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三好みよし 正彦まさひこ（みよし まさひこ） 大阪女子短期大学おおさかじょしたんきだいがく

■報告ほうこく題目だいもく

オルタナティブスクールにおけるグレーゾーン・発達はったつ障害しょうがいのある子こどもの処遇しょぐうに関かんする考察こうさつ

■報告ほうこくキーワード

障害しょうがいのある子こども、オルタナティブスクール・グレーゾーンの子こども

■報告ほうこく要旨ようし

　本ほん研究けんきゅうでは、オルタナティブスクールにおける発達はったつ障害しょうがいのある子こども・グレーゾーンの子こどもの処遇しょぐうに関かんして探究たんきゅうすることになる。その際さいに「子こどもの医療いりょう化か現象げんしょう」を視点してんとしている。医療いりょう化か現象げんしょうは、木村きむら（2015）が指摘してきするように、イヴァン・イリッチやアーヴィング・ケネス・ゾラが「生活せいかつの医療いりょう化か」を危惧きぐし、医療いりょうを社会しゃかい統制とうせいの一ひとつとして用もちいることで、医療いりょうによる監視かんしを増大ぞうだいさせ、患者かんじゃの能力のうりょくと自律じりつ性せいを減少げんしょうさせることを批判ひはんしてきた。
　本ほん研究けんきゅうでは、グレーゾーンや発達はったつ障害しょうがいのある子こどもたちの行為こういをどのようにスタッフたちが認識にんしきし、処遇しょぐうを決定けっていしているかというプロセスをコンラッドとシュナイダーの提示ていじした「医療いりょう化か」の枠組わくぐみで捉とらえる。そして、オルタナティブスクール特有とくゆうの実践じっせんにみられる諸しょ問題もんだいや課題かだい、その背景はいけいについて検討けんとうする。
　一般いっぱんの学校がっこうという場ばとは異ことなるオルタナティブスクールに在籍ざいせきする子こどもたちは少すくなからず、通常つうじょうの子こどもたちが歩あゆむコースから“逸脱いつだつ”しているように認識にんしきされる（永田ながた）。故ゆえに、そこに通かよう子こどもたちを受うけ入いれる学校がっこう（スタッフ）の懐ふところは深ふかいというイメージもまた一般いっぱん的てきであろう。
　しかし、実際じっさいにはスタッフ（学校がっこう）と子こどもたちは、互たがいの利害りがいをぶつけ合あいながら日々ひびの生活せいかつが展開てんかいされている。それは学校がっこうの理念りねんを実現じつげんさせたいスタッフと、自身じしんの「やりたいこと」の実現じつげんを目指めざす子こどもとのコンフリクトがここかしこで生しょうじていたのである。そして、このコンフリクトに対応たいおうする様々さまざまな対処たいしょにおいて、しばしば「気きになる子こ」「発達はったつ障害しょうがい」「グレーゾーン」というキーワードのもと、「特別とくべつな対応たいおう」の必要ひつよう性せいの声こえが聞きこえる。その際さい、どのような子こどもがこのカテゴリーに振ふり分わけれているのか、また問題もんだい行動こうどうはどのように決定けっていされているのか、このプロセスを明あきらかにする。
　木村きむらはコンラッドとシュナイダーが事例じれい研究けんきゅうに基もとづいて、逸脱いつだつ認定にんていのプロセスに政治せいじ性せいが介在かいざいしていることを指摘してきし、定義ていぎや認定にんていの社会しゃかい的てき構築こうちく性せいやそれらを取とり巻まく集団しゅうだんの活動かつどう、統制とうせい機関きかんの利害りがい関係かんけいを明あきらかにしたと述のべている。本稿ほんこうでは、コンラッドとシュナイダーの「逸脱いつだつの医療いりょう化か理論りろん」の枠組わくぐみを手掛てがかりに、スタッフの証言しょうげんを基もとに、オルタナティブスクールという一般いっぱんの学校がっこうと異ことなる場ばで、どのような行為こういが逸脱いつだつとみなされ、そしてどのような子こどもたちが特別とくべつな支援しえんが必要ひつようであるとされるのか、を明あきらかにする。そして、これらの決定けっていにどのような背景はいけい、利害りがい、が存在そんざいしているのか、オルタナティブスクール特有とくゆうの要素ようそが深ふかく関かかわっていることを示しめし、課題かだいを提示ていじすることができるだろうと考かんがえる。
　研究けんきゅう方法ほうほうに関かんしては、非ひ参与さんよ的てき観察かんさつとインタビュー調査ちょうさを用もちいた。筆者ひっしゃは、2013年ねん9月がつより、月つきに一いち回かい程度ていど（月つきによっては集中しゅうちゅう的てきに）学校がっこうに通かよい、朝あさの時間割じかんわり開始かいしの9時じから15時じごろまで観察かんさつを行おこなっている。観察かんさつに関かんしては、時ときには朝ちょうや帰がえりのミーティングに参加さんかすることもあるが、基本きほん的てきには非ひ参与さんよ的てきな観察かんさつを行おこなっている。データの記録きろくに関かんしては、佐藤さとう（1992）のフィールドノートを参考さんこうにした。また、話はなし合あいの場ばや発表はっぴょうの場ばについては音声おんせいを録音ろくおんし、逐語ちくご的てきに整理せいりしたものを分析ぶんせきに利用りようした。インタビュー調査ちょうさに関かんしては、半はん構造こうぞう化かインタビューを用もちいて行おこない、対象たいしょう者しゃの許可きょかを取とった上うえで音声おんせいを記録きろくし、逐語ちくご的てきに整理せいりした。
　研究けんきゅうの対象たいしょうとなったのは、NPO法人ほうじん箕面みのおこどもの森もり学園がくえんである。箕面みのおこどもの森もり学園がくえんは、2004年ねん4月がつに大阪おおさか府ふ箕面みのお市しで「わくわく子こども学校がっこう」としてスタートしている。『こんな学校がっこうあったらいいな』（2013）によれば、「この学校がっこうは、子こどもの生活せいかつの中なかから生うまれる興味きょうみ関心かんしんを大切たいせつにし、子こどもの主体性しゅたいせいや自立じりつ性せいを育そだてる学校がっこうが日本にっぽんにあってほしいと願ねがう市民しみんらが集たかってつくったもの」とある。教育きょういく方針ほうしんとしては、「既存きそんの一斉いっせい授業じゅぎょう・教科書きょうかしょ中心ちゅうしんのやり方かたではなく、子こどもの個性こせいを尊重そんちょうし、生活せいかつ体験たいけんを大切たいせつにし、一人ひとりひとりの子こどものニーズに合あった学習がくしゅうを支援しえんする教育きょういく方法ほうほうを模索もさくしてきました」とあるように、何なにより子こどもが学まなびの中心ちゅうしんであることを軸じくに実践じっせんを行おこなっている。
　2015年ねん11月がつ現在げんざい、在籍ざいせき者しゃ数すうは小学しょうがく部ぶ22名めい（低てい学年がくねん11名めい・高学年こうがくねん11名めい）中学ちゅうがく部ぶ7名めいである。スタッフは、学園がくえん長ちょうに校長こうちょう、常勤じょうきんスタッフ4名めい、専任せんにんスタッフが2名めい、非常勤ひじょうきんスタッフ4名めい、ほかに学習がくしゅうサポーターや外部がいぶ講師こうしなど多様たような人材じんざいで構成こうせいされている。
　本ほん研究けんきゅうは、調査ちょうさ対象たいしょう者しゃのプライバシーの保護ほごと人権じんけんの尊重そんちょうに最大限さいだいげん留意りゅういし、インタビューイーおよびインタビューに登場とうじょうする人物じんぶつの名前なまえはアルファベットで記載きさいし、本人ほんにんと特定とくていできないように配慮はいりょする。さらに、調査ちょうさ協力きょうりょく者しゃによる発表はっぴょう資料しりょうのチェックを受うけた上うえで、発表はっぴょうを行おこなうことになっている。

引用いんよう文献ぶんけん
木村きむら佑子ゆうこ、2015、『発達はったつ障害しょうがい支援しえんの社会しゃかい学がく: 医療いりょう化かと実践じっせん家かの解釈かいしゃく』東あずま信しん堂どう。
Kitsuse,J.I・Spector,M.B，1977，Constructing Social Problems，Menlo Park, CA: Cummings, （1990、 村上むらかみ直之なおゆき，中河なかがわ伸しん俊しゅん、鮎川あいかわ潤じゅん、森もり俊しゅん太たい訳やく『社会しゃかい問題もんだいの構築こうちく─ラベリング理論りろんをこえて』マルジュ社しゃ。）
永田ながた佳之よしゆき、2005、『オルタナティブ教育きょういく‐国際こくさい比較ひかくに見みる21世紀せいきの学校がっこうづくり』新しん評論ひょうろん。
佐藤さとう郁いく哉、1992、『フィールドワーク　書しょを持もって町まちへ出でよう』新しん曜社。
辻つじ正ただし矩のり・藤田ふじた美保みほ・守安もりやすあゆみ・中尾なかお有里あり、2013、『こんな学校がっこうあったらいいな　小ちいさな学校がっこうの大おおきな挑戦ちょうせん』築地つきじ書しょ館かん。

障害しょうがい学会がっかい第だい13回かい大会たいかい（2016年度ねんど）