引用いんよう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

引用いんよう(いんよう、英語えいご:citation, quotation[ちゅう 1])とは、広義こうぎには、自己じこオリジナル作品さくひんのなかで他人たにん著作ちょさく副次的ふくじてき紹介しょうかいする行為こうい先人せんじん芸術げいじゅつ作品さくひんやその要素ようそ副次的ふくじてき自己じこ作品さくひんれること。報道ほうどう批評ひひょう研究けんきゅうなどの目的もくてきで、みずからの著作ちょさくぶつ著作ちょさくぶつ一部いちぶ採録さいろくしたり、ポストモダン建築けんちく過去かこ様式ようしきんだりすることをす。狭義きょうぎには、各国かっこく著作ちょさくけんほう引用いんよう要件ようけんたしておこなわれる合法ごうほう無断むだん転載てんさいひとし[ちゅう 2]のこと。引用いんよう権利けんりしゃ無断むだんおこなわれるもので、ほう日本にっぽんでは著作ちょさくけんほうだい32じょう)でみとめられた合法ごうほう行為こういであり、権利けんりしゃ引用いんよう拒否きょひすることはできない[ちゅう 3]権利けんりしゃ拒否きょひできるのは、著作ちょさくけんほう引用いんよう要件ようけんたさない違法いほう無断むだん転載てんさいとうかぎられる。ほんこうでは著作ちょさくけんほうみとめられる引用いんよう狭義きょうぎ引用いんよう)について記述きじゅつする。

科学かがく論文ろんぶんにおいては、引用いんようはむしろ内容ないようそのものを参照さんしょうすることを場合ばあいおおい。下記かき参照さんしょうのこと。

  • 以下いかじょうすうのみの記載きさいは、著作ちょさくけんほうである。

日本にっぽんほうにおける著作ちょさくぶつ引用いんよう[編集へんしゅう]

日本にっぽんでは、一定いってい条件じょうけんたした「引用いんよう」は、著作ちょさくけんほうだい32じょうによってみとめられている。引用いんよう権利けんりしゃ許可きょかおこなうことができ、これは著作ちょさくけん侵害しんがいにならない。ただし、引用いんよう要約ようやくしたり、変形へんけい改変かいへん修正しゅうせいなどをくわえることは違反いはんとなる。47じょう6にて、32じょうについては「翻訳ほんやく」のみがみとめられており、「翻案ほんあん」は違反いはんとなる。そのため引用いんよう内容ないよう要約ようやく改変かいへん修正しゅうせいなどしてしまうと、翻案ほんあんとなって27じょう翻案ほんあんけん違反いはん接触せっしょくするため、引用いんようはそのまませなければならない(記述きじゅつりゃくする場合ばあいなどは3てんリーダーを2(……)を使用しようし、箇条書かじょうがき・段落だんらく改行かいぎょうなどがある引用いんようりゃく使つか場合ばあいは〔りゃく〕とれる)。

作品さくひん内容ないようのあらましが把握はあくできるような要約ようやく著作ちょさくけんしゃ無断むだん掲載けいさいすると27じょう翻案ほんあんけん違反いはんとなり、作成さくせいされた要約ようやくをウェブじょう一般いっぱん公開こうかいする行為こういも28じょう違反いはんとなるため、掲載けいさいまえ著作ちょさくけんしゃへの確認かくにん必要ひつようである(きわめてみじか内容ないよう紹介しょうかいいちぎょうのキャッチコピー程度ていどであれば著作ちょさくけんほう違反いはんにならない)。

引用いんよう」ではなく、自分じぶん作品さくひん文献ぶんけんなどにおいての「参考さんこう」として、出所しゅっしょ明示めいじしたうえ自分じぶんなりの言葉ことば要約ようやくして記載きさいすれば、使用しようした出所しゅっしょは「引用いんよう文献ぶんけん」ではなく、一般いっぱんに「参考さんこう文献ぶんけん」としてあつかわれているようであるが、これは引用いんようであることにわりはなく、著作ちょさくけんほう違反いはんにならないようにする必要ひつようがある(自分じぶんぶんが「あるじ」で参考さんこう文献ぶんけんが「したがえ」の関係かんけいであることが必要ひつよう[1][2])。なお、「参考さんこう」は著作ちょさくけんほうじょう用語ようごではない。

著作ちょさくけんぶつ変更へんこう切除せつじょ改変かいへん著作ちょさくけんしゃ無断むだんおこな場合ばあい、20じょう同一どういつせい保持ほじけん違反いはんとなる場合ばあいもある。

3てんリーダー使用しようれい

  • りゃくするまえ原文げんぶん来週らいしゅうにスーパーマーケットにくつもりで、そこで食料しょくりょう予定よていだ。その図書館としょかん予定よていだ。」
  • 3てんリーダーでりゃくしたぶん「……スーパーマーケットに……食料しょくりょう予定よていだ。……」

趣旨しゅし[編集へんしゅう]

人間にんげん文化ぶんか活動かつどうのなかでは、批評ひひょう批判ひはんや、自由じゆう言論げんろんのために、公表こうひょうされた著作ちょさくぶつ著作ちょさくしゃ著作ちょさくけんしゃことわりなくもちいる要請ようせいしょうじることがある。狭義きょうぎ引用いんようは、その要請ようせいたすために用意よういされた著作ちょさくけん制限せいげん無断むだん利用りよう許容きょよう規定きていである。言論げんろん自由じゆう著作ちょさくけん保護ほごとが調和ちょうわするように適切てきせつみとめられるための条件じょうけんさだめられている。

ほう条文じょうぶん[編集へんしゅう]

32じょう引用いんよう
  1. 公表こうひょうされた著作ちょさくぶつは、引用いんようして利用りようすることができる。この場合ばあいにおいて、その引用いんようは、公正こうせい慣行かんこう合致がっちするものであり、かつ、報道ほうどう批評ひひょう研究けんきゅうその引用いんよう目的もくてきじょう正当せいとう範囲はんいないおこなわれるものでなければならない。
  2. くにしくは地方ちほう公共こうきょう団体だんたい機関きかんまた独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん一般いっぱん周知しゅうちさせることを目的もくてきとして作成さくせいし、その著作ちょさく名義めいぎした公表こうひょうする広報こうほう資料しりょう調査ちょうさ統計とうけい資料しりょう報告ほうこくしょそのこれらにるいする著作ちょさくぶつは、説明せつめい材料ざいりょうとして新聞紙しんぶんし雑誌ざっしその刊行かんこうぶつ転載てんさいすることができる。ただし、これを禁止きんしするむね表示ひょうじがある場合ばあいは、このかぎりでない。
47じょう 6翻訳ほんやく翻案ほんあんとうによる利用りよう
  1. つぎ各号かくごうかかげる規定きていにより著作ちょさくぶつ利用りようすることができる場合ばあいには、当該とうがい著作ちょさくぶつについて、当該とうがい規定きていれいにより当該とうがい各号かくごうさだめる方法ほうほうによる利用りようおこなうことができる。
    • いちりゃく
    • 〔……〕だい32じょう〔……〕翻訳ほんやく
    • さんりゃく
48じょう出所しゅっしょ明示めいじ
  1. つぎ各号かくごうかかげる場合ばあいには、当該とうがい各号かくごう規定きていする著作ちょさくぶつ出所しゅっしょを、その複製ふくせいまた利用りよう態様たいようおう合理ごうりてきみとめられる方法ほうほうおよ程度ていどにより、明示めいじしなければならない。
    • いち だい32じょう〔……〕の規定きていにより著作ちょさくぶつ複製ふくせいする場合ばあい
    • りゃく
    • さん だい32じょう規定きていにより著作ちょさくぶつ複製ふくせい以外いがい方法ほうほうにより利用りようする場合ばあい〔……〕において、その出所しゅっしょ明示めいじする慣行かんこうがあるとき。
  2. 前項ぜんこう出所しゅっしょ明示めいじとうたつては、これにともな著作ちょさくしゃめいあきらかになる場合ばあいおよ当該とうがい著作ちょさくぶつ無名むめいのものである場合ばあいのぞき、当該とうがい著作ちょさくぶつにつき表示ひょうじされている著作ちょさくしゃめいしめさなければならない。
  3. だい43じょう規定きていにより著作ちょさくぶつ翻訳ほんやく〔……〕して利用りようする場合ばあいには、ぜんこう規定きていれいにより、その著作ちょさくぶつ出所しゅっしょ明示めいじしなければならない。

要件ようけん[編集へんしゅう]

著作ちょさくけんほうにおいて正当せいとうな「引用いんよう」とみとめられるには、公正こうせい慣行かんこうしたが必要ひつようがある。最高さいこう裁判所さいばんしょ昭和しょうわ55ねん3がつ28にち判決はんけつ[3]によれば、適切てきせつ引用いんようとは「紹介しょうかい参照さんしょう論評ろんぴょうその目的もくてき著作ちょさくぶつちゅう他人たにん著作ちょさくぶつ原則げんそくとして一部いちぶ採録さいろくすること」とされる。

文化庁ぶんかちょうによれば、適切てきせつな「引用いんよう」とみとめられるためには、以下いか要件ようけん必要ひつようとされる。

  • すで公表こうひょうされている著作ちょさくぶつであること
  • イ 「公正こうせい慣行かんこう」に合致がっちすること
  • 報道ほうどう批評ひひょう研究けんきゅうなどの引用いんよう目的もくてきじょう正当せいとう範囲はんいない」であること
  • 引用いんよう部分ぶぶんとそれ以外いがい部分ぶぶんの「主従しゅうじゅう関係かんけい」が明確めいかくであること
  • オ カギ括弧かっこなどにより「引用いんよう部分ぶぶん」が明確めいかくになっていること
  • 引用いんようおこなう「必然ひつぜんせい」があること
  • キ 「出所しゅっしょ明示めいじ」が必要ひつよう(コピー以外いがいはその慣行かんこうがあるとき)
— 文化庁ぶんかちょう (2010)、§8. 著作ちょさくぶつとうの「例外れいがいてき無断むだん利用りよう」ができる場合ばあい ⑧ ア、「引用いんよう」(だい32じょうだい1こう

このうち、出所しゅっしょ明示めいじについては著作ちょさくけんほうだい48じょう規定きていされており、後述こうじゅつする引用いんよう以外いがい合法ごうほう無断むだん利用りようふくめ、共通きょうつう必須ひっす事項じこうである(これをおこたると剽窃ひょうせつとみなされる)。

また、

  • 引用いんようする分量ぶんりょう必要ひつよう最小さいしょう限度げんどおさえなければならない[4]
  • 引用いんようするには目的もくてき必然ひつぜんせい)が必要ひつようであり、それに必要ひつようりょうしか引用いんようしてはならない[5]
  • 質的しつてきにも量的りょうてきにも[ちゅう 4]引用いんようさきが「あるじ」、引用いんよう部分ぶぶんが「したがえ」の関係かんけいになければならない[ちゅう 5]。ただし、ざい高裁こうさい平成へいせい22ねん10がつ13にち鑑定かんてい証書しょうしょカラーコピー事件じけん判決はんけつにおいては主従しゅうじゅう関係かんけい要件ようけんとされていない[7]
  • 引用いんよう独立どくりつしてそれだけの作品さくひんとして使用しようすることはできない。

なお、引用いんよう部分ぶぶん明確めいかくにする方法ほうほうとしては、カギ括弧かっこのほか、段落だんらくえる、参照さんしょう文献ぶんけん一連いちれん番号ばんごうまた参照さんしょう文献ぶんけん著者ちょしゃめいとうもちいた参照さんしょう記号きごう該当がいとう箇所かしょ記載きさいする[8]などの方法ほうほうもある。

引用いんよう」とみとめられず、違法いほう無断むだん転載てんさいとうとされた場合ばあいには、ほうだい119じょう以降いこう罰則ばっそくもとづいて懲役ちょうえき罰金ばっきんしょされる。

引用いんよう以外いがい合法ごうほう無断むだん利用りよう[編集へんしゅう]

  • 行政ぎょうせい機関きかんとう広報こうほう資料しりょうとう
    一般いっぱん周知しゅうちさせることを目的もくてきとした転載てんさい禁止きんしするむね表示ひょうじがない「行政ぎょうせい機関きかんとう名義めいぎした公表こうひょうされた広報こうほう資料しりょうとう」は、出所しゅっしょ明示めいじすれば、行政ぎょうせい機関きかん無断むだん説明せつめい材料ざいりょうとして新聞しんぶん雑誌ざっしなどの刊行かんこうぶつ転載てんさいしてかまわない[9][ちゅう 6]
  • 時事じじ論説ろんせつとう
    学術がくじゅつてき性質せいしつゆうするものでない、政治せいじじょう経済けいざいじょう社会しゃかいじょう時事じじ問題もんだいかんする、転載てんさい放送ほうそう有線ゆうせん放送ほうそう禁止きんしするむね表示ひょうじがない、新聞しんぶんまた雑誌ざっし掲載けいさいして発行はっこうされた論説ろんせつとうも、出所しゅっしょ明示めいじすれば、新聞しんぶんしゃとう無断むだん新聞しんぶんとうへの転載てんさい放送ほうそう有線ゆうせん放送ほうそう放送ほうそう対象たいしょう地域ちいき限定げんていした「入力にゅうりょく」による送信そうしん可能かのうによる放送ほうそう同時どうじさい送信そうしん[ちゅう 7]をしてかまわない[10][ちゅう 6]
  • 公開こうかい演説えんぜつとう
    公開こうかいしておこなわれた政治せいじじょう演説えんぜつ陳述ちんじゅつまた裁判さいばん手続てつづきにおける公開こうかい陳述ちんじゅつも、同一どういつ著作ちょさくしゃのもののみを編集へんしゅうせずに、出所しゅっしょ明示めいじすれば、著作ちょさくしゃ無断むだん転載てんさいとうしてかまわない[11]

以上いじょう3つの合法ごうほうてき無断むだん利用りようにあっては、それぞれの要件ようけん出所しゅっしょ明示めいじまも場合ばあいかぎって、主従しゅうじゅう関係かんけい必然ひつぜんせいなどの引用いんよう要件ようけん考慮こうりょする必要ひつようなく、権利けんりしゃ無断むだん全部ぜんぶ転載てんさいしてもかまわない。

ただし、とく新聞しんぶんとうはたいてい無断むだん転載てんさいきんじているため、ほうだい39じょうもとづいて合法ごうほうてき全部ぜんぶ無断むだん転載てんさいすることは実際じっさいにはむずかしい。よって、ほうだい32じょうだい1こう引用いんよう要件ようけんたしていち部分ぶぶんのみを引用いんようするか、著作ちょさくけん保護ほご対象たいしょうにならない「事実じじつ伝達でんたつにすぎない雑報ざっぽうおよ時事じじ報道ほうどう」(ほうだい10じょうだい2こう)の範囲はんいかぎって転載てんさいするのが、現実げんじつてき合法ごうほうてき手段しゅだんである。

著作ちょさくけん保護ほご対象たいしょうにならないもの[編集へんしゅう]

著作ちょさくけんほうじょう適切てきせつな「引用いんよう」にかんする問題もんだいは、対象たいしょう著作ちょさくけんほうじょう保護ほごされるものであることが前提ぜんていとなるが、以下いかのものについては、著作ちょさくけんほうじょう保護ほご対象たいしょうとならない。

詳細しょうさい著作ちょさくけん侵害しんがい参照さんしょうキャッチコピー著作ちょさくけんについては、どうこう参照さんしょう)。

要約ようやくによる引用いんよう[編集へんしゅう]

引用いんようには、原文げんぶんをそのまま抜粋ばっすいして引用いんようするもの(quotation)と、要約ようやくして引用いんようするものがある。 学界がっかいでは通例つうれい後者こうしゃ要約ようやくによる引用いんようおこなわれる。世間せけんでは要約ようやくによる引用いんようを「参考さんこう」といいかえている事例じれい散見さんけんされるが、参考さんこう著作ちょさくけんほうじょう用語ようごではない。また、自分じぶん言葉ことば要約ようやくしたから引用いんようたらない、ということにはならない。以下いか説明せつめいのとおり注意ちゅういする必要ひつようがある。

要約ようやくによる引用いんようおこなさいは、

  • 内容ないよう同一どういつせいそこなわないこと
字句じく変更へんこうされていても、内容ないよう同一どういつせいたもたれた要約ようやくによる引用いんよう翻案ほんあんであるが、正当せいとう引用いんようのために必要ひつようかぎりにおいて、翻案ほんあんけん[14]同一どういつせい保持ほじけん[15]侵害しんがいすることにはならない。
  • 引用いんよう部分ぶぶん直後ちょくご出典しゅってんしめし、明瞭めいりょう区別くべつせい[3]確保かくほすること
要約ようやくぶん引用いんようしゃ言葉ことばなので、原文げんぶん著作ちょさくしゃ言葉ことばであるとの誤解ごかいけるため、カギ括弧かっこ段落だんらくけではなく、ハーバード方式ほうしきバンクーバー方式ほうしきなどによって引用いんよう部分ぶぶん直後ちょくご出典しゅってんしめ[8]

の2てん注意ちゅうい必要ひつようである。もっとも、学界がっかいでの引用いんようは「言葉ことばく」というよりも「典拠てんきょしめす」という態度たいどなので、同一どういつせいとしては主旨しゅしがあっていればよく、明瞭めいりょう区別くべつせいについては、出典しゅってんしめした箇所かしょ直前ちょくぜんのわかるところに主旨しゅしふくまれていればよい。

なお、要約ようやくによる引用いんようは、正当せいとう範囲はんい主従しゅうじゅう関係かんけい必然ひつぜんせいなどの引用いんよう要件ようけんまもらなければならないてんは、抜粋ばっすいによる引用いんよう同様どうようである。

複製ふくせい要件ようけんけるための変更へんこう[編集へんしゅう]

複製ふくせい要件ようけんけるために、自分じぶん言葉ことばでまとめなおすれいがある。 しかしながら前述ぜんじゅつとおり、字句じくえたところで、出所しゅっしょ明示めいじするなど、引用いんよう要件ようけんまもらなければならないことにわりはない。出所しゅっしょ明示めいじおこたると、日本にっぽんでは50まんえん以下いか罰金ばっきんしょされる(著作ちょさくけんほうだい122じょう)。

また、内容ないようわるほどなおしても、原文げんぶん創作そうさくせいのこっている場合ばあい[ちゅう 8]翻案ほんあんおよ同一どういつせい保持ほじけん侵害しんがいにあたり、著作ちょさくけん侵害しんがいとして10ねん以下いか懲役ちょうえきしくは1000まんえん以下いか罰金ばっきんまた併科へいか)(ほうだい119じょう1こう)、著作ちょさくしゃ人格じんかくけん侵害しんがいとして5ねん以下いか懲役ちょうえきしくは500まんえん以下いか罰金ばっきんまた併科へいか)にしょされる(ほうだい119じょう2こう)うえ、ほうだい114じょう規定きていもとづいて計算けいさんされた損害そんがいがく賠償ばいしょう請求せいきゅうされ、公衆こうしゅう面前めんぜん訂正ていせい謝罪しゃざいをしなければならなくなることさえある(ほうだい115じょう)。

字句じくえて引用いんよう要件ようけんのがれようとするのではなく、出所しゅっしょ明示めいじ正当せいとう範囲はんい主従しゅうじゅう関係かんけい必然ひつぜんせいなど著作ちょさくけんほうさだめる引用いんよう要件ようけんまもって、引用いんようするのが肝要かんようである。

科学かがく論文ろんぶん場合ばあい[編集へんしゅう]

科学かがく分野ぶんや論文ろんぶん場合ばあい引用いんよう他者たしゃ論文ろんぶん文章ぶんしょう一部いちぶをそのままってくることではないことがおおい。ひょうについてはそのようなやりかたであるが、おおくの場合ばあい論文ろんぶん結果けっか結論けつろん記録きろくされた事実じじつ使つかうことをしており、そのままの文章ぶんしょうることはすくない。

科学かがく論文ろんぶん場合ばあい、その論文ろんぶんをその分野ぶんや研究けんきゅうながれのなか位置いちづける必要ひつようがある。そのために先行せんこう研究けんきゅう引用いんようし、それにたいして自分じぶんはどのようなてんあたらしいことをおこなったのかをしめさなければならない。したがって参考さんこう文献ぶんけんからの引用いんよう必須ひっすであり、それは文章ぶんしょううつしではなく、内容ないよう要約ようやく要点ようてんのみをしたかたちりやすい。

したがって、重要じゅうよう内容ないようふく論文ろんぶんは、それが重要じゅうよう基本きほんてきであるほど、おおくの論文ろんぶんから引用いんようされる。ぎゃくえば、その分野ぶんやにおいてあちこちから引用いんようされる文献ぶんけんはそれだけ価値かちたかいものとかんがえることができる。インパクトファクターはこれを利用りようして、雑誌ざっし値打ねうちを数量すうりょうしようとするものである。

イタリアほうにおける著作ちょさくぶつ引用いんよう[編集へんしゅう]

ほう条文じょうぶん[編集へんしゅう]

著作ちょさくけんおよび著作ちょさく隣接りんせつけん保護ほごかんする法律ほうりつ(1941ねん4がつ22にち法律ほうりつだい633ごうだい70じょう規定きていされる[16]

  • 1. 批評ひひょうまたは議論ぎろん目的もくてきとし、または教育きょういく目的もくてきとする著作ちょさくぶつ断片だんぺんまたは部分ぶぶん要約ようやく引用いんようまたは複製ふくせいは、その行為こうい著作ちょさくぶつ経済けいざいてき利用りようけん衝突しょうとつしないことを条件じょうけんとして、その目的もくてきじょう正当せいとうとされる範囲はんいないゆるされる。
  • 2. 学校がっこう利用りようされる詩文しぶんしゅう複製ふくせいは、その複製ふくせいかんする公正こうせい報酬ほうしゅうさだめる方法ほうほうをも規定きていする施行しこうれいさだめる範囲はんいえてはならない。
  • 3. 要約ようやく引用いんようまたは複製ふくせい場合ばあい複製ふくせいされた著作ちょさくぶつ表示ひょうじがなされるときはいつでも、著作ちょさくぶつ題号だいごう著作ちょさくしゃおよび出版しゅっぱんしゃ氏名しめい表示ひょうじ翻訳ほんやく場合ばあいには翻訳ほんやくしゃ氏名しめいつね表示ひょうじされなければならない。
— [16]著作ちょさくけんおよび著作ちょさく隣接りんせつけん保護ほごかんする法律ほうりつ(1941ねん4がつ22にち法律ほうりつだい633ごうだい70じょう

イギリスほうにおける著作ちょさくぶつ引用いんよう[編集へんしゅう]

ほう条文じょうぶん[編集へんしゅう]

英国えいこく著作ちょさくけんほうだい30じょう(1ZA)に規定きていされる[17]

(1ZA)著作ちょさくぶつ著作ちょさくけんは、以下いかのことを条件じょうけんとして、(批評ひひょう論評ろんぴょうその理由りゆうにかかわらず)その著作ちょさくぶつからの引用いんようによる使用しようによって、侵害しんがいされない。

  • (a) その著作ちょさくぶつ公衆こうしゅうたいして利用りよう可能かのうなものとされていること
  • (b) 当該とうがい引用いんようによる使用しようが、その著作ちょさくぶつについて公正こうせい利用りようであること
  • (c) 当該とうがい引用いんよう範囲はんいが、それが使用しようされる特定とくてい目的もくてきによって要求ようきゅうされる以上いじょうのものではないこと、および
  • (d) 当該とうがい引用いんようが、(実際じっさいじょうそのほか理由りゆうのために不可能ふかのうである場合ばあいのぞいて)十分じゅうぶん出所しゅっしょ明示めいじともなうこと。
— [17]英国えいこく著作ちょさくけんほうだい30じょう(1ZA)

関連かんれん用語ようご[編集へんしゅう]

引用いんよう」というかたり前述ぜんじゅつとおり、著作ちょさくけんほう条件じょうけんたしたものにかぎってもちいられることがあり、誤解ごかいまねくおそれがある。これをけるため、つぎのようなかたりもちいることができる。

援用えんよう自分じぶん言説げんせつ裏付うらづけるため、文書ぶんしょとう参考さんこう文献ぶんけんとしてげること一般いっぱんをいう。
転用てんよう閲覧えつらんとうのための文書ぶんしょとうを、雑誌ざっしへの転載てんさい参考さんこう資料しりょうとしての複製ふくせい頒布はんぷ論文ろんぶんへの引用いんよう、パロディ制作せいさく翻案ほんあん)などのべつ用途ようとさい利用りようさい使用しようすること一般いっぱんをいう。

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ citationは参考さんこう文献ぶんけん情報じょうほうげんとしてしめすこと全般ぜんぱんをいい、quotationはそのうち字句じく一切いっさいえずにおこなうものをいう。
  2. ^ 転載てんさいとう」とは、日本にっぽん著作ちょさくけんほうでは「転載てんさいし、また放送ほうそうし、しくは有線ゆうせん放送ほうそうし、しくは当該とうがい放送ほうそう受信じゅしんして同時どうじもっぱ当該とうがい放送ほうそうかか放送ほうそう対象たいしょう地域ちいきにおいて受信じゅしんされることを目的もくてきとして自動じどう公衆こうしゅう送信そうしん送信そうしん可能かのうのうち、公衆こうしゅうようきょうされている電気でんき通信つうしん回線かいせん接続せつぞくしている自動じどう公衆こうしゅう送信そうしん装置そうち情報じょうほう入力にゅうりょくすることによるものをふくむ。)」(だい39じょう)のこと。
  3. ^ 違法いほうなものをふくめて無断むだん引用いんようんできんじる権利けんりしゃもあるが、引用いんよう適法てきほう無断むだん利用りよういち態様たいようのことなので「無断むだん引用いんよう」という言葉ことばはありない (北村きたむら & ゆきまる 2005, p. 5) 。
  4. ^ りょう」については、様々さまざま意見いけん見解けんかいがある:(れい)『Q&A 引用いんよう転載てんさい実務じつむ著作ちょさくけんほう北村きたむら行夫ゆきおゆきまるわれへん 中央経済社ちゅうおうけいざいしゃ 2005ねん ISBN 4-502-92680-9 の pp.177 - 182 「主従しゅうじゅう関係かんけい」の要件ようけんつまずくのはなぜか
  5. ^ なが引用いんようぶんのちぶんとして自身じしんのコメントをすこせるだけでは正当せいとう引用いんようにならない[6]
  6. ^ a b 転載てんさいとう禁止きんしされていても、引用いんよう要件ようけんたせば「引用いんよう」は可能かのうである。
  7. ^ 放送ほうそう有線ゆうせん放送ほうそう・「入力にゅうりょく」による送信そうしん可能かのうによる放送ほうそう同時どうじさい送信そうしん場合ばあいは「受信じゅしんもちいたおおやけ伝達でんたつ」をふくむ。
  8. ^ 普通ふつう、どんなになおしても原文げんぶん創作そうさくせいのこらざるをえない。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 著作ちょさくぶつ自由じゆう使つかえる場合ばあい | 文化庁ぶんかちょう”. www.bunka.go.jp. 2022ねん8がつ23にち閲覧えつらん
  2. ^ パロディ・モンタージュ事件じけん だつゴーマニズム宣言せんげん事件じけん | 弁理べんり法人ほうじん さんえだ国際こくさい特許とっきょ事務所じむしょ[大阪おおさか東京とうきょう SAEGUSA & Partners [Osaka,Tokyo,Japan]]”. www.saegusa-pat.co.jp (2015ねん12月24にち). 2022ねん8がつ23にち閲覧えつらん
  3. ^ a b 詳細しょうさいは「パロディ・モンタージュ写真しゃしん事件じけん」を参照さんしょう最高さいこう裁判所さいばんしょ判例はんれい情報じょうほう) 。この判例はんれい言及げんきゅうしている解説かいせつ意見いけんには、つぎのようなものがある。
    • ろくていばん著作ちょさくけんほう解説かいせつ千野ちのただしくに尾中おちゅうちょいちきょう出版しゅっぱん、2005ねんISBN 4-8348-3620-7、pp.15- 18 写真しゃしん著作ちょさくぶつ
    • 著作ちょさくけんとはなにか』福井ふくい健策けんさくちょ集英社しゅうえいしゃ新書しんしょ、2005ねんISBN 4-08-720294-1、pp.148-153、パロディモンタージュ写真しゃしん事件じけん
    • 『Q&A 引用いんよう転載てんさい実務じつむ著作ちょさくけんほう北村きたむら行夫ゆきおゆきまるわれへん中央経済社ちゅうおうけいざいしゃ、2005ねんISBN 4-502-92680-9、pp.177-182 『主従しゅうじゅう関係かんけい』の要件ようけんつまずくのはなぜか
  4. ^ 文化庁ぶんかちょう著作ちょさくけん (2019ねん). “著作ちょさくけんテキスト 〜はじめてまなひとのために〜” (PDF). 文化庁ぶんかちょう. 文化庁ぶんかちょう. 2022ねん10がつ1にち閲覧えつらん
  5. ^ 福永ふくながまこと適法てきほう引用いんよう著作ちょさくけんほう32じょう1こう)の要件ようけんについて」(PDF)『たていのちかん法政ほうせい論集ろんしゅうだい15ごう立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん法学ほうがく研究けんきゅう、2017ねん、118-153ぺーじ 
  6. ^ 田中たなか靖子やすこ (2016ねん5がつ19にち). “ネオロジー”. なんでものびるWEB. ネオロジー. 2016ねん11月28にち閲覧えつらん
  7. ^ 知的ちてき財産ざいさん高等こうとう裁判所さいばんしょ平成へいせい22ねん10がつ13にち判決はんけつ (PDF, 32KB)  2014ねん8がつ17にち閲覧えつらん。この判例はんれい言及げんきゅうしている解説かいせつ意見いけんには、つぎのようなものがある。
  8. ^ a b 科学かがく技術ぎじゅつ振興しんこう機構きこう (2010, §5.9(a))
  9. ^ 文化庁ぶんかちょう (2010, §8. 著作ちょさくぶつとうの「例外れいがいてき無断むだん利用りよう」ができる場合ばあい ⑧ イ、「行政ぎょうせい広報こうほう資料しりょうとう転載てんさいだい32じょうだい2こう))
  10. ^ 文化庁ぶんかちょう (2010, §8. 著作ちょさくぶつとうの「例外れいがいてき無断むだん利用りよう」ができる場合ばあい ⑧ ウ、「新聞しんぶん論説ろんせつとう転載てんさいだい39じょう))
  11. ^ 文化庁ぶんかちょう (2010, §8. 著作ちょさくぶつとうの「例外れいがいてき無断むだん利用りよう」ができる場合ばあい ⑧ エ、「政治せいじじょう演説えんぜつ」「裁判さいばんでの陳述ちんじゅつ」の利用りようだい40じょうだい1こう))
  12. ^ 名古屋なごや地方裁判所ちほうさいばんしょ判決はんけつ 2000ねん平成へいせい12ねん)10がつ18にち平成へいせい11ねん(ワ)だい5181ごう、『著作ちょさくけん侵害しんがい差止さしどめとう請求せいきゅう事件じけん』。2014ねん8がつ17にち閲覧えつらん
  13. ^ 東京とうきょう地方裁判所ちほうさいばんしょ判決はんけつ 2001ねん平成へいせい13ねん)12月18にち平成へいせい13ねん(ワ)だい14586ごう、『著作ちょさくけん侵害しんがい確認かくにん請求せいきゅう事件じけん』。2014ねん8がつ17にち閲覧えつらん
  14. ^ 日本にっぽんでの判例はんれいは、最高裁判所さいこうさいばんしょだいいちしょう法廷ほうてい判決はんけつ 2001ねん平成へいせい13ねん)6がつ28にち みんしゅうだい55かん4ごう837ぺーじ平成へいせい11ねん(受)だい922ごう、『損害そんがい賠償ばいしょうとう請求せいきゅう事件じけん』。2014ねん8がつ17にち閲覧えつらん
  15. ^ 日本にっぽんでの判例はんれいは、東京とうきょう地方裁判所ちほうさいばんしょ (1998ねん10がつ30にち), “「血液けつえきがた性格せいかく要約ようやく引用いんよう事件じけん, in 日本にっぽんユニ著作ちょさくけんセンター, マスメディアと著作ちょさくけん, 東京とうきょう地裁ちさい 平成へいせい7ねん(ワ)だい6920ごう, http://www.translan.com/jucc/precedent-1998-10-30.html 2009ねん2がつ14にち閲覧えつらん 
  16. ^ a b 条約じょうやく各国かっこく著作ちょさくけんほうにおける関係かんけい規定きていとう”. 公益社こうえきしゃだん法人ほうじん著作ちょさくけん情報じょうほうセンター. 2022ねん12月13にち閲覧えつらん
  17. ^ a b だいしょう 著作ちょさくけんのある著作ちょさくぶつかんしてゆるされる行為こうい”. 公益社こうえきしゃだん法人ほうじん著作ちょさくけん情報じょうほうセンター. 2022ねん12月13にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 科学かがく技術ぎじゅつ振興しんこう機構きこう (2010ねん3がつ) (PDF), 学術がくじゅつ論文ろんぶん構成こうせいとその要素ようそ, 科学かがく技術ぎじゅつ情報じょうほう流通りゅうつう技術ぎじゅつ基準きじゅん(SIST), 08, オリジナルの2011ねん9がつ26にち時点じてんにおけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20110926221950/http://sist-jst.jp/pdf/SIST08_2010.pdf 2011ねん6がつ22にち閲覧えつらん 
  • 北村きたむら, 行夫ゆきお; ゆきまる, われ, eds. (2005ねん), Q&A 引用いんよう転載てんさい実務じつむ著作ちょさくけんほう, 中央経済社ちゅうおうけいざいしゃ, ISBN 4-502-92680-9 
  • 文化庁ぶんかちょう (2011ねん) (PDF), 著作ちょさくけんテキスト~はじめてまなひとのために~平成へいせい23年度ねんど, オリジナルの2011ねん12月11にち時点じてんにおけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20111211174123/http://www.bunka.go.jp/chosakuken/text/pdf/chosaku_text_110602.pdf 2011ねん6がつ22にち閲覧えつらん 

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]