(Translated by https://www.hiragana.jp/)
白杉 眞「重度身体障害者の自立支援における自立生活センターの支援の在り方――自立生活センターにおける権利擁護活動を中心にして」
HOME > 全文ぜんぶん掲載けいさい >

ここをクリックするとページにひらがなのルビがつきます。

 重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんにおける自立じりつ生活せいかつセンターの支援しえんかた
――自立じりつ生活せいかつセンターにおける権利けんり擁護ようご活動かつどう中心ちゅうしんにして

白杉しらすぎ しん立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう)   20090926-27
障害しょうがい学会がっかいだいかい大会たいかい 於:立命館大学りつめいかんだいがく


報告ほうこく要旨ようし
報告ほうこく原稿げんこう

報告ほうこく要旨ようし

自立じりつ生活せいかつセンターは、社会しゃかい障害しょうがいしゃ世界せかいかんがあることをうったえるうん動体どうたいと、「障害しょうがいしゃ専門せんもん障害しょうがいしゃである」という観点かんてんから、従来じゅうらい福祉ふくしからになとなり、さらに必要ひつよう制度せいど開拓かいたくしていく事業じぎょうたいである。しかし、現在げんざいでは事業じぎょうたい中心ちゅうしんとなり、うん動体どうたい弱体じゃくたいしつつある。これでは一般いっぱん事業じぎょうしゃわりがなく、自立じりつ生活せいかつセンターではなくなってしまうというとわたしかんがえる。
  そこでほん報告ほうこくでは、モデルとなっている関西かんさい地区ちくにある2団体だんたいげ、自立じりつ生活せいかつセンターの特徴とくちょうである権利けんり擁護ようご活動かつどう中心ちゅうしんに、実態じったいにあわせた重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんにおける自立じりつ生活せいかつセンターの支援しえんかたについて検討けんとうする。
  わがくににおける自立じりつ生活せいかつ運動うんどうは、1960年代ねんだいの「あおしばかい」による活動かつどうから注目ちゅうもくされるようになった。当時とうじ活動かつどう衝撃しょうげきてきなものであり、障害しょうがいしゃ存在そんざい権利けんり強烈きょうれつ印象いんしょうづけた。それからやく40ねん現在げんざいまで、自立じりつ生活せいかつ運動うんどうひろ市民しみんられるようになり、介助かいじょ保障ほしょう制度せいど措置そちから契約けいやく転換てんかんするひとし徐々じょじょ障害しょうがいしゃ権利けんり獲得かくとくしてきた。このような自立じりつ生活せいかつ運動うんどうにおいて、1980年代ねんだいにアメリカよりつたわった自立じりつ生活せいかつセンターの役割やくわりおおきなものがある。最初さいしょにわがくに自立じりつ生活せいかつセンターを中心ちゅうしんとした自立じりつ生活せいかつ運動うんどう歴史れきしれることで、自立じりつ生活せいかつ運動うんどう社会しゃかいにどのような影響えいきょうあたえたのか考察こうさつする。
  つぎ自立じりつ生活せいかつセンターがおこな自立じりつ支援しえん視野しやれた地域ちいき生活せいかつ支援しえん研究けんきゅうおこなっている北野きたの誠一せいいち理論りろんげ、一方いっぽうではわたし自身じしんかんがえる今後こんごのぞまれる自立じりつ生活せいかつセンター運営うんえい体系たいけいぞうおよ運動うんどう団体だんたいとして権利けんり擁護ようご活動かつどう中心ちゅうしんとした障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんかんする活動かつどうぞう検討けんとう仮説かせつとして提示ていじする。
  以上いじょう仮説かせつをもとに、介助かいじょしゃ派遣はけんサービス事業じぎょう中心ちゅうしんとなっている現状げんじょうがあるなかで、事業じぎょう運動うんどう両面りょうめん比較的ひかくてきバランスをたもちながら、自立じりつ生活せいかつセンターとしての活動かつどうおこなっている2団体だんたい質的しつてき調査ちょうさおこない、それらの特徴とくちょう共通きょうつうてん検討けんとうする。
 それらの実践じっせんれいをもとに今後こんご自立じりつ生活せいかつセンターにもとめられる運営うんえい体系たいけいと、自立じりつ生活せいかつセンターの権利けんり擁護ようご活動かつどう活発かっぱつさせるための方法ほうほう提示ていじする。そして、運動うんどう団体だんたいである自立じりつ生活せいかつセンターが、障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつ必要ひつよう介助かいじょるためにどのような支援しえん必要ひつようかを検討けんとうする。

報告ほうこく原稿げんこう

重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんにおける自立じりつ生活せいかつセンターの支援しえんかた
自立じりつ生活せいかつセンターにおける権利けんり擁護ようご活動かつどう中心ちゅうしんにして―

立命館大学りつめいかんだいがく大学院だいがくいん先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう
公共こうきょう領域りょういき3ねん  白杉しらすぎ しん

はじめに

 自立じりつ生活せいかつセンター(Center for Independent Living 以下いか「CIL」と表記ひょうき)がおこな自立じりつ支援しえんおおくの実績じっせきをあげている。重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつ実現じつげんさせるには、様々さまざま問題もんだいみずからのちからえていかなければならない。自立じりつのためのおや兄弟きょうだいなどの説得せっとく社会しゃかいてき責任せきにんうことの自覚じかく、それら困難こんなんえていくための自己じこ信頼しんらい自信じしん獲得かくとくなど、様々さまざま問題もんだいえていかなければいけない。このようなてんにおいて、ピアカウンセリングや自立じりつ生活せいかつプログラム(Independent Living Program 以下いか「ILP」と表記ひょうき)など、CILがおこなっているプログラムは自立じりつ支援しえんにおいてとても重要じゅうようである。
 しかし、居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょう収益しゅうえき優先ゆうせんとなり自己じこ決定けってい自己じこ実現じつげん尊重そんちょうといった自立じりつ生活せいかつ理念りねん欠落けつらくしてしまっている状況じょうきょう一方いっぽうではられる。障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんほう施行しこうにより、定率ていりつ負担ふたん導入どうにゅうによる自己じこ負担ふたんきん発生はっせい国庫こっこ負担ふたん基準きじゅんがく縮小しゅくしょう福祉ふくしばなれによる介助かいじょしゃ不足ふそくなど、障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつきびしい状況じょうきょうになっており、Nのようにホームヘルプサービス支給しきゅうりょう抑制よくせいするうごき1)も実際じっさい各地かくちこっている。
 本来ほんらい障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつ運動うんどうと、当事とうじしゃによる当事とうじしゃ支援しえん目的もくてきであるはずのCILが収益しゅうえきさい優先ゆうせん自己じこ実現じつげん自己じこ決定けっていかげになっている傾向けいこうがあり、一部いちぶのCILでは不正ふせい行為こういおこなっていたケースもある。近年きんねんでは、居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょう集中しゅうちゅうし、権利けんり擁護ようごふくうん動体どうたいとしての役割やくわり実践じっせんできていなかったり、ピアカウンセリングやILPの実施じっしなど、当事とうじしゃによる支援しえんかたちだけのものになりつつある傾向けいこうにある。このながれは障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんほう施行しこうにより収益しゅうえきさい優先ゆうせん傾向けいこうさら加速かそくしている。
 CILがはいってきた1980年代ねんだいくらべて、障害しょうがいたいする意識いしき変化へんかしてきていることや、障害しょうがいしゃ職員しょくいん健常けんじょうしゃ職員しょくいん関係かんけい変化へんか制度せいど複雑ふくざつなどにより、ぜん判断はんだん障害しょうがいしゃ職員しょくいんおこなえず、居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょうのすべてを健常けんじょうしゃ職員しょくいんおこなっているCILもてきている。こうしたは傾向けいこうは、首都しゅとけん関西かんさいけんなどの都市としくら地方ちほうにおいてよりつよい。このような社会しゃかい環境かんきょう変化へんかにより、CILの性格せいかく変化へんかしてきているとかんがえる。現在げんざい、CILが居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょうなどを中心ちゅうしんとした収益しゅうえきさい優先ゆうせんにする傾向けいこうにあり、CIL自体じたい運営うんえい健常けんじょうしゃ職員しょくいん中心ちゅうしんとなっている状況じょうきょうがある。そこで、さらに弱体じゃくたいしつつある運動うんどうたいとしての機能きのうふたたたかめるために、今後こんごもとめられる運営うんえい体系たいけい検討けんとうする。そして、CILでの権利けんり擁護ようご活動かつどうなど、うん動体どうたい側面そくめんから重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんにおけるCILの支援しえんかたについても検討けんとうする。

ちゅう
1.障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんほう施行しこうともない、Nでは従来じゅうらい支給しきゅうりょう大幅おおはば下回したまわ支給しきゅう決定けっていおこな
た。CILによるはたらきかけにN回答かいとうは、「いのち危険きけんせいかんじられない」とした公式こうしきぶん
しょ平成へいせい18ねん11月22にちづけした。

T.CILの運営うんえい活動かつどう実践じっせんれい

 重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんにおけるうん動体どうたいとしてのCILの支援しえんのありかた検討けんとうするにたり事例じれい重要じゅうようである。とくに地方ちほうにおいては、障害しょうがいしゃ職員しょくいんすうめい運営うんえいしており、健常けんじょうしゃ職員しょくいん居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょうおもっており、その結果けっか権利けんり擁護ようご活動かつどうまでおこなえないCILがすくなくない。しかし、自立じりつ生活せいかつセンターあるる(以下いか、「あるる」と表記ひょうき)においてもすうめい障害しょうがいしゃ職員しょくいんであるが、権利けんり擁護ようご活動かつどうには積極せっきょくてきかかわっている。筆者ひっしゃ自身じしんがあるるとかかわり6ねんになる。それ以前いぜんから親交しんこうのあった地方ちほうのCILでは居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょう中心ちゅうしんとなっており、ピアカウンセリングやILPなどといった自立じりつ支援しえんは、CILではない相談そうだん支援しえん事業じぎょうしょからのさそいによって共催きょうさい研修けんしゅうひら程度ていどであった。また、障害しょうがいしゃ職員しょくいんすくないというてんにおいてもあるると共通きょうつうしており、そのようななか自立じりつ支援しえん権利けんり擁護ようご活動かつどうおこなっているあるるの実践じっせん参考さんこうになる。

1.あるるの実践じっせん
(1).概要がいよう
 あるるでは、「さまざまな活動かつどうをとおして、障害しょうがいしゃ地域ちいき自立じりつ生活せいかつすること、地域ちいき自分じぶんらしくきていくことを応援おうえんしていく。また、ひとり一人ひとりがかけがえのない存在そんざいであることにづき、どんなひと大切たいせつにされる社会しゃかいえていくために、たくさんのひとたちの協力きょうりょくながら、社会しゃかいかってメッセージを発信はっしんしていく。(自立じりつ生活せいかつセンターあるる,2009,p20)」という理念りねんのもと、障害しょうがいしゃ職員しょくいん4めい健常けんじょうしゃ職員しょくいん8めい勤務きんむしている。
居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょうかんしては、「コーディネーターが6にんで、そのなかに○○くんが障害しょうがいしゃ職員しょくいんとしてはいってくれている。居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょう利用りようしゃは25にんいる。アテンダントの利用りようしゃふくめてね。登録とうろく介助かいじょしゃはいま全部ぜんぶで23にんかな。(理事りじちょう証言しょうげん)」おも近隣きんりん大学だいがく学生がくせい介助かいじょしゃがその主力しゅりょくとなっており、卒業そつぎょう常勤じょうきん職員しょくいんとしてあるるに就職しゅうしょくするケースもられ、人材じんざい育成いくせい役割やくわりたしている。
 事業じぎょう内容ないようとしては、ピアカウンセリングとILPによって、あらたな自立じりつ生活せいかつしゃしている。すでに自立じりつ生活せいかつをしている障害しょうがいしゃ自立じりつ目指めざ障害しょうがいしゃにとって気軽きがる相談そうだんできる機関きかん地域ちいきにあることは重要じゅうようである。また、行政ぎょうせいから相談そうだん支援しえん事業じぎょう受託じゅたくしている。自立じりつ生活せいかつ体験たいけんルームも1しつ設置せっちしているが、自立じりつ生活せいかつ体験たいけんのみでなく、ピアカウンセリング研修けんしゅう制度せいど学習がくしゅうかいなど、多目的たもくてきでの使用しようをしている。元々もともと工場こうじょうあと改装かいそうしているため、事務所じむしょ1かいとマンション2かいとのあいだ自立じりつ生活せいかつ体験たいけんルームが設置せっちされている。また、居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょうは、法人ほうじん運営うんえいおおきな収入しゅうにゅうげんとなっている。そして、権利けんり擁護ようご活動かつどうは、CILであるための活動かつどうであり、とくに障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんほうをめぐる運動うんどうでは、地域ちいき自立じりつ生活せいかつ運動うんどう先頭せんとうって運動うんどうげた。
地域ちいきでの活動かつどうとしては、「だれもがみよい社会しゃかい目指めざしながら実際じっさいに、まちをあるいてバリアフリー調査ちょうさをし、車椅子くるまいすなどでも快適かいてき生活せいかつできるまちになるよう発信はっしんしていく活動かつどうおこなっている。(自立じりつ生活せいかつセンターあるる,2008,p20)」現在げんざい、「市内しないのバリアだらけの駅舎えきしゃをめぐり、住民じゅうみんや、大学だいがく有識者ゆうしきしゃらとともにえき改修かいしゅうあん作成さくせいして企業きぎょう行政ぎょうせいにバリアフリーもとめている。(大阪おおさかにちにち新聞しんぶん,2009,p1)」
 その、「外出がいしゅつ不安ふあんひとや、もっとたのしいことがしたいひとたちとの交流こうりゅう企画きかくおこない、そのさい近隣きんりん大学だいがくからボランティアで学生がくせい企画きかく参加さんかしてもらい、交流こうりゅう機会きかいをもっている。また、相談そうだん支援しえん事業じぎょうしょ居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょうしょ職員しょくいんとともに大学だいがくでの講演こうえん活動かつどうおこなっている。(自立じりつ生活せいかつセンターあるる,2009,p2)」

(2)設立せつりつ経緯けいい
 あるるを設立せつりつする契機けいきとなったのは、1996ねんからはじまった市町村しちょうそん障害しょうがいしゃ地域ちいき生活せいかつ支援しえん事業じぎょう現在げんざい相談そうだん支援しえん事業じぎょう)について行政ぎょうせいがCILへの委託いたく前向まえむきにかんがえたことがおおきい。そもそも、行政ぎょうせいがCILへの委託いたくみとめた背景はいけいには、市内しないのCILなど当事とうじしゃ組織そしき統括とうかつする障害しょうがいしゃ完全かんぜん参加さんか平等びょうどうもとめる大阪おおさか連絡れんらくかい以下いか、「さわ大連たいれん」と表記ひょうき)による行政ぎょうせい交渉こうしょうによって実現じつげんした。元々もともと、1996ねん以前いぜんから大阪おおさか頸椎損傷そんしょうしゃ連絡れんらくかいあつまり(以下いか、「けいそんれん」と表記ひょうき)が定期ていきてきひらかれており、「けいそんれんにいた2人ふたりと、時々ときどき、(けいそんれんに)あそびにていたわたしでCILの設立せつりつ目指めざして、自立じりつやCILの理念りねんとかについての勉強べんきょうかいをやっていた。まあ、勉強べんきょうかいといっても図書館としょかんとか、(3にんのうち)だれかのいえとか、ファミレスとかでの勉強べんきょうかいだったけど。(代表だいひょう証言しょうげん)」「それと同時どうじ自分じぶんたちのおもいに賛同さんどうしてくれる仲間なかまあつめて2000ねん設立せつりつ準備じゅんびかい発足ほっそくさせた。○○(現在げんざい、あるる健常けんじょうしゃ職員しょくいん)をさそったのもそのころだったとおもう。その勉強べんきょうかい継続けいぞくしてやって、(勉強べんきょうかい使つかう)レジメの作成さくせい司会しかいやく毎回まいかいまわりでやった。(担当たんとうまわりでおこなった理由りゆうは)運動うんどう会議かいぎなどで、みんなが先頭せんとうつことができるちからをつけるため。(理事りじちょう証言しょうげん)」「市町村しちょうそん障害しょうがいしゃ地域ちいき生活せいかつ支援しえん事業じぎょう受託じゅたく目指めざして、JIL(全国ぜんこく自立じりつ生活せいかつセンター協議きょうぎかい=Japan Council on Independent Living Centers 以下いか、「JIL」と表記ひょうき)やさわ大連たいれんおこな研修けんしゅうかいとか、ピアカン講座こうざやILP講座こうざやリーダー養成ようせい研修けんしゅうなんかにもすこしでもおおくの実績じっせきをつくるためおおくの研修けんしゅう自費じひ参加さんかした。(代表だいひょう証言しょうげん)」2001ねん特定とくてい営利えいり活動かつどう法人ほうじん設立せつりつ、その市内しない主要しゅようえき周辺しゅうへんぜん職員しょくいんでカンパ活動かつどうおこなうことで資金しきんあつめ2002ねん事務所じむしょ設立せつりつ同時どうじ市町村しちょうそん障害しょうがいしゃ地域ちいき生活せいかつ支援しえん事業じぎょう受託じゅたくした。2003ねんには、支援しえん支給しきゅう制度せいど開始かいしともな居宅きょたく介護かいご指定してい事業じぎょうしょ指定してい受託じゅたく、2006ねんには、作業さぎょうしょ設立せつりつ活動かつどうはばひろげている。

(3)あるる運営うんえい体系たいけい
 あるるは、「特定とくてい営利えいり活動かつどう法人ほうじんあるる」を母体ぼたいとして、相談そうだん支援しえん事業じぎょうしょ居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょうしょ作業さぎょうしょの3形態けいたいけて事業じぎょうおこなっており、これらは、いずれもCIL理念りねんもとづく運営うんえいおこなっている。1は「特定とくてい営利えいり活動かつどう法人ほうじんあるる」の運営うんえい体系たいけいである。あるるでは、居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょう担当たんとうしゃ、ピアカウンセリング担当たんとうしゃ、ILP担当たんとうしゃは、それぞれ障害しょうがいしゃ職員しょくいんになっている。権利けんり擁護ようご活動かつどうについては、「特定とくてい営利えいり活動かつどう法人ほうじんあるる」全体ぜんたいおこなっているが、団体だんたいとの窓口まどぐちは、おも理事りじちょうおよ代表だいひょうとなっている。このようにいくつかの担当たんとうつなど、障害しょうがいしゃ職員しょくいん人数にんずうすくないなりの工夫くふううかがえる。障害しょうがいしゃ職員しょくいん人数にんずうすくないが、JILやさわ大連たいれんにとってあるるは、重要じゅうよう役割やくわりたしている。

(4)あるる権利けんり擁護ようご活動かつどう体系たいけい
 この地域ちいきにおける権利けんり擁護ようご活動かつどう全国ぜんこくてきにも特殊とくしゅであり、市内しないのCILや作業さぎょうしょなど、目指めざすものや活動かつどうスタイルが比較的ひかくてきている団体だんたいさわ大連たいれん加盟かめいしており、行政ぎょうせいとの交渉こうしょう集会しゅうかいなどについてはさわ大連たいれんとおしておこなう。行政ぎょうせい交渉こうしょうかんしては、とくに特徴とくちょうてきであり、とし1交渉こうしょう介助かいじょ保障ほしょうから教育きょういく問題もんだい人権じんけん問題もんだい労働ろうどう問題もんだいいたるまで、事前じぜん書類しょるい行政ぎょうせい提出ていしゅつし、その資料しりょうもと交渉こうしょうおこなうものであり、さわ大連たいれんとして団体だんたいおこなう。この交渉こうしょうによる実績じっせきおおきなものがあり、地域ちいき移行いこう目的もくてきとした外出がいしゅつにのみ、ホームヘルパー・ガイドヘルパーを利用りよう可能かのうとした「施設しせつからの地域ちいき移行いこうモデル事業じぎょう」の実施じっしや、市町村しちょうそんではみとめられていない身体しんたい障害しょうがいしゃグループホームがみとめられている。あるるは、こうした権利けんり擁護ようご活動かつどう積極せっきょくてき参加さんかすることで、地域ちいきにおける自立じりつ生活せいかつ運動うんどう先頭せんとうっている。
では、居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょう権利けんり擁護ようご活動かつどうのバランスをどのように調整ちょうせいしているのだろう。あるるではデモなどへの参加さんかさい利用りようしゃ現地げんちまでの往復おうふく交通こうつう事業じぎょうしょからの一部いちぶ負担ふたんで、のこりは自己じこ負担ふたんというかたち参加さんかをしている。しかし、利用りようしゃ全員ぜんいん参加さんかすることはできないため、コーディネーターすうめい事業じぎょうしょ待機たいきであるが、大半たいはん活動かつどう参加さんかすることで権利けんり擁護ようご活動かつどう積極せっきょくてきかかわっている。
 そのにもピアカウンセリングやILPの実施じっし、アテンダントには学生がくせい起用きようして人材じんざい育成いくせいにもつとめるなど、CILとしての役割やくわりたしている。
 大阪おおさかにおけるCILは、1996ねんから開始かいしされた市町村しちょうそん障害しょうがいしゃ地域ちいき生活せいかつ支援しえん事業じぎょう影響えいきょうけ、それ以降いこう、CILが急速きゅうそく設立せつりつされた。市町村しちょうそん障害しょうがいしゃ地域ちいき生活せいかつ支援しえん事業じぎょう開始かいしされるさいさわ大連たいれんによるとの交渉こうしょうで、障害しょうがいしゃ障害しょうがいしゃ実態じったい一番いちばんよく理解りかいしているとして、当事とうじしゃ団体だんたいであるCILへの委託いたく方針ほうしんとして積極せっきょくてき推進すいしんされることとなった。これにより、市内しない各地かくちでCILの設立せつりつ相次あいついだ。運動うんどう団体だんたい各地かくち設立せつりつされたことで、地域ちいき権利けんり擁護ようご活動かつどう全国ぜんこくてき活発かっぱつうごきとなっている。

2.事例じれい検討けんとう
 あるるは、形式けいしきてきのみならず、その関係かんけいせいにおいても障害しょうがいしゃ職員しょくいん主体しゅたいであるというCILの運営うんえい体系たいけい遵守じゅんしゅしている。また、権利けんり擁護ようご活動かつどうについても積極せっきょくてきかかわっており、先進せんしんてきみといえるだろう。
 あるるの特徴とくちょうのひとつは、権利けんり擁護ようご活動かつどう活発かっぱつっているにもかかわらず、障害しょうがいしゃ職員しょくいん人数にんずうすくないことである。しかし、とくに自立じりつ生活せいかつをする障害しょうがいしゃすくない地方ちほうにおいては、それに関係かんけいして、CILではたら障害しょうがいしゃ職員しょくいんすくなく、人数にんずうすくないがために本来ほんらい活動かつどうができないというCILもある。そのてんであるるは、状況じょうきょうとしてはおなじである。また、障害しょうがいしゃ職員しょくいん健常けんじょうしゃ職員しょくいんあいだ当事とうじしゃ主体しゅたい関係かんけいまもられている。これらをふまえて地方ちほう状況じょうきょうかんがえると、あるるのスタイルが現状げんじょうによりちかいモデルであるだろう。
 あるるの実践じっせんでとくに重要じゅうようてんは、だい1にCILの理念りねんについて、職員しょくいん教育きょういく徹底てっていしているてんである。職員しょくいん教育きょういくは、障害しょうがいしゃ職員しょくいん健常けんじょうしゃ職員しょくいん関係かんけいなく、契約けいやく介助かいじょしゃやアテンダントサービス登録とうろく介助かいじょしゃ作業さぎょうしょ利用りようしゃふくむ、CILにかかわるすべてのひとたいして、自立じりつ生活せいかつ運動うんどう歴史れきし障害しょうがいしゃ自立じりつすること・障害しょうがい当事とうじしゃ支援しえんすることの意味いみ、CIL理念りねんいたるまで徹底てっていした教育きょういく重要じゅうようである。
 だい2は、権利けんり擁護ようご活動かつどうかんする活動かつどう場所ばしょ役割やくわり分担ぶんたんがされていることである。あるるはさわ大連たいれん所属しょぞくしており、担当たんとうしゃは、こうした団体だんたい中心ちゅうしんてき役割やくわりになっている。また、JILや障害しょうがいしゃインターナショナル日本にっぽん会議かいぎなどと積極せっきょくてきかかわり活動かつどうしている。このように、障害しょうがいしゃ職員しょくいん積極せっきょくせいとも関係かんけいしており、権利けんり擁護ようご活動かつどうたいする障害しょうがいしゃ職員しょくいんへの動機どうきづけも重要じゅうようとなる。

U.重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんにおけるCILのかた
1.今後こんご、CILにもとめられる運営うんえい体系たいけい活動かつどうぞう
 
 前節ぜんせつげたCILは、理念りねん基本きほんとしながら居宅きょたく介助かいじょ派遣はけん事業じぎょう作業さぎょうしょ運営うんえいしており、その中心ちゅうしん障害しょうがいしゃである。CILのみが権利けんり擁護ようご活動かつどうたずさわっていれば、職員しょくいんあいだ権利けんり擁護ようご活動かつどうたいする温度おんどしょうじることはもちろん、人間にんげん関係かんけい混乱こんらん自立じりつかんする認識にんしき不一致ふいっちから権利けんり擁護ようご活動かつどうはおろか、CILの存続そんぞくにもかかわる事態じたいかんがえられる。事実じじつかくCILがかかえる一番いちばん課題かだいは、職員しょくいんあいだ人間にんげん関係かんけいである。
 「自立じりつ生活せいかつセンターの事業じぎょう内容ないようやプログラム内容ないようると、すべての内容ないようが、入所にゅうしょ施設しせつやグループホームなどではなく、あくまで自立じりつ生活せいかつ前提ぜんていとした支援しえん内容ないようであることがかる。つまり、自立じりつ生活せいかつセンターは、障害しょうがいしゃ地域ちいきみちびくことを前提ぜんていとしている。そして、そのうえでの、介助かいじょ保障ほしょう運動うんどう介助かいじょしゃ派遣はけんサービスの自立じりつ支援しえんプログラムなのである。(西田にしだ恵子けいこ,2003,p289)」
 「障害しょうがいしゃ職員しょくいんのみでなく、健常けんじょうしゃ職員しょくいんにも権利けんり擁護ようご活動かつどうたいする理解りかいふかめてもらうために介助かいじょしゃ面接めんせつをするさいかならずCILの会員かいいんになることを前提ぜんていとし、介助かいじょのみ希望きぼうしているひとことわっている。そして、障害しょうがいしゃ職員しょくいんには、ひと育成いくせいできる素質そしつもとめられる。CIL理念りねんもとづき、障害しょうがいしゃ職員しょくいん健常けんじょうしゃ職員しょくいん育成いくせいし、権利けんり擁護ようご活動かつどうちからつよめることを目的もくてきとしている。(ちょう鈴子すずこ,2004,p39)」
 人材じんざい育成いくせい権利けんり擁護ようご活動かつどう活発かっぱつという意味いみふくめ、一部いちぶ人間にんげんかかわるのではなく、CILが中心ちゅうしんてき役割やくわりとなり、法人ほうじん全体ぜんたいうん動体どうたいとして、権利けんり擁護ようご活動かつどうかかわることが重要じゅうようである。(野口のぐち俊彦としひこ,2003,p42)
 かく事業じぎょう責任せきにんしゃ組織そしきし、CILの運営うんえい体系たいけいもとづいた支援しえん体制たいせい構築こうちくするとなれば、以下いかしめした3のような組織そしきのぞまれる。
 「従来じゅうらい専門せんもんしょくしゃ障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんおこなってきたが、それは健常けんじょうしゃちかづくことが目標もくひょうとされ、障害しょうがいしゃをあくまでも医療いりょうてき可能かのうせいこころみの対象たいしょうとしてとらえる医療いりょうモデルだった。(中略ちゅうりゃく医療いりょうモデルにたいして自立じりつ生活せいかつモデルは、障害しょうがいしゃがわから自分じぶん生活せいかつをつくっていくために必要ひつよう支援しえん開拓かいたくしてきた。(樋口ひぐち恵子けいこ,1999,p6)」「利用りようしゃ不在ふざいのまま専門せんもん主導しゅどうにより支援しえん生活せいかつさまめられていく、専門せんもんによる専門せんもんてき支援しえんをCILは否定ひていしてきた。(村田むらたぶん,2009,p152)」
 このような観点かんてんから、すべての責任せきにんしゃ障害しょうがいしゃ職員しょくいんである。早急そうきゅう対応たいおう要求ようきゅうされる事業じぎょうかんしては、責任せきにんしゃ障害しょうがいしゃ職員しょくいんがコーディネートを健常けんじょうしゃ職員しょくいんゆだね、かく部門ぶもん責任せきにんしゃ障害しょうがいしゃ職員しょくいん配置はいちされる体制たいせいのぞまれる。また、かく部門ぶもん責任せきにんしゃは、必要ひつようおうじて運営うんえい会議かいぎ開催かいさい要求ようきゅうすることで、理事りじちょう代表だいひょう事務じむ局長きょくちょうかく部門ぶもん責任せきにんしゃ参加さんかのもと運営うんえいかんする決定けっていおこなうことがのぞまれる。
 あるるにおいて、運営うんえいかんする会議かいぎ障害しょうがいしゃ職員しょくいん主導しゅどうのもとおこなわれているが、明確めいかく位置いちづけられているわけではない。ここで「運営うんえい会議かいぎ」として位置いちづけることで、運営うんえいかんする重要じゅうよう会議かいぎには、原則げんそくとして障害しょうがいしゃ職員しょくいんしか参加さんかできないという、当事とうじしゃせいさい確認かくにんする意味いみ職員しょくいん教育きょういくにもつながる。
 また、健常けんじょうしゃ職員しょくいん参加さんかするとえない、障害しょうがい当事とうじしゃだからこそけることのできる様々さまざまなやみがある。健常けんじょうしゃでは見落みおとしてしまいがちな、障害しょうがい当事とうじしゃにしかからない視点してんがあり、法人ほうじん全体ぜんたい円滑えんかつ運営うんえいおこなうためにも運営うんえい会議かいぎ重要じゅうようとなる。
 「これまで施設しせつたしてきた機能きのう在宅ざいたく支援しえんられるサポートシステムとして、リハビリテーション機能きのう、ケア機能きのう、アクセスハウジング機能きのう生活せいかつ維持いじ機能きのう分類ぶんるいしている。これらの機能きのうを4つのサービスとしてとらえれば、それらのサービスが地域ちいきなかで、在宅ざいたく生活せいかつする障害しょうがいしゃ提供ていきょうされれば、おおくの施設しせつ障害しょうがいしゃは、地域ちいきで、あたりまえの自立じりつ生活せいかつ可能かのうとなる。(北野きたの誠一せいいち,1993,p237)」
 CILが提供ていきょうするかく事業じぎょうは、自立じりつ生活せいかつ実現じつげんにむけたサービス内容ないようであり、「在宅ざいたくサポートシステム」とリンクする部分ぶぶんおおい。たとえば、アクセスハウジング機能きのうでは、障害しょうがいしゃみやすい住宅じゅうたく確保かくほ重要じゅうようされるが、CILでは、ILPの一環いっかんとして、住宅じゅうたく情報じょうほう提供ていきょうと、本人ほんにん不動産ふどうさんてんをまわりみずからのちから住居じゅうきょ確保かくほするためのプログラムが提供ていきょうされる。また、ケア機能きのうでは、居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょうによって、生活せいかつ身体しんたいてき支援しえんおこなうと同時どうじに、介助かいじょ制度せいど充実じゅうじつ目的もくてきとして権利けんり擁護ようご活動かつどう展開てんかいする。CILの基本きほんてきかんがかたとして、必要ひつよう支援しえん保障ほしょうととのっていれば、どんなに重度じゅうど障害しょうがいしゃでも地域ちいき自立じりつ生活せいかつができ、すべての障害しょうがいしゃがその可能かのうせいをもっているという立場たちばにたつ。
 「人間にんげん生命せいめい維持いじしていくうえで最低限さいていげん必要ひつようとされるいとなみは、排泄はいせつ食物しょくもつ摂取せっしゅといった生理せいりてき欲求よっきゅうたすことである。(中略ちゅうりゃく)ところが、障害しょうがいしゃ介助かいじょがなければ、生理せいりてき欲求よっきゅうすらたせない場合ばあいがある。生理せいりてき欲求よっきゅうたすことは、「健康けんこう文化ぶんかてき最低さいてい限度げんど生活せいかつ」をいとなむにあたって必要ひつようくべからざる前提ぜんてい条件じょうけんひとつである。くには、「健康けんこう文化ぶんかてき最低さいてい限度げんど生活せいかつ」がおくれるようにすることが責務せきむであるから、障害しょうがいしゃ介助かいじょ保障ほしょうする義務ぎむがある。したがって、くに責任せきにんにおいて障害しょうがいしゃ介助かいじょ保障ほしょう確立かくりつしなければならないのである。(横須賀よこすか俊司しゅんじ,1993,p122)」
 よりよい運営うんえいのためCILの運営うんえい体系たいけいとして、理事りじちょう法人ほうじん全体ぜんたい最高さいこう責任せきにんしゃとなり、外部がいぶしゃふくむメンバーで理事りじかい構成こうせいする。つぎ代表だいひょう事務じむ局長きょくちょう法人ほうじんのとりまとめ、会計かいけい業務ぎょうむ担当たんとうする。つぎ居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょう担当たんとうしゃ、ピアカウンセリング担当たんとうしゃ、ILP担当たんとうしゃ権利けんり擁護ようご活動かつどう担当たんとうしゃをおき、かく担当たんとうしゃ理事りじちょう代表だいひょう事務じむ局長きょくちょう運営うんえい会議かいぎなどをおこない、運営うんえいおこなっていく。当事とうじしゃ主体しゅたい理念りねんまもるため、これらメンバーは、障害しょうがいしゃ職員しょくいんである。かく担当たんとうしゃつぎ健常けんじょうしゃコーディネーター、登録とうろく介助かいじょしゃ健常けんじょうしゃ職員しょくいん位置いちし、障害しょうがいしゃ職員しょくいん物理ぶつりてきにできないところを補佐ほさする。
 重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつをするにあたって、「地域ちいききていくのに必要ひつよう自立じりつ生活せいかつ技術ぎじゅつ形成けいせい」と「自立じりつ生活せいかつささえる地域ちいきのサポートシステムづくり」という2つの要素ようそもとめられる。前者ぜんしゃにおける、介助かいじょしゃ介助かいじょ依頼いらいするアテンダントサービスをふくむ、居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょうのコーディネート技術ぎじゅつとう自立じりつ生活せいかつ技術ぎじゅつは、地域ちいきでの社会しゃかい資源しげん使つかいこなせることが必要ひつようとなるが、かく地域ちいきのサポート体制たいせいにおけるしつりょうによってわってくる。
 都市としにおいては、比較的ひかくてき使つかえる社会しゃかい資源しげん充実じゅうじつし、地方ちほうでは使つかえる社会しゃかい資源しげんりょうかぎられており、地方ちほうになるほどその範囲はんいかぎられてくる。介助かいじょ保障ほしょう制度せいど充実じゅうじつをはじめ、社会しゃかい資源しげん充実じゅうじつもとめる権利けんり擁護ようご活動かつどうは、CILをはじめとするうん動体どうたい活躍かつやくするでもあるだろう。各地かくちにおいて自立じりつ生活せいかつ運動うんどう活発かっぱつさせるため、CILが中心ちゅうしんてき役割やくわりになうことがのぞましい。「CILでは、すべてのひと地域ちいきらせて当然とうぜんだとかんがえそれを可能かのうにしていこうとする。そのために当事とうじしゃ主体しゅたいになり、これまでもっぱらサービスのだったがわみずからサービスを提供ていきょうするがわとなる。(尾上おがみ浩二こうじ,2005,p41)」CILが、権利けんり擁護ようご活動かつどう中心ちゅうしんとした自立じりつ支援しえんおこなうにあたりこの理念りねん前提ぜんていとなる。
 しかし、「なに差別さべつであるか、虐待ぎゃくたいがおこった場合ばあいにどんな衝撃しょうげき影響えいきょうがあるのか、そういう場合ばあいにどうしたらいいのか、だれ相談そうだんってくれるのか、社会しゃかいには解決かいけつけてどんな仕組しくみが用意よういされているのかなど、障害しょうがいしゃ職員しょくいんおよ健常けんじょうしゃ職員しょくいん十分じゅうぶん理解りかいをしておかないといけない。(あずま俊裕としひろ,2007,p1-2)」
 では、「実際じっさい自立じりつ支援しえんをおこなうにあたっては、単独たんどくでたたかおうとするのではなく、自分じぶんたちがかくとなりながら地域ちいき全体ぜんたいんでいく。CILないでの人材じんざい不足ふそく地域ちいきちからたかめるチャンスととらえ、地域ちいき資源しげん活用かつようしていくことが重要じゅうようであり、当事とうじしゃ団体だんたい行政ぎょうせい専門せんもん機関きかんなど種別しゅべつえて、ネットワークをつくっていくという姿勢しせいが、地域ちいき全体ぜんたいしつげることにつながる。(樋口ひぐち恵子けいこ,2007,p11-12)」
 重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ環境かんきょうには、おおきく3分野ぶんやけることができる。だい1は、介助かいじょ制度せいど公的こうてき保障ほしょうする行政ぎょうせい機関きかんである。障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんほう施行しこうにより、今後こんご介助かいじょ保障ほしょう不安ふあん指摘してきされているものの、「ヒューマンケア協会きょうかい」が設立せつりつされた1986ねんからくらべると介助かいじょ制度せいど充実じゅうじつしてきている現在げんざいにおいて、自立じりつ生活せいかつおくるにあたり、公的こうてき介助かいじょサービスはなくてはならないものである。また、介助かいじょサービスのみでなく、障害しょうがいしゃ医療いりょう助成じょせい制度せいど装具そうぐ給付きゅうふなどもこれにふくまれる。だい2は、ボランティアによる介助かいじょやCILがおこなうアテンダントサービスなど、インフォーマルな社会しゃかい資源しげんとのむすびつきである。現在げんざい関西かんさい地区ちくにおいて24あいだ介助かいじょ保障ほしょうがされている自治体じちたいは、神戸こうべ西宮にしのみや京都きょうとである。しかし、残念ざんねんながら24あいだ介助かいじょ保障ほしょうされている自治体じちたいきわめて数少かずすくなく、大半たいはん自治体じちたいでは24あいだ介助かいじょ保障ほしょうされていないのが実態じったいである。公的こうてき保障ほしょうされていない部分ぶぶん重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃは、学生がくせいボランティアやアテンダントサービスを利用りようしながら、公的こうてき介助かいじょわせて自立じりつ生活せいかつをしている。とくに学生がくせいボランティアあつめには四苦八苦しくはっくする。毎年まいとし3がつ卒業そつぎょう時期じきである。就職しゅうしょくとうにより介助かいじょローテーションからけた学生がくせいかずだけ、4がつ入学にゅうがく時期じき新入生しんにゅうせい確保かくほしなければならない。介助かいじょしゃ獲得かくとく有無うむ障害しょうがいしゃにとって生死せいし直接ちょくせつ関係かんけいする問題もんだいであり、インフォーマルな社会しゃかい資源しげんとのむすびつきは重要じゅうようとなる。このようなながれは、都市としよりも、公的こうてき介助かいじょ保障ほしょうされにくい現状げんじょうにある地方ちほうほど、このようなむすびつきは重要じゅうようである。だい3は、施設しせつ親元おやもとからはなれて自立じりつ生活せいかつ実現じつげんいたるまでの一連いちれん支援しえん(ピアカウンセリング、ILP、住宅じゅうたく情報じょうほう提供ていきょうなど)や、CILをふく居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょうしょである。
 だい1機関きかんである行政ぎょうせいは、だい2機関きかんのインフォーマルな社会しゃかい資源しげんたいして行事ぎょうじなどの活動かつどう場所ばしょ提供ていきょうし、インフォーマルな社会しゃかい資源しげんは、行政ぎょうせいおこな行事ぎょうじなどを地域ちいき広報こうほうする。インフォーマルな社会しゃかい資源しげんは、だい3期間きかんのCILなど支援しえん機関きかんたいし、登録とうろく介助かいじょしゃやボランティアを提供ていきょうし、CILはかれらの人材じんざい育成いくせいはかる。最後さいごだい1機関きかん行政ぎょうせいは、CILに事業じぎょう委託いたくをし、CILは行政ぎょうせいのチェック機関きかんとして機能きのうする。こうした3しゃ地域ちいき昨日きのうすることで障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんおこなっていく。
 事業じぎょうしゃとしてだけでなく、利用りようしゃ視点してんわせているのがCILの特徴とくちょうであり、両者りょうしゃ視点してんからえてくる制度せいど矛盾むじゅん問題もんだい行政ぎょうせいとう公的こうてき機関きかんはたらきかけることは、CILがうん動体どうたいとして、重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんのひとつであろう。また、作業さぎょうしょ併設へいせつしているCILもおおいことからにちちゅう活動かつどうにもつながる。併設へいせつしていないCILについては、にちちゅう活動かつどう提供ていきょう自立じりつ支援しえんのひとつであろうが、人材じんざい育成いくせいめん考慮こうりょするとCILの協力きょうりょくながらうん動体どうたいのセルフヘルプグループを組織そしきすることも可能かのうであろう。
 以上いじょうのように、行政ぎょうせい機関きかん・インフォーマルな社会しゃかい資源しげん・CILの3しゃ地域ちいき機能きのうすることが重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ適切てきせつ自立じりつ支援しえんとなる。

2.CILの権利けんり擁護ようご活動かつどう中心ちゅうしんとした自立じりつ支援しえんかた
(1)権利けんり擁護ようご活動かつどうにおけるCILの成果せいか

 重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんおこなうにたって、CILの役割やくわりは、重要じゅうようなものとなっている。 CILが導入どうにゅうされた1980年代ねんだい後半こうはんくらべると、その規模きぼおおきくなり、おおくの健常けんじょうしゃ職員しょくいんかかえることで給与きゅうよ保障ほしょうかんがえなければならず、結果けっかとして、収益しゅうえきさい優先ゆうせんとなりがちなのは自然しぜんながれといえるかもしれない。しかし、一般いっぱん居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょうしょではなく、CILであるということをさい認識にんしきする必要ひつようがある。ピアカウンセリングやILPは、障害しょうがい当事とうじしゃでなければできないことであるし、最大さいだい特徴とくちょうともうべき権利けんり擁護ようご活動かつどうによって、利用りようしゃ事業じぎょうしゃ双方そうほう視点してんち、制度せいど矛盾むじゅん問題もんだい指摘してきする運動うんどう団体だんたいである。
重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつをするためには、場合ばあいによっては24あいだ居宅きょたく介護かいご派遣はけんサービスを必要ひつようとする。ぎゃくえば、24あいだ介助かいじょサービスが確保かくほされれば、どんなに重度じゅうど障害しょうがいっていても、地域ちいき自立じりつしてきていけるということである。
 「わがくにでホームヘルプサービスが開始かいしされたのは1963ねんのことである。当時とうじのホームヘルプサービスは、生活せいかつ保護ほご世帯せたい非課税ひかぜい世帯せたいしか対象たいしょうとされておらず、厚生こうせい労働省ろうどうしょうは、自立じりつ生活せいかつをしている重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ地域ちいき存在そんざいすることはかんがえていなかったのだろう。そのため、居宅きょたく介護かいご派遣はけんサービスの国庫こっこ補助ほじょには上限じょうげんがあり、厚生こうせい労働省ろうどうしょうは、1にち4時間じかん以上いじょう介助かいじょ必要ひつよう重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃは、施設しせつ生活せいかつすることを前提ぜんていとしていた。(障害しょうがいしゃ地域ちいき生活せいかつ確立かくりつ実現じつげんもとめる全国ぜんこくだい行動こうどう実行じっこう委員いいんかい,2006,p39)」
 「居宅きょたく介護かいご派遣はけんサービスの国庫こっこ補助ほじょ上限じょうげん撤廃てっぱいさせる活動かつどうは、1970年代ねんだいなかばより徐々じょじょはじまった。1982ねんには、厚生こうせい労働省ろうどうしょう障害しょうがい当事とうじしゃつよ要望ようぼうがあり、市町村しちょうそんたいして、最低さいていでもしゅうに18あいだのホームヘルプサービスを提供ていきょうするよう通達つうたつし、底上そこあげをはかった。しかし、要綱ようこうで18あいだをサービス利用りよう時間じかん上限じょうげん設定せっていする市町村しちょうそん相次あいついだ。そのため、しゅう18時間じかん以上いじょう介助かいじょ必要ひつようとする重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃは、特別とくべつサービスのよい市町村しちょうそんでなければ自立じりつ生活せいかつをすることができない状況じょうきょうとなった。そこで、CILなどの障害しょうがい当事とうじしゃ団体だんたいは、サービスのおくれている地域ちいき重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつをするという実績じっせきをつくった。そして、厚生こうせい労働省ろうどうしょう要望ようぼうすることで、1990ねんくにから自治体じちたいたいし、18あいだ上限じょうげん撤廃てっぱいさせる指導しどうおこなわれた。この上限じょうげん撤廃てっぱい指導しどうしょに、CILを中心ちゅうしんとした障害しょうがい当事とうじしゃ団体だんたいは、個別こべつ自治体じちたいたいして介助かいじょ時間じかんやすように交渉こうしょうかえし、すこしずつ介助かいじょサービス時間じかんやしていった。(中西なかにし正司せいじ,2003,p31)」また、2003ねんには、支援しえん支給しきゅう制度せいど導入どうにゅうたり、当初とうしょ介助かいじょサービス支給しきゅう時間じかん上限じょうげん設定せっていする方向ほうこうくに準備じゅんびすすめていたが、障害しょうがい当事とうじしゃ団体だんたいねばづよ交渉こうしょう反対はんたい運動うんどうによって上限じょうげん設定せってい撤廃てっぱいされた。障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんほうにおいても重度じゅうど障害しょうがいしゃにとって必要ひつよう不可欠ふかけつである長時間ちょうじかん介助かいじょ体系たいけいけずられる方向ほうこうであったが、最終さいしゅうてきには「重度じゅうど訪問ほうもん介護かいご」としてのこされた。また、かく自治体じちたいによる自己じこ負担ふたん軽減けいげんさく独自どくじ実施じっしされている。こうしたうごきもCILが自治体じちたいなどにはたらきかけた成果せいかでもある。このようにCILは、くに自治体じちたい相手あいてつよ交渉こうしょうりょく発揮はっきしてきた。いまだ介助かいじょ保障ほしょう充実じゅうじつうにはほどとおいながらも、徐々じょじょ前進ぜんしんしてきた経緯けいいは、自立じりつ生活せいかつ運動うんどう歴史れきしでもあるだろう。

(2)行政ぎょうせい交渉こうしょうにおいてCIL職員しょくいんつべき基本きほんてき視点してん

 「重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつをするためには、公的こうてき介助かいじょ保障ほしょう制度せいど必要ひつよう不可欠ふかけつであり、必要ひつよう介助かいじょられなければ自立じりつ生活せいかつをすることは不可能ふかのうである。障害しょうがいがあることは個人こじん問題もんだいではなく、くに責任せきにんをもって障害しょうがいしゃ生活せいかつ保障ほしょうするべきであり、介助かいじょ保障ほしょう制度せいど介助かいじょサービスの適切てきせつ支給しきゅう全額ぜんがく国庫こっこ負担ふたんは、障害しょうがい当事とうじしゃ団体だんたい悲願ひがんでもある。(佐藤さとうさとし,2005,p20)」障害しょうがいしゃもまた国民こくみんであり、国民こくみん生活せいかつ保障ほしょうすることはくに義務ぎむである。介助かいじょ保障ほしょうがされていないということは、生活せいかつ保障ほしょうできていないことであり、障害しょうがいしゃ権利けんりまもられていないということである。自分じぶんたちに直接ちょくせつ影響えいきょうしてくる問題もんだいとして、障害しょうがいしゃ権利けんり獲得かくとくするための活動かつどうは、CILの役割やくわりのひとつであるだろう。重度じゅうど障害しょうがいがあっても地域ちいき自立じりつ生活せいかつをしたいというおもいはだれしもいていることであり、その実現じつげんけての支援しえんとして、介助かいじょサービスの適切てきせつ支給しきゅうもとめてきた。たとえば、兵庫ひょうごけん西宮にしのみやのCIL、「メインストリーム協会きょうかい」は、設立せつりつ以降いこう、30めいえる身体しんたい障害しょうがいしゃ施設しせつ親元おやもとから自立じりつ生活せいかつみちびいた。地域ちいきからも介助かいじょ保障ほしょう制度せいどが24あいだ保障ほしょうされている西宮にしのみやうつんで自立じりつ生活せいかつをしており、現在げんざいもメインストリーム協会きょうかいには、全国ぜんこくからすうおおくの相談そうだんせられている。なぜ、西宮にしのみやという特別とくべつ大都市だいとしでもない地域ちいき介助かいじょ制度せいどが24あいだ保障ほしょうされているのかというと、地域ちいき自立じりつ生活せいかつしている障害しょうがいしゃがいるという実態じったいがあるからであり、その実態じったいをつくったのはメインストリーム協会きょうかいというCILであり、これのびかけで市内しない団体だんたい連携れんけいしてつくった「西宮にしのみや介助かいじょ制度せいどをよくするかい」の行政ぎょうせい交渉こうしょうによる結果けっかである。障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつ支援しえんするため、障害しょうがいしゃ権利けんり獲得かくとくするため、CILはいのちって活動かつどうしてきた。

(3)行政ぎょうせい交渉こうしょうにおけるCILの個別こべつ支援しえんかた

 自立じりつ生活せいかつはじめるさい手続てつづきに介助かいじょサービスをけるため市町村しちょうそんへの申請しんせいがある。支援しえん支給しきゅう制度せいどにおいては、自分じぶん介助かいじょ必要ひつようとするときあいだすう市町村しちょうそん担当たんとうしゃもうて、後日ごじつ支給しきゅうりょうとして介助かいじょサービスが利用りようできる時間じかんすうが1ヵ月かげつ単位たんい支給しきゅうされた。しかし、障害しょうがいしゃもう希望きぼうどおりに支給しきゅう決定けっていされるかというと意向いこうはんするケースがおおく、現実げんじつには、市町村しちょうそん財源ざいげん問題もんだい関係かんけいして、適切てきせつ支給しきゅう決定けっていがされない場合ばあいおおい。とくに、施設しせつ親元おやもとからはなれてあいだもない障害しょうがいしゃは、いいかえすという経験けいけんあさいために市町村しちょうそん担当たんとうしゃ提示ていじする支給しきゅうりょう容認ようにんしてしまうケースがおおられた。そのような障害しょうがいしゃ支援しえんするため、CILの障害しょうがいしゃ職員しょくいん同行どうこうして、申請しんせいする障害しょうがいしゃ代弁だいべんして、市町村しちょうそん担当たんとうしゃ提示ていじただすといった交渉こうしょうおこなうこともCILの権利けんり擁護ようご活動かつどうのひとつである。
 重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんにあたりCILは、ピアカウンセリング担当たんとうしゃやILP担当たんとうしゃ居宅きょたく介護かいご派遣はけん事業じぎょう担当たんとうしゃなどが連携れんけいすることを基本きほん組織そしきてき支援しえんおこなうことが重要じゅうようである。障害しょうがいしゃ職員しょくいん人数にんずうかぎりがある関係かんけいじょう権利けんり擁護ようご活動かつどうについては全員ぜんいん担当たんとうしているケースがおおいようである。また、体力たいりょくなどの関係かんけい出勤しゅっきん不定期ふていきもの多忙たぼうにより不在ふざいおおものなど、様々さまざま事情じじょうかかえた障害しょうがいしゃ職員しょくいんがいるなかで、このような実情じつじょう考慮こうりょすると、障害しょうがいしゃ職員しょくいん全員ぜんいんが、現在げんざい介助かいじょ制度せいどをある程度ていど把握はあくし、障害しょうがいしゃ権利けんり擁護ようごができるだけの技術ぎじゅつにつけておくことが必要ひつようである。障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんほう施行しこうにより、介助かいじょサービスをけながら自立じりつ生活せいかつをしている障害しょうがいしゃがとくに影響えいきょうけるといわれる。これらが自立じりつ生活せいかつ弊害へいがいとなることのないよう、CILにおける権利けんり擁護ようご活動かつどう活発かっぱつはさらに重要じゅうようとなる。法人ほうじん全体ぜんたいでのくに地方自治体ちほうじちたいなど、公的こうてき機関きかんへのはたらきかけと同時どうじに、あらたに自立じりつ生活せいかつをする障害しょうがいしゃにおいては、自立じりつ生活せいかつりょくにつけさせるとうといった人材じんざい育成いくせい視点してんつねちつつ、必要ひつよう介助かいじょサービスがえられるよう側面そくめんから支援しえんが、運動うんどう団体だんたいとしてのCILが重度じゅうど身体しんたい障害しょうがいしゃ自立じりつ支援しえんおこなさいに、特色とくしょくせる支援しえんのひとつとなる。

おわりに

これまで、福祉ふくしだった障害しょうがいしゃが、になになるだけでなく、必要ひつようなサービスを行政ぎょうせいなどにうった福祉ふくし開拓かいたくしゃとなり、また、みずからの生活せいかつひょうすことで社会しゃかい意識いしきえてきた。保護ほごあわれみの存在そんざいであったからこそ、行政ぎょうせい機関きかん善意ぜんい団体だんたいから恩恵おんけい慈善じぜんとしての福祉ふくしサービスをけてきた。そのような、恩恵おんけい慈善じぜんとしての福祉ふくしサービスにたいして、正面しょうめんから「NO!」と明確めいかく意思いししめしたのが自立じりつ生活せいかつ運動うんどうである。
 CILの権利けんり擁護ようご活動かつどうは、介助かいじょ保障ほしょう制度せいど充実じゅうじつ障害しょうがいしゃ地域ちいき生活せいかつ確立かくりつ実現じつげんもとめてうったつづけ、くに地方自治体ちほうじちたいなど、行政ぎょうせい機関きかんはたらきかけることで、わがくににおける介助かいじょ保障ほしょう制度せいど拡大かくだいし、障害しょうがいしゃ自立じりつ生活せいかつ実現じつげんさせてきた。支援しえん支給しきゅう制度せいど支給しきゅうりょう上限じょうげん撤回てっかいさせたことや、市町村しちょうそん障害しょうがいしゃ地域ちいき生活せいかつ支援しえん事業じぎょうをCILへの委託いたくみとめさせるといったことは、CILにおける権利けんり擁護ようご活動かつどう実績じっせきであり、とくに、相談そうだん支援しえん事業じぎょう受託じゅたくは、専門せんもん支援しえん機関きかんとしてみとめられたということである。
全国ぜんこくのCILにおいて、その運営うんえいささえており、権利けんり擁護ようご活動かつどう中心ちゅうしんとなっているのは、「ヒューマンケア協会きょうかい設立せつりつ以降いこうおおくの障害しょうがいしゃ先輩せんぱいまたは、「ダスキン障害しょうがいしゃリーダー育成いくせい海外かいがい研修けんしゅう事業じぎょう」によって、みずか海外かいがいわた自立じりつ生活せいかつ理念りねんまなび、わがくにでCILを設立せつりつしていった設立せつりつ当初とうしょからの職員しょくいんである障害しょうがいしゃである。「ダスキン障害しょうがいしゃリーダー育成いくせい海外かいがい研修けんしゅう事業じぎょう」には、個人こじん研修けんしゅう・グループ研修けんしゅうふくめ、毎年まいとし10めいから15めい障害しょうがいしゃ全国ぜんこくからえらばれ、CILの発祥はっしょうであるアメリカや、社会しゃかい保障ほしょう制度せいど世界一せかいいち充実じゅうじつしているといわれるスウェーデンなど、世界せかい各国かっこく研修けんしゅうおこない、研修けんしゅう体験たいけんした内容ないようをもとに、かく分野ぶんや障害しょうがいしゃリーダーとして活躍かつやくしている。対象たいしょうとなるひとには、毎年まいとし「11月30にちにおいてまん35さい未満みまん」という年齢ねんれい制限せいげん設定せっていされており、若者わかもの人材じんざい育成いくせいという意味いみおおきな役割やくわりたしている。しかし、研修けんしゅうから帰国きこくしたわか障害しょうがいしゃかならずしもCILの職員しょくいんとしてたずさわるわけではなく、研究けんきゅうしゃおおやけ官庁かんちょう職員しょくいんなど、様々さまざま分野ぶんやわたっている。よって、障害しょうがいしゃ職員しょくいん健常けんじょうしゃ職員しょくいんともに人材じんざい育成いくせいてん課題かだいがある。こうした全国ぜんこくてきながれは、地方ちほうにおいてとくに顕著けんちょられる。従来じゅうらいわか障害しょうがいしゃ自立じりつさせ、人材じんざい育成いくせいおこなわれていたが、現在げんざい施設しせつからの自立じりつという事情じじょうすこことなりつつある。
 近年きんねん高学歴こうがくれきにより、大学だいがく教育きょういくける障害しょうがいしゃえたことで、人材じんざい発掘はっくつ方向ほうこうvも施設しせつから大学だいがく専門せんもん学校がっこうとう教育きょういく機関きかん変化へんかさせる必要ひつようがあるのではないだろうか。もちろん、現在げんざいにおいても施設しせつ生活せいかつする障害しょうがいしゃ多数たすうおり、従来じゅうらい自立じりつ生活せいかつにむけた支援しえんのなかで育成いくせいする方向ほうこう間違まちがっていないし、重要じゅうよう方向ほうこうであることには間違まちがいでない。その一方いっぽうで、これからは、教育きょういく機関きかんにむけても人材じんざい発掘はっくつをむけることも重要じゅうようとなる。次世代じせだいにな自立じりつ生活せいかつ運動うんどうのリーダーとなる障害しょうがいしゃそだてるため、時代じだいわせた視点してん方向ほうこうせい転換てんかんさせる柔軟じゅうなんさが今後こんご課題かだいとなる。

参考さんこう引用いんよう文献ぶんけん

大阪おおさかにちにち新聞しんぶんしゃ,2009「JR阪和はんわせん杉本すぎもとまち問題もんだいう」.
尾上おがみ浩二こうじ,2005「当事とうじしゃ立場たちばからみた課題かだい展望てんぼう」『総合そうごうリハビリテーション』だい33かん
1がつごう
北野きたの誠一せいいち,1993「自立じりつ生活せいかつをささえる地域ちいきサポートシステム」大熊おおくま由紀子ゆきこ北野きたの誠一せいいちじょう
ふじたけひろへん自立じりつ生活せいかつ思想しそう展望てんぼうミネルみねるァ書房ぁしょぼう
障害しょうがいしゃ地域ちいき生活せいかつ確立かくりつ実現じつげんもとめる全国ぜんこくだい行動こうどう実行じっこう委員いいんかい,2006『地域ちいき生活せいかつあきらめない』.
佐藤さとうさとし,2005「たたかいははじまりにぎない!」DPI日本にっぽん会議かいぎ『われら自身じしんこえ』3がつごう
自立じりつ生活せいかつセンターあるる,2008『あるるはこ』33ごう
自立じりつ生活せいかつセンターあるる,2009『あるるはこ』35ごう
自立じりつ生活せいかつセンターあるる,2009『あるるはこ』36ごう
ちょう鈴子すずこ,2004「沖縄おきなわからの「われら自身じしんこえ」」DPI日本にっぽん会議かいぎ『われら自身じしんこえだい20
まき
中西なかにし正司せいじ上野うえの千鶴子ちづこちょ,2003『当事とうじしゃ主権しゅけん岩波いわなみ新書しんしょ
西田にしだ恵子けいこ,2003『自立じりつ生活せいかつセンターにみるエンパワメント』東洋大学とうようだいがく大学院だいがくいん紀要きようだい40しゅう
野口のぐち俊彦としひこ,2003「自立じりつ生活せいかつセンターと介助かいじょ保障ほしょう運動うんどう」『社会しゃかい福祉ふくし研究けんきゅうだい87ごう
あずま俊裕としひろ,2007「権利けんり擁護ようごとは」全国ぜんこく自立じりつ生活せいかつセンター協議きょうぎかい障害しょうがい当事とうじしゃのための自立じりつせい
   かつセンター権利けんり擁護ようご相談そうだん支援しえん入門にゅうもんハンドブック』.
樋口ひぐち恵子けいこ,2007「相談そうだん体制たいせいもう!」全国ぜんこく自立じりつ生活せいかつセンター協議きょうぎかい障害しょうがい当事とうじしゃのため
自立じりつ生活せいかつセンター権利けんり擁護ようご相談そうだん支援しえん入門にゅうもんハンドブック』.
樋口ひぐち恵子けいこ,1999「自立じりつ生活せいかつセンターとピア・カウンセリング」全国ぜんこく自立じりつ生活せいかつセンター協議きょうぎ
かい『ピア・カウンセリングってなあに?』.
村田むらたぶんちょ,2009『福祉ふくし多元たげんにおける障害しょうがい当事とうじしゃ組織そしき委託いたく関係かんけいミネルみねるァ書房ぁしょぼう
よこ須賀すか俊司しゅんじ,1993「障害しょうがいしゃ介助かいじょ制度せいどていふじたけひろほかへん自立じりつ生活せいかつ思想しそう展望てんぼう』ミネル
ヴァ書房しょぼう

UP:20090624 REV:20090921
障害しょうがい学会がっかいだいかい大会たいかい  ◇自立じりつ自立じりつ生活せいかつ  ◇介護かいご介助かいじょ  ◇Archives
TOP HOME (http://www.arsvi.com)