2019年ねん3月がつ9日にち太田おおた昌克まさよしさんの公開こうかい講座こうざを開ひらきました

3月9日にち共同通信社きょうどうつうしんしゃ編集へんしゅう委員いいん太田おおた正克まさかつさんに来きていただき「核かくと日本にっぽんー東京電力とうきょうでんりょく福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつ事故じこから8年ねんー」のタイトルで話はなしをしてもらいました。参加さんか者しゃは62人にんで市内しない以外いがいからの参加さんか者しゃもありました。講演こうえんの内容ないようを以下いかにまとめましたので、お読よみください。

2011年ねん3月がつ11日にち、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいが起おこり東京電力とうきょうでんりょく福島ふくしま第だい一いち原発げんぱつ事故じこが起おこったが、この時とき、日本にっぽん政府せいふは原子げんし炉ろの状態じょうたいや周辺しゅうへん線量せんりょうなどについて詳くわしい情報じょうほうを持もっていなかった。

そのことを知しったアメリカ政府せいふは3月がつ16日にちに核かく特殊とくしゅチームを日本にっぽんに派遣はけん、17日にちから19日にちまで空中くうちゅう測定そくていシステムと呼よばれる航空機こうくうきモニタリング装置そうちを使つかって、福島ふくしま上空じょうくうから線量せんりょうを測定そくていし、原発げんぱつから約やく40キロ圏けんの放射能ほうしゃのう汚染おせんマップを作成さくせいした。そしてこれを17日にち頃ごろに日本にっぽん政府せいふへ提供ていきょうしたのだが、菅かん政権せいけん幹部かんぶが知しったのは20日はつか以降いこうで、一般いっぱんに公開こうかいされたのは23日にちだった。この遅おくれのため無用むようの被曝ひばくをした人ひとが数多かずおおくいる。

この特殊とくしゅチーム派遣はけんに関かんしてアメリカのエネルギえねるぎー省しょう高官こうかんは「在日ざいにち米まい軍ぐんは要員よういんをどこへ派遣はけんするかに心しんを砕くだいている。福島ふくしまの場合ばあいは放射線ほうしゃせん量りょうの実測じっそくは非常ひじょうに重要じゅうようだった。要員よういんをどこへ送おくれば安全あんぜんで何なん時じ間あいだなら活動かつどう可能かのうなのかがわかるから」と言いっている。これは日米にちべい核かく同盟どうめいの実相じっそうというべきだが、日米にちべい核かく同盟どうめいとは何なにかを歴史れきしをたどって振ふり返かえってみる。

米べい軍部ぐんぶは1950年代ねんだい、中米ちゅうべいから核兵器かくへいきを領土りょうど内ないに大量たいりょう配備はいびしたNATO諸国しょこくと同様どうよう、日本にっぽんでも、核兵器かくへいきを配備はいびしてアジアにおける「核かくの傘かさ」の構築こうちくを図はかろうとした。

しかし日本にっぽんは広島ひろしま、長崎ながさきでの被爆ひばく経験けいけんをもち、また1954年ねんにはビキニで漁船ぎょせんが被曝ひばくするということもあって、核かくは全体ぜんたいに持もたないという意識いしきが強つよかった。

日本にっぽんに核かくを持もち込こみ、陸上りくじょうに配備はいび、所蔵しょぞうしようとする米べい軍部ぐんぶの動うごきは1954年ねんに具体ぐたい的てきなものとなるが、日本にっぽんの反核はんかく世論せろんの動向どうこうや保守ほしゅ政権せいけんに与あたえる打撃だげきを憂慮ゆうりょした国務省こくむしょうがあきらめた。

そのかわりにといって良よいだろうが、1945年ねん末まつから55年ねん初頭しょとうにかけて沖縄おきなわ本島ほんとうへの核かく配備はいびが始はじまり、核かく配備はいびは1972年ねんの本土ほんど復帰ふっきまで続つづいた。

極東きょくとうでの核かく戦力せんりょく投射とうしゃ拠点きょてんとして「核かくの傘かさ」の一角いっかくを形成けいせいした沖縄おきなわには、ピーク時じに約やく1200発はつ以上いじょうの核かくが貯蔵ちょぞうされ、極東きょくとう有事ゆうじには三沢みさわ、横田よこた、板付いたづけの各かく米べい軍ぐん基地きちへ搬入はんにゅうし、核かく攻撃こうげきを遂行すいこうする段取だんどりになっていた。こうしたことが、現在げんざいの沖縄おきなわ問題もんだいにつながっていると言いえるだろう。

日本にっぽんへの核持込かくもちこみは断念だんねんせざるを得えなかったが、一方いっぽう、核かくを搭載とうさいしたアメリカの艦船かんせんが日本にっぽんへ寄港きこうするということは常態じょうたい化かされた。

1953年ねん、米べい空軍くうぐん「オリスカニ」が横須賀よこすかに寄港きこうしたが、この船ふねに核かくが搭載とうさいされていたことははっきりしている。「オリスカニ」の寄港きこうは朝鮮半島ちょうせんはんとうにおける共産きょうさん勢力せいりょくの動うごきを抑止よくしし、韓国かんこくを守まもる「核かくの傘かさ」の役割やくわりを担になっているとされた。1973年ねんから横須賀よこすかを母港ぼこうとした空母くうぼミッドウェーも核かくを装備そうびしていた。

空母くうぼだけでなく日本にっぽんに寄港きこうした核かく巡航じゅんこうミサイルも核兵器かくへいきを装備そうびしていたし、1967年ねん以降いこうは日本にっぽんに立たち寄よる海軍かいぐん補給ほきゅう艦船かんせんにも核兵器かくへいきが搭載とうさいされるようになった。

このような冷戦れいせん中ちゅう、頻繁ひんぱんに日本にっぽんに寄港きこうし、日本にっぽん領海りょうかいを通過つうかしていた艦船かんせんは核かくを搭載とうさいした核かく艦船かんせんであり、東ひがしアジア地域ちいきでの「核かくの傘かさ」を構成こうせいする要素ようそだった。しかし日本にっぽんの歴代れきだい保守ほしゅ政権せいけんは「核かくを持もたず、つくらず、持もち込こませず」の「非核ひかく三さん原則げんそく」を国是こくぜとし、核かく艦船かんせんの寄港きこうを断だんじて受うけ入いれないとの政治せいじ姿勢しせいを、表向おもてむき貫つらぬき続つづけた。したがって各かく装備そうびした艦船かんせんが大手おおてを振ふって「非核ひかく」を標榜ひょうぼうする日本にっぽんの領海りょうかい内ないに入はいるには政治せいじ的てきなからくりが必要ひつようだった。それが核かく密約みつやくである。

1960年ねん段階だんかいで日本にっぽん政府せいふは「核かくの『持込もちこみ』つまり『イントロダクション』には艦船かんせん機構きこうなどを通つうじた核かくの一時いちじ立たち寄よりは含ふくまれず、搭載とうさいされた装備そうびの種類しゅるいに関かかわらず艦船かんせんの通過つうか、寄港きこうは事前じぜん協議きょうぎの対象たいしょうではない」とする米べい側がわの解釈かいしゃくを認知にんちしていたことがわかっており、これは日米にちべい間あいだで密約みつやくの形かたちでかわされていたと考かんがえられる。

2010年ねん3月がつ、日米にちべい密約みつやく問題もんだいを調査ちょうさした外務省がいむしょう有識者ゆうしきしゃ委員いいん会かいは、報告ほうこく書しょを岡田おかだ克也かつや外相がいしょうに提出ていしゅつした。この委員いいん会かいは民主党みんしゅとうが政権せいけんをとることになってはじめて設もうけられたものだった。報告ほうこく書しょは「核かく艦船かんせんの寄港きこう容認ようにんに関かんして、60年ねんの安保あんぽ改定かいてい時じ、日本にっぽん側がわが『寄港きこうは持もち込こみにあたらない』との米べい側がわ解釈かいしゃくを認識にんしきしながら、意図いと的てきに明確めいかく化かを回避かいひする暗黙あんもくの合意ごういの萌芽ほうががあった」と分析ぶんせき。また「大平おおひら正芳まさよし外相がいしょうがライシャワー駐ちゅう日にち大使たいしから米べい側がわ解釈かいしゃくを説明せつめいされた63年ねん以降いこう、広義こうぎの密約みつやくが確定かくていしていった」としています。

朝鮮ちょうせん有事ゆうじに米べい軍ぐんが事前じぜん協議きょうぎを経へずに在ざい日米にちべい軍ぐん基地きちを使用しようできるとの合意ごういをめぐっては、安保あんぽ改定かいていに向むけまとめられた「朝鮮ちょうせん議事ぎじ録ろく」の存在そんざいが確認かくにんされた。

沖縄おきなわへの核持込かくもちこみについては関係かんけい文書ぶんしょが佐藤さとう栄作えいさく氏しの自宅じたくから発見はっけんされたが、外務省がいむしょうの関与かんよが確認かくにんできず、文書ぶんしょが私蔵しぞうされて引ひき継つがれていないため「密約みつやくとは言いえない」とされた。しかしこの件けんについて、記者きしゃ会見かいけんした岡田おかだ外相がいしょうは「一般いっぱん常識じょうしきから見みれば密約みつやくとしないわけではない」と語かたっている。

この密約みつやくに見みられる日米にちべい関係かんけいは今いまも続つづいている。しかし今いま、日本にっぽんが東西とうざい冷戦れいせん時代じだいから受うけ入いれてきた「核かくの傘かさ」について、その政策せいさく継承けいしょうの是非ぜひを根本こんぽん的てきかつ包括ほうかつ的てきに検討けんとうしていくことは、日本にっぽん政府せいふにとって喫緊きっきんの課題かだいである。そしてそれは核かく廃絶はいぜつを希求ききゅうする被爆ひばく国こくの人類じんるい史し的てきな使命しめいでもある。

参考さんこう文献ぶんけん「日米にちべい核かく密約みつやくの全貌ぜんぼう」太田おおた昌克まさよし著ちょ・筑摩書房ちくましょぼう