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障害学会第12回大会(2015年度)報告要旨 | 松波 めぐみ・照山 絢子・羽田野 真帆
 

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障害しょうがい学会がっかいだい12かい大会たいかい(2015年度ねんど報告ほうこく要旨ようし


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松波まつなみ めぐみ (まつなみ めぐみ) (おおやけざい世界せかい人権じんけん問題もんだい研究けんきゅうセンター
照山てるやま 絢子あやこ (てるやま じゅんこ) 筑波大学つくばだいがく図書館としょかん情報じょうほうメディアけい
羽田野はたの 真帆まほ (はたの まほ) 常葉ときわ大学だいがく健康けんこうプロデュース学部がくぶ

報告ほうこく題目だいもく

障害しょうがいのある教員きょういんかたりからかびがる「合理ごうりてき配慮はいりょ」をめぐる課題かだい

報告ほうこくキーワード

障害しょうがいのある教員きょういん / 学校がっこう教育きょういく現場げんば / 合理ごうりてき配慮はいりょ

報告ほうこく要旨ようし

1. ほん報告ほうこく目的もくてき

 ほん報告ほうこくでは、「障害しょうがいのある教員きょういん」にたいするインタビュー調査ちょうさ分析ぶんせき結果けっか報告ほうこくする。具体ぐたいてきには「合理ごうりてき配慮はいりょ」にかかわるかたりに着目ちゃくもくし、かたりからかびがる、学校がっこう教育きょういく現場げんば内在ないざいする社会しゃかいてき障壁しょうへきや、「合理ごうりてき配慮はいりょ」をめぐる課題かだいあきらかにする。障害しょうがいしゃ差別さべつ解消かいしょうほう施行しこう来年度らいねんどひかえ、「合理ごうりてき配慮はいりょ」をどのようにとらえ、実施じっししていくのかは喫緊きっきん課題かだいである。学校がっこう教育きょういく現場げんば教員きょういんという、職業しょくぎょう特殊とくしゅせい留意りゅういしながら、「合理ごうりてき配慮はいりょ」をめぐる論点ろんてん整理せいりおこなう。

2. 「障害しょうがいのある教員きょういん」をめぐる政策せいさく動向どうこう先行せんこう研究けんきゅう課題かだい

 障害しょうがいしゃ権利けんり条約じょうやくだい24 じょうだいこうでは、「(インクルーシブ教育きょういくかかわる)権利けんり実現じつげん確保かくほ助長じょちょうすることを目的もくてきとして、手話しゅわまた点字てんじについて能力のうりょくゆうする教員きょういん障害しょうがいのある教員きょういんふくむ。)を雇用こよう」することを締約ていやくこくもとめている。日本にっぽん国内こくないでも、1999 ねん教育きょういく職員しょくいん養成ようせい審議しんぎかいだい答申とうしんにおいて「障害しょうがいしゃ受験じゅけんたいする配慮はいりょ」が言及げんきゅうされるとう政策せいさくてきにも障害しょうがいのある教員きょういん採用さいようすすめられてきた。
 しかし、障害しょうがいのある教員きょういん対象たいしょうとした学術がくじゅつ研究けんきゅう非常ひじょうすくなく、中村なかむら(2013, 2014)や西村にしむら(2014)などの先駆せんくてき研究けんきゅうがあるのみである。また日本にっぽん障害しょうがいがくにおける教育きょういく研究けんきゅうそのものがすくないうえ、これまではもっぱら教育きょういく対象たいしょうしゃである「障害しょうがい」に焦点しょうてんがあてられてきた。教育きょういく現場げんばにおけるインクルージョンをかんがえるじょうでも、障害しょうがいのある教員きょういん対象たいしょうとした研究けんきゅう重要じゅうようである。また、海外かいがいではわずかながら先行せんこう研究けんきゅうがあるが(Anderson et al. 1998)そこでも障害しょうがい教員きょういんについての情報じょうほうかぎられていることが指摘してきされており、国際こくさいてき障害しょうがいがく研究けんきゅうという視点してんっても、とく英語えいごけん以外いがいにおける現況げんきょう調査ちょうさ発信はっしんする意味いみおおきい。
 そこで報告ほうこくしゃは、障害しょうがいのある教員きょういん経験けいけんについての基礎きそてきデータを収集しゅうしゅうすることを目的もくてきとして、インタビュー調査ちょうさすすめている。これまでの調査ちょうさつうじて、「障害しょうがいのある教員きょういん」と一口ひとくちってもその経験けいけん非常ひじょう多様たようであることや、これが複数ふくすういの交錯こうさくするテーマであることがかってきた。ほん報告ほうこくでは、「合理ごうりてき配慮はいりょ」という言葉ことば焦点しょうてんをあて、障害しょうがいのある教員きょういんかたりからえてくる学校がっこう教育きょういく現場げんば内在ないざいする社会しゃかいてき障壁しょうへきや、「合理ごうりてき配慮はいりょ」をめぐる課題かだい整理せいりする。
 なおほん研究けんきゅうは、調査ちょうさ先立さきだ常葉ときわ大学だいがく倫理りんり審査しんさ委員いいんかい審査しんさけており、プライバシー保護ほごふく倫理りんりてき側面そくめん十分じゅうぶん配慮はいりょしてすすめられている。

3. 障害しょうがいのある教員きょういんかたりからかびがる「合理ごうりてき配慮はいりょ」をめぐる論点ろんてん

 障害しょうがいのある教員きょういんによる「合理ごうりてき配慮はいりょ」をめぐるかたりのなかからかびがった論点ろんてんは、以下いかの3てん集約しゅうやくされる。
 まず、「合理ごうりてき配慮はいりょ」という言葉ことば障害しょうがいのある教員きょういんにとって既知きち情報じょうほうであるということが、重要じゅうよう知見ちけんである。だが、学校がっこう教育きょういく現場げんばにおいて「合理ごうりてき配慮はいりょ概念がいねんについて的確てきかく理解りかいはまだなく、障害しょうがい教員きょういんかれらの上司じょうし同僚どうりょうとのあいだ温度おんどられる。
 つぎに、「合理ごうりてき配慮はいりょ」という言葉ことばっていても、それを要求ようきゅうするかどうかは、状況じょうきょうそくして判断はんだんされる、ということである。障害しょうがいのある教員きょういんたちは学校がっこう教育きょういく現場げんばの(とき親密しんみつな)人間にんげん関係かんけいなかはたらいており、そこには制度せいどだけではれない現実げんじつ存在そんざいする。職務しょくむじょう困難こんなん自覚じかくしたさいにも、「配慮はいりょ」をもとめることを自粛じしゅくさせうるさまざまな不可視ふかし要因よういん存在そんざいするのである。
 さらに、「合理ごうりてき配慮はいりょ」という言葉ことば普及ふきゅうにより、あらたにしょうじる課題かだいがあることもあきらかになった。たとえば、「合理ごうりてき配慮はいりょ」をもとめることを契機けいきとして、職場しょくばにおける障害しょうがいしゃ存在そんざい意味いみを、教員きょういん自身じしんはじめていることがかった。また、「合理ごうりてき配慮はいりょ」という言葉ことばひとあるきしてしまうことで、一人ひとりひとりのはたらきやすさがそこなわれてしまう可能かのうせい示唆しさされた。複数ふくすう教員きょういんかたったように、かれらは「障害しょうがいしゃ」であると同時どうじに、一人ひとり教員きょういんである。かれらの「障害しょうがい」が殊更ことさらにクローズアップされることは、「教員きょういん」としての側面そくめん背景はいけいしてしまう可能かのうせいもある。「合理ごうりてき配慮はいりょ」とは、障害しょうがいのある教員きょういんはたらうえ直面ちょくめんする社会しゃかいてき障壁しょうへき除去じょきょするための方法ほうほうひとつにぎず、またそれは教員きょういん個人こじんへの支援しえんにとどまらないてんまえる必要ひつようがあろう。
 ほん研究けんきゅうからかびがった「合理ごうりてき配慮はいりょ」をめぐる課題かだいは、学校がっこう教育きょういく現場げんば限定げんていされるものではない。ほん報告ほうこく成果せいかは、障害しょうがいしゃ労働ろうどうにおける「合理ごうりてき配慮はいりょ」を具体ぐたいてきかんがえていくための一助いちじょとなるとかんがえる。

*文献ぶんけん
中村なかむら雅也まさや,2013,『視覚しかく障害しょうがい教師きょうしたちのライフストーリー』立命館大学りつめいかんだいがく先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう博士はかせ予備よび論文ろんぶん公刊こうかん
────,2014,「視覚しかく障害しょうがい教員きょういん労働ろうどう環境かんきょう――有効ゆうこうなサポート体制たいせい構築こうちくけて」『たていのちかん人間にんげん科学かがく研究けんきゅう』30, 1-14.
西村にしむらあいこころざし,2014,『障害しょうがい教師きょうしのナラティブ――現場げんばでのつよみ、困難こんなん観点かんてんから』平成へいせい26年度ねんど鳴門教育大学なるときょういくだいがく修士しゅうし論文ろんぶん公刊こうかん
Anderson, R. et al. 1998. Enhancing Diversity: Educators with Disabilities. Gallaudet University Press.



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