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山田やまだ 裕一ひろいち (やまだ ゆういち)
立命館大学りつめいかんだいがく　生存せいぞん学がく研究けんきゅうセンター　客員きゃくいん研究けんきゅう員いん
熊本くまもと県けん発達はったつ障害しょうがい当事とうじ者しゃ会かいLittle bit　顧問こもんソーシャルワーカー

■報告ほうこく題目だいもく

合理ごうり的てき配慮はいりょの再さい検討けんとう―熊本くまもと地震じしんにおける発達はったつ障害しょうがい当事とうじ者しゃの苦悩くのうと社会しゃかい的てき排除はいじょの構造こうぞうから考かんがえる

■報告ほうこくキーワード

発達はったつ障害しょうがい / 熊本くまもと地震じしん / 当事とうじ者しゃ会かい

■報告ほうこく要旨ようし

　2016年ねん4月がつ16日にち未明みめい。最大さいだい震度しんど７の地震じしんが襲おそった。一いち度目どめの最大さいだい震度しんど7の地震じしんから2日にちもたたず、さらなる巨大きょだい地震じしんが襲おそったことは前代未聞ぜんだいみもんであり、「前例ぜんれいがない」「予測よそくができなかった」と多おおくの人々ひとびとが口くちにし、以下いかのような特徴とくちょう的てきな現象げんしょうが起おこった。

１．被害ひがい状況じょうきょうがまだらで、倒壊とうかいした家いえの隣となりの家いえはほぼ無傷むきずである例れいも数多かずおおくあり、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの時ときのように、広範囲こうはんいの地域ちいきが壊滅かいめつしたような事例じれいはほぼない。
２．体験たいけんしたことがない激はげしい地震じしんが短期間たんきかんで起おこったことで、「また来くるのではないか」という心理しんり的てき不安ふあんが強つよい人ひとが少すくなくない。
３．車中しゃちゅう泊はくやテント泊はくをしている人ひとが数多かずおおくいるが、単純たんじゅんに住すむ家いえがないという状況じょうきょうではない。
４．公的こうてきな福祉ふくし避難ひなん所しょが開設かいせつされるまでに時間じかんがかかり、障害しょうがい者しゃの受入うけいれは専もっぱら民間みんかんの自主じしゅ的てきな避難ひなん所しょが中心ちゅうしんであった。

　そのような中なかで、熊本くまもと県けん発達はったつ障害しょうがい当事とうじ者しゃ会かいLittle bitのメンバーは以下いかのような状況じょうきょうに陥おちいってしまっていた。

１．悩なやみや苦くるしみの内容ないようが「感覚かんかく過敏かびん」「情報じょうほうの適切てきせつな取得しゅとく」「コミュニケーションエラー」「ルーティン維持いじの困難こんなん性せい」等とうに起因きいんしているため、深刻しんこくな問題もんだいと認識にんしきされにくく、話はなしたとしても共感きょうかんされにくい。
２．相談そうだん支援しえん専門せんもん員いん等とうは担当たんとう利用りよう者しゃの安否あんぴ確認かくにんにも数すうか月げつを要ようするような状況じょうきょうであっため、福祉ふくしサービス等とうを普段ふだんから利用りようしていない当事とうじ者しゃの相談そうだんする場所ばしょが更さらにない。
３．避難ひなん所しょでは、感覚かんかく過敏かびんやコミュニケーションの課題かだいなどで、大おおきなストレスを抱かかえる上うえに、ストレスを自覚じかくしにくく、いきなり倒たおれてしまうことも少すくなくない。

　以上いじょうのような状況じょうきょうの中なかで、自みずからの苦悩くのうを「どうせ話はなしても無駄むだ」と口くちをつむぐようになり、自じ傷きず行為こうい等とうによってかろうじて自分じぶんを保たもっていた。

　発達はったつ障害しょうがい者しゃを社会しゃかいに包摂ほうせつしていく為ために必要ひつような事こととして「早期そうき発見はっけん・早期そうき支援しえん（時ときとして治療ちりょう）」と「他た職種しょくしゅの連携れんけい」が必かならず言いわれる。しかし、「発達はったつ障害しょうがいとはいかなる障害しょうがいなのか」「発達はったつ障害しょうがい者しゃにとってよりよい支援しえんのあり方かたはどのようなものか」について、医療いりょう・福祉ふくし・教育きょういくの文脈ぶんみゃくにおいて、または同種どうしゅの専門せんもん職しょく間あいだであっても、認識にんしきのズレがあるばかりか、ズレがあることにすら気きが付つかないケースが多おおい。それはそれぞれの専門せんもん職しょくが、多様たような側面そくめんがある当事とうじ者しゃ像ぞうの偏かたよった側面そくめん（特とくにコミュニケーション等とうの特異とくい的てきと見みなされる言動げんどうを改善かいぜんすべき存在そんざいという認識にんしき）をそれぞれで普遍ふへん化かしていること、更さらに当事とうじ者しゃ自身じしんの視点してんや世界せかい観かんを反映はんえいしていないことが主おもな原因げんいんとしてある。
　障害しょうがいが見みえにくく、障害しょうがいが見みえたとしても、問題もんだいが顕在けんざい化かしにくく、問題もんだいが顕在けんざい化かしたとしても、共感きょうかんされにくい発達はったつ障害しょうがい者しゃの苦悩くのうは、災害さいがい時じにおいて問題もんだいは顕在けんざい化かされたが、合理ごうり的てき配慮はいりょの議論ぎろんの遡上そじょうにも上のぼっていないのが現状げんじょうである。

　本ほん報告ほうこくでは、熊本くまもと地震じしんにおける発達はったつ障害しょうがい当事とうじ者しゃの事例じれいを中心ちゅうしんに、「合理ごうり的てき配慮はいりょ」という概念がいねんが持もつ課題かだいについて議論ぎろんしていきたいと考かんがえている。

　なお、本ほん発表はっぴょうを行おこなうにあたり、プライバシーの保護ほご、人権じんけんの尊重そんちょう等とうの倫理りんり的てき配慮はいりょを行おこなっている。

障害しょうがい学会がっかい第だい13回かい大会たいかい（2016年度ねんど）