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宮崎みやざき 康やすし支ささえ(みやざき やすし) 関西学院大学かんせいがくいんだいがく大学院だいがくいん総合そうごう政策せいさく研究けんきゅう科か

■報告ほうこく題目だいもく

誰だれが発達はったつ障害しょうがい者しゃの自立じりつと就労しゅうろうを求もとめているのか―新聞しんぶん記事きじのディスコース分析ぶんせき

■報告ほうこくキーワード

発達はったつ障害しょうがい / 自立じりつ / ディスコース

■報告ほうこく要旨ようし

１．背景はいけいと目的もくてき

　2004年ねんに制定せいていされた発達はったつ障害しょうがい者しゃ支援しえん法ほうの改正かいせい案あんが2016年ねんの通常つうじょう国会こっかいにおいて可決かけつされ（『福祉ふくし新聞しんぶん』, 2016年ねん6月がつ7日にち）。改正かいせい内容ないようには就労しゅうろう支援しえんの強化きょうかや発達はったつ障害しょうがい児じの長期ちょうき個別こべつ計画けいかく策定さくていが含ふくまれる。また、発達はったつ障害しょうがいの定義ていぎに「社会しゃかい的てき障壁しょうへき」の文言もんごんが追加ついかされる（「法律ほうりつ第だい六ろく十じゅう四よん号ごう　発達はったつ障害しょうがい者しゃ支援しえん法ほうの一部いちぶを改正かいせいする法律ほうりつ」, 2016）。発達はったつ障害しょうがい者しゃ支援しえん法ほうは、自立じりつ支援しえんの色彩しきさいを強つよめたといえる。
　日本にっぽんの新聞しんぶんにおいて、「発達はったつ障害しょうがい」の検索けんさく語ごを含ふくむ記事きじの数かずは西暦せいれき2000年ねん前後ぜんこうに急増きゅうぞうした(宮崎みやざき, 2014)。この時点じてんで発達はったつ障害しょうがい者しゃは活字かつじ媒体ばいたいにおいて、自立じりつを促うながされる対象たいしょうとして扱あつかわれていた。そのディスコース(言説げんせつ)を構築こうちくした要因よういんはどこにあるのか。本ほん報告ほうこくはこの点てんを活字かつじ媒体ばいたいの言語げんご学がく的てきな定性ていせい分析ぶんせきにより明あきらかにする。

２．方法ほうほう
　日本にっぽんにおける全国ぜんこく紙し5紙し（『朝日新聞あさひしんぶん』、『読売新聞よみうりしんぶん』、『毎日新聞まいにちしんぶん』、『日本経済新聞にほんけいざいしんぶん』、そして『産経新聞さんけいしんぶん』）のデータベースにて「発達はったつ障害しょうがい」の検索けんさく語ごにより記事きじを抽出ちゅうしゅつした。これらから事例じれいを選択せんたくし、言語げんご使用しようの背後はいごにあるイデオロギーを探求たんきゅうする枠組わくぐみである批判ひはん的てきディスコース分析ぶんせき(CDA) (Fairclough, 2003) により分析ぶんせきする。本ほん報告ほうこくにおいてはCDAにおける手法しゅほうであるDiscourse-Historical Approach (DHA) (Reisigl and Wodak, 2016) を用もちいて、新聞しんぶん記事きじにおけるディスコースの歴史れきし的てきな要素ようそを抽出ちゅうしゅつする。DHAの特徴とくちょうは「(1)特定とくていのディスコースにおける内容ないようないしトピックを把握はあくし、(2)推論すいろん的てきな戦略せんりゃくを探索たんさくすることと、(3)言語げんご的てき意味いみおよび内容ないよう依存いぞん的てきな言語げんご的てき実現じつげんを分析ぶんせきすること」(Reisigl and Wodak, 2016: 32)(註)にある。この手法しゅほうは、言語げんごの背後はいごにある就労しゅうろう観かんや自立じりつ観かんを解明かいめいするには適切てきせつと考かんがえられる。

３．考察こうさつと展望てんぼう
　宮崎みやざき(2015; 2016)は、新聞しんぶん記事きじにおける自立じりつと就労しゅうろうのイデオロギーの発現はつげんを指摘してきした。そして、否定ひてい表現ひょうげんの作用さようが「否定ひてい」と「エンパワメント」という一見いっけんすると相反あいはんする概念がいねんの表現ひょうげんに用もちいられていることを明あきらかにしてきた。この報告ほうこくにおいてはこれらの背景はいけい要因よういんを明あきらかにし、提示ていじする。

【註】この引用いんようは報告ほうこく申込もうしこみ者しゃの邦訳ほうやくによる。

【引用いんよう文献ぶんけん】
Fairclough, Norman (2003). Analyzing discourse: textual analysis for social research.London: Routledge. (日本にっぽんメディア英語えいご学会がっかいメディア英語えいご談話だんわ分析ぶんせき研究けんきゅう分科ぶんか会かい訳やく(2012). 『ディスコースを分析ぶんせきする』くろしお出版しゅっぱん)
『福祉ふくし新聞しんぶん』(2016年ねん6月がつ7日にち).「改正かいせい発達はったつ障害しょうがい者しゃ支援しえん法ほうが成立せいりつ　就労しゅうろう定着ていちゃくの強化きょうかへ」 < http://www.fukushishimbun.co.jp/topics/13069 >　(2016年ねん7月がつ30日にち)
「法律ほうりつ第だい六ろく十じゅう四よん号ごう　発達はったつ障害しょうがい者しゃ支援しえん法ほうの一部いちぶを改正かいせいする法律ほうりつ」(2016年ねん6月がつ3日にち).『官報かんぽう』号外ごうがい第だい123号ごう, 平成へいせい28年ねん6月がつ3日にち, pp. 77-78.
宮崎みやざき康やすし支ささえ(2014).「新聞しんぶん記事きじデータベースにみる発達はったつ障害しょうがいとその周辺しゅうへん概念がいねんの変遷へんせん」障害しょうがい学会がっかい・第だい11回かい大会たいかいポスター報告ほうこく. (2015年ねん12月15日にち)
宮崎みやざき康やすし支ささえ(2015).「新聞しんぶん記事きじにおける『発達はったつ障害しょうがい』概念がいねんの批判ひはん的てきディスコース分析ぶんせき」『社会しゃかい言語げんご科か学会がっかい第だい36回かい大会たいかい発表はっぴょう論ろん文集ぶんしゅう』, pp. 118-121.
宮崎みやざき康やすし支ささえ(2016). 「『発達はったつ障害しょうがい』概念がいねんと否定ひてい表現ひょうげん―新聞しんぶん記事きじコーパスにおける計量けいりょう分析ぶんせきから―」『国立こくりつ国語こくご研究所けんきゅうじょ時空じくう間あいだ変異へんい研究けんきゅう系けい公開こうかい研究けんきゅう発表はっぴょう会かい予稿よこう集しゅう』, pp. 55-64.
Reisigl, Martin & Wodak, Ruth (2016). The discourse-historical approach (DHA). In Wodak Ruth & Meyer, Michael (Eds.), Methods of Critical Discourse Studies (3rd. ed.), pp. 23-61. London: SAGE.

【倫理りんり的てき配慮はいりょについて】
　本ほん研究けんきゅうは活字かつじ媒体ばいたいのテクストを分析ぶんせきするものである。データおよび引用いんよう文献ぶんけんの箇所かしょを明記めいきし著作ちょさく権けんに配慮はいりょする。引用いんようデータに私人しじんおよび地名ちめいの固有名詞こゆうめいしが含ふくまれる場合ばあいは仮名かめいとする。仮名かめいに置おき換かえた場合ばあいはその箇所かしょを明記めいきする。また、報告ほうこく申込もうしこみ者しゃが所属しょぞくする関西学院大学かんせいがくいんだいがくの倫理りんり基準きじゅんを遵守じゅんしゅする。本ほん研究けんきゅうはヒトを対象たいしょうとした医学いがく的てき・行動こうどう学がく的てき研究けんきゅうや実験じっけん研究けんきゅうなどに該当がいとうしないため、同どう大学だいがくによる倫理りんり審査しんさの対象たいしょう外がいであると報告ほうこく申込もうしこみ者しゃは判断はんだんしている。

障害しょうがい学会がっかい第だい13回かい大会たいかい（2016年度ねんど）