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川添かわぞえ 睡ねむ(かわぞえ ねむる)

■報告ほうこく題目だいもく

当事とうじ者しゃ研究けんきゅう, 障害しょうがい学がく, そして自じ閉的にクィアする試こころみ

■報告ほうこくキーワード

当事とうじ者しゃ研究けんきゅう、クィア(する)/Queer

■報告ほうこく要旨ようし

報告ほうこく者しゃは成人せいじんになってから発達はったつ障害しょうがいと名指なざされる経験けいけんをしている個人こじんである.
精神せいしん的てきな障害しょうがいも社会しゃかいから否定ひてい的てきに意味いみづけされるレッテルであり, かつ実際じっさいにそのように障害しょうがいされる個人こじんも, 社会しゃかい生活せいかつ上じょうの様々さまざまなレイヤーにおいて被ひ周縁しゅうえん化かを経験けいけんし, また自分じぶんたちが周縁しゅうえん的てきな存在そんざいであることを是認ぜにんする社会しゃかい的てきな作業さぎょうに不可避ふかひ的てきに参加さんかしている.
現在げんざい報告ほうこく者しゃは社会しゃかいと自身じしんとの折衝せっしょうをする上じょうで大おおきく3つの概念がいねんに助たすけられており, 本ほん報告ほうこくではそれらと, それらが報告ほうこく者しゃの中なかで持もつ有機ゆうき的てきなつながり (ないしは, 繋つなげようとする試こころみ) について報告ほうこくする.

報告ほうこく者しゃが手掛てがかりとしているものの1つ目めは, 運動うんどうの歴史れきしとそこより (時ときにアカデミックに) 昇華しょうかされた知見ちけんと態度たいどである. つまりそれは障害しょうがい学がくからであり, フェミニズム, 公民こうみん権けん運動うんどう, ゲイアクティビズム, クィア理論りろんからであり, そしてまたそれらの双方向そうほうこう的てきな横断おうだんと重かさね合あわせからである.

もう1つは, 報告ほうこく者しゃが日常にちじょう的てきに利用りようしている「当事とうじ者しゃ研究けんきゅう (ミーティング)」である. 当事とうじ者しゃ研究けんきゅうという言葉ことばが指さす範囲はんいは多様たようだが, ここでの意味いみは「べてるの家いえよりムーブメントが生しょうじ現在げんざいは様々さまざまな主体しゅたいによって開催かいさいされる, 自己じこ研究けんきゅう形式けいしきのミーティング」である. 当事とうじ者しゃ研究けんきゅうのミーティングの手法しゅほうにも多様たよう性せいがあるが, 報告ほうこく者しゃは "ミーティング" という他者たしゃとつながる形式けいしきそのものと同おなじくらいに, 当事とうじ者しゃ研究けんきゅうの「日常にちじょうで "研究けんきゅうする" という "態度たいど"」というものが大おおきな助たすけであるという点てんを強調きょうちょうする.

最後さいごの1つは,「クィアする」という概念がいねんを大切たいせつにすること, 「クィアされたこと」に着目ちゃくもくするという観点かんてんである. 「クィア/Queer」とは性的せいてき少数しょうすう者しゃの運動うんどうに由来ゆらいする言葉ことばだが, 本ほん報告ほうこくは動詞どうしとしての「クィアする」ことを焦点しょうてんとする.
形容詞けいようし・名詞めいしとしての「クィア」の意味いみは「奇妙きみょうな」「風変ふうがわりな」あるいは「(どぎつく名指なざす) 変態へんたい ≒異常いじょう性愛せいあい者しゃ」等とうであるが, 逆ぎゃくに性的せいてき少数しょうすう者しゃが自身じしんのことを挑発ちょうはつ的てきに自称じしょうする際さいに用もちいられてきた名乗なのりの言葉ことばでもある. そしてその背景はいけいとなる精神せいしんにはクィアの動詞どうしとしての意味いみが深ふかく関連かんれんしていると考かんがえる.
動詞どうしの「クィアする」の意味いみと実践じっせんは,「台だいなしにする」「ひねる」「転倒てんとうさせる」「概念がいねんを再さい盗用とうようする」「由来ゆらいや経路けいろを逆ぎゃく成なりする」等とうにあり, 規範きはんの転回てんかいや脱だつ構築こうちく的てきな意味いみを持もつ言葉ことばである.

本ほん報告ほうこくでは, これまであまり障害しょうがい学がくや当事とうじ者しゃ研究けんきゅうに連関れんかんして述のべられてこなかった, この「クィアする」という態度たいどや観点かんてんを, 障害しょうがい学がくの研究けんきゅう・当事とうじ者しゃ研究けんきゅうの場ばへと敷衍ふえんしていくことを試こころみる.
現在げんざい報告ほうこく者しゃの中なかでは, 障害しょうがい学がく/当事とうじ者しゃ研究けんきゅう/「クィアすること」これら3つの態度たいどと知見ちけんが相互そうごに密接みっせつに接続せつぞくされることで,「自じ閉的にクィアする研究けんきゅう」と呼よべるような志向しこうとなっている. "自じ閉的に" と冠かんしたのは, 報告ほうこく者しゃが「文化ぶんかとしての自じ閉者 (Autist) 」である」という自認じにんに基もとづいているからであるが, それ以外いがいのアイデンティティの個人こじんもそれぞれの立場たちばの当事とうじ者しゃとして, 立場たちばから, 社会しゃかいの覇権はけん性せいに対たいしてクィアする研究けんきゅうが当然とうぜんに可能かのうである.

「(自じ閉的に) クィアする研究けんきゅう」は, 2つの方向ほうこう性せいを内包ないほうする.
1つは前述ぜんじゅつの通とおり, 研究けんきゅうする場ばで・当事とうじ者しゃ研究けんきゅうする場ばで,「クィアする」こと,「クィアされた」観点かんてんに着目ちゃくもくしそれらを尊重そんちょうすることである. 特とくに当事とうじ者しゃ研究けんきゅうの場ばでそれが生しょうじた時とき, その視座しざは障害しょうがい学がくにも解釈かいしゃく可能かのうな知見ちけんとなりえるだろう.
もう1つは, 今いまある研究けんきゅうというものの有あり方かた自体じたいについてをクィアする試こころみである. 問といとして表現ひょうげんするならば, 以下いかの様ようになる.
・既存きそんの「研究けんきゅう」で所与しょよの前提ぜんてい, 当然とうぜんの作法さほうとされたことを, 私わたし (たち) に合あった様式ようしきへと改変かいへんは可能かのうだろうか?
・「研究けんきゅう」という語かたりが現在げんざい意味いみするものは ”ずらせ” るか?
・ずらした時ときに「台だいなしにされてしまう」ことがあるとして, その内実ないじつとは何なにか?
クィアな観点かんてんでの考察こうさつと折衝せっしょうを 「研究けんきゅう」という概念がいねんに対たいして試こころみることも, 報告ほうこく者しゃの将来しょうらいの展望てんぼうである.

「自じ閉的にクィアする」試こころみとは, クィアすること・クィアな視点してんを通つうじて, 覇権はけんが機能きのうする構造こうぞうが不具ふぐになる可能かのう性せいを探さぐることであり, 多様たよう性せいのある視点してんが組織そしきやコミュニティーをより脆弱ぜいじゃくにすることであると考かんがえる.

参考さんこう文献ぶんけん
マサキチトセ, 2013/1/31,「わたしの〈クィア〉とあなたの〈クィア〉は違ちがう：グローバルでないドメスティックなクィアの不可能ふかのう性せい」, http://ja.gimmeaqueereye.org/entry/20 (2016/7/31現在げんざい)「動詞どうしとしてのクィア」の説明せつめいは以下いかの文章ぶんしょうに詳くわしい.

倫理りんり的てき配慮はいりょ：
今年度こんねんどに例示れいじされた研究けんきゅう指針ししんの内容ないようを順守じゅんしゅし, 精神せいしんを尊重そんちょうし, そこから発展はってんする議論ぎろんと対話たいわに参加さんかすることを言明げんめいします.

障害しょうがい学会がっかい第だい13回かい大会たいかい（2016年度ねんど）