重度訪問介護長時間支給の空白県だった徳島県での筋ジス呼吸器利用者内田さんの２４時間介護制度交渉と自立生活

重度じゅうど訪問ほうもん介護かいご長時間ちょうじかん支給しきゅうの空白くうはく県けんだった徳島とくしま県けんでの筋すじジス呼吸こきゅう器き利用りよう者しゃ内田うちださんの２４時じ間あいだ介護かいご制度せいど交渉こうしょうと自立じりつ生活せいかつ

　１９９０年ねん台だい後半こうはんから全国ぜんこく各地かくちで２４時じ間あいだ介護かいご保障ほしょうの動うごきが広ひろがる中なか、徳島とくしま県けんでは、２０年ねん近ちかく２４時じ間あいだ公的こうてき介護かいご利用りよう者しゃがいませんでした。

　そこで、徳島とくしま県けんで筋すじジスで人工じんこう呼吸こきゅう器き利用りよう者しゃの内田うちださんを全国ぜんこくの障害しょうがい者しゃ団体だんたい等とうが支援しえんし、数すう年ねんかけて、２４時じ間あいだの重度じゅうど訪問ほうもん介護かいごの制度せいどを使つかって１人にんぐらしが出来できるようになりました。

内田うちださんに経緯けいいを書かいていただきました。

徳島とくしま県けんで２４時じ間あいだ介護かいご体制たいせいでの自立じりつ生活せいかつができるまで

内田うちだ　由佳ゆか

１、24時間じかん介護かいごに至いたるまで

先天せんてん性せい筋きんジストロフィーにより幼少ようしょう期きから12年間ねんかんを施設しせつで過すごし、その後ご大学だいがく進学しんがくを機きに施設しせつを退すさ所ところし、家族かぞくとの生活せいかつがスタートしました。大学だいがく時代じだいは、日にち中ちゅうは学内がくないの介助かいじょサービスやボランティア、友人ゆうじんの助たすけを借かり、夜間やかんは訪問ほうもん介護かいごを利用りようしつつ家族かぞく介護かいごが中心ちゅうしんという生活せいかつを4年間ねんかん続つづけ、卒業そつぎょう後ごは1日ひ5時間じかん程度ていどの居宅きょたく介護かいごや移動いどう支援しえんの他ほかはすべて家族かぞくに頼たよる生活せいかつになってしまいました。

症状しょうじょうの進行しんこうで介護かいご度どは徐々じょじょに上あがっていき、24時間じかん呼吸こきゅう器きを装着そうちゃくするようになると体位たいい交換こうかんや吸引きゅういんなどの回数かいすうも頻繁ひんぱんになり、家族かぞくの負担ふたんはどんどん増ふえていきました。

　両親りょうしんともに健康けんこうではありましたが、今後こんご、私わたしの介護かいごをすることも難むずかしくなっていきますし、「これ以上いじょう、家族かぞくにばかり負担ふたんをかけられない」と考かんがえ、ヘルパーの派遣はけん時間じかん数すうを増ふやそうと複数ふくすうの事業じぎょう所しょに依頼いらいをしましたが、ヘルパー事業じぎょう所しょからは「ヘルパーの人数にんずうが足たりていない」「事故じこがあった場合ばあい責任せきにんが取とれないので、呼吸こきゅう器きを使用しようしている人ひとには派遣はけんできない」「介護かいご内容ないようが複雑ふくざつで対応たいおうできない」という返答へんとうばかりで、実際じっさいに時間じかん数すうを増ふやすことは難むずかしい状況じょうきょうでした。

２、自薦じせんヘルパー制度せいどを知しって

　このまま親おやに頼たよった今いまの生活せいかつを続つづけていく訳わけにはいかない、それに、自立じりつして生活せいかつしてみたい、でも、どうすればいいのか分わからない。施設しせつや病院びょういんへの入所にゅうしょを考かんがえたこともありましたが、やはり自由じゆうに暮くらすことを諦あきらめたくはないという気持きもちが強つよく、何なにか情報じょうほうはないかとインターネットで検索けんさくしていた時ときにたまたま見みつけたのが、「全国ぜんこく障害しょうがい者しゃ介護かいご制度せいど情報じょうほう」のサイトでした。

　そこには、24時間じかんの介護かいごサービスが全国ぜんこくどこでも利用りようできること、自分じぶんで選えらんだ人ひとをヘルパーとして雇用こようできる自薦じせんヘルパー制度せいどというものがあるということが記しるされており、私わたしは本当ほんとうに救すくわれた気持きもちになりました。

　そこから広域こういき協会きょうかいに問合といあわせ、徳島とくしま県けんでも24時間じかん介護かいごを利用りようして自立じりつできること、自立じりつ生活せいかつを始はじめる準備じゅんびとして「自立じりつ生活せいかつプログラム」を受うけることを勧すすめられ、受講じゅこうすることになりました。

　全国ぜんこくの自立じりつ生活せいかつセンターから講師こうしの方ほうに徳島とくしままで来きていただいて、制度せいどについて、介助かいじょ者しゃについてなど、自立じりつ生活せいかつを送おくるうえで必要ひつような情報じょうほうや知識ちしき、心構こころがまえを教おそわりながら、家族かぞくや関係かんけい各所かくしょに自立じりつの意思いしを伝つたえ、準備じゅんびを進すすめていきました。

　家族かぞくやドクター、その他たの病院びょういん関係かんけい者しゃは初はじめ、私わたしの自立じりつに関かんしては否定ひてい的てきでした。周囲しゅういの理解りかいを得えるまでには多少たしょう時間じかんがかかりましたが、言葉ことばで説明せつめいするだけでなく、実際じっさいに行動こうどうを起おこし準備じゅんびを進すすめる過程かていを見みてもらうことで、少すこしずつ周囲しゅういの反はん応おうも変化へんかし、最終さいしゅう的てきには理解りかいを示しめしてくれるようになっていきました。

３、弁護べんご団だんとの時間じかん数すう交渉こうしょう

　徳島とくしま県けん初はつの24時間じかん介護かいごを求もとめて、「介護かいご保障ほしょうを考かんがえる弁護士べんごしと障害しょうがい者しゃの会かい全国ぜんこくネット」にご協力きょうりょくいただけることになり、5名なの弁護士べんごしの先生せんせいにより弁護べんご団だんが組くまれました。

　私わたしは、まず実家じっかで家族かぞく同居どうきょのまま24時間じかん介護かいごを支給しきゅうしてもらい、自薦じせんヘルパーの人数にんずうを徐々じょじょに増ふやしながら、ヘルパーの研修けんしゅう、独居どっきょのための体制たいせいづくりや準備じゅんびを進すすめていくという計画けいかくを立たてていたので、まずは実家じっかのある自治体じちたいに「自立じりつ生活せいかつ準備じゅんびのための24時間じかん介護かいご」の申請しんせいをするという方向ほうこうで進すすめていくことになりました。

　弁護べんご団だんには、私わたし本人ほんにんと家族かぞく、医師いしや当時とうじ利用りようしていた訪問ほうもん介護かいご・訪問ほうもん看護かんご事業じぎょう所しょに対たいしてき取きとり調査ちょうさをし、介護かいご状じょう況きょう、身体しんたい状況じょうきょう、家族かぞくの生活せいかつ状じょう況きょう、これからどういった生活せいかつをしていきたいか等とうの情報じょうほうをもとに24時間じかん介護かいごの必要ひつよう性せいを証明しょうめいする資料しりょうを作成さくせいしていただき、申請しんせい書しょに添そえて市しへ提出ていしゅつしました。

　申請しんせいして2か月げつ後ごに24時間じかん介護かいご（2人ひと介護かいご可か）が認みとめられ、晴はれて自立じりつ生活せいかつの準備じゅんびがスタートできるまでに至いたりました。

４、自立じりつ生活せいかつに向むけて

　24時間じかん介護かいごの認定にんていが下おりたことで、次つぎはヘルパーの求人きゅうじんを開始かいししました。

　コンビニなどに置おかれているフリーペーパーの求人きゅうじん誌しとハローワークに求人きゅうじんを出だし、面接めんせつを行おこない、最終さいしゅう的てきに6名なのヘルパーを雇用こようすることになりました。

　求人きゅうじんや面接めんせつについては広域こういき協会きょうかいと講師こうしの方々かたがたが丁寧ていねいにアドバイスをしてくださり、初はじめてでも不安ふあんを感かんじることなく行おこなえました。

　そして、ヘルパーが十分じゅうぶん揃そろったところで、今度こんどは家探やさがしと、それに並行へいこうして転居てんきょ先さきの自治体じちたいへの制度せいど交渉こうしょうを始はじめました。

　家探やさがしは半年はんとしほどかけて不動産ふどうさん屋やを回まわり、条件じょうけんの良よい物件ぶっけんがいくつか見みつかったのですが、不動産ふどうさん屋やや大家たいかから障害しょうがいがあることを理由りゆうに断ことわられたこともありました。門前払もんぜんばらいされたことや、角かくが立たたないようない方いかたで遠回とおまわしに断ことわられたこともありましたが、親身しんみに話はなしを聞きいてくれるところもあり、希望きぼうの条件じょうけんに合あう物件ぶっけんを見みつけることが出来できました。その物件ぶっけんは初はじめ、大家たいかが難色なんしょくを示しめしていたそうですが、不動産ふどうさん屋やの方ほうが丁寧ていねいに説明せつめいしてくれたおかげで、無事ぶじに借かりることが出来できるようになりました。

　また、転居てんきょ先さきの自治体じちたいへの交渉こうしょうは再度さいど弁護べんご団だんに依頼いらいし、前回ぜんかいの申請しんせい資料しりょうに加くわえて、どういった自立じりつ生活せいかつをしていきたいか、その為ためにはどのような支援しえんが必要ひつようなのか等とうの内容ないようの資料しりょうを作成さくせいし、提出ていしゅつしました。

　自治体じちたいへは以前いぜんから転居てんきょの希望きぼうを伝つたえていたこともあり、申請しんせいから支給しきゅう決定けっていまで時間じかんもかからず、スムーズに進すすめることが出来できました。

　こうして24時間じかん介護かいごの体制たいせいが整ととのい、住すむ場所ばしょ住じゅうも決きまり引ひっ越こしをして、ついに自立じりつ生活せいかつがスタートしました。

現在げんざいのある週しゅうのヘルパーのシフトの一いち例れい　　（外出がいしゅつのある日ひなどは昼間ひるま２名めい体制たいせい）

月つき

火ひ　

水みず

木き

金きむ

土ど

日ひ

９：００～

１９：００

Aヘルパー

Eヘルパー

Dヘルパー

Bヘルパー

Cヘルパー

Eヘルパー

Bヘルパー

Dヘルパー

Cヘルパー

Aヘルパー

１９：００～

翌日よくじつ９：００

Bヘルパー

Aヘルパー

Cヘルパー

Eヘルパー

Dヘルパー

Eヘルパー

ベッド上じょうでパソコン操作そうさ

５、自立じりつ生活せいかつを始はじめて

　自立じりつ生活せいかつをスタートして、2018年とし3月つき現在げんざいで2年とし目めを迎むかえました。24時間じかんヘルパーが常駐じょうちゅうし、きめ細ささやかなサポートが受うけられるので、体調たいちょうも安定あんていしやすく、身体しんたい的てきにも精神せいしん的てきにも非常ひじょうに落おち着ついた生活せいかつを送おくれるようになりました。これまではヘルパーの確保かくほが難むずかしかったり家族かぞくに遠慮えんりょして頼たのみづらかった外出がいしゅつも、今いまでは好すきな時ときに出でかけられるので、買かい物ものや映画えいが、コンサートに行いったりもしています。そして、徳島とくしま県けんにまだなかった自立じりつ生活せいかつセンターを立たち上あげるため、月つきに一いち度どは自立じりつ支援しえんのための研修けんしゅうに県けん外がいへ行いくなど、泊とまりがけで出でかけることもあります。普段ふだんは車くるまでの移動いどうが多おおいのですが、新幹線しんかんせんや飛行機ひこうき、電車でんしゃを乗のり継ついで移動いどうしています。交通こうつう手段しゅだんや宿泊しゅくはく先さきの手配てはいなど、初はじめはとても大変たいへんで失敗しっぱいすることもありましたが、回数かいすうを重かさねるうちにそれほど手間取てまどらず行おこなえるようになり、旅先たびさきでも慌あわてることなく快適かいてきに過すごすことが出来できるようになりました。間違まちがいや失敗しっぱいにも付つき合あってくれ、常つねにサポートしてくれるヘルパーには本当ほんとうに感謝かんしゃしています。

　現在げんざいは、自立じりつ生活せいかつセンターを立たち上あげ、自立じりつを考かんがえている当事とうじ者しゃへの情報じょうほう提供ていきょうや相談そうだん業務ぎょうむ、広報こうほう活動かつどうを行おこなっています。

　　車くるまに乗のり込こんで外出がいしゅつ！

　　ホームセンターで買かい物もの中ちゅう

　徳島とくしま県けんでは、街まちで障害しょうがい者しゃを見みかけることも少すくなく、障害しょうがい者しゃの自立じりつについてもまだまだ理解りかいが進すすんでいるとは言いい難がたいのが現状げんじょうです。介護かいごは家族かぞくが担になうものという意識いしきが根強ねづよく、家いえから出でずに暮くらしている人ひとも少すくなくないので、自立じりつ生活せいかつや地域ちいき生活せいかつについて広ひろく知しってもらい、自立じりつして地域ちいきで暮くらす仲間なかまを増ふやしていきたいと考かんがえています。

５、自立じりつを考かんがえている方ほうへ

　自立じりつ生活せいかつは、生活せいかつの様々さまざまな局面きょくめんでの選択せんたくを自分じぶんの責任せきにんで行おこない、誰だれに遠慮えんりょすることなく自分じぶんの人生じんせいを歩あゆむことできます。

　そして、子こども扱あつかいされてしまいがちな私わたしたち障害しょうがい者しゃですが、自立じりつすることで一人ひとりの成人せいじんとして社会しゃかい的てきにも認みとめられ、自分じぶんに誇ほこりを持もてるようになれます。

　私わたしは自立じりつ生活せいかつを始はじめて、たくさんの「初はつ体験たいけん」をしました。夜よる遅おそくに外出がいしゅつすること、満員まんいん電車でんしゃに乗のること、思おもい立たった時ときに会あいたい人ひとに会あいに行いくこと、スケジュールを気きにせず自分じぶんのペースで一いち日にちを過すごすこと、他ほかにもたくさんの「施設しせつや親元おやもとでいては難むずかしいこと」を経験けいけんすることが出来できるようになりました。