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障害学会第13回大会(2016年度)報告要旨 | 石岡 亜希子
 

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障害しょうがい学会がっかいだい13かい大会たいかい(2016年度ねんど報告ほうこく要旨ようし


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石岡いしおか 亜希子あきこ(いしおか あきこ) 早稲田大学わせだだいがく大学院だいがくいんアジア太平洋たいへいよう研究けんきゅう

報告ほうこく題目だいもく

中国ちゅうごくにおける精神せいしん障害しょうがいしゃ造形ぞうけい活動かつどう―マスメディアの言説げんせつ着目ちゃくもくして

報告ほうこくキーワード

マスメディア/精神せいしん障害しょうがいしゃ/造形ぞうけい活動かつどう

報告ほうこく要旨ようし

 ほん報告ほうこくはマスメディアの言説げんせつから、中国ちゅうごく精神せいしん障害しょうがいしゃによる造形ぞうけい[1]活動かつどう実態じったい意義いぎ表象ひょうしょう社会しゃかいがくてき研究けんきゅうである。「中国ちゅうごくアール・ブリュット[2]ちち」としょうされる N の G 場所ばしょ名前なまえ[3]対象たいしょうしゃ[4]体制たいせい人員じんいんとうえながら、10年間ねんかんわたって活動かつどうつづけてき た。かれはその活動かつどうをアートの文脈ぶんみゃくかたったり、セラピーの文脈ぶんみゃくかたるばかりでなく、とき精神せいしん障害しょうがいかかえる実兄じっけい言及げんきゅうすることさえある。
 中国ちゅうごく造形ぞうけい活動かつどうかんする記事きじ大半たいはんは、G かれ代表だいひょうつとめる Tアートセンター[5]への取材しゅざいもとづいている。したがって、マスメディアをもってつたえられる、活動かつどう環境かんきょうかたりの文脈ぶんみゃく変化へんかあるいは変化へんかは、センターの障害しょうがいしゃやその家族かぞく職員しょくいん直接ちょくせつ間接かんせつてき影響えいきょうあたえているとかんがえられる。ところがこれまで、マスメディアの言説げんせつ考察こうさつされてこなかった。
  『アサイラム――施設しせつ収容しゅうようしゃ日常にちじょう世界せかい』[1961=1984]においてゴッフマンは、施設しせつない人間にんげん関係かんけいてき秩序ちつじょしたでは、患者かんじゃ自己じこ無力むりょく[6]されてしまうと説明せつめいした。かしでん[2010]が指摘してきするように、こうした現象げんしょうぜんせいてき施設しせつかぎらないものだろう。そして、これとたい きょくにあるのが造形ぞうけい活動かつどうおこな福祉ふくし施設しせつたるのではないか。先行せんこう研究けんきゅうでは、造形ぞうけい活動かつどうが「『せい』をよみがえらせていくプロセス」[藤澤ふじさわ 2014: i]、「みずからを〈いやし〉ていくこと」 [荒井あらい 2013: 23]、「セルフエスティームをたかめる可能かのうせいがある」[川井かわい 2013: 102]ものだという知見ちけんられている。しかし、そのメカニズムは解明かいめいされていない。
 おおくのひとにとって、とりわけ創作そうさく場面ばめんはブラックボックスされているといっても過言かごんではない。日本にっぽんのいくつかの知的ちてき障害しょうがいしゃ福祉ふくし施設しせつ精神せいしん病院びょういん撮影さつえいされた映像えいぞうだいとう 2008 ~2009, 佐藤さとう 1996]は、適度てきど創作そうさく関与かんよする場面ばめん、また障害しょうがいしゃがパステルとかみ絵筆えふでと キャンバスが接触せっしょくするおと感触かんしょく享受きょうじゅする場面ばめん、あるいは空間くうかん姿勢しせいったり、 特定とくてい時間じかんにこだわったりする様子ようすとらえており、人間にんげん人間にんげんのダイナミックなきょうはたらけ作業さぎょう諸相しょそうれる。  そこで有効ゆうこうとなるのがアクターネットワーク理論りろん[7]であり、センターの障害しょうがいしゃやその家族かぞく職員しょくいんという人間にんげんと、画材がざい空間くうかん、マスメディアの言説げんせつのような人間にんげんりなす世界せかいにおいて、どのような言語げんごてき言語げんごてきコミュニケーションがわされているかに着目ちゃくもくすることが必要ひつようとなる。そのうちほん報告ほうこくでは、マスメディアの言説げんせつ分析ぶんせきのみをあつかい、造形ぞうけい活動かつどうがセルフエスティームをたかめるものであるかを最後さいご検討けんとうすることとする。

 なお、ほん報告ほうこく博士はかせ論文ろんぶん一部いちぶであり、早稲田大学わせだだいがくひと対象たいしょうとする研究けんきゅうかんする倫理りんり審査しんさ委員いいんかいより、研究けんきゅう計画けいかく実施じっし承認しょうにん承認しょうにん番号ばんごう:2015-338)をている。

[1]大半たいはん絵画かいが

[2]中国ちゅうごくの「原形げんけい芸術げいじゅつ」と「原生げんせい芸術げいじゅつ」の報告ほうこくしゃによる和訳わやく

[3]原形げんけい芸術げいじゅつ」から「原生げんせい芸術げいじゅつ」への変化へんかと、アートセンターの名称めいしょう変化へんかのこと

[4]当初とうしょ精神せいしん障害しょうがいしゃ限定げんていしていたが、現在げんざいでは知的ちてき障害しょうがいしゃ発達はったつ障害しょうがいしゃ対象たいしょうとしている。

[5]民間みんかん福祉ふくし施設しせつ

[6]無力むりょくかんあじわわせることで自尊心じそんしんうしなわせること

[7]アクタントだけにもネットワークだけにも還元かんげんできない、通常つうじょうのネットワークとおなじく、ある 期間きかん相互そうごむすびついた一連いちれん生物せいぶつ無生物むせいぶつ要素ようそから構成こうせいされたもの[Callon 1987: 93]

参考さんこう文献ぶんけん
荒井あらい裕樹ゆうき 2013『きていく――アートがひとを〈いやす〉とき』亜紀あき書房しょぼう
Callon, Michel. 1987. "Society in the making: the study of technology as a tool for sociological analysis." in Bijker, Wiebe E., Hughes, Thomas P., Pinch, Trevor J. The Social Construction of Technological Systems: New Directions in the Sociology and History of Technology, Cambridge, Massachusetts: MIT Press.
だいしま治彦はるひこ 2008~2009『日本にっぽんのアウトサイダーアート Vol.1~10』紀伊國屋きのくにや書店しょてん 藤澤ふじさわ三佳みか 2014『きづらさの自己じこ表現ひょうげん――アートによってよみがえる「せい」』あきらよう書房しょぼう
Goffman, Erving. 1961. Asylums: Essays on the Social Situation of Mental Patients and Other Inmates, New York: Doubleday.(ゴッフマン 1984『アサイラム――施設しせつ収容しゅうようしゃ日常にちじょう世界せかい石黒いしぐろあつしやく, まことしん書房しょぼう
かしでん美雄よしお 2010「施設しせつらす」串田くしだ秀也しゅうやこう裕明ひろあきへん『エスノメソドロジーをまなひとのた めに』世界せかい思想しそうしゃ
かわ井田いだ祥子さちこ 2013『共生きょうせいてきなまちづくりにむけて――障害しょうがいしゃ芸術げいじゅつ表現ひょうげん水曜すいようしゃ 佐藤さとう 1996『まひるのほし』シグロ



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