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６月がつ２日にちの小話こばなし

あみがさの忘わすれ物もの

　そそっかしいさむらいが、旅たびの途中とちゅうの茶店ちゃみせで一休ひとやすみをしていました。
「日頃ひごろからあわて者しゃと笑わらわれておるが、これからは何事なにごとも落おち着つき、決けっして笑わらわれない様ようにしよう」
　そう心こころがけたさむらいは、今いまのところ失敗しっぱいもなく旅たびを続つづけています。
「どれ、そろそろ出でかけるとするか。
　まずは、落おち着ついて確認かくにんだ。
　馬うまにつけた荷物にもつは、・・・ある。
　大切たいせつな刀かたなは、・・・うむ、大丈夫だいじょうぶ。
　供きょうの家来けらいは、・・・ちゃんと連つれておる
　そして店みせの代金だいきんは、・・・よし、間違まちがいなく払はらったし、財布さいふも忘わすれておらぬ 」
　全すべてを確認かくにんしたさむらいは、茶店ちゃみせをあとにしました。

　それからしばらく行いくと、さむらいは茶店ちゃみせにかけ戻もどりました。
「すまぬ。せっしゃとした事ことが、あみがさ(→ワラなどで編あんでつくった、日ひよけや顔かおをかくすための大おおきなぼうし)を忘わすれた。ここに、あっただろう」
　すると茶店ちゃみせの人ひとが、くすくすと笑わらいながらさむらいの頭あたまを指ゆびさしました。
「あみがさなら、頭あたまにつけておいでですよ」
　頭あたまに手てをやったさむらいは、ばつが悪わるそうに言いいました。
「ややっ。これは、おもいがけないところにあったものだ」

　そそっかしいのは、簡単かんたんには治なおりませんね。

♪ちゃんちゃん
(おしまい)