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福田ふくだ 能文のうぶん (ふくだ よしぶみ)

■報告ほうこく題目だいもく

当事とうじ者しゃの社会しゃかい参加さんかのための「難なん聴者ちょうしゃの自立じりつ生活せいかつモデル」　2014年度ねんど修士しゅうし論文ろんぶんから

■報告ほうこくキーワード

難聴なんちょう、自立じりつ生活せいかつ運動うんどう、フィリピン

■報告ほうこく要旨ようし

１、目的もくてき・背景はいけい

　本ほん報告ほうこくでは2014年度ねんど日本福祉大学にほんふくしだいがく大学院だいがくいん国際こくさい社会しゃかい開発かいはつ研究けんきゅう科か修士しゅうし論文ろんぶんを元もとに、その内容ないようの一部いちぶを紹介しょうかいする。今回こんかいの発表はっぴょうで特とくにスポットを当あて報告ほうこく、議論ぎろんしたいのが二ふたつある。一ひとつはフィリピンにおける難なん聴者ちょうしゃがおかれている状況じょうきょうである。日本にっぽんで筆者ひっしゃが経験けいけんした体験たいけんも踏ふまえて、両国りょうこくの社会しゃかいの難なん聴者ちょうしゃに対たいする共通きょうつうの認識にんしきと違ちがいを報告ほうこくする。二ふたつ目めは旧きゅう障害しょうがい者しゃ自立じりつ支援しえん法ほうの成立せいりつによって難なん聴者ちょうしゃが直面ちょくめんし、かつ現在げんざいにおいても課題かだいとなっている点てんを、自立じりつ生活せいかつ運動うんどうの視点してんから報告ほうこくする。そして、難なん聴者ちょうしゃにとっても自立じりつ生活せいかつ運動うんどうの視点してんが必要ひつようであることを論ろんじる。
　筆者ひっしゃは遺伝いでん性せいの感かん音おん性せい難聴なんちょうであり、10歳さいのころから少すこしずつ聴力ちょうりょくが低下ていかしていった。大学だいがくの授業じゅぎょうはほとんどき取きとれなかった。１対たい１の会話かいわはどうにかできていたが、集団しゅうだんとなると全まったくき取きとれなかった。そのような学生がくせい生活せいかつの中なかで、1993年ねんにとちぎYMCA主催しゅさいのフィリピンワークキャンプに参加さんかした。ハンセン病はんせんびょう患者かんじゃのコミュニティで現地げんちの学生がくせいたちと豚ぶた小屋こや建設けんせつを通とおして患者かんじゃさんたちの経済けいざい的てき自立じりつを支援しえんするものであった。何なにか力ちからになれたらと思おもって参加さんかした。日本にっぽんではき返きかえしたりすると嫌いやな顔かおをされたり無視むしされたりしたが、フィリピンでは私わたしが理解りかいできるまで嫌いやな顔かお一ひとつせず何なん度どもい返いかえしてくれた。こちらが根負こんまけして聞きこえたふりをしてもすぐにばれ、地面じめん、掌てのひら、背中せなかに文字もじを書かいて伝つたえてくれた。 　2004年ねん、友人ゆうじんが自みずからが勤務きんむするケソン市し北部ほくぶにあるラグロ・ハイスクールに難聴なんちょう学級がっきゅうがあるので見学けんがくしないかと誘さそってくれた。1学年がくねんに十じゅう数すう人にんいる聴覚ちょうかく障害しょうがい学生がくせいが健けん聴者ちょうしゃに交まじって授業じゅぎょうを受うけている。手話しゅわのできる教師きょうしが英語えいごを教おしえたり、ある科目かもくでは手話しゅわ通訳つうやくがついたり、つかなかったりと安定あんていしない状況じょうきょうだった。そのあとも数すう回かい訪問ほうもんし、変化へんかを見みてきた。質問しつもん票ひょうによる調査ちょうさを実施じっしし、そこで明あきらかになった点てんなどを報告ほうこくする。そして最近さいきんになってフィリピンでも難なん聴者ちょうしゃのグループが立たち上あがった。彼かれ・彼女かのじょたちがどんな問題もんだいに直面ちょくめんしているのか、インタビューを通とおして明あきらかになったことを報告ほうこくする。これらが一ひとつ目めの報告ほうこくの背景はいけいをなすものである。
　修士しゅうし論文ろんぶんでは、①障害しょうがい者しゃの自立じりつ生活せいかつ運動うんどうを日本にっぽんの難なん聴者ちょうしゃ運動うんどうに適用てきようする際さいの課題かだいと可能かのう性せいを明あきらかにして、「難なん聴者ちょうしゃの自立じりつ生活せいかつ運動うんどう」の骨格こっかくを「モデル」として築きずくこと、そして②日本にっぽんの文脈ぶんみゃくから導みちびいたこのモデルの分析ぶんせきの視点してんとして、フィリピンの難なん聴者ちょうしゃの状況じょうきょうを明あきらかにし、フィリピンにおける難なん聴者ちょうしゃの自立じりつ生活せいかつ運動うんどうの可能かのう性せいを探さぐると同時どうじにモデルの是非ぜひを検証けんしょうしていくことを目的もくてきに執筆しっぴつした。
　モデル構築こうちくの必要ひつよう性せいは、筆者ひっしゃは国際こくさい理解りかい、開発かいはつ教育きょういくの分野ぶんやでエンパワーメントしてきており、そのあと難なん聴者ちょうしゃ協会きょうかいの運動うんどう、組織そしき運営うんえいに関かかわるようになった。そこで感かんじた難なん聴者ちょうしゃ運動うんどうの課題かだいと限界げんかいが、モデル構築こうちくに繋つながっていった。難なん聴者ちょうしゃの組織そしき化かを可能かのうにしたのは、要約ようやく筆記ひっきの登場とうじょうである。要約ようやく筆記ひっきは研究けんきゅうと運動うんどうを重かさねて厚生こうせい労働省ろうどうしょうのメニュー事業じぎょうとして普及ふきゅうしていった。しかし、都道府県とどうふけんレベルで活動かつどうしてきた難なん聴者ちょうしゃ運動うんどうは、2006年ねんの自立じりつ支援しえん法ほうにより要約ようやく筆記ひっき派遣はけんが区く市町村しちょうそんの事業じぎょうとして移管いかんされ、そのレベルでの組織そしきがないことからさまざまな問題もんだいが顕在けんざい化かしてきた。これが二ふたつ目めの報告ほうこくの背景はいけいである。
　この他ほか（特とく活かつ）開発かいはつ教育きょういく協会きょうかいで取とり組くんできた、ボランティアによる要約ようやく筆記ひっきと、誰だれもが参加さんかできる教育きょういく活動かつどうへとシフトしてきた経緯けいいと方法ほうほうを紹介しょうかいしたい。

２、倫理りんり的てき配慮はいりょ

　質問しつもん票ひょう調査ちょうさ、インタビュー調査ちょうさにおいて、回答かいとうの結果けっかなどは修士しゅうし論文ろんぶんや学会がっかいなどで公表こうひょうすることについては調査ちょうさ対象たいしょう者しゃから同意どういを得えている。修士しゅうし論文ろんぶんにおいても匿名とくめい性せいを尊重そんちょうして記述きじゅつした。調査ちょうさ結果けっかのフィードバックを二に人にんの日本人にっぽんじん障害しょうがい者しゃ運動うんどう家かからコメントを得えている。これについては本人ほんにんの承諾しょうだくを得えて実名じつめいで公表こうひょうしている。

３、参考さんこう文献ぶんけん

福田ふくだ能文のうぶん（2014）当事とうじ者しゃの社会しゃかい参加さんかのための「難なん聴者ちょうしゃの自立じりつ生活せいかつモデル」～日本にっぽんでのモデル化かの試こころみとフィリピンにおける有効ゆうこう性せい、日本福祉大学にほんふくしだいがく
なお、修士しゅうし論ろん部ぶについては立命館大学りつめいかんだいがく生存せいぞん学がく研究けんきゅうセンターのWebサイトに加筆かひつ修正しゅうせい版ばんを掲載けいさい頂いただいた。
http://www.arsvi.com/2010/160223fy.htm

障害しょうがい学会がっかい第だい13回かい大会たいかい（2016年度ねんど）