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課題集
長文ちょうぶん 1.1しゅう
 【1】いまからろくおくねんくらいまえうみには、クラゲやゴカイなどの仲間なかまさん葉虫はむしさんようちゅうのような節足動物せっそくどうぶつがくらしていました。からだがたくさんの細胞さいぼうつくられていると、からだちゅうからだじゅう細胞さいぼう分裂ぶんれつさせて自分じぶん子孫しそんつくるわけにはいかなくなります。【2】そこで、ひとつの細胞さいぼう自分じぶんからだのすべての情報じょうほうれて、その細胞さいぼう情報じょうほうにしたがって分裂ぶんれつしていき、おやおながたになるような方法ほうほう子孫しそんのこすようになりました。これがたまごのはじまりです。
 【3】最初さいしょ生命せいめいまれたのはうみなかでした。生物せいぶつながあいだうみなか進化しんかをつづけ、最初さいしょたまごうみなかまれました。水中すいちゅうみつけられたたまごは、まだかたいからたず、やわらかいゼラチンしつ中心ちゅうしん細胞さいぼうまもっているだけでした。
 【4】最初さいしょりく進出しんしゅつした生命せいめいは、こけのような生物せいぶつですが、やがて、水辺みずべからいろいろな生物せいぶつ上陸じょうりくしていくようになりました。ゴカイやミミズの仲間なかま、クモやサソリの仲間なかま、カタツムリの仲間なかまなどが、みずからはなれて陸上りくじょうでくらすようになります。【5】クモやサソリの仲間なかまからは、やがて昆虫こんちゅうもあらわれ世界中せかいじゅうひろがりました。それら動物どうぶつたちは、みんなたい中心ちゅうしんかたほねがないので、脊椎動物せきついどうぶつばれています。【6】みずなかではなく、りく最初さいしょたまごむようになったのは、こうした脊椎動物せきついどうぶつでした。空気くうきちゅう乾燥かんそうしないように比較的ひかくてきかたからまもられたたまごは、まるかったり細長ほそながかったり、いろいろなかたちをしていました。
 【7】いぬねこ人間にんげんなどの哺乳類ほにゅうるいは、脊椎動物せきついどうぶつばれ、からだ中心ちゅうしんかた骨格こっかく動物どうぶつです。うみなか進化しんかしたさかななかから、やがてりくがるものがあらわれ、それらがいま地上ちじょう脊椎動物せきついどうぶつ祖先そせんになったとかんがえられています。
 【8】最初さいしょりくがったのは、カエルなどの両生類りょうせいるいでした。カエルは、陸上りくじょうあるき、はい呼吸こきゅうすることができますが、からだ乾燥かんそうにはよわく、水中すいちゅうたまごみ、オタマジャクシとして成長せいちょうします。
 【9】この両生類りょうせいるいなかから、からだがもっと乾燥かんそうつよく、水辺みずべからはなれることのできる動物どうぶつ進化しんかしてきました。それが爬虫類はちゅうるいです。爬虫類はちゅうるい地上ちじょう本格ほんかくてきたまごんだ最初さいしょ脊椎動物せきついどうぶつです。【0】そのころの陸地りくちには植物しょくぶつがおいしげり、かわいた場所ばしょでもたまごめる昆虫こんちゅうなどの脊椎動物せきついどうぶつおおいにさかえていました。陸地りくちでもうまく生活せいかつできて、子孫しそんのこすことができれば、草食そうしょくでも肉食にくしょくでもべるものは豊富ほうふにあるのです。
 そんな爬虫類はちゅうるい仲間なかまから、やがて恐竜きょうりゅうわたしたち哺乳類ほにゅうるい先祖せんぞ出現しゅつげんしてくるのです。

 でも、りくみずあいだにすんでいるカエルは、ときどき、「やっぱりみずなかにカエルかなあ」とおもうときがあるそうです。

 言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかい 


長文ちょうぶん 1.2しゅう
 【1】じゅうのとき、信玄しんげんは、おとうさんといっしょに、はじめて、戦争せんそうにでかけました。
 しかし、てきが、しっかりしろをまもっているので、なかなか、しろをせめおとすことができません。そのうち、ゆきがどんどん、ふってきました。
 【2】おとうさんは、あきらめて、じぶんのくににひきかえすことにしました。
 すると、信玄しんげんは、おとうさんにないしょで家来けらいたちをあつめて、
 「このゆきで、てきも、せめてこないとおもって、ゆだんしているだろう。【3】そのすきに、せめこめば、きっと、せめおとせるにちがいない。」
 そういって、てきしろにむかい、ゆだんしているてきしろを、せめおとしてしまいました。
 それからも、信玄しんげんは、いく戦争せんそうをしましたが、いちも、まけたことがありませんでした。
 【4】そして、とうとう、謙信けんしん信玄しんげんは、川中島かわなかじまというところでたたかうことになりました。
 しかし、どちらも、つよいものどうしです。なんたたかっても、なかなか、勝負しょうぶがつきません。
 【5】あるとき、謙信けんしんは、ウマにのり、かたなをふりあげて、いきなり信玄しんげん陣地じんちに、せめこんでいきました。
 信玄しんげんかたなをぬくひまもありません。もっていた軍配ぐんばいで、やっと、謙信けんしんかたなをうけとめました。
 「えいっ、えいっ。」
 【6】謙信けんしんは、なおも、はげしく、きりかかります。謙信けんしんかたなが、信玄しんげんかたにあたって、がながれました。
 そのとき、信玄しんげん家来けらいが、かけてきて、謙信けんしんののっているウマのおしりを、びしりと、やりでたたきました。
 【7】「ヒヒーン」
 ウマは、おどろいて、にげだしました。
 こうして、謙信けんしんは、とうとう、信玄しんげんをうちとることができませんでした。
 やがて、信玄しんげんは、ほかのくに戦争せんそうをはじめました。
 【8】信玄しんげんくには、山国やまぐにです。しおや、さかなは、よそのくにから、はこんでこなくてはなりません。そこで、あいてのくにでは、とちゅうのみちをふさいで、しおやさかなを、信玄しんげんくににはこべないように、してしまいました。
 【9】謙信けんしんは、そのはなしをきいて、信玄しんげんを、のどくにおもいました。そして、あいてのやりかたに、すっかり、はらをたてました。
 「きていくのにひつような、しおやさかなをたべさせないようにするなんて、なんという、ひきょうなやりかただろう。
 【0】わしと信玄しんげんとは、てきどうしだが、だまってはいられない。よし、すぐに、こちらからおくってやろう。」
 そういって、じぶんのくにから、しおやさかなを、どっさり、信玄しんげんのところへおくってやりました。

 (大石おおいししん
 「どもにかせるえらいひとはなし」(実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ


長文ちょうぶん 1.3しゅう
 【1】生徒せいとたちは、たがいにをつけあって、だれがどろぼうをするのかたえずちゅういしていました。すると、わかりました。おなじなかまのひとりです。
 「どろぼうといっしょに勉強べんきょうするなんて、いやなことだ。先生せんせいにそうだんして、あいつをおいだしてもらおう。」
 【2】なんひとにんかの生徒せいとたちが、そういって、こっそりばんばんけい先生せんせいのところへいきました。
 「先生せんせい、このあいだから、なんも、ものがなくなるのです。こっそりしらべてみると、どろぼうは、わたしたちのなかまのひとりです。【3】どうか、そのどろぼうを、学校がっこうからおいだしてください。おねがいです。」
 「そうか。よしよし、そんなわるい生徒せいとがいるのか、よし、わかったぞ。」
 ばんばんけい先生せんせいは、生徒せいとたちに、そういいました。
 【4】それからさんにちして、また、ものがなくなりました。
 しかも、ばんばんけい先生せんせいは、いっこうに、その生徒せいとをやめさせるようすもありません。
 生徒せいとたちは、また先生せんせいのところにいって、いいました。
 【5】「先生せんせい、どうしてどろぼう生徒せいとをおいだしてくださらないのですか。わたしたちは、あいつがいるために、安心あんしんして勉強べんきょうすることもできません。もし、先生せんせいが、どうしても、あの生徒せいとをやめさせてくださらないとおっしゃるなら、わたくしたちのほうで、もうやまをおりようとおもいます。」
 【6】すると、ばんばんけい先生せんせいは、
 「そうか、みんながやまをおりるか。それなら生徒せいとを、ひとりのこらず、ここへよんできておくれ。」と、いいました。
 【7】(やっと、先生せんせいは、われわれのいうことをきいてくださったな。みんなのまえで、あのどろぼう生徒せいとをおいだすつもりなんだな。)
 生徒せいとたちは、そうおもいました。
 やがて、生徒せいとが、のこらずあつまりました。
 【8】どろぼう生徒せいとも、しらんがおをしてきました。すると、先生せんせいがいいました。
 「このなかに、ひとのものをぬすむ、わるい生徒せいとがいるということだ。そして、その生徒せいと学校がっこうから、おいだしてほしいとたのみにきたものがいる。【9】もし、わたしが、その不良ふりょう生徒せいとをおいださないなら、じぶんたちが学校がっこうをやめて、でていくといってきた。
 でていくがいいだろう。もともと、わたしはそのようにただしい生徒せいとたちにおしえることはなにもないのだ。【0】わたしがおしえたいのは、ひとのものをこっそりぬすむような、わるいしんをもっている生徒せいとだけでいいのだ。どろぼうをするような生徒せいとを、いつまでもおしえて、ただしい人間にんげんにしたいのだ。もしそれができたら、わたしはまんぞくだ。もうなにもいうことはない。」
 生徒せいとたちは、しんとしてしまいました。

 (今西いまにしゆうぎょう
 「どもにかせるえらいひとはなし」(実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ


長文ちょうぶん 1.4しゅう
 【1】「かおりマツタケあじシメジ」という言葉ことばにあるように、わたしたち日本人にっぽんじんは、あきになるとマツタケをたのしみたいとかんじます。マツタケごはんに、土瓶どびんし、やきやきマツタケ、貴重きちょう高級こうきゅうあじとしねんいちあじわって、しんからだ元気げんきになるようです。【2】また、ふだんからシイタケ、エノキダケ、シメジ、ヒラタケ、マイタケ、エリンギなど、お料理りょうりかせない素材そざいとなるきのこもあります。このように身近みぢか存在そんざいであるきのこは、いったいいつごろからべられるようになったのでしょう。
 【3】高松たかまつの このみねせまに かさてて
 みちもりさかりたる あきこうのよさ
 万葉集まんようしゅうおさめられたうたです。「かさてて」はマツタケがカサをひろげてはえている様子ようす、「あきこう」はマツタケのかおりのことです。【4】このうたられるように、日本人にっぽんじんすくなくとも奈良なら時代じだいにはきのこをべていたとかんがえられます。さら平安へいあん時代じだいには、貴族きぞくたちのあいだで、ぶしをいろどる文化ぶんかてき行事ぎょうじとしてマツタケかりりがおこなわれたそうです。
 【5】きのこは、光合成こうごうせいをしている植物しょくぶつちがって、こうがなくてもきていくことができます。むかしは、はなかせない植物しょくぶつであるシダやコケの仲間なかまかんがえられていたこともありますが、いま菌類きんるいとして植物しょくぶつ動物どうぶつとはちが生物せいぶつだとされています。
 【6】植物しょくぶつ動物どうぶつは、べたりべられたりすることでつながり、バランスがたもたれています。植物しょくぶつひかりから栄養えいようぶつをつくり生産せいさんしゃ役割やくわりたしています。動物どうぶつは、ほかの生物せいぶつべて栄養えいよう吸収きゅうしゅうする消費しょうひしゃ役割やくわりたしています。【7】その植物しょくぶつ生産せいさん動物どうぶつ消費しょうひがうまくながれていくように、消費しょうひれなかったものを分解ぶんかいするのがきのこたち菌類きんるい役割やくわりです。
 きのこは、「おおきなにはえるちいさなども」ではありません。【8】自然しぜんかいなかでは、植物しょくぶつ動物どうぶつとならぶようなおおきな存在そんざいなのです。そうおもうと、おなべのなかでぐつぐつえているエノキやシメジが「自然しぜん大切たいせつにするんだよ」とかたりかけるようにおもえてきます。

 【9】おなじようにえるきのこにも、いろいろな性格せいかくがあります。のんきなエノキ、まじめなシメジ、じっとマツタケ、おいシイタケ、筋肉きんにくもりもりマッシュルーム。【0】

 言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかい μみゅー


長文ちょうぶん 2.1しゅう
 【1】幸之助こうのすけは、自転車じてんしゃをやめました。そして、いのひとをたよって、電燈でんとうでんとう会社かいしゃにはいり、工夫くふうこうふになりました。ものおぼえのよい幸之助こうのすけは、さんねんもすると、すっかり電気でんきのことをおぼえてしまいました。【2】そして、せっせとおかねをためて、こんどは、じぶんで電気でんきをはじめました。
 電気でんきといっても、長屋ながやをかりて、かんたんな機械きかいいいれ、電燈でんとうでんとうのソケットをつくったのです。
 【3】でも、もともとわずかなおかねしかありませんでしたし、ソケットは、おもったようにれませんでした。
 (こまった、こまった。このままでは、せっかくいいれた機械きかいも、ってしまわなければ、あしたから、たべていけないじゃないか……。)
 【4】幸之助こうのすけは、あるがくれるのもづかずに、うでぐみをしてかんがえこんでいました。すると、となりのいえから、おかあさんとどもが、なにかしきりにいいあっているこえがきこえてきました。
 【5】「電燈でんとうでんとうをこっちへおくれよ。ほんがよめないよ。」
 「おかあさんだって、このしたてもの、どうしても、こんやじゅうに、しあげなけりゃならないんだもの、電燈でんとうでんとうがいりますよ。おまえが、こっちへきて、勉強べんきょうすればいいじゃないか。」
 【6】たったひとつ、へやにさがっている電燈でんとうでんとうを、おかあさんとどもがとりあいっこしているのでした。
 そのころは、どこのいえでも、ひとつかふたつの電燈でんとうでんとうを、あっちへひっぱり、こっちへひっぱりして、つかっていたのです。【7】電燈でんとうでんとうせんをふやすには、とてもたかいおかねがいりました。
 幸之助こうのすけは、そのとき、ふとかんがえました。
 (もし、ひとつの電燈でんとうでんとうせんから、かんたんにもうひとつのせんをひけるようにできたら……。【8】そうだ、ソケットをくふうして、ふたまたにすればいいじゃないか。ふたまたソケットをつくってみよう。)
 あくるから、幸之助こうのすけはいっしょうけんめい、ふたまたソケットをつくりはじめました。
 【9】「ほう、これはべんりなもんだな。」
 ふたまたソケットは、どこのいえでもよろこばれ、とぶようにれました。そして、幸之助こうのすけ工場こうじょうは、どんどん、おおきくなっていきました。
 【0】むかし、自転車じてんしゃではたらいたことも、むだにはなりませんでした。ソケットのつぎに、幸之助こうのすけは、自転車じてんしゃにつける電池でんちのランプをつくって、またおおもうけをしたのです。

 (今西いまにしゆうぎょう
 「どもにかせるえらいひとはなし」(実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ


長文ちょうぶん 2.2しゅう
 【1】「すまないなあ。おれの給料きゅうりょうがやすいから、おまえにくろうをかけるなあ。」
 「いいえ、そんなこと。」
 「ぬう機械きかいができたら、ふくをつくるのも、ずいぶんらくになるだろうな。」
 【2】「ええ、そうすれば、こんなにかたもこらないでしょうし。それにねえ、あなた。もし、そんな機械きかい発明はつめいしたひとは、大金持おおがねもちになれるんですって。」
 「ふーん、じゃあ、ひとつ、そいつを発明はつめいしてみるか。」
 ハウは、じょうだんでなく、そういいました。
 【3】びんぼうのために、学校がっこうへいけなかったハウは、もう、びんぼうはこりごりでした。つまやどもには、らくをさせてやりたいとおもいました。
 ハウは、さっそく、機械きかい研究けんきゅうに、とりかかりました。
 【4】しかし、ちょっとかんがえたのでは、かんたんにできそうでしたが、どうしてどうして、なかなかむずかしいことでした。
 またたくまになんねんもたちました。だが、ハウのミシンは、できませんでした。
 【5】ハウは、つとめをやめて、ミシンの発明はつめいにうちこんでいました。ハウは、あけてもくれても、ミシンのことばかりかんがえました。
 いとのつかいかたや、はりのかたち、はりのうごかしかた……。いろいろ、くふうしてみましたが、なかなか、うまくいきませんでした。
 【6】ハウは、研究けんきゅうにゆきづまって、ぼんやり、つまのはり仕事しごともとを、ていました。
 「おまえにらくをさせてやろうとおもったのに、かえってびんぼうさせちゃったなあ。」
 「いいのよ。あなたの成功せいこうをしんじているんですもの。」
 【7】「ぼくは、ゆうべ、こんなゆめをたよ。ぼくは、土人どじんにつかまっちゃったんだ。土人どじん酋長しゅうちょうが、はやくミシンをつくれ、つくらないと、ひとつきだぞって、ぼくののまえに、やりをつきつけるんだよ。」
 【8】「ほほほ、あなたが、いつも、はやくミシンをつくらなければっておもってるから、そんなゆめをるんですわ。」
 「しかも、そのやりのさきにあながあいているんだよ。」
と、ハウはわらいました。ところが、そのわらいが、きゅうにハウのかおからきえたのです。
 「あっ、そうだ!」
 【9】ハウは、仕事場しごとばへとんでいきました。
 ハウはいままで、りょうはしがとがったはりのまんなかに、あなをあけて、いとをとおしていたのです。
 だが、ゆめのなかのやりのはさきのように、はりのさきに、あなをあけたらどうだろうと、かんがえたのです。
 ハウは、さっそくためしてみました。【0】

 (長崎ながさき源之助げんのすけ
 「どもにかせるえらいひとはなし」(実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ


長文ちょうぶん 2.3しゅう
 【1】わらをたばねたたわしでは、なかなかたるのすみっこがうまくあらえません。ほそいぼうのさきでほじくっては、またわらでこすって、みずをながすのです。はまっかにはれあがって、かじかむし、なかなかうまくいきません。
 【2】(なにか、もうすこしいいものは、ないかな。)
 せい左衛門さえもんしょうざえもんは、たるあらいをするたびに、かんがえました。あるとき、あらなわを、なんほんもみじかくきりそろえて、たばねてみました。しかし、あまりうまくいきませんでした。【3】わらくずが、やけにこまかくたくさんでます。
 「たばねただけではだめだ。なにかでしっかりしばって、くずれないようにしなければ。」
 そして、かんがえたのは、垣根かきねたけをしばってある、シュロなわでした。【4】せい左衛門さえもんしょうざえもんは、たばねたわらを、シュロなわで、ぐるぐるまきに、かたくしばりつけました。あらなわのたばは、くずれなくなりました。
 (そうだ、シュロは、こんなにつよいのだ。【5】なにも、たわしは、わらでなければならないことは、ないはずだ。シュロをたばねてみてはどうだろう。そうすれば、わらくずもつかないじゃないか。)
 せい左衛門さえもんしょうざえもんは、さっそく、シュロばかりのたわしを、つくってみました。【6】ふたみっつつくって、なかまの小僧こぞうさんにも、つかってもらいました。
 「こりゃ、なかなかいいたわしだ。わらくずがくっつかなくて、らくちんだよ。だが、どうもすこしこしがよわいな。たるのつぎめや、すみっこがうまくいかないや。」
 【7】ともだちがいいました。そこでこんどは、シュロを針金はりがねでしばって、シュロのさきをブラシのようにみじかくしました。この針金はりがねでしばるしばりかたをくふうするには、ずいぶん時間じかんがかかりました。【8】そして、さいごにしあげたのは、ほん針金はりがねのあいだに、みじかいシュロのをならべ、針金はりがねをぐるぐると、ねじったものでした。すると、まるでシュロの毛虫けむしのようなものが、できました。
 「なんだいそれは。なにをつくってるんだい。」
 【9】なかまがてわらいました。するとせい左衛門さえもんしょうざえもんは、その毛虫けむしりょうはしをもって、ふたつにおりまげてつなぎました。
 「なーるほど。」
 みんな感心かんしんしました。
 【0】みごとにできました。わらくずはでないし、たるのすみずみまでブラシがきいて、たるあらいが、とてもらくになりました。せい左衛門さえもんしょうざえもんは、そのかたちがカメににているので、かめのこだわしとまえをつけてりだしました。かめのこだわしは、日本にっぽんだけでなく、アメリカ、中国ちゅうごくやインドにもどんどんれて、せい左衛門さえもんしょうざえもん大金持おおがねもちになりました。

 (今西いまにしゆうぎょう
 「どもにかせるえらいひとはなし」(実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ


長文ちょうぶん 2.4しゅう
 【1】「あの二人ふたりふたりはまるでみずあぶらのようだ」というたとえは、なかわるいことをあらわすのに使つかわれます。このいいかたでもわかるように、みずあぶら相性あいしょうわるく、まったくじりいません。【2】ドレッシングは、よくふって使つかいますが、しばらくおいておくと、またみず部分ぶぶんあぶら部分ぶぶんかれてしまいます。
 ですから、あぶらよごれがついてしまったとき、みずだけではあらながすことができません。【3】あぶらは、みずけないからです。反対はんたいに、みずけやすいよごれ、たとえば醤油じょうゆ水性すいせいのようなものは、簡単かんたんみずだけであらながすことができます。みずけるということは、みずをつなぐことができるということです。【4】みずけるよごれは、みずといっしょにあらながされていくのです。
 そこで、みずだけではちないよごれのとき、わたしたちは石鹸せっけん使つかいます。では、どうして石鹸せっけん使つかうと、あぶらよごれをとすことができるのでしょうか。
 【5】これには、みずともあぶらともなかよくできる、石鹸せっけん性質せいしつおおきな役割やくわりたしています。石鹸せっけんは、みずける部分ぶぶんと、あぶらける部分ぶぶん両方りょうほうっています。【6】このように、みずともあぶらともをつなぐことができる性質せいしつつものを「界面かいめん活性かっせいざい」といいます。石鹸せっけん成分せいぶん一方いっぽうあぶらをつなぎ、もう一方いっぽうみずともをつなぐので、あぶらみずなかけ、あぶらよごれもあらながされていくのです。
 【7】みなさんがごろべているマヨネーズも、この界面かいめん活性かっせいざいはたらきでつくられているのです。マヨネーズは、たまごの黄身きみサラダ油さらだゆおも成分せいぶんですが、あぶらはそのままではうまくじりいません。【8】しかし、たまごの黄身きみなかふくまれている「レシチン」という成分せいぶん界面かいめん活性かっせいざいとなり、黄身きみ水分すいぶんあぶらをうまくわせるのです。そして、あのなめらかなマヨネーズができあがるというわけです。
 【9】なかわるひとたちのあいだはいって、「まあそうわずに仲良なかよくやろうよ」とうまくまとめることができるひとは、「まるで石鹸せっけんみたいにえらいひとだ」とほめてあげることができるかもしれません。【0】

 言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかい τたう


長文ちょうぶん 3.1しゅう
 【1】ソクラテスが、ただしいことを、わかいひとたちにとくので、わるい役人やくにんたちは、ソクラテスのことを、にくむようになりました。学者がくしゃたちも、ソクラテスのひょうばんをねたむようになりました。
 【2】「ソクラテスを、このままにしておいたら、たいへんなことになる。」
 「わかいひとたちは、みんな、ソクラテスのでしになってしまうかもしれない。」
 そこで、役人やくにんたちは、ソクラテスをろうやにおしこめ、とうとう死刑しけいにすることにきめました。
 【3】ソクラテスのでしや、ともだちは、それをきいて、とても、しんぱいしました。
 「なんとかして、ソクラテスをたすけることは、できないものだろうか。」
 すると、ひとりが、いいました。
 【4】「いいことがある。ろうやの番人ばんにんに、おかねをあげれば、にがしてくれるということだ。」
 「それでは、わたしたちで、おかねをあつめて、番人ばんにんにわたして、ソクラテスをにがしてもらうことにしよう。」
 みんなは、よろこんで、いいました。
 【5】そして、クリトンという、でしが、ソクラテスにあいに、ろうやにいくことになりました。
 クリトンが、ろうやのなかに、はいっていくと、ソクラテスは、まだ、ねむっていました。
 【6】(こんな、りっぱな先生せんせいを、アテネのひとびとは、どうして、ころそうとするのだろう。)
 そうかんがえて、クリトンのむねは、いっぱいになりました。
 そのとき、ソクラテスが、をさましました。
 【7】「クリトン。こんなはやく、どうして、きたのかね。」
 ソクラテスが、いいました。
 「先生せんせい。たいへんです。あした、先生せんせいは、死刑しけいになることにきまったのです。」
 でも、ソクラテスの顔色かおいろは、かわりません。
 【8】「それで、みんなで、そうだんして、先生せんせいをたすけだすことにしたのです。みんなで、おかねをあつめて、わたしがもってきました。このおかねを、ろうやの番人ばんにんにやれば、番人ばんにんは、先生せんせいをにがしてくれます。
 【9】先生せんせい、どうか、わたしといっしょに、ここをにげてください。」
 「なに、わたしに、にげろというのか?」
 ソクラテスは、おこったように、いいました。
 「わたしはこれまで、くにできめたきまりは、まもらなくてはいけないということを、おおぜいのひとたちに、はなしてきた。【0】それなのに、じぶんが、死刑しけいになるからといって、くにがきめたことをやぶってもいいだろうか。そんなことは、わたしには、できない。
 わたしは、いままで、ただしいとおもったことをいい、ただしいとおもったことをおこなってきた。いまのわたしにとって、いちばんただしいことは、くにのきまりにしたがって、ぬことなのだ。」
 クリトンは、じっと、ソクラテスのかおつめたまま、だまってしまいました。ソクラテスのほおには、あかみがさし、には、かがやきがられました。ちからづよい、あかるいこえではなしてくれたソクラテスのことばは、クリトンのむねをゆすぶりました。

 (大石おおいししん
 「どもにかせるえらいひとはなし」(実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ


長文ちょうぶん 3.2しゅう
 【1】ひろりこうは、トラをさがしながら、どんどんやまおくへはいっていきました。ななにちなな(なぬかななよ、やすみもしないで、トラをさがしました。けれども、トラのすがたはえません。
 【2】「ああ、いったい、おとうさんをころしたトラは、どこへいってしまったのだろう。」
 はちめのことです。ひろりこうはふかい谷間たにまにおりていきました。がくれたのもわすれておくへおくへとはいっていきました。【3】そのはずです。そらにはまんまるのおげっさんがでていて、あたりはまるでひるのようにあかるかったのです。
 しばらくすると、ウマがぴっとみみをたててとまりました。
 【4】ると、とおくのかげに、おおきな、おおきな、トラが、こちらをむいて、ねそべっています。
 「あっ、ついにいたぞ。おとうさんをころしたトラにちがいないぞ。」
 ひろりこうは、いちばんおおきなをぬいてゆみにつがえました。【5】そして、じりじりとウマをすすめてちかづきました。
 ウマをすすめると、トラもがついて、うごいたようにおもえました。
 「よし、いまだ。」
 ひろりこうは、ちからいっぱいゆみをひきしぼり、トラの(のあいだをねらって、はなちました。
 【6】みごとにめいちゅうしました。一本いっぽんで、トラはうごかなくなったようです。
 「おとうさんのかたきをとったぞ。」
 ひろりこうは、ウマからとびおりると、かたなをかまえて、トラのところへかけつけました。
 【7】ところが、どうでしょう。トラだとばかりおもっていたのはかたいいわです。いわが、かげをとおしてさしてくるつきひかりで、トラそっくりにえたのです。しかし、おどろいたことに、は、かたいいわに、まちがいなくつきささっていました。
 【8】ひろりこうは、ざんねんにおもうより、かたいいわがささったことがふしぎでなりませんでした。ひろりこうは、いわにむかって、もう一度いちどゆみをひいてみました。【9】しかし、は、カチンとおとをたてて、はねとんでしまいました。ひろりこうが、にくいにくいトラだとおもいこんでいたからこそ、いわにもがささったのです。【0】

 (今西いまにしゆうぎょう
 「どもにかせるえらいひとはなし」(実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ


長文ちょうぶん 3.3しゅう
 【1】そのころのロシアは、イギリスやオランダなどのくにとくらべて、いろんなところがおくれていました。
 なかでも、大帝たいていのいちばんのしんぱいは、ロシアにふねがあまりないことでした。ものをはこぶおおきな汽船きせんも、いくさをする軍艦ぐんかんもほとんどないのです。
 【2】(こんなことでは、ロシアはおおきくはなれぬ。ゆたかなくにになれぬ。)
 大帝たいていはまず、ふねをつくることに、いっしょうけんめいになりました。外国がいこくからふねのだいくをよんできて、さかんにふねをつくらせました。
 【3】でも、なんねんかたつと、かんがえなおしました。
 (外国がいこくじんに、まかせっぱなしでは、いつまでたっても、ロシアじんは、じぶんでふねをつくることはできない。
 ふねだけでなくほかのことでも、外国がいこくじんをよんできいていてはほんとうのことはわからない。【4】われわれが外国がいこくへいって、じかにまなんでくるほうがはやい。
 よし、できることなら、わしもふねふなだいくになって、ふねのつくりかたぐらい、おぼえてこよう。)
 大帝たいていは、このことを家来けらいにはなしました。
 【5】「とんでもございません。大帝たいていはロシアをせおってたたれる、たいせつなおかたです。いくら勉強べんきょうのためとはいえ、ふねふなだいくになられることは、おひかえください。」
 家来けらいたちはとめましたが、大帝たいていはききません。
 【6】それどころか、さっさとオランダやイギリスなどへいくひとたちをきめてしまいました。そして、ひゃくにんほどのこれらのひとのなかに、こっそり、大帝たいていまえをかくしてはいりました。
 【7】「よいか。これからは、わしはピョートルミハイロフというロシアの兵隊へいたいじゃ。大帝たいていなどとよんではならぬぞ。」
 「はい。かしこまりました。大帝たいてい。」
 「これこれ、だから、をつけろというのだ。」
 【8】こうして大帝たいていたちが、オランダへいったのはいちろくきゅうななねん大帝たいていじゅうさいのときです。
 「なるほど。オランダは、世界せかいでもひょうばんのうみくにといわれるだけあって、なかなかさかんなくにだ。よし、まず、このオランダの造船ぞうせんしょふねふなだいくになろう。」
 【9】大帝たいていはしんぱいする家来けらいたちとわかれて、こっそり、ふねふなだいくのでしになりました。
 (中略ちゅうりゃく
 まもなく、ピョートル大帝たいていのちからで、ロシアはみちがえるほどりっぱなくにになったことは、いうまでもありません。【0】

 (神戸かんべあつしきち
 「どもにかせるえらいひとはなし」(実業之日本社じつぎょうのにほんしゃ


長文ちょうぶん 3.4しゅう
 【1】いまからせんねんくらいまえ古代こだいローマの時代じだい、「サポーのおか」というところにあった神殿しんでんでは、いけにえのひつじいてかみささげるというならわしがありました。このひつじあぶらがしたたりちてはいじり、つちんでいきました。【2】このつちよごれをよくとしたことから、石鹸せっけんとして使つかわれるようになったといわれています。英語えいご石鹸せっけんのことを「ソープ」といいますが、これは、このおか名前なまえの「サポー」からているそうです。
 【3】また、おなじころ、現在げんざいのイラクのあたりでさかえていたメソポタミア文明ぶんめいでも、石鹸せっけんつくかたがわかっていたようです。シュメールじんのこした粘土ねんどいたには、くさびかたちがた文字もじで、はいにいろいろなあぶらぜてると石鹸せっけんができるといてあります。
 【4】このことからもわかるように、石鹸せっけんは、動物どうぶつ植物しょくぶつあぶらを、灰汁あくなどのアルカリ性あるかりせい液体えきたいるとつくることができます。灰汁あくというのは、植物しょくぶつはいみずかしたその上澄うわずみです。【5】しかし、アルカリ性あるかりせいえきだけでもよごれはいくらかとせることから、人々ひとびと洗濯せんたくには灰汁あく使つかうことがおおかったようです。
 【6】日本にっぽん石鹸せっけんはいってきたのは、室町むろまち時代じだいわりごろです。鉄砲てっぽうなどとおなじように、石鹸せっけんはポルトガルじんってきたものです。しかし、高級こうきゅうひんだった石鹸せっけんは、身分みぶんたかひとたちだけのものでした。【7】一般いっぱん人々ひとびとは、洗濯せんたくには、ムクロジというやサイカチというのさや、そして灰汁あく使つかっていました。
 ちなみに、ムクロジのたねはかたく、お正月しょうがつのはねつきのはねのおもりに使つかわれています。【8】この外側そとがわかわみずにつけてもむと、あわ石鹸せっけんのように使つかえたのです。
 こんなにふる歴史れきし石鹸せっけんですが、だれでも気軽きがる洗濯せんたく使つかうことができるようになったのは、日本にっぽんでは明治めいじ時代じだい後半こうはんになってからです。
 【9】あらうとき、わたしたちも古代こだいローマのいけにえのひつじに、感謝かんしゃしなくてはなりませんね。

「ヒツジさん、石鹸せっけんのもとになった感想かんそうをひとこと。」
「まあ、セッケン(世間せけん)ではそうっているけどね……。」
「いけにえは、もうこりごりですか。」
「そうぷ。」【0】

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