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2月がつ17日にちの世界せかいの昔話むかしばなし



はたらくことをおぼえた人間にんげん
キューバの昔話むかしばなし　→　キューバの国情こくじょう報ほう

　むかしむかし、人間にんげんというものが、世界せかいにまだ、たった一人ひとりしかいなかったときのことです。
　たった一人ひとりの人間にんげんは、ヤカラーといいました。
　ヤカラーは、一いち日にちじゅう、遊あそんでくらしていました。
　太陽たいようがのぼるとおきだして、あちこちをさんぽしたり、海うみべヘいって、小鳥ことりのように歌うたをうたったりしました。
　おなかがすけば、リンゴなど果物くだものや木この実みを、好すきなだけたべました。
　あるとき、山やまが大地だいちにいいました。
「わたしのふもとをうろついているのは、いったいなにものだ？　まい朝あさまい朝あさ、大声おおごえで『おれは王おうだぞ！　おれは王おうだぞ！』なんて歌うたうから、うるさくてしかたがない。どこかへ追おいはらってしまったらどうだ？」
「それはヤカラーですよ。人間にんげんなのです」
と、大地だいちはいいました。
　すると海うみが、話はなしにわりこんできました。
「まったく、山やまさんのいうとおりだ。大地だいちくん。あんたはどうして、あんなことを人間にんげんにゆるしているんだね。なにが王おうだ。わしだって、山やまさんだって、大地だいちくんだって、あいつの命令めいれいなんか、なにひとつうけていないじゃないか」
　ヤカラーは、大地だいちと、山やまと、海うみの話はなしを聞ききつけて、海うみべヘやってきました。
　そして、
「おれは人間にんげんだ。王おうだ！」
と、さけびました。
　はらをたてた海うみは、大波おおなみをたてました。
　山やまもさけびました。
「大地だいちくん。きみはなぜ、このヤカラーとかいう人間にんげんに、木この実みや草くさの実みをとらせているんだ！」
　大地だいちはなるほどと思おもって、ヤカラーにいいました。
「なぜ、わたしの木この実みや草くさの実みをだまってたべるのだね。もう、これからはゆるさないよ」
　ヤカラーはこまって、海うみや山やまを見みまわしました。
　けれども、海うみも山やまもだまっています。
　とうとうヤカラーは、大地だいちにたのみました。
「木この実みや草くさの実みをたべなければ、わたしは生いきていけない。おねがいだ。たべることをゆるしてください」
　大地だいちは、こたえました。
「よろしい。ゆるしてあげよう。だが、おまえはかわりに、なにをくれるね？」
「・・・わかりません。わたしはなにも持もっていないし、あなたは大おおきすぎる。なにをあげたらいいでしょう？」
「おまえを」
と、大地だいちはこたえました。
　おなかがたまらなくすいてきたヤカラーは、しかたなくしょうちしました。
　ヤカラーは、朝あさから夕方ゆうがたまで地面じめんをたがやし、タネをまいて、大地だいちのために働はたらくことになりました。
　そのかわりヤカラーが、木この実みや草くさの実みをたべることを、大地だいちはゆるしてくれました。
　しごとがおわってから、さんぽをしたりうたったり、「おれは王おうだ」と、さけぶこともゆるしてくれました。
　こうしてヤカラーは、大地だいちとはなかよくくらせるようになりましたが、海うみや山やまとは、なかなか、なかなおりできません。
　けれども、それからなん年ねんもなん年ねんも、かぞえきれない年としがすぎました。
　人間にんげんは、もう一人ひとりぼっちではありません。
　海うみや山やまとも、うまくはなしあえるようになりました。
　こうして人間にんげんは、生いきるためにはもらうだけではなくて、働はたらかなくてはいけないことを知しったのです。

おしまい