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 障害学会第13回大会(2016年度)報告要旨 | 松波 めぐみ・照山 絢子・羽田野 真帆
 

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障害しょうがい学会がっかいだい13かい大会たいかい(2016年度ねんど報告ほうこく要旨ようし


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松波まつなみ めぐみ(まつなみ めぐみ) 立命館大学りつめいかんだいがく生存せいぞんがく研究けんきゅうセンター
照山てるやま 絢子あやこ(てるやま じゅんこ) 筑波大学つくばだいがく図書館としょかん情報じょうほうメディアけい
羽田野はたの 真帆まほ(はたの まほ) 常葉ときわ大学だいがく健康けんこうプロデュース学部がくぶ

報告ほうこく題目だいもく

教員きょういんという仕事しごとと「合理ごうりてき配慮はいりょ」~障害しょうがいのある教員きょういんかたりから~

報告ほうこくキーワード

障害しょうがいのある教員きょういん社会しゃかいてき障壁しょうへき合理ごうりてき配慮はいりょ

報告ほうこく要旨ようし

1.政策せいさく動向どうこう先行せんこう研究けんきゅう

 「障害しょうがいのある教員きょういん」をめぐる政策せいさくてき動向どうこうとして、障害しょうがいしゃ権利けんり条約じょうやくだい24 じょうだいこうでは、「(インクルーシブ教育きょういくかかわる)権利けんり実現じつげん確保かくほ」を目的もくてきとして、「手話しゅわまた点字てんじについて能力のうりょくゆうする教員きょういん障害しょうがいのある教員きょういんふくむ)」の雇用こよう締約ていやくこくもとめていることがげられる。国内こくないでも障害しょうがいのある教員きょういん採用さいようすすめるうごきは以前いぜんから存在そんざいした。2016ねんがつ障害しょうがいしゃ差別さべつ解消かいしょうほう施行しこう同時どうじ障害しょうがいしゃ雇用こよう促進そくしんほう改正かいせいされ、雇用こようにおける事業じぎょうぬしの「合理ごうりてき配慮はいりょ義務ぎむ」が明示めいじされたことは、このうごきを後押あとおしすると期待きたいされる。
 しかし障害しょうがいのある教員きょういん対象たいしょうとした学術がくじゅつ研究けんきゅう非常ひじょうすくなく、中村なかむら(2013, 2014)や西村にしむら(2014)らの先駆せんくてき研究けんきゅうがあるのみである。

2.調査ちょうさ概要がいよう

 報告ほうこくしゃは2016ねんがつまでにけい15にんの、障害しょうがい種別しゅべつちゅう1)も年齢ねんれいこうしゅ多様たよう教員きょういんにインタビューをおこなってきた。なおほん研究けんきゅうはプライバシー保護ほごつとめ、常葉ときわ大学だいがく倫理りんり審査しんさ委員いいんかい審査しんさけている。インタビュー実施じっしさいには、個人こじんめい学校がっこうめい特定とくていされないようにすること、公表こうひょうにはかなら調査ちょうさ協力きょうりょくしゃ連絡れんらくして同意どういることとう説明せつめいし、同意どういしょをいただいている。

3.ほん報告ほうこく目的もくてき

 昨年さくねん発表はっぴょうにおいては、教員きょういんかたりにおける「合理ごうりてき配慮はいりょ概念がいねんへの言及げんきゅう注目ちゅうもくし、学校がっこう現場げんばにおいてこの概念がいねん理解りかい温度おんどがあることや、「配慮はいりょもとめにくさ」が存在そんざいすることを指摘してきした(松波まつなみ et al. 2015)。今回こんかいとくに、「障害しょうがいのある教員きょういん」が、教育きょういく現場げんばにおいて自身じしんをどう位置付いちづけ、どのような社会しゃかいてき障壁しょうへき直面ちょくめんし、それにどのように対処たいしょしてきたかに注目ちゅうもくする。かならずしも「合理ごうりてき配慮はいりょ」と意識いしきせずに、個々ここ教員きょういんおこなってきた主体しゅたいてき工夫くふう実践じっせん経験けいけんにこそ重要じゅうようなヒントがあるとかんがえるためである。教員きょういん個人こじん主導しゅどうけんをもって社会しゃかい環境かんきょう変更へんこう可能かのう教室きょうしつ空間くうかんにおいては「社会しゃかいてき障壁しょうへき」が消失しょうしつするような経験けいけんかたられており、そこには教員きょういんという仕事しごとならではの特徴とくちょうがみられる。またこうした工夫くふうおこなってもなお解消かいしょうむずかしかった「社会しゃかいてき障壁しょうへき」をなにかをあきらかにすることにより、「合理ごうりてき配慮はいりょ」という言説げんせつ資源しげんたす役割やくわりをもあきらかになるのではないか。
 先述せんじゅつとおり2016ねんがつより障害しょうがいしゃ差別さべつ解消かいしょうほう施行しこうされ、「障害しょうがいしゃ)にどのような合理ごうりてき配慮はいりょ必要ひつようか」がしばしばろんじられるようになった。「合理ごうりてき配慮はいりょ」という概念がいねん元来がんらい、「障害しょうがい社会しゃかいモデル」をベースに、個別こべつ場面ばめんしょうじている社会しゃかいてき障壁しょうへきのぞくために、当事とうじしゃからの意思いし表明ひょうめい契機けいきとして、環境かんきょう変更へんこう調整ちょうせいおこなうものである。ところがこの概念がいねん障害しょうがいしゃ)への「個別こべつ支援しえん」や「おもいやり」に矮小わいしょうして解釈かいしゃくする傾向けいこうひろくみられる。職場しょくばとしての学校がっこう環境かんきょうに「慣行かんこう」をふく社会しゃかいてき障壁しょうへき内在ないざいし、変革へんかく必要ひつようであるとの観点かんてんとぼしいままである。ほん報告ほうこくでは、教員きょういんかたりをもとに社会しゃかいてき障壁しょうへき実態じったいについて一定いっていのパターンれいこう種別しゅべつ)をもこころみたい。 障害しょうがいしゃ差別さべつ解消かいしょうほうがスタートしてあいだもない現在げんざいほう理念りねん目的もくてき正確せいかくにとらえ、「合理ごうりてき配慮はいりょ」についての共通きょうつう理解りかい形成けいせいしていく必要ひつようがある。ほん報告ほうこくでは、教員きょういんという職業しょくぎょう独自どくじの「社会しゃかいてき障壁しょうへき」のありようと、「合理ごうりてき配慮はいりょ」をめぐる課題かだい整理せいりしたい。
 付言ふげんすると、学校がっこう職場しょくばであると同時どうじ教育きょういく機関きかんであるからこそ、障害しょうがいのある教員きょういん学校がっこう環境かんきょう変容へんようさせていくことが、労働ろうどう環境かんきょう平等びょうどう確保かくほするにとどまらない、社会しゃかい変革へんかく可能かのうせいゆうしている。ほん報告ほうこくでは、「障害しょうがいのある教員きょういん」がもつこうしたふくあいてき特質とくしつをもえがしたいとかんがえている。

[ちゅう]
(1)インタビュー対象たいしょうしゃには、視覚しかく障害しょうがい聴覚ちょうかく障害しょうがい肢体したい不自由ふじゆう教員きょういんのほかに、トランスジェンダー(せい同一どういつせい障害しょうがい)である教員きょういんなど、障害しょうがいしゃ手帳てちょう保持ほじしないもの法律ほうりつじょう障害しょうがいしゃ」とみなされないものふくまれている。便宜上べんぎじょう、「障害しょうがいのある教員きょういん」というかたりもちいるが、教員きょういん自身じしん認識にんしきもさまざまである。

文献ぶんけん
松波まつなみめぐみ・照山てるやま絢子あやこ羽田野はたの真帆まほ,2015,「障害しょうがいのある教員きょういんかたりからかびがる「合理ごうりてき配慮はいりょ」をめぐる課題かだい」(だい12かい障害しょうがい学会がっかい報告ほうこく要旨ようし
http://www.jsds.org/jsds2015/jsds12_presentation/jsds12_presentation01_04.html
中村なかむら雅也まさや,2013,『視覚しかく障害しょうがい教師きょうしたちのライフストーリー』立命館大学りつめいかんだいがく先端せんたん総合そうごう学術がくじゅつ研究けんきゅう博士はかせ予備よび論文ろんぶん公刊こうかん
――――,2014,「視覚しかく障害しょうがい教員きょういん労働ろうどう環境かんきょう――有効ゆうこうなサポート体制たいせい構築こうちくけて」『たていのちかん人間にんげん科学かがく研究けんきゅう』30, 1-14.
西村にしむらあいこころざし,2014,『障害しょうがい教師きょうしのナラティブ――現場げんばでのつよみ、困難こんなん観点かんてんから』平成へいせい26年度ねんど鳴門教育大学なるときょういくだいがく修士しゅうし論文ろんぶん公刊こうかん



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