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課題集
長文 7.1週
【1】キンコーンカンコーン、キンコーンカーンコーン。
チャイムがなるのと
同時に、ぼくは
教室のドアを
飛び
出しました。
今日の
中休みは、
校庭で
鬼ごっこをすることにしていました。
少しでも
長い
時間遊びたかったので、
一番乗りで
校庭にかけつけるつもりでした。
【2】ぼくの
教室は
三階です。ドアを
飛び
出し
右へ
曲がり、
階段まで
全速力で
走ります。
階段の
前で
急ブレーキをかけると、キキキキーと
上履きが
廊下にこすれる
音がしました。まるで
自分が
車になったような
気分です。
【3】ここまではぼくが
一番です。うしろに、ヒロトとフミヤが
続きます。これは
負けていられないぞ。ぼくは、
心の
中で
思いました。
ぼくは、
階段を
二段抜かしで
降りることにしました。
二階までは
順調に
飛ばしました。【4】ところが、
二階から
一階へ
降りる
途中で、
階段を
踏み
外してしまいました。
一瞬、
何が
起きたのかわからないまま、ぼくは
踊り
場まで
転がりました。
「いてえ。」
ぼくは
腰を
押さえながら
起き
上がりました。【5】ヒロトとフミヤは
心配そうにぼくの
顔をのぞき
込みながら、
「
大丈夫?
血が
出てるよ。」
と
言います。ずきずき
痛い
足をふと
見てみると
膝から
血が
出ていました。
「あーあ、これじゃ、
保健室行きだな。ちょっと
行ってくるよ。」
【6】ぼくはそう
言って、
一階にある
保健室に
向かいました。ぼく
一人で
行こうと
思ったのに、ヒロトとフミヤもついてきました。
「あら、どうしたの?
怪我?」
保健室の
田上先生は、ぼくとすっかり
仲良しです。【7】どうしてかというと、ぼくはしょっちゅう
怪我をして
保健室に
行くからです。
「
階段でこけちゃった。」
ぼくは
恥ずかしそうに
言いました。
「
気をつけないと、ほんとうに
危ないのよ。
階段は
走らないこと。
顔を
怪我しなくてよかったね。【8】かっこいい
顔が
台無しになっちゃうわよ。」
と、
先生は
優しく
注意しました。
怪我を
消毒するときは、とてもしみて、
悲鳴をあげそうになりました。でも、
格好が
悪いので
我慢しました。【9】
怪我をしたのはぼくなのに、ヒロトとフミヤも、なんだか
痛そうな
顔になっていました。
「ごめんな。
遊べなくなっちゃったな。」
と
言うと、
二人とも、
「いいよ。また、
明日やろう。」
と
言ってくれました。
明日は
転ばないように、もう
一度階段をかけおりるぞとぼくは
思いました。【0】
(
言葉の
森長文作成委員会 ω)
長文 7.2週
鏡をつかっておもしろいことをしてみましょう。あなたの
顔が
正面から
大きく
写っている
写真を
用意します。それから、
目のまんなか、
鼻、
口を
通る
顔の
中心線の
上に
鏡を
立てます。
写真の
半分と
鏡に
映ったその
半分とを
合わせると、
片方の
側だけからできた
左右対称の
顔になります。
鏡の
向きを
変えると、もう
片方の
側でも
同じことができます。
右側だけでできた
顔と
左側だけでできた
顔とでは、かなりちがった
印象を
受けます。
目の
大きさやほっぺたの
形など、
右と
左では
意外に
大きく
異なっているのです。
顔だけではありません。
人の
体は、
左右対称に
思えますが、
実は
少しちがっていて、
手足の
長さや
筋肉のつきかたなども
同じではないのです。
人がまっすぐに
歩くのは
当たり
前のようですが、
実は
目で
周りの
景色を
確かめながら
体の
向きをコントロールしています。そのため、
視界のきかない
吹雪のときなど、ただやみくもに
進んでいくと、
弱い
足の
方に
少しずつ
曲がっていってしまいます。そして、
長い
時間歩いたあげく、
結局最初と
同じ
地点にもどってしまうこともあるのです。
内臓では、
右と
左はもっとちがいます。たとえば
心臓は
体の
少し
左側にあります。
赤ちゃんを
抱くときに、お
母さんは
自然と
赤ちゃんの
頭が
心臓の
近くにくるように
抱きます。
赤ちゃんはお
母さんのおなかの
中にいるとき、お
母さんの
心臓の
音をずっと
聞いていたので、この
音を
聞くと
安心するのかもしれません。
右と
左の
違いは、
普段の
生活でも
役に
立ちます。
例えば、
野球をするとき、
右利きの
人は、
左手でボールをキャッチし
右手でボールを
投げます。リンゴの
皮をむくときは、
左手でリンゴを
支え
右手で
包丁を
動かします。
人間の
体は、
右と
左の
違いをうまく
生かしているのです。
ここで
一句。
「ウインクを
両目でしたら ただのまばたき」
言葉の
森長文作成委員会(
α)
長文 7.3週
【1】あくる
年の
春に、なたねはきいろいきれいな
花をさかせました。
花がちって、みがなりました。
【2】そのみをあつめて、きんじろうはあぶらやさんへもっていきました。
「あぶらやさん。このなたねのみを、あぶらととりかえっこしてくれませんか。」
と、たのみました。【3】すると、あぶらやさんは、
「おお、きんじろうさんのつくったなたねのみだね。よしよし。」
と、しんせつに、あぶらととりかえてくれました。
【4】「こんどは、もうじぶんのあぶらだもの。おじさんだってしからないだろう。」
きんじろうは、よるのくるのが、まちどおしくてなりません。あんどんにあぶらをいれて、あかりをつけて
本を
読みました。
【5】ところが、おじさんは、やっぱりこわい
顔して、
「きんじろうや。おまえはいったい、なにになるつもりじゃ。ひゃくしょうになるのに、べんきょうはいらないんだよ。あしたはあさはやくから、のらへいくのだ。はやくねなさい。」
【6】「はい。」
と、きんじろうは、またあかりをけさなければなりません。やっぱりきんじろうは、べんきょうができませんでした。
【7】「ああ、ひゃくしょうは、どうして、べんきょうをしてはいけないのだろう。そんなことはない。」
と
思いました。
【8】けれども、おじさんにめいわくをかけてはいけません。
「そうだ。
山へいく
道や、たんぼへいく
道で、
本を
読もう。」
【9】くわをかつぎながら、また、しばをかつぎながら、きんじろうは
本を
読みました。【0】
(
二反長半編 白木茂著 「
美しい
話・いじんの
心」より)
長文 7.4週
チョコレート、キャンディー、ケーキなど、
甘いお
菓子を
思い
浮かべるだけで
幸せな
気分になれる
人は
多いでしょう。それらのお
菓子を
作るのに
大切なのが
砂糖です。しかし、
砂糖にはほかにもいろいろな
働きがあります。
その
働きのひとつに、カビや
微生物が
増殖するのを
防ぐというものがあります。カビや
微生物は
湿ったところ、つまり、
水分のあるところが
好きです。
砂糖は、
食べ
物の
水分の
周りをおおって、
微生物やカビの
働きをにぶらせます。ジャムや
果物の
缶詰などがその
例です。
果物はほうっておくと
傷んだり
腐ったりしますが、
砂糖とともに
調理することで
長期間保存することができます。
水分を
抱え
込む
砂糖の
性質は、
生クリームや
卵白の
泡立てにも
一役買っています。クリームや
卵のたんぱく
質の
水分を
砂糖が
抱え
込むことによって、
泡がくずれるのを
防ぎ、また
泡同士がくっつくのををおさえてくれます。ふわふわのクリームを
作るのには、
砂糖が
欠かせないのです。
肉を
煮込むときにも、その
働きが
発揮されます。
調理する
前の
下準備の
肉に
砂糖をすりこんでおくと、
軟らかく
煮ることができます。それは、
砂糖が
肉のたんぱく
質の
持つ
水分を
肉の
中にとどめておくからです。
甘さを
作り
出す
調味料というイメージの
強い
砂糖ですが、
実際には
水分と
結びつきやすい
性質が
私たちの
生活の
中でいろいろな
役割をはたしているのです。
働き
者の
砂糖は、
縁の
下の
力持ちなので、
決して「えっへん!」といばっているわけではありません。しかし、ダイエットをさけぶ
人たちからは、かたき
扱いされています。「えっ?
変?
一生懸命働いているのに……。」
砂糖からそんな
声が
聞こえてきそうです。
「カビ
君は、どうして
砂糖が
苦手なの。」
「だって、
砂糖ってサ、トウっても
甘いんだもん。」
言葉の
森長文作成委員会(
σ)
長文 8.1週
【1】
明日は、
神社のお
祭りがあります。
天王様と
呼ばれているお
祭りです。おじいちゃんが
子どものころからずっと
続いているお
祭りだそうです。
毎年、
子どもたちは、
水色の
法被を
着て
神社に
集まります。【2】
私も
友だちも、
天王様をとても
楽しみにしています。
神社からは、お
囃子の
笛の
音が
聞こえてきました。
明日の
練習をしているのです。
太鼓の
音もドンドンとおなかの
底に
響きます。【3】お
兄ちゃんが、
「ちょっと
見てこよう。」
と
言うので、
私もついていくことにしました。
「
太鼓、たたいてみるか。ほれ。」
そう
声をかけられて
振り
向くと、お
父さんの
友だちの
中村さんがいました。【4】お
兄ちゃんは、
「え、やっていいの? やらせて、やらせて。」
と、
大喜びでバチを
貸してもらいました。
「ドン、ドン、ドン」
お
兄ちゃんは
三回、
大きく
打ちました。
中村さんは、
「もっと
思い
切ってたたかないと、いい
音は
出ないぞ。それ、もう
一回。」
と
言いました。【5】お
兄ちゃんはもう
一度、
腕を
大きく
上げて
打ちました。
「ドーン、ドーン」
今度はおなかに
響く
音です。ほかのおじさんも、
「うまいなあ。
明日、たたいてみるか。」
と
笑っています。
褒められたお
兄ちゃんは、ちょっぴり
得意そうです。
【6】しばらく
打って
満足したのか、
「お
前もやる?」
と、
私にバチを
手渡してくれました。お
兄ちゃんみたいに
上手にできるかなあと
心配でしたが、
私も
思い
切り
打ってみました。
「ドーン。」
自分でもびっくりするくらいいい
音がでました。
【7】「おお、こりゃすごいぞ。」
おじさんたちが
拍手してくれました。
「
笛、
吹いてみるから、ちょっと
合わせてみろ。」
そう
言って、
赤い
顔のおじさんが
笛を
口に
当てました。お
囃子のメロディーは
小さなころから
聞いているので、どこで
太鼓を
打つかも
知っています。
【8】「ピーピピーピピーピ」
「ドンドン」
私は、
思い
切り
打ちました。メロディーに
合わせて、
「ドドン、ドドン、ドンドン」
と
続けます。
「うわあ、
楽しい。」
いつのまにかとてもいい
気分でたたいていました。【9】いつまでもたたいていたい
気分でした。
お
母さんは、よく
私のことを
恥ずかしがりやだと
言います。
私もそうだと
思っていました。でも、
恥ずかしがりやの
私はどこかへ
行ってしまったみたいでした。【0】
(
言葉の
森長文作成委員会 ω)
長文 8.2週
日本は
世界一の
漫画王国とよばれています。
大人向けのものまでふくめると、
一年間に
七億冊以上の
漫画が
出版されています。
漫画をもとにして、アニメーションや
映画やテレビ
番組もたくさん
作られ、いろいろな
国の
言葉に
翻訳されて、
世界中の
人気を
集めています。
では、
漫画は、いつの
時代からあったのでしょうか。いちばん
古い
漫画は、
今から
八百年ほど
前にかかれたと
言われています。それは、
京都の
高山寺というお
寺にある、「
鳥獣人物戯画」という
絵です。
その
中には、
人真似をして
遊ぶ
動物たちがかかれています。
始まりは、
動物たちの
川遊び。
川に
飛びこむウサギや、
泳ぐサル。ウサギに
背中を
流してもらって、
気持ちよさそうなサルもいます。
別の
絵には
弓矢の
練習をしたり、
相撲をとって
遊んだりするカエルやウサギの
様子がかかれています。カエルに
投げ
飛ばされて、ひっくりかえったウサギのそばで、
見物のカエルたちが
大わらいしている
絵もあります。カエルの
仏様にお
経をあげているサルのお
坊さんの
絵もあります。どの
動物も
生き
生きと
描かれ、
今にも
絵の
中から
飛び
出してきそうです。
この
昔の
漫画には、セリフがかかれておらず、ストーリーもはっきりしません。しかし
絵の
中には、
今の
漫画に
似たところもあります。たとえば
今の
漫画では、すばやい
動きをあらわすために
線を
何本もひき、スピードの
出ている
様子をあらわします。
鳥獣人物戯画の
中にも、
同じようなかき
方が
見られるのです。
こんな
昔から、
漫画を
楽しんでいた
日本人。これからも、たくさんの
名作が
生まれ、
多くの
人に
愛されていくことでしょう。
漫画は、
世界中に
自マンガできる、
日本の
宝です。しかし、
漫画は
絵がわかりやすいので、
字の
多い
本は読マンガ、
漫画なら
読むという
生活を
続けていると、
次第に
読む
力が
低下してきます。
字の
多い
本を
読む
一方で、
漫画も
楽しく
読み、
漫画の
読み
方についても
自マンガできる
国にしていきましょう。
言葉の
森長文作成委員会(
γ)
長文 8.3週
【1】しばさぶろうは、よろこんでくまもとの
学校へはいりました。べんきょうをはじめました。
けれども、おとうさんのいったとおり、がいこくのことばはたいへんむずかしいのでした。【2】がいこくの
先生が、がいこくのことばでおしえてくれるのです。さっぱりわかりません。いまのように、
字引もありません。
【3】しばさぶろうは、やっぱり、いやになりました。
「
学校をやめて、うちへかえって、ひゃくしょうをしよう。」
【4】
先生のところへいって、「
学校をやめさせてください。」といおうとしました。けれども、しばさぶろうがいうまえに、
先生からさきにききました。
【5】「しばさぶろうくん。
元気がありませんね。どうしたのです。」
「はい。その……。」
と、しばさぶろうは、なみだがでそうになりました。
【6】じっと、こらえているうちに、ふと、
先生のつくえの
上のしゃしんが
目につきました。ぶらんこにのっている、がいこくの
子どものしゃしんです。
先生の
子どもにちがいありません。
【7】はっとして、しばさぶろうはいいました。
「
先生は、とおいがいこくから、ひとりで、
日本へきてさびしくありませんか。」
【8】すると、
先生はにっこりとしていいました。
「そうですね。ときどき、
子どものことを、ゆめに
見ます。でも、
日本では、すぐなおる
病気にかかっても、みんな
死にます。わたしひとりのことなどかんがえておられません。はやく
日本のみなさんに、ながいきをしていただきたいのです。」
【9】ああ、なんとりっぱな、
先生のことばでしょう。
しばさぶろうは、いっぺんにこころがかわりました。もううれしくてなりません。
【0】「そうだ。べんきょうがむずかしいなんていっていてはいけないんだ。はやくよいおいしゃさんになって、
日本のみなさんにながいきをしてもらわなければならない。」
つよく、そう
思いました。
(
二反長半編 白木茂著 「
美しい
話・いじんの
心」より)
長文 8.4週
寝ようとしたら、ブーンという
音がして、あわてて
灯りをつけたことがありませんか。そして、
小さな
蚊がどこにいるか
見つけようとしたことがあるでしょう。
日本では
昔、
蚊を
防ぐために
蚊帳という
道具を
使っていました。これは、
一ミリメートルほどの
細かい
網でできている
四角いテントのようなもので、
部屋の
中で
四方から
吊り
下げるようになっています。
網目が
細かいので、
蚊は
中に
入れませんが、
涼しい
風は
通すことができます。
昔の
日本人は、
蚊の
多い
暑い
夏の
夜を、
蚊帳の
中で
風鈴の
音を
聞きながら
涼しく
過ごしたのです。
しかし、
昭和の
後期になると、
殺虫剤や
下水道が
普及した
結果、
蚊自体が
少なくなり、
蚊帳は
次第に
使われなくなっていきました。
ところが、
今、この
蚊帳が
再び
注目されています。
蚊帳は、
電気も
薬品も
使わない
点で、
人間にも
地球にももちろん
蚊にも
優しい
道具だと
考えられるようになってきたのです。
日本は、マラリヤの
被害に
悩まされるアフリカ
諸国にたくさんの
蚊帳を
送っています。これによって
多くの
子供たちの
命が
助かっているそうです。
日本ではほとんど
使われることのなくなった
蚊帳も、
世界では
大活躍をしているのです。
日本人のこれからの
役割は、より
安くより
安全な
蚊帳を
世界中に
広めることではないでしょうカ。
「ブーン。」
「あ、
蚊や。
蚊帳に
入ろう。」
「しまった。
蚊帳に
入られたカ。ヤーン。」
言葉の
森長文作成委員会(
α)
長文 9.1週
【1】
今日は、お
母さんに
髪を
切ってもらう
日です。ぼくたち
兄弟は、お
母さんに
髪を
切ってもらうことを、ママ
床屋と
呼んでいます。いつもママ
床屋なので、ぼくは
一度も
床屋さんへ
行ったことがありません。
【2】「
準備できたよ。ひとりずつおいで。」
お
風呂場からお
母さんの
声が
響きます。ママ
床屋は、お
風呂場でお
店を
開くのです。
夏は
暑いので
裸でちょうどいいけれど、
冬のママ
床屋はぶるぶる
震えてしまいます。
【3】ぼくは
急いで
服を
脱ぎ、お
風呂場へ
飛んでいきました。お
母さんは
右手にバリカンを
持ち、ぼくを
見るとにっこりしました。
「さあ、
切ろうか。
下を
向かないで、ちゃんと
前を
見ててね。」
【4】そう
言いながら、バリカンのスイッチを
入れました。ウイーンウイーンと、バリカンの
音が
耳の
近くで
聞こえます。ときどき
髪の
毛が
引っ
張られるので、ぼくは、
「いてっ。」
と、まるでカメのように
首をすくめます。【5】お
母さんは、
「だめだめ。まっすぐにしていないと、
変なところを
切っちゃうよ。」
と
言います。バリカンに
刈られた
髪の
毛が、パサリパサリとぼくの
肩や
背中にくっつきます。そのうち、ちくちくと
刺してきます。【6】
体中かゆくてたまりません。
「ああ、もう
限界だあ。」
と、ぼくが
我慢できなくなるころ、
後ろの
髪のカットが
終わるのです。
「できた、できた。じゃあ、
今度は
前髪。さ、こっち
向いて。」
ぼくは、くるりと
振り
向きました。【7】
目をつぶり、
動かないように
息を
止めます。
「はい、
終わり。
頑張ったね。」
ぼくは
目を
開けました。お
母さんは、
少し
離れてぼくを
眺めています。ぼくが
動いたから
変なところを
切ってしまったのではないかと
心配になります。
【8】「うん。いいんじゃない。
床屋さんじゃないのに、なかなかうまいよね。」
と、お
母さんが
言いました。ぼくはほっとしました。
シャワーで
洗い
流すと、ちくちくしたのが
取れてすっきりしました。【9】くもった
鏡をごしごしと
手で
拭いて、ぼくの
顔を
映してみました。いつもと
違うぼくの
顔です。
自分でもなかなか
格好いいなと
思いました。【0】
(
言葉の
森長文作成委員会 ω)
長文 9.2週
【1】そのときでした。
「こらっ、おまえなんかに、
水をのまれてたまるもんか。きたならしい。むこうへいってしまえ。」
【2】きんじょの
男がたけのぼうで、こじきをおいはらいました。
ガンジーは、もう、がまんができませんでした。
【3】「おじいさん、まって。ぼくが、くんであげるよ。」
ガンジーは、いそいで
水をくみあげると、こじきをやさしくつれもどしてきました。
【4】「ぼっちゃん、ありがとうございます。」
年よりのこじきは、ぽろぽろなみだをこぼしながらも、さもおいしそうに
水をのみました。【5】やせた
犬も、ぺちゃぺちゃ
水をのむと、さもうれしそうにガンジーの
顔を
見あげるのでした。
ガンジーは、みんながじぶんを
見ているのに
気がつくと、まっかになって、
家へかけこみました。
【6】ゆうごはんのあとで、ガンジーは、おとうさんにきょうのはなしをくわしくしました。ガンジーのおとうさんは、インドで
高いくらいについているやくにんでした。【7】そのおとうさんは、にこにこすると、
「おお、おまえは、よいことをしてくれた。かわいそうな
人をたすけるのは、
人間のつとめなんだ。よいことをするのに、しりごみしていてはいけない。【8】よくやったね。きょうのおこないは、ゆうきがあって、りっぱなものだ。おまえは、よわむしでもなければ、いくじなしでもないのだ。
大きくなっても、ただしいことをするそのゆうきをなくしてはいけない。」
【9】いつも、じぶんをいくじなしだとばかり
思っていたガンジーは、はじめてそうでないことがわかりました。そして、むねが、すーっとあかるくなるのでした。【0】
(
二反長半編 白木茂著 「
美しい
話・いじんの
心」より)
長文 9.3週
【1】「おや。」
ファーブルは、びっくりして
立ちどまりました。
小とりのすが、あったのです。【2】すのなかには、
青空のようないろをした、うつくしいたまごが
六つ、おぎょうぎよくならんでいました。
「すばらしいなあ。」
ファーブルは、むねがわくわくしました。
【3】すのなかから
一つとりあげると、そっとポケットへいれました。うれしくてうれしくてたまりません。そのまま、
池のほうへいちもくさんにかけだしました。
【4】けれど、それからしばらくたつとファーブルは、ふーふーいきをきって、また、すのところへはしってかえりました。【5】そして、さっきのたまごを、だいじそうにポケットからとりだしたのです。
「ごめんね。」
ファーブルは、たまごをそっと、もとのところへならべてやりました。
【6】「ごめんね。おまえは、ノビタキって
名まえのとりなんだってね。そして、はたけのわるいむしをたいじして、おひゃくしょうさんをたすける、いいとりなんだってね。【7】ぼく、いま
池のそばで、きょうかいのぼくしさんにそれをおそわったの。ちっともしらなかったんだもの。ごめんね。」
【8】ファーブルはそういうと、ぴょこんと、とりのすにあたまをさげるのでした。
ピーチク、ピーチク……。
【9】たまごのように、まっ
青な
大空では、ひばりがしきりにないていました。【0】
(
二反長半編 白木茂著 「
美しい
話・いじんの
心」より)
長文 9.4週
たまごはニワトリから
生まれます。そのニワトリはたまごから
生まれます。さてどちらが
先なのでしょう。
たまごをうむ
動物は、ニワトリばかりではありません。サケ、マス、カエル、カメ、ヘビ、トカゲ、ハト、キジ、ダチョウ、それに
乳で
子どもを
育てるカモノハシも、たまごをうみます。サケとマスのたまごは
見分けがつかないほどよくにていますが、サケのたまごからはサケが、マスのたまごからはマスが、まちがいなくうまれマス。たまごは、その
動物の
生命を
宿したカプセルなのです。
鳥がたまごをうみ、それをひなにかえすには、
何日もかかります。その
間、
親鳥は、
外敵からたまごをまもるために、いろいろな
工夫をします。
高山にすむライチョウは、ハイマツの
中に
巣をつくり、
巣を
枯れ
草でわからなくして
敵の
目をあざむきます。
川原にすむコアジサシは、
石ころと
見分けのつかないようなたまごを
小石の
上にうみます。コウノトリは、
高い
木の
上に
巣をつくり、
敵が
近づくのをふせぎます。このように
親鳥たちは、
一生懸命たまごを
守っています。
では、たまごから
子どもになるまでの
変化をいろいろな
動物でくらべてみましょう。メダカは
水中生活をする
魚です。カエルは
水と
陸の
両方で
生活します。ニワトリは
陸だけで
生活します。このように、メダカもカエルもニワトリも、
生活する
場所はちがうし、
親になったときの
大きさや
形もちがいますが、たまごの
中で
育つようすをくらべてみると、よくにたところがあります。
ニワトリが
先か、タマゴが
先か。
「ニワトリさん、お
先にどうぞ。」
「いえいえ、タマゴさんこそお
先にどうぞ。」
「では、いっしょにそろって。」
「わたしたち、ニタワマトゴリ。」
言葉の
森長文作成委員会(
Κ)