あなたの知しらないJDKの便利べんりツールたち：安藤あんどう幸さいわい央ひさしのランダウン（43）

標準ひょうじゅんJDKに含ふくまれる便利べんりなツール

　読者どくしゃの皆みなさんは、最近さいきんのJDK（Java SE）に、開発かいはつやデバッグに便利べんりな新あたらしいツールが含ふくまれていることをご存ぞんじでしょうか？ 古ふるくからのJava開発かいはつ者しゃは、古ふるい時代じだいのJDKのツールしか知しらず、一方いっぽうで新あたらしいJava開発かいはつ者しゃはEclipse/NetBeansなどの統合とうごう開発かいはつ環境かんきょうに慣なれてしまい、細こまかなコマンドツールを直じかに使つかう状況じょうきょうが減へってきているかもしれません。

　そこで今回こんかいは、最近さいきんのJava SE 6含ふくめて比較的ひかくてき新あたらしいと思おもわれるツールを以下いかの5種類しゅるいに分わけて紹介しょうかいします。

• プロファイリング
• トラブルシューティング／情報じょうほう取得しゅとく
• 監視かんし
• 配備はいび／補助ほじょ
• スクリプティング

　「こんなツールがJDKに付ついてるなんて知しらなかった！」という新あらたな発見はっけんがあれば幸さいわいです。

図ず1　フォルダ「C:\Program Files\Java\jdk1.6.0_10\bin」にあるファイル（Java SE Development Kit（JDK）6 Update 10をWindows XPにインストールした場合ばあい）

　中なかには正式せいしきなサポート外がいのものも含ふくみますので、ご注意ちゅういください。また、残念ざんねんながら現在げんざいのところWindows環境かんきょうでは利用りようできないツールもあります。

プロファイリング用ようツール

　「VisualVM」は機能きのう拡張かくちょう可能かのうなプロファイラです。起動きどうアプリケーションの概要がいようやヒープの様子ようす、GC（ガベージ・コレクション）の実行じっこう状じょう況きょうなどの細こまかなモニタリング機能きのう、スレッドの状態じょうたい表示ひょうじ、CPU／メモリのプロファイリングといったさまざまな機能きのうを併あわせ持もちます。

visualvm: Home via kwout

　VisualVMから強制きょうせい的てきにGCを実行じっこうし、その際さいの振ふる舞まいを知しることもできます。プロファイリング用途ようとのみならず、実行じっこう時じにどのような状況じょうきょうで動作どうさしているのかを細こまかく知しることのできるツールです。

図ず2　VisualVMの使用しよう例れい

　また、基本きほんとなるプロファイリング機能きのうも充実じゅうじつしていて、どの部分ぶぶんがホットスポット（処理しょり時間じかんがかかるネックの部分ぶぶん）なのかを簡単かんたんに見みつけ出だせます。導入どうにゅうもしやすく平易へいいに使つかえるツールです。

　「Jconsole」は、Java VMの監視かんし用ようツールです。JMX（Java Management Extensions）に対応たいおうし、メモリ利用りよう状じょう況きょうをグラフで表示ひょうじします。ローカルJava VMとリモートJava VMの両方りょうほうに対応たいおうしています。

図ず3　Jconsoleの使用しよう例れい

　新あらたに、スレッド間あいだのデッドロックを検知けんちするための専用せんようボタンが用意よういされ、「オンデマンドアタッチ」機能きのうにより、起動きどう中ちゅうのJava VMの情報じょうほうを見みたいときに見みられるようになりました。

トラブルシューティング・情報じょうほう取得しゅとくのためのツール

　「jinfo」は、「jps」（後述こうじゅつ）によって取得しゅとくされたプロセスIDの構成こうせい情報じょうほうを知しるためのツールです。また、コアダンプファイルを指定していして、Javaシステムプロパティやバージョン情報じょうほう、Java VM起動きどう時じのオプションなどを把握はあくできます。リモートデバッグサーバを利用りようして構成こうせい情報じょうほうを知しることもできます。

　「jhat」は、ヒープダンプファイルを指定していして、ヒープを解析かいせきするためのツールです。hprofオプションや、次つぎに紹介しょうかいする「jmap」が出力しゅつりょくするバイナリファイルを利用りようします。jhatはWebサーバとして動作どうさし、解析かいせき結果けっかをWebブラウザで確認かくにんできます。パフォーマンスチューニングの際さいには、プロファイリングは必須ひっすなので、標準ひょうじゅんのツールだけで詳細しょうさいな情報じょうほうを得えられるのは便利べんりです。

　「jmap」は、指定していしたJava VMのプロセスマップやヒープ情報じょうほう、クラスローダの情報じょうほうを取得しゅとくできます。オプションによる細こまかな指定していで、ヒープサマリーやヒストグラム、ヒープの統計とうけいデータなどを取得しゅとくできます。前述ぜんじゅつのjhatと組くみ合あわせることで効果こうかを発揮はっきします。

　「jsadebugd」は、jps（後述こうじゅつ）で取得しゅとくされたプロセスIDを基もとに、デバッグサーバとして機能きのうするツールです。RMI（Remote Method Invocation）経由けいゆでリモートクライアントからの監視かんし情報じょうほうの問とい合あわせに応答おうとうするデーモンとして機能きのうします。

　「jstack」は、Java VMのスタック情報じょうほうを取得しゅとくできます。具体ぐたい的てきには、クラス名めいやメソッド名めい、バイトコードインデックス、行くだり番号ばんごうが取得しゅとくできます。またWindows であれば、実行じっこう中ちゅうに［Ctrl］＋［Break］キーを押おすと、スレッドダンプするのと同様どうようの情報じょうほうも取得しゅとくできます。

監視かんしツール

　「jps」は、Java VMのプロセスIDをリストアップするツールです。jpsを実行じっこうしたユーザーが権限けんげんを持もつプロセスIDのみが取得しゅとくできます。後述こうじゅつする「jstatd」を起動きどうしたリモートマシンのプロセスIDを得えることもできます。

　「jstat」は、Java VMのGCなどの計測けいそく値ちを表示ひょうじするためのツールです。ヒープメモリの状態じょうたい、クラスローダの統計とうけい情報じょうほう、Permanent領域りょういきの状態じょうたいなどを知しることができます。データの取得しゅとく間隔かんかくを指定していして、GCの効果こうかを調しらべたり、メモリーリークの監視かんしが可能かのうです。

　「jstatd」は、前述ぜんじゅつのjstatのリモート監視かんし用ようのデーモンです。リモートサーバの監視かんしログを残のこしておきたいときに便利べんりに使つかえます。

配備はいび／補助ほじょツール

　「pack200」は、圧縮あっしゅく率りつの高たかいJarファイルを作つくることのできるツールです。通常つうじょうのjarコマンドはzip圧縮あっしゅくでファイル群ぐんを1つにまとめられますが、pack200はgzip圧縮あっしゅくツールをベースとしたより高こう圧縮あっしゅく率りつを誇ほこるJarファイル作成さくせいツールです。jarやzip、gzipについて詳くわしく知しりたい読者どくしゃは、下記かき記事きじを参考さんこうにするといいでしょう。

プログラマーの常識じょうしきをJavaで身みにつける via kwout

　さらに、Jarファイルを作成さくせいする際さいに、デバッグ情報じょうほうを削除さくじょしてよりファイルを小ちいさく圧縮あっしゅくすることもできます。ネットワークで転送てんそうされるJarファイルを少すこしでも小ちいさくしたいときに有効ゆうこうな方法ほうほうです。

　「unpack200」は、先さきほどのpack200の逆ぎゃくを行おこない、高こう圧縮あっしゅくのJarファイルを展開てんかいするためのツールです。pack200で圧縮あっしゅくされたJarファイルを通常つうじょうのJar圧縮あっしゅくファイルに変換へんかんする場合ばあいにも利用りようできます。

　「extcheck」は、現在げんざい使つかわれている拡張かくちょう機能きのう群ぐんのJarファイルと、調しらべたいJarファイルとの競合きょうごうを調査ちょうさできます。競合きょうごうの調査ちょうさとは、新あたらしいJarファイルを利用りようする前まえに、すでに同おなじJarファイルや、新あたらしいバージョンのJarファイルが存在そんざいしないかどうかを調しらべることです。

　すでにJava環境かんきょうがインストールされている環境かんきょうに追加ついかで環境かんきょうを整ととのえる場合ばあいや、Jarファイルが多数たすうある複雑ふくざつな環境かんきょうを把握はあくする際さいに役立やくだつツールです。

スクリプティングツール

　「jrunscript」は、「jrunscript -e "print('hello world')"」という使つかい方かたで、JavaScriptのプログラムを直接ちょくせつ実行じっこうしたり、インタラクティブモードで逐一ちくいちプログラムを実行じっこうできる環境かんきょうです。標準ひょうじゅん環境かんきょうで利用りようできるのはJavaScript（Rhino実装じっそうによるECMAScript）ですが、ほかにもJavaFXなどのスクリプト言語げんごでも利用りようできます。

　また、指定していしたスクリプトファイルを実行じっこうするといったバッチ的てきな利用りよう方法ほうほうも可能かのうです。主おもにサーバサイドで活用かつようすることを想定そうていしていて、Javaとの連携れんけいや簡単かんたんなテストや設定せっていファイルの記述きじゅつ／操作そうさなどに便利べんりに使用しようできます。

トラブルに備そなえ、未知みちのツールを便利べんりなツールに

　本稿ほんこうで紹介しょうかいしたツール群ぐんは、無料むりょうで使つかえるJavaの標準ひょうじゅん的てきなツールです。しかしながら、すべてを熟知じゅくちし、駆使くしして開発かいはつ・デバッグを行おこなっている人ひとは実際じっさいのところ少数しょうすうかもしれません。旧来きゅうらいのツールも便利べんりな新しん機能きのうが増ふえたり、ほかのツールと連携れんけいし効率こうりつよく使つかえるように機能きのう強化きょうかされたものもあります。

　また、例たとえばJava VM用ようのデバッガ「DTrace」のエージェント「dvm」を使つかえば、Java自身じしんの深ふかいところまで詳細しょうさいな動うごきを知しることが可能かのうです。さまざまな情報じょうほうを知しることができる一方いっぽう、プロファイラ系けいのツールは、オーバーヘッドを生しょうじることが多おおく、パフォーマンスチューニングの際さいには、その状況じょうきょうをしっかりと把握はあくして利用りようしなければいけません。DTraceについては、下記かき記事きじを参考さんこうにしてください。

連載れんさい記事きじ 「OpenSolarisで始はじめるブログサーバ構築こうちく」 via kwout

　便利べんりなツールのありがたみが分わかるのは、トラブルが起おこったときです。重要じゅうような局面きょくめんにおいて、ちょっとしたツールを知しっているか知しらないかで、トラブルから抜ぬけ出だせる確かく率りつが大おおきく違ちがってくることでしょう。慣なれた環境かんきょうの中なかで、慣なれたツールを正確せいかくに使つかいこなすのも重要じゅうようですが、日々ひび新あたらしくなっていくツールに親したしむ時間じかんを作つくり、さらなる達人たつじんへの道みちを歩あゆんでいくことをお勧すすめします。

　次回じかいは2009年ねん1月がつ初はじめごろに公開こうかいの予定よていです。内容ないようは未定みていですが、読者どくしゃの皆みなさんの興味きょうみを引ひき、役立やくだつ記事きじにする予定よていです。何なにか取とり上あげてほしい内容ないようなどリクエストがありましたら、編集へんしゅう部ぶや＠ITの掲示板けいじばんまでお知しらせください。次回じかいもどうぞよろしく。

■本稿ほんこう以外いがいのJDKツール紹介しょうかい記事きじ

• javaコマンドを使つかいこなす
• javacコマンドを使つかいこなす
• CORBAの動作どうさを試ためす簡単かんたんな方法ほうほうはありませんか？（idlj、orbd、servertool、tnameservコマンド）
• javapコマンドでクラスファイルを読よむ
• リソースファイルの内容ないようが文字もじ化ばけする場合ばあいには（native2asciiコマンド）

プロフィール

安藤あんどう幸さいわい央ひさし（あんどう ゆきお）

1970年ねん北海道ほっかいどう生うまれ。現在げんざい、株式会社かぶしきがいしゃエクサ マルチメディアソリューションセンター所属しょぞく。フォトリアリスティック3次元じげんコンピュータグラフィックス、リアルタイムグラフィックスやネットワークを利用りようした各種かくしゅ開発かいはつ業務ぎょうむに携たずさわる。コンピュータ自動じどう彩色さいしきシステムや3次元じげんイメージ検索けんさくシステム大だい規模きぼデータ可視かし化かシステム、リアルタイムCG投影とうえいシステム、建築けんちく業界ぎょうかい、エンターテインメント向むけ3次元じげん CG ソフトの開発かいはつ、インターネットベースのコンピュータグラフィックスシステムなどを手掛てがける。また、Java、Web3D、OpenGL、3DCG の情報じょうほう源げんとなるWebページをまとめている。

ホームページ
Java News.jp（Javaに関かんする最新さいしんニュース）

所属しょぞく団体だんたい
OpenGL_Japan (Member)、SIGGRAPH TOKYO (Vice Chairman)

主おもな著書ちょしょ
「VRML 60分ふんガイド」（監訳かんやく、ソフトバンク）
「これがJava だ! インターネットの新あらたな主役しゅやく」（共著きょうちょ、日本経済新聞社にほんけいざいしんぶんしゃ）
「The Java3D API仕様しよう」（監修かんしゅう、アスキー）