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課題集
長文ちょうぶん 10.1しゅう
 【1】コンピュータは、あることをおぼえさせればいち間違まちがいなく記憶きおくします。しかし、ものはそうではありません。
 【2】記憶きおく実験じっけんで、ネズミを、ブザーがったときにレバーをすとえさをもらえるような仕組しくみのはこれておきます。【3】ネズミは、ブザーとレバーとえさ関係かんけいがつくまで、なんじゅうかいなんひゃくかいなんびゃっかい試行錯誤しこうさくごかえします。そして、やがて、ブザーがったときにレバーをせばよいのだということを記憶きおくします。【4】ただしいやりかたおぼえるまでに、間違まちがったやりかたなんかいかえして失敗しっぱいすることが必要ひつようなのです。
 もののこの記憶きおく仕方しかたは、じつきるために役立やくだっています。【5】もし、ブザーとレバーの関係かんけい記憶きおくした人間にんげんが、ブザーのかわりにサイレンがり、レバーのかわりにボタンがいてあるような場所ばしょかれたとすると、人間にんげんはブザーとレバーの関係かんけいから類推るいすいして、サイレンとボタンの関係かんけいにやがてすぐにがつくでしょう。【6】しかし、機械きかいは、いつまでたってもブザーとレバーの関係かんけいからあたらしいかんがえにうつることができません。
 【7】ものは、高等こうとうになるほど曖昧あいまい記憶きおく仕方しかたができるようになります。わたしたちは、あるひとべつふくあらわれても、それがおなじんだということがわかります。【8】もし記憶きおくが、機械きかいのように正確せいかくなものであったなら、ちがふくているひとちがひとだとおもってしまうでしょう。【9】そのような記憶きおくでは、もの変化へんかはげしい世界せかいなかつづけることができなかったはずです。かずおおくの失敗しっぱいとおしておぼえるところに、もの記憶きおく秘密ひみつがあるのです。【0】

 言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかい Σしぐま


長文ちょうぶん 10.2しゅう
 ヘレンはいちさいはんのころ、おも病気びょうきで、えなくなり、みみこえなくなりました。こえすことはできましたが、ひとはなしこえないため、まさしくはなすこともできませんでした。そのために、ひとおもっていることをうまくつたえられずに、毎日まいにち癇癪かんしゃくかんしゃくをおこしてはあばれ、まるで動物どうぶつのようにづかみでものをべるというような生活せいかつぶりでした。家族かぞくひとたちは、いったいこの将来しょうらいどうなってしまうのだろうと、むねがつぶれるおもいでした。
 ぽかぽかとおひさまがほほえむよんがつのはじめ、運命うんめいがやってきました。サリバン先生せんせいは、にわ井戸いどからみずをくみ、ヘレンのをとって、そのつめたいみずをかけました。
 ヘレンはおどろいてをひっこめました。そのをまたとって、サリバン先生せんせいみずをかけました。なんかそうするうちに、ヘレンは気持きもちよさそうに、をのばしたままにしました。そこで先生せんせいは、ヘレンののひらにゆびでこうきました。
 「w a t e rウォーター
 ウォーター、そう、みずのことです。ヘレンは不思議ふしぎそうなかおをしています。そこで、サリバン先生せんせいはもう一度いちど、そのみずをかけました。そして、すぐにまた、「water」ときました。ヘレンは、かんがえているようすです。さらに先生せんせいが、ヘレンのみずをかけたところ、ヘレンがうなずいたのです。すかさず、先生せんせいは「water」ときました。すると、へレンが、先生せんせいさぐりあて、おなじようになにかをそのこうとしました。
 「わかってくれたのね」サリバン先生せんせいは、むねこうりをおさえつつ、ヘレンのをとり自分じぶんかおってき、ほおをなぞらせたあと、くちびるにあてがいました。それから、ゆっくりとそしてはっきり、発音はつおんしました。
「ウ、ォーター」
もう一度いちどいました。
「ウォーター」
すると、ヘレンもまねをするようにくちびるをすこしうごかしました。いきともこえともつかないかすかなおとがヘレンのくちからました。
 こののことをサリバン先生せんせい一生いっしょうわすれなかったでしょう。えずみみこえず、くちもきけなかったヘレンが、まれてはじめて言葉ことばにふれた瞬間しゅんかんです。ヘレンは、ふくをびしょぬれにしながら、なんみずにさわり、先生せんせいをとって、文字もじらしきものをそのき、くちびるをうごかしました。サリバン先生せんせいも、よろこびのなみだみずでぐしゃぐしゃになりながら、「ウォーター」「ウォーター」とかえすのでした。

 言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかいφふぁい


長文ちょうぶん 10.3しゅう
 いま地球ちきゅうじょうには、ひゃくじゅうまん種類しゅるいえる生物せいぶつがいます。そのうちのはちじゅうまん種類しゅるい昆虫こんちゅうで、よんじゅうまん種類しゅるい動物どうぶつで、のこりのさんじゅうまん種類しゅるい植物しょくぶつです。もし、世界せかいじゅう種類しゅるい生物せいぶつむらだったら、種類しゅるい昆虫こんちゅうで、さん種類しゅるい動物どうぶつで、のこりの種類しゅるい植物しょくぶつということになります。昆虫こんちゅう種類しゅるいがずいぶんおおいということがわかります。もしかすると、昆虫こんちゅうがこの地球ちきゅうでいちばん元気げんきよくらしているとえるのかもしれません。そうえば、ゴキブリなどは、元気げんきのかたまりのようです。
 生物せいぶつは、やくさんじゅうおくねんまえ原始げんしてき生物せいぶつから進化しんかしてきました。進化しんか過程かてい絶滅ぜつめつした生物せいぶつふくめると、いま生物せいぶつ種類しゅるいひゃくばいいちおくせんまん種類しゅるいもの生物せいぶつがいたと推定すいていされています。
 どの生物せいぶつ自分じぶんきるのに都合つごうのよいかたちをしています。たとえば、キリンはくびながいので、とおくにいるてきつけたり、たかえだべたりすることができます。ゾウははなながいので、自分じぶんはなをホースがわりにしたり、はなのように使つかったりすることができます。さんグラムしかないジネズミは、自分じぶんちいささをうまくかしてきています。ぎゃくひゃくさんじゅうトンもあるクジラも、自分じぶんおおきさをうまくかしていきています。このジネズミとクジラがシーソーをしたとすると、つりあいをるためには、いちとうのクジラの反対はんたいがわに、よんせんまんひきびき以上いじょうものジネズミがぶらさがらなければなりません。これぐらいちがいのある生物せいぶつがそれぞれ、自分じぶん長所ちょうしょ上手じょうずかしてきているのです。
 このようにおおくの種類しゅるい生物せいぶつがいる理由りゆうを、むかしは、神様かみさまつくったからだとかんがえていました。しかし、いくら神様かみさまでも、ひゃくじゅうまん種類しゅるいもの生物せいぶつつくるのは大変たいへんです。それでも、むかしひとは、神様かみさまならそういう神業かみわざができるとかんがえていたのです。
 じゅうはち世紀せいきに、ゾウの化石かせき研究けんきゅうした学者がくしゃが、生物せいぶつなかにはすで絶滅ぜつめつしたものがあるということを発見はっけんしました。ラマルクは、このかんがえを発展はってんさせて、生物せいぶつたねしゅ変化へんかするというせつべました。たとえば、キリンは、たかいところにえているべるために、くびながばしているうちに、いまのようなキリンになったとうのです。
 しかし、このせつには重大じゅうだい弱点じゃくてんがありました。たしかにいちとうのキリンの一生いっしょうかんしてえば、たかいところのべようとしているうちに、だんだんとくびながくなるということはえるかもしれません。しかし、そのくびながさがそのまま子供こどもがれるかどうかということはわかりません。
 みなさんのおとうさんやおかあさんが子供こどものときにしっかり勉強べんきょうしてくれたおかげで、あなたはまれつきなにでもっていたということになれば、これほどいいことはありません。しかし、実際じっさいには、あなたはあなたでまた最初さいしょからおとうさんやおかあさんがしたのとおな勉強べんきょうをしなければなりません。こういうことをると、おや獲得かくとくした能力のうりょくがそのまま子供こどもがれるということはないようです。
 ラマルクのせつ批判ひはんする学者がくしゃは、つぎのような実験じっけんをしました。まず、ネズミのしっぽをみじかってしまいます。ネズミにはかわいそうですが、しっぽだけなのでいのちには別状べつじょうがなかったというところがすこしほっとするところです。このしっぽをったネズミからまれたネズミのしっぽも、またみじかってしまいます。このようにして、なんだいもしっぽをみじかったにもかかわらず、まれる子供こどもはいつもしっぽのながいネズミでした。
 しかし、この実験じっけんは、ラマルクのせつ批判ひはんするにはあまりたしかなものとはえませんでした。なぜなら、ネズミは自分じぶんからすすんでしっぽをみじかくしようとしたのではなく、無理矢理むりやりしっぽをみじかくさせられたからです。この実験じっけんのためになにひきびきものネズミのしっぽをった学者がくしゃいまごろ、「しっぽの実験じっけんはしっぽい(失敗しっぱい)だったなあ」とおもっているかもしれません。
 言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかいΣしぐま


長文ちょうぶん 10.4しゅう
 梅雨つゆぶしになるとよくかけるカタツムリ。まるでシャワーをたのしむようにあめなかをのんびりと散歩さんぽしています。カタツムリはむしではありません。うみかい仲間なかまなのです。むかし々、カタツムリはみずなかんでいました。ですから、りくがって生活せいかつするようになったいまでも、あめ大好だいすきなのです。からっとさわやかにれたあつだい苦手にがてです。しかし、からがあるから、からからにかわいてしまうことはありません。あつは、くさかげかくれてじっとしています。梅雨つゆぶしにあれだけよくかけることができたカタツムリが、なつになるとすっかりえてしまうのはそのためです。カエルやヘビが冬眠とうみんするように、カタツムリはなつのあいだ、ひたすらねむつづけます。そしてあきになりおおくなってくると、ねむりからめ、活動かつどう開始かいしするのです。
 動物どうぶつ昆虫こんちゅうにはオスとメスの区別くべつがあります。けれども、カタツムリにはオスもメスもありません。いちひきのカタツムリがオスの役目やくめとメスの役目やくめをするのです。だから、どのカタツムリも大人おとなになるとたまごみます。一回いっかい産卵さんらんでニじゅうからろくじゅうたまごみますが、ひとつのたまごむのにはじゅうぶんぷんからじゅうぶんぷんもかかります。たまごからかえったカタツムリのあかちゃんは、まれたときからからがあります。

 言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかいωおめが


長文ちょうぶん 11.1しゅう
 【1】都会とかいられるカラスは、ハシブトガラスとハシボソガラスの種類しゅるいです。名前なまえのとおり、くちばしがふとく、「カアカア」とんだこえくのがハシブトガラス、くちばしがほそく、「ガアガア」とにごったこえくのがハシボソガラスです。
 【2】カラスは、たか鉄塔てっとうなどのうえつくります。都会とかいでは、針金はりがねのハンガーやビニールぶくろなどを使つかってづくりをすることもあります。
 カラスは雑食ざっしょくせいで、果物くだもの昆虫こんちゅうしょう動物どうぶつなど、いろいろなものをべます。【3】都会とかいでは、カラスがゴミをあさる姿すがたがよくられますが、カラスがなまゴミのなかからこのんでべるのは、油分ゆぶんあぶらぶんおお唐揚からあからあげやポテトチップスなどです。
 【4】カラスは、ものいち全部ぜんぶべてしまわずに、あまったぶんあないししたかく習性しゅうせいがあります。【5】このため、なにをどこにかくしたかを記憶きおくしておかねばならないので、カラスのあたまがよくなったのだとわれています。
 【6】人間にんげんからはあまりかれていないカラスですが、ひなひなのうちからそだてると、ひとにもよくなつきます。【7】からちたひなひなにミルクやドッグフードをやっているうちにすっかりひとになつき、くちけてえさつようになったというはなしもあります。
 【8】ゴミをあさってらかしたり、人間にんげんおそったりするのはこまりますが、カラスも本当ほんとう人間にんげんきらわれたいわけではないのです。【9】人間にんげんがカラスの気持きもちを理解りかいするところカラスタートすれば、カラスとうまく共存きょうぞんできるかもしれません。【0】

 言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかい Λらむだ


長文ちょうぶん 11.2しゅう
 藤原ふじわら道長みちなが番目ばんめだったので、ちちくらいである摂政せっしょう関白かんぱくぐことができるとはだれもおもっていませんでした。しかし、子供こどものころからけずぎらいで、つよく、またきもきものすわったところのある道長みちながは、のちにつようんきょううん手伝てつだって、事実じじつじょう天皇てんのう以上いじょう権力けんりょく摂政せっしょう関白かんぱくくらいにつき、全盛ぜんせいをきわめました。そして、ほこらしげに「このをばわがとぞおも望月もちづきのかけたることもなしとおもえば」(このわたしだとおもうよ。今日きょう満月まんげつのようにけているところがないとおもえば)といううたをよみました。権力けんりょくをほしいままにした道長みちながは、莫大ばくだい財産ざいさんっていたので、それをかし、貴族きぞく文化ぶんか平安へいあん文化ぶんかをささえました。漢詩かんし和歌わか絵巻物えまきもの、そしてかな文字もじによる文学ぶんがくは、この時代じだいおおきく発展はってんしました。紫式部むらさきしきぶの「源氏物語げんじものがたり」や清少納言せいしょうなごんの「枕草子まくらのそうし」などもこの時代じだい作品さくひんです。
 さて、子供こどものころの道長みちながはどんなふうだったのでしょう。あにたちとともにちちまえばれたときのことです。ちちけんかねいえは、できのよいおおやけにんきんとうという自分じぶんのいとこの息子むすこいにし、「おまえたちは、おおやけにんきんとうのかげもふめんぞ」と叱咤しった激励げきれいしました。あにたちは、うなだれていていましたが、道長みちながだけは、「あいつのかげなんか、たのまれてもふむもんか。わたしだったら、かおをふんづけてやる」とったそうです。なんというけんつよ性格せいかくでしょう。
 また、道長みちながじゅうななさいときつかえていた天皇てんのう発案はつあんきもだめきもだめをしました。あめのふりしきるくらよるこわはなしいたのち天皇てんのうは、そこにいたさんにんにそれぞれちが場所ばしょ一人ひとりでいってくるようにいました。二人ふたりはおそるおそるかけたとおもったら、すぐに「ぶきみなこえこえた」とか「怪物かいぶつた」などとさけびながらもどってきました。道長みちながはとうと、指示しじされた大極殿たいきょくでんだいごくでんという場所ばしょ一人ひとりき、証拠しょうことしてはしら小刀こがたなでけずりとってきたのです。まさか、一人ひとりけるまいとおもった天皇てんのう翌日よくじつ調しらべさせてみると、けずった木片もくへんはぴたりとはしらのえぐれた部分ぶぶんいました。天皇てんのうはその勇気ゆうきにおどろきました。
 このように、積極せっきょくてきこわいものらずの道長みちながは、人生じんせい前向まえむきにきるすべをおさないころからっていたかのようです。だからこそ、つようんきょううんむことができたのでしょう。ちちのちいだ一番いちばんじょうあに道隆みちたかは、関白かんぱくになったものの伝染でんせんびょうくなってしまいました。そのあにのちいだつぎあにみちけんみちかねもまたおな伝染でんせんびょうで、関白かんぱくになってたったいち週間しゅうかんいのちとしました。とき天皇てんのうはそのあとの関白かんぱくめるのにまよっていました。すると、天皇てんのうははが、自分じぶんおとうとでもある道長みちながつよ推薦すいせんしました。
 出世しゅっせするみちながいとおもっていた道長みちながでしたが、さんじゅうさいのころには政府せいふ第一人者だいいちにんしゃとなっていました。「望月もちづき」のうた道長みちながじゅうさんさいのころにんだものです。

 言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかいφふぁい


長文ちょうぶん 11.3しゅう
 さかなかおにはえらがあります。さかなみずなか呼吸こきゅうができるのは、このえらのおかげです。
 人間にんげんはい使つかってからだなか酸素さんそみます。いきむときに酸素さんそれ、くときに二酸化炭素にさんかたんそてています。これをはい呼吸こきゅうびます。それにたいしてさかなはえらを使つかいます。これをえら呼吸こきゅうびます。
 みずなかにはたくさんの酸素さんそがとけていますが、ることはできません。砂場すなば使つかうふるいがありますが、ふるいをえらだと想像そうぞうしてみます。そして、いし酸素さんそ砂粒さりゅうすなつぶみずです。砂場すなばすなをふるいにかけると、ふるいのじょうにはいしだけがのこって砂粒さりゅうすなつぶはサラサラとこぼれちます。さかなくちからみずみ、えらからしていますが、えらというふるいで酸素さんそだけをからだなかむのです。えらが酸素さんそえらんでいるわけです。
 しかし、えらがめる酸素さんそは、みずなかにとけているものだけです。空気くうきなかからはめません。ですから、さかなみずそとでは呼吸こきゅうができません。
 みずなか酸素さんそりなくなると、さかな水面すいめんくちをぱくぱくさせることがあります。これは、空気くうきっているのではなく、水面すいめんちかくのみず空気くうきぜてっているのです。
 人間にんげんも、おかあさんのおはらなかなかにいるいちヶ月かげつのころにエラのようなものがあります。これは、むかし人間にんげんみずなかにいる生物せいぶつだったころの名残なごりだとわれています。

 言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかいωおめが


長文ちょうぶん 11.4しゅう
 清作せいさくいちさいはんときに、いろりにちて、左手ひだりてだいやけどをいました。悲鳴ひめいいて、そと野良のら仕事しごとをしていたははシカがおどろいてかけつけたときには、清作せいさくは、やけどでひらくことができなくなっていました。いちはちななななねん福島ふくしまけん猪苗代湖いなわしろこのそばにあるちいさなむらでのできごとです。
 当時とうじ医療いりょうでは、やけどでくっついたゆびをもとのとおりにもど手術しゅじゅつ不可能ふかのうでした。なんけん医者いしゃをたずね、とおまち医者いしゃに、
残念ざんねんだが、このはなおらん」
われたとき、シカはこえをあげてきました。
 まだおさな友達ともだちは、清作せいさくてからかいました。清作せいさくはものをつかむことも、自由じゆううごかすこともできない左手ひだりてをくやしがって、一人ひとりくこともありました。しかし、学校がっこうにあがってからは、たいへん熱心ねっしん勉強べんきょうし、だれにもけない成績せいせきをおさめたのです。
 父親ちちおやだいさけおおざけみではたらかないため、たいへんまずしかった清作せいさくのうちでは、どんなに優秀ゆうしゅうでもうえ学校がっこう進学しんがくさせる余裕よゆうがありませんでした。子供こども清作せいさくにとっては、ははのシカしかたよじんがいなかったのです。しかし、ちょうど清作せいさくのいる小学校しょうがっこう巡回じゅんかいていた小林こばやし先生せんせいが、清作せいさく勉強べんきょうたいする熱意ねついり、清作せいさく進学しんがくたすけてくれたのです。
 また、先生せんせいはアメリカがえりのたか技術ぎじゅつ医師いし紹介しょうかいじょういてくれました。大変たいへんかねのかかる手術しゅじゅつ必要ひつようでしたが、先生せんせい学校がっこう友達ともだちがおかねってくれて、清作せいさく手術しゅじゅつけることができました。ついに、ゆび一本いっぽんいちほんはなれ、ものをにぎれるようになったのです。
 清作せいさくは、なおしてくれた医師いし恩人おんじん小林こばやし先生せんせいらに感謝かんしゃしながら、しんちかったことがありました。
 「一生いっしょうなおらないとおもっていた左手ひだりてが、医学いがくちからなおった。わたし将来しょうらい医者いしゃになって、自分じぶんのようにくるしむ人々ひとびとたすけたい。それがわたし恩返おんがえしだ」
 この清作せいさく少年しょうねんこそが、のちの野口のぐち英世ひでよです。その献身けんしんてき研究けんきゅうぶりは、まさにあいだしむほどだったそうです。留学りゅうがくさきのアメリカでは、「日本人にっぽんじんはいつねむるのだ」と他国たこく学者がくしゃおどろかせるほどのもう勉強べんきょうをし、その生涯しょうがい医学いがく研究けんきゅうにささげたのです。

 言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかいφふぁい


長文ちょうぶん 12.1しゅう
 【1】記憶きおくには、さまざまな種類しゅるいがあります。トランプの「神経しんけい衰弱すいじゃく」の記憶きおくにあたるものは「短期たんき記憶きおく」です。これは必要ひつようのあるみじかあいだだけおぼえているものです。【2】そのときにだけ必要ひつよう記憶きおくをいつまでもおぼえていると、あたまなか余分よぶん記憶きおくでいっぱいになってしまいます。役目やくめわったらすぐにわすれていけるのが、この記憶きおく特徴とくちょうです。
 【3】「手続てつづ記憶きおく」とばれるものは、からだでおぼえるといった種類しゅるい記憶きおくです。練習れんしゅうしてれるようになった自転車じてんしゃには、なんねんたっても心配しんぱいなくれます。【4】水泳すいえいやスキーなどもからだがおぼえているので、言葉ことば説明せつめいできなくても自然しぜんとからだがうごいていくものです。
 言葉ことば意味いみ数字すうじ関係かんけいなど、ふだんつくえ勉強べんきょうするものは「意味いみ記憶きおく」です。【5】また自分じぶんだけの時間じかん場所ばしょによってつくられる、つまりおもにあたるものは、「エピソード記憶きおく」です。
 さらに「プライミング記憶きおく」というのもあります。これは自分じぶんでもらないあいだおぼえている記憶きおくのことです。【6】たとえば、「シカをじゅうかいって」とい、相手あいてが「シカ、シカ、シカ、……」いいおわったあとに、「サンタクロースがっていたものは」とくと、つい「トナカイ」とこたえてしまうようなものです。【7】こたえはソリなのですが、シカという言葉ことばがつかないうちに記憶きおくのこっているので、シカにたトナカイとこたえてしまうのです。
 【8】人間にんげん単純たんじゅん生物せいぶつから進化しんかしてきましたが、記憶きおくなか進化しんかもっとはやいころからあったものは手続てつづ記憶きおくです。そのあと、意味いみ記憶きおく短期たんき記憶きおくまれ、最後さいごつくられた記憶きおくがエピソード記憶きおくです。【9】ただ、エピソード記憶きおく仕組しくみができあがるのは、さんよんさいころです。ですから、いちさいのお誕生たんじょうはじめてあるいて、みんなにをたたかれたというようなエピソードは、記憶きおくとしてはのこっていないのです。【0】 言葉ことばもりながちょうぶん作成さくせい委員いいんかい αあるふぁ


長文ちょうぶん 12.2しゅう
 よるみちあるいていると、なにかがだまってついてきます。あなたがまると、それもまります。あなたがあるきはじめると、またどこまでもついてきます。
 もちろん、キツネやおけなどではありません。夜空よぞらあかるくかがやくもの、それはおつきさまです。
 つきがついてくるのは、電車でんしゃっていてもおなじです。電車でんしゃまどからると、いえ電信柱でんしんばしらは、どんどんうしろへっていきます。とおくにえるやまも、ちかくの家々いえいえほどではありませんが、すこしずつうしろのほううごいていくようにえます。しかし、そらかぶつきやまえ、まちえ、電車でんしゃなかのあなたについてくるようにえます。
 いえ電信柱でんしんばしらやまつき。これらをくらべてちがうのは、電車でんしゃからの距離きょりです。つまり、とおくのものほど、うごかないようにえるのです。
 つきは、わたしたちの地球ちきゅうさんじゅうぐらいならべたほどさきにあるそらのかなたにかんでいます。ですから、地球ちきゅううえ少々しょうしょう移動いどうしたくらいでは、つき位置いちわらないようにえるのです。
 もちろん、つきよりもっととおくの太陽たいようでも、おなじことがえます。あなたがどんなにうごいても太陽たいようはついてきます。しかし、太陽たいようはまぶしすぎて、あまり見上みあげることはありません。やはり、よるあかるいつき一緒いっしょについてくるところにこそ、不思議ふしぎさがあるのでしょう。
 地球ちきゅうつきよんばいおおきさです。したがって、もし、つきうえあるきながら地球ちきゅうると、つきよりもよんばいおおきい、あおうつくしい地球ちきゅうがついてきます。つき地球ちきゅうのツキあいは、とおくてもふかいものなのです。

「ねえ、どうしてついてくるの?」
「だって、ツキだから。」
「では、もし太陽たいようだったら?」
「やっぱり、ついてきタイヨウ。」
あまえんぼうなんだね。」

 言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかいαあるふぁ


長文ちょうぶん 12.3しゅう
やまんばのにしき3
 【1】そこで、いろりのをどんどんもやし、でっかいなべにくまのすましじるこさえ、もちいれてった。まず、そのうまいこと、ばんばは、はらいっぱいになったと。
【2】「やれ、ごちそうだったこと。そんではおら、これでむらへかえらしてもらうから。」
 ばんばがそういうと、やまんばは、
「なに、そんなにいそぐことはねえ。ここにはてつだいもいねし、じゅういちにちほどてつだっていってくれや。」
といった。
 【3】しかたなくあきらめて、あかざばんばは、みずくんだり、やまんばのあしもんだり、きょうわれるか、あすこそわれるかとおもいながら、はやいものでじゅういちにちたってしまった。
 【4】そこで、ばんばはおそるおそる、
いえでもしんぱいしてるべから、かえりたいども。」
というと、
「なんとやっかいかけたな。いえのつごうもあるべから、かえってくれ。なんのれいもできんが、にしきをいちぴきくれてやる。【5】これは、なんぼつかっても、つぎのには、またもとどおりになっている、ふしぎなにしきだ。むらひとたちには、なんにもねえどもだれもかぜひとつひかねよに、まめでくらすよに、おれのほうでをつけてやるでえ。」
【6】やまんばは、そういうと、がらに、
「がら、がら、ばんばをおぶっていってやれ。」
といいつけた。
「なに、おら、あるいてかえるから。とんでもねえ、おぶさるなんて。」
 【7】ばんばは、あわててをふったが、がらはすっとんできて、ばんばを、ひょいとせなかへのせ、
え、ふさいでれ。」
といったかとおもうと、みみのあたりにすうすうかぜがふいていく。【8】とんと、地面じめんにおろされて、をあけてみれば、そこはなんと、ばんばのいえのまえであった。
「がら、がら、よってやすんでいけ。」
といったときには、もう、がらのすがたはなかった。
 【9】ばんばがいえなかへはいろうとすると、
 なんまんだあ なんまんだあ
 なんまんだあ なんまんだあ
と、おけいきょうをあげるこえがする。それにまじって、おうえ、おうえこえもして、どうやら、だれかがんだようだ。【0】ばんばはたまげて、
「だれかんだかやえ。」
とはいっていった。すると、
「ひえ、ゆうれいだ。たましいがかえってきたど。」
と、あつまっていたむらじゅうのもんが、えむいたり、ひっくりかえったり、でかさわぎになった。
「ゆうれいなものか。おらだ、あかざばんばがいまもどったど。」
「ほんとか、ほんとにばんばは、きているだか。」
 むらしゅうは、いてよろこんだと。
 そこで、ばんばは、
「さあさあ、やまんばのにしきをやるべ。」
と、むらじゅうにやまんばのにしきを、きってはわけ、きってはわけ、じぶんのもとには、ほんのすこししかのこさなかったと。しかし、つぎのになってみると、ばんばのにのこったにしきは、もとどおりになっていたそうな。
 むらひとたちは、みたこともないにしきを、ふくろにしてさげたり、はんてんにしたり、おおよろこびでいえたからにしたと。
 そして、それからというもの、むらひとたちは、かぜもひかず、みんな、らくにくらしたということだ。
 とっぴんぱらりのぷう
 
日本にっぽんのむかしばなし1(松谷まつやみよ講談社こうだんしゃあおとり文庫ぶんこ


長文ちょうぶん 12.4しゅう
 あつかったなつわりにちかづき、すずしいふうはじめるころ、よるになるとむしたちのこえこえてきます。そんなむしたちのごえは、あき到来とうらいらせてくれます。
 まれつき日本語にほんご使つかっているひとは、自然しぜんおと左脳さのうきます。左脳さのう言葉ことば理解りかいするのうですから、むしおとこえのようにこえます。これにたいして、英語えいごなど欧米おうべい言葉ことば使つかっているひとは、自然しぜんおと右脳うのうきます。右脳うのう音楽おんがくかんじるのうですから、むしおと雑音ざつおんにしかこえないそうです。
 コオロギ、キリギリス、スズムシ、マツムシ、ウマオイ、カンタン、クツワムシなど、あきむしにはいろいろな種類しゅるいがいますが、おおきくけるとコオロギるいとキリギリスるいけられます。うえからて、みぎみぎばねうえにしてくのがコオロギるいひだりひだりばねうえにしてくのがキリギリスるいです。「みぎ」という漢字かんじひだり半分はんぶんすとコオロギの「コ」というに、「ひだり」というひだり半分はんぶんして、たてのぼうすこばすとキリギリスの「キ」というになります。これがおぼかたです。
 コオロギるいには、コオロギやカネタタキむしがいます。キリギリスるいには、クサキリ、クツワムシ、ウマオイなど、たくさんのむしがいます。どちらの種類しゅるいも、はねばねっているのはオスだけです。なぜなら、むしくのはメスをぶためだからです。また、自分じぶん縄張なわばりをのオスにらせるためにくこともあります。
 コオロギは、「コロコロ」といたり、「リーンリーン」といたりします。スズムシは、そののとおりすずのように、「リンリン」ときます。「ガチャガチャ」とうるさくくのはクツワムシ。まるでスイッチがオンになったように「スイッチョン」とはじめるのはウマオイ。「リーリーリーリー」と簡単かんたんかたをするのはカンタンです。いろいろな音色ねいろたのしむことができるあきよる草原そうげんくさはらは、まさに地球ちきゅうのコンサート会場かいじょうです。
 言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかいΛらむだ