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8月がつ18日にちの世界せかいの昔話むかしばなし



白鳥はくちょうの王子おうじ
グリム童話どうわ　→　グリム童話どうわの詳細しょうさい

　むかしむかし、あるところで、ひとりの女おんなの子こが森もりの中なかをさんぽしていると、一いち羽わの美うつくしい白鳥はくちょうがやってきていいました。
「わたしは空そらの国くにの王子おうじです。ですが、悪わるい魔法使まほうつかいにだまされて、こんな姿すがたにされてしまったのです。おねがいですから、わたしの羽はねにむすんである糸いと玉だまをほどいてください」
「まあ、それはおきのどくに」
　女おんなの子こが糸いと玉だまをほどいてやると、白鳥はくちょうの王子おうじは喜よろこんでいいました。
「どうもありがとう。お礼れいに空そらの国くにへ連つれて行いってあげましょう。わたしといっしょに空そらのお城しろでなかよく暮くらしましょう。さあ、ほどいた糸いと玉だまにつかまって」
　そういって、白鳥はくちょうの王子おうじは飛とびたちました。
　女おんなの子こがあわてて糸いとのはしをにぎると、フワリと体からだがうきあがり、白鳥はくちょうの王子おうじといっしょに空そらへ飛とび立たちました。
　ですが途中とちゅうで糸いとがプツンと切きれてしまい、女おんなの子こは森もりの中なかへ落おちてしまいました。
「白鳥しらとりさん、待まって！」
　女おんなの子こがさけびましたが、白鳥はくちょうの王子おうじはそれには気きづかず、そのまま空そらのお城しろへ飛とんでいってしまいました。
　ひとりぼっちになった女おんなの子こが泣なきながら森もりの中なかをさまよっていると、ひとりのおばあさんが現あらわれました。
「おや、どうしたんだい？　こんな森もりの中なかをひとりで」
　女おんなの子こがわけを話はなすと、おばあさんがいいました。
「それはかわいそうに。では、この『金かねの糸いとくり車しゃ』と『ブタのあぶら肉にく』をあげよう。きっと、いいことがあるよ」
「ありがとう」
　女おんなの子こはそれをたいせつに持もって、また歩あるきだしました。
　しばらく行いくと、道みちのまん中なかにドラゴンがたおれていました。
　なんだか、とても元気げんきのないようすです。
「どうしたの？」
　女おんなの子こが聞きくと、ドラゴンが小ちいさな声こえで言いいました。
「じつは、おなかがすいて動うごけないのです。おじょうさん、どうか、そのブタのあぶら肉にくをくれませんか？」
「ええいいわ。そのかわり、わたしを空そらの国くにのお城しろへ連つれていってくれるかしら」
「よろこんで」
　ドラゴンは女おんなの子こからもらったブタのあぶら肉にくを食たべて元気げんきを取とりもどすと、女おんなの子こを背中せなかに乗のせて空そらにまいあがりました。
　こうして女おんなの子こは、ぶじに空そらの国くにのお城しろにつくことができました。
　でも、門もんの前まえにはおおぜいの門番もんばんが立たっていて、女おんなの子こがいくらたのんでも、お城しろの中なかには入いれてくれません。
「こまったわ。どうしましょう」
　女おんなの子こはしかたなしに、森もりのおばあさんにもらった金かねの糸いとくり車しゃで、糸いとをつむぎはじめました。
　すると、それを見みたお城しろの召めし使つかいが、女おんなの子こにいいました。
「おじょうさん。それをくれたら、こっそりお城しろの中なかへ入いれてあげますよ」
「ほんとうに？　はい、どうぞ」
　女おんなの子こは召めし使つかいに金かねの糸いとくり車しゃをやって、やっとお城しろの中なかにはいることができました。
　さて、女おんなの子こが王子おうじの部屋へやにやってくると、王子おうじはベッドでねむっていました。
「王子おうじさま、わたしよ。起おきてください」
　女おんなの子こは王子おうじを起おこそうとしましたが、王子おうじは死しんだように眠ねむっていて、ぜんぜん起おきようとしません。
　するとそこへ、女おんなの子こを中なかに入いれてくれた召使めしつかいがやってきました。
「これは、ないしょだけど、王子おうじさまは悪わるい魔法使まほうつかいにねむり薬やくを飲のまされて、ねむっていらっしゃるのです」
　女おんなの子こはビックリ。
　そこで女おんなの子こは、王子おうじさまのまくらもとにあった眠ねむり薬ぐすりを、目めのさめる薬くすりと取とりかえると、王子おうじさまのベッドにかくれました。
　その日ひの夜よる、王子おうじさまの部屋へやに悪わるい魔法使まほうつかいが現あらわれました。
「よしよし、よくねむっているね。このまま何なにも食たべずにもうしばらくねていれば、王子おうじは死しんでしまうだろう。そうなれば、やがてわたしが王おうさまになれるよ」
　そして、ねむっている王子おうじさまの口くちに、ねむり薬やくをそそぎ込こみました。
　いえ、そそぎ込こんだのは、女おんなの子こが取とり替かえておいた目めの覚さめる薬くすりです。
　すると王子おうじさまは、たちまち目めをさましました。
　そこへベッドの下したにかくれていた女おんなの子こが飛とび出だしてきて、魔法使まほうつかいの悪あくだくみを全すべて話はなしたのです。
　王子おうじさまはすぐにけらいをよぶと、悪わるい魔法使まほうつかいをつかまえました。
　やがて女おんなの子こは王子おうじさまのお嫁よめさんになり、しあわせにくらすことができました。

おしまい