギたちの前まえに出でて行いき、
「これ、そこのウサギたち。
　わたしは、お月つきさまのお使つかいじゃ。
　さっき、そのお餅もちをお月つきさまにあげたいと申もうしておったが、わたしがそのお餅もちをお月つきさまに届とどけてやろう」
と、言いいました。
　するとウサギの兄弟きょうだいは、
「そいつは、ありがたい」
「ぜひ、お月つきさまに届とどけてください」
と、大だい喜よろこびで一生懸命いっしょうけんめいに餅もちをつきました。
　ところがあんまりつきすぎたため、餅もちがうすにくっついてしまい、どうやっても離はなれないのです。
　それを見みて、サルが言いいました。
「早はやくしないと、お月つきさまに届とどけてやらないぞ」
「はい。ただいま」
　ウサギの兄弟きょうだいはあわててうすから餅もちを引ひっ張ぱり出だそうとしますが、餅もちはなかなか離はなれません。
　イライラしたサルは、ウサギの兄弟きょうだいに言いいました。
「ええい、仕方しかたがない。
　それではうすごと、お月つきさまにお餅もちを届とどけてやろう。
　背負せおうから、それをわたしの背中せなかに乗のせてくれ」
「はい」
「それでは」
　ウサギの兄弟きょうだいがサルの背中せなかにうすを乗のせると、サルはとたんに走はしり出だして、赤あかい舌したをペロリと出だしながら言いいました。
「えっへへ、うまくいったぞ。
　ばかなウサギめ、こんな所しょにお月つきさまの使つかいがいるはずないのに。
　さあ、あとでゆっくり食たべよ」
　サルは小声こごえで言いったのですが、ウサギは耳みみが大おおきいので、その小声こごえが聞きこえたのです。
「なんだって！　よくもだましたな！」
「こら、待まてえ！　このうそつきザルめ！」
　怒おこったウサギの兄弟きょうだいは、サルを追おいかけました。
「ふん、だれが待まつもんか！」
　サルは重おもいうすを担かついで、必死ひっしに走はしっていきました。
　でも、ウサギは足あしが早はやい動物どうぶつなので、やがてサルに追おいついて言いいました。
「サルさん、サルさん。
そ　んなに走はしったら転ころんでしまい、せっかくのお餅もちが泥どろだらけになってしまうよ」
「そうだよ。
　もう怒おこっていないから、走はしるのをやめなよ。
　お餅もちを、半分はんぶんこにしてあげるからさ」
「えっ？　本当ほんとうに、半分はんぶんくれるのかい？」
「ああ、やるとも」
「約束やくそくするよ」
　それを聞きいてサルはほっとして、足あしを止とめてうすを地面じめんに降おろしました。
　そのとたん、ウサギの兄弟きょうだいはサルのお尻しりを思おもいっきり蹴飛けとばしました。
「このうそつきザルめ！」
「だれがお前まえなんかに、お餅もちをあげるものか！」
　するとサルは山道さんどうをコロコロ転ころがっていき、お尻しりをすりむいて、お尻しりがまっ赤あかになっていしまったのです。

　それからです、サルのお尻しりが赤あかくなったのは。

おしまい