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課題集
長文ちょうぶん 1.1しゅう
 【1】今日きょう、ぼくは、ムサシのいえあそびにきました。ぼくとムサシはだい仲良なかよしで、学校がっこうでもよくあそんでいます。ムサシのいえで、ポケモンのゲームの攻略こうりゃくほんみました。むずかしくてよくわからないところもあったけれど、ムサシが説明せつめいしてくれました。
【2】「なんだ、こんなふうにやればいいのか。」
ぼくは大発見だいはっけんをしたかのように、興奮こうふんしてきました。すぐにでもいえかえってDSをやりたくなってきました。
「おれ、今日きょうかえるね。バイバイ。」
と、ムサシにさよならしていえはしりました。【3】まるで獲物えものねら動物どうぶつのように全速力ぜんそくりょくはしりました。いえかえると早速さっそく
「ねえ、おかあさん、ゲームやってもいい?」
と、おかあさんをそっとながらいました。おかあさんはすこかんがえてから、
「うーん、じゃあ、さんじゅうぶんぷんだけね。」
いました。
【4】「やった。ありがとう。絶対ぜったいさんじゅうぶんぷんとめめるね。」
いながら時計とけい確認かくにんして、DSの電源でんげんれました。ピコーンピコーンピコーンといいおとがしました。わくわくします。ぼくは、さっきおぼえてきたやりかたかたぱしからためしてみました。
【5】「ええっ、なんだ、これでいいのか。」
「これなら簡単かんたん。」
など、ぼくは大騒おおさわぎです。ひとりでゲームをしているのに、まるで友達ともだちといっしょにやっているようにしゃべりました。いままでクリアできなかったことが、簡単かんたんにできてしまいます。たのしくてたまりません。【6】ぼくはもう夢中むちゅうです。時計とけいることさえわすれていました。
 ふとがついて時計とけいると、のこ時間じかんはあとふんです。もっとつづけていたいけれど、約束やくそくまもらなくてはいけません。約束やくそく時間じかんまもれなくていち週間しゅうかんゲーム禁止きんしになったことがなんかあるからです。【7】ゲーム禁止きんしなんて二度にどとごめんです。ぼくは、ちょうどいちぶんぷんまえ電源でんげんりました。ギリギリセーフでした。
「おかあさん、いまやめたよ。ちゃんとさんじゅうぶんぷんでやめたよ。」
ぼくは得意とくいそうにいました。【8】おかあさんは、
約束やくそくまもれてえらかったね。今日きょうがってたね。」
とにっこりしました。
「うん。今日きょうはすごくすすんだ。ムサシにやりかたおしえてもらったからね。」
と、ぼくが今日きょうのことを説明せつめいしました。【9】おかあさんは、
今日きょうみたいに約束やくそくまもれると、おかあさんも気持きもちよくゲームをやっていいってえるよ。つぎまもろうね。」
いました。ぼくも、ほんとうにそのとおりだとおもいました。【0】

言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかい ωおめが
 【1】オリンピックのメダルがいちからじゅんきむぎんどうでできているように、きむ大昔おおむかしから、とても人気にんきのある金属きんぞくでした。なにしろ薬品やくひんにおかされず、やわらかくてコインやアクセサリーにも加工かこうしやすく、そしてなによりうつくしかったからです。【2】しかし、きむは、いちトンの金鉱きんこうせきなかから、わずかさんグラムからグラムくらいしかれないという貴重きちょうなものです。
 いまからはちひゃくねんくらいむかし、ヨーロッパの人々ひとびとは、めずらしいもの宝物ほうもつたからものもとめて、まだられていないうみこうの国々くにぐにへとかけていきました。【3】そのなか一人ひとり、マルコ・ポーロは、たび途中とちゅう見聞みききしたことをあつめ、のちに『東方とうほう見聞けんぶんろくとうほうけんぶんろく』というほんしました。そのなかで、東洋とうようには「ジパング」という名前なまえの「黄金おうごんおうごんくに」がある、ときました。
 【4】この「ジパング」というのは、じつ日本にっぽんのことで、日本にっぽん英語えいごめいである「ジャパン」はこれに由来ゆらいしています。マルコ・ポーロ自身じしんは、実際じっさい日本にっぽんおとずれたことはなく、中国ちゅうごくいたはなしとしていただけでした。【5】しかし、このほんに「ジパングにはものすごいりょう黄金おうごんおうごんがあり、国王こくおう宮殿きゅうでんはすべてきんでできている」とかれていたため、コロンブスも、この黄金おうごんおうごんくにもとめて船出ふなでしたのではないかとわれています。
 【6】ヨーロッパのひと夢見ゆめみた「黄金おうごんおうごんくに」ほどではありませんが、日本にっぽんにはかつて佐渡さど鴻之舞こうのまいなど、とてもりっぱなかね鉱山こうざんがあり、貴重きちょうかねがたくさんとれていました。しかし、これらの鉱山こうざんもやがてくされ、いまではそれほどたくさんのかねをとることはできません。
 【7】そこで、最近さいきん注目ちゅうもくされているのが、「都市とし鉱山こうざん」とわれるものです。じつは、パソコンや携帯けいたい電話でんわ液晶えきしょうテレビなどのなかには、「レアメタル」とばれる貴重きちょう金属きんぞくが、少量しょうりょうずつですが使つかわれています。【8】そのなかにはもちろん、かねもあります。ですから、これらの機械きかいをうまくリサイクルして、そのなか金属きんぞくして使つかおう、というこころみがはじまっています。【9】家電かでん製品せいひんなどがたくさん使つかわれている日本にっぽんには、世界せかい有数ゆうすう都市とし鉱山こうざんがあるとわれています。
 いまむかしも、大人気だいにんきかね。リサイクルをすすめて、日本にっぽんふたたび、「黄金おうごんおうごんくに」になれるでしょうか。【0】

 言葉ことばもりながちょうぶん作成さくせい委員いいんかい τたう


長文ちょうぶん 1.2しゅう
 【1】そうじをおわって、わたしがかえろうとすると、運動うんどうじょうから、バラバラとおとこたちがやってきて、わたしをとりかこみました。
 (こりゃ、ひとあばれけんかをしなけりゃならなくなったぞ。)わたしはそうおもいました。【2】でも、けっして、そのおとこたちがにくらしかったわけではありません。ほんとうは、はやく、そのたちといっしょになってあそびたかったのです。めいわくだったのは、むしろしんせつにしてくれるおんなでした。
 【3】(あのがこなければよいが。)みんなにかこまれて、わたしがそうおもったとき、もうおんなつけて、こちらにかけてくるのがわかりました。
 【4】と、わたしは、いちばんちかくにいたおとこを、ポカンとぶっていました。それから、とっくみあいになりました。ほかのおとこたちは、わたしの先手せんてに、いささかあきれたかっこうです。
 【5】おんなは、それをると、わたしがさきにをだしたこともしらずに、先生せんせいをよびにいきました。とっくみあいになると、なかなかしょうぶがつきません。
「おい、先生せんせいがきたぞ。」
 だれかがいいました。そして、ほかのおとこたちが、学校がっこうそとへにげだしました。【6】わたしも、とっくみあいをちゅうしして、みんなといっしょに、にげました。
 わたしは、ごくしぜんにみんなといっしょににげだせたのがうれしくてたまりませんでした。わたしたちは、学校がっこうえなくなるまで、フーフーいいながらはしりました。【7】そして、ひとりがくさなかへ、
「ああ、しんど。」
とたおれこむと、みんなもくさなかへころがりました。わたしは、いまさっきけんかをしたこともわすれていました。ところが、あいてはわすれていなかったのです。とつぜん、おかしなことをいいだしました。
【8】「おまえ、へびつかめるか。」
「つかめらい。」
 わたしは、そうこたえずにはいられませんでした。それに、へびなど、そうかんたんにいるものとはおもっていませんでした。
大阪おおさか天王寺てんのうじ動物どうぶつえんには、こんなふといへびがいるぞ。【9】おら、そいつにさわらせてもらった。ぬるっとして、がぬれたぞ。」
 なぜ、じぶんのいちばんおそれていることを、わたしはわざわざしゃべってしまったのでしょう。もちろん動物どうぶつえんで、にしきへびにさわれるわけがありません。【0】へびがぬるっとしていて、がぬれるなんて、まったくでたらめです。いいえ、わたしはそんなゆめをて、いくよるうなされたかしれません。
 ところが、あいてのおとこは、そのとき、まったくじなのように、くさむらのなかから、へびをみつけだしたのです。しっぽをつかむがはやいか、バン、バンと、うえにたたきつけました。ちいさなしまへびではありましたが、わたしはもうぶるぶるとふるえていました。
「さあ、つかめ。もうかみつきよらん。」
 みんなは、わたしがどうするかまもっていました。
「はよう、つかまんか。こわいのか。」
 わたしはだまってつかみました。つかむとどうじに、それをぶんぶんふりまわしました。とても、じっとなどつかんでいられませんでした。へびは、すこしもぬるっとなんかしていませんでした。むしろざらっとしたかんじです。これはほんとうにいがいでした。
 わたしはへびをふりまわしながら、みんなにちかづけました。さすがにみんなにげました。ふとがつくと、むこうのほうから、さっき学校がっこうでいっしょにそうじをしていた、おんなたちがふたりでかえってきます。わたしはへびをふりまわしながら、そのたちのほうへはしりました。
 おんなは、わたしがそんなことをしているのをると、ハッとしたようにたちどまってから、それがへびであることがわかると、キャッとさけんで、にげだしました。
 なんでそんならんぼうをしたのか、じぶんでもふしぎでした。
 あくるあさ先生せんせいからたいへんおめだまをいただきました。
「なにもわるいことをしないへびをころして、おまけに、おんなをいじめるなんて、いちばんひきょうもののすることだぞ。」
 先生せんせいにそういってしかられました。つくえをならべたおんなは、わたしをよけるように、つくえのはしっぽにすわり、くちもきいてくれなくなりました。
 へびをつかむなんて、ほんとうにつまらぬことです。でたらめのうそをいったばかりに、じぶんのいちばんきらいだったへびをつかんでみせなければなりませんでした。
 でも、そんなことがあってから、わたしは、すぐやまともだちとなかよしになりました。へびもこわくなくなりました。ねんほどしかいませんでしたが、たのしいやま小学校しょうがっこうでした。
「ほらふきうそつきものがたり」(今西いまにしゆうぎょう)より


長文ちょうぶん 1.3しゅう
 【1】小学校しょうがっこういち年生ねんせいさんがっきのことです。こくごのべんきょうで、かんが、じゅうさんそろい、それらを、さんじゅうかいずつ、ノートにくしゅくだいがでました。【2】をかくとか、作文さくぶんくというのなら、そんなにいやではなかったのですが、わかりきったをなんかいもいたり、たしざんやひきざんのけいさんもんだいを、たくさんやらされるしゅくだいは、とてもにがてでした。
 【3】(さんじゅうかいずつか。いやだなあ。にちにちにち……。ひとひとひと……。やまやまやま……。ああ、いやだなあ。わかっているじゃないか。いやだなあ……。)とおもっているうちは、まだいやいやでもいえにかえったらこうとおもっていました。
 【4】ところが、学校がっこうもんをでて、やまのすそをとおり、小川おがわばしをわたっていえについたころには、すっかりわすれてしまいました。
 しゅくだいをわすれるのと、ひきかえのようにおもいだしたことがあります。【5】というのは、そのが、毎月まいつきっているざっしのりだしだったのです。
 さっそく、ざっしをうおかねをもらって、やくキロメートルはなれている、ちいさなまち本屋ほんやへでかけました。うめのはなみちみちましたが、ふうはまだつめたかったようです。
 【6】そのころ、テレビなんてものはありませんでした。ラジオも、まだまちにしかありませんでしたから、毎月まいつきのざっしが、なによりのたのしみでした。
 ざっしをっていえにかえってくると、からだじゅうがほかほかしていました。【7】ときどき、グラビヤのところをのぞいてたちどまったり、小走こばしりにあるいたりしてきたのです。
 夕食ゆうしょくまえに、ふろへはいるようにははにいわれましたが、「あとにする。」といって、まずざっしをよみつづけました。
 【8】ねるまえに、いちどカバンのなかでもればしゅくだいをおもいだしたでしょうが、そのころのぼくは、ほんもどうぐも、みんなカバンにいれっぱなしで、学校がっこういえとをおうふくしていました。しゅくだいをわすれなければ、けっして、カバンのなかのものをとりだすひつようがなかったのです。
 【9】さて、もんだいはそのあくるです。こくごの時間じかんがはじまり、しゅくだいをしてきたノートを、つくえのうえにひろげることになりました。
 (あっ、そうだった。あの、いやなしゅくだいがあったっけ。)とづいたが、もうなんともなりません。【0】せめて、はじまるまえにでもづいていたら、すこしはいておけたのでしょうが。
 たんにんのわかいおんな先生せんせいは、かくべつきびしかったのです。(さあ、どうしよう。しかたがない。しょうじきにいおう。わすれました。)と。そうおもって、先生せんせいてもらうばんを、びくびくしてまっていました。
「はい、どこにやってありますか?」
「わすれました。ぼくう、すっかりわすれてしまいました。」
「わすれた? どうしてわすれたの? わすれたといえばすむの?なまけたのでしょう?」
「なまけたんじゃありません。」
「なまけたのでしょう。」と、いわれて、きゅうにくやしくなりました。
「なまけたんじゃなかったら、どうしてやってないの?」
「わすれたのです。」
「わすれたといえばすむの? どうしてわすれたの? ただわすれたではゆるしません。」
 さあ、ぼくはこまってしまいました。ざっしのことでわすれたといえば、先生せんせいは、よけいおこるにちがいありません。(よし。いえようでやれなかったといおう。)と、とっさにおもいつきました。
いえようがあったのです。」
「どんなよう?」
「となりむら水車みずぐるま小屋こやへ、こめいちぴょうついてもらいにいったのです。」
「あんたひとりで?」
「はい。」
 これは、とんでもないことをいってしまったなとおもいました。でも、そういってしまったいじょうは、それでとおさにゃならんとおもい、あることないこと、おもいつくままにならべました。
「ほらふきうそつきものがたり」(あかけんひさ)より


長文ちょうぶん 1.4しゅう
 日本にっぽん主食しゅしょくは、おべいこめです。日本にっぽんおなじように、おべいこめ主食しゅしょくとするくにおおく、インド、中国ちゅうごく東南とうなんアジアの諸国しょこくなどがあります。おべいこめは、つぶのままでべる場合ばあいおおく、みずいてごはんにしたり、おおめのみずいておかゆにしたり、しておこわにしたり、したあとついておもちにしたりするなど、さまざまなかたがあります。また、いたおべいこめをいためてたべるめしや、いためてからくピラフやパエリヤなどもよくられています。
 世界せかいには、おべいこめ以外いがい主食しゅしょくもあります。代表だいひょうてきなものは小麦こむぎです。小麦こむぎは、アメリカ、インドなどでおお生産せいさんされ、かたは、こなにしてからべることがおおく、ねっていたり、めんにしてゆでる方法ほうほうがほとんどです。パンやスパゲッティは、小麦こむぎからつくられます。中国ちゅうごくべられている饅頭まんじゅうまんとうも、ねった小麦粉こむぎこまるめてしたものです。日本にっぽんでおなじみのにくまんも、饅頭まんじゅうまんとういちしゅです。
 トウモロコシは、べいこめ小麦こむぎならんで、世界せかいさんだい穀物こくもつひとつとわれています。メキシコでは、トウモロコシのこなつくった生地きじをうすくのばしていたトルティーヤが主食しゅしょくです。そのほか、トウモロコシをこながゆにしたり、したりしてべます。
 世界せかいには、それぞれのくに気候きこう風土ふうどによっていろいろなものがあります。さむくて作物さくもつ栽培さいばいできない北極ほっきょくちかくにむイヌイットは、カリブーやアザラシのにく主食しゅしょくとしています。むかしのイヌイットはアザラシなどのにくなまべて、ビタミンCがりなくなるのをふせいでいました。もっとも、こおりうえにくいてべていたら、こおりけてうみちてしまうという理由りゆうもあったかもしれません。
 北極ほっきょく探検たんけんしたヨーロッパじんたちは、生肉せいにくなまにくべるのをきらったために、壊血病かいけつびょうくるしめられました。生肉せいにくなまにくけないヨーロッパじんにとって、壊血病かいけつびょう問題もんだいは、なかなか解決かいけつできませんでした。せいにくべるのは、北極ほっきょくというきびしい場所ばしょきのびていくためのイヌイットの知恵ちえだったのです。

 言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかいκかっぱ


長文ちょうぶん 2.1しゅう
 【1】ぼくは、毎日まいにちろくからアニマックスでドラゴンボールをています。おもしろくてやめられません。そのも、ぼくはおにいちゃんと、いつもどおりドラゴンボールをていました。悟空ごくうごくうとピッコロだい魔王まおう対戦たいせんしています。あせにぎたたかいです。ぼくたちは夢中むちゅうでした。
 【2】そこへ、なにかがこげたようなにおいがただよってきました。ぼくは、今日きょうばん御飯ごはんはきっとさかなだなとおもいました。でも、さかなにしてはくさぎるようながします。
「なんかへんにおいがするぞ。」
いながらふと台所だいどころだいどころると、ガスコンロからぼわっとているではありませんか。【3】ぼくたちは、
「おははかあさあん。おははかあさあん。大変たいへん火事かじだよう。」
と、大声おおごえかいにいるおかあさんをびました。おかあさんは、
「やだあ、さかないてるのわすれてた!」
さけびながらドンドンドンと階段かいだんころがるようにりてきました。【4】ガスコンロからがるうごかなくなったおかあさんは、きゅうに、
新聞しんぶん。いらない新聞しんぶんってきて。たくさん。はやく!」
と、ぼくたちにいます。ぼくとおにいちゃんはぶつかりあいながら新聞しんぶんりにはしりました。【5】おかあさんは、
「ありがと。」
うと、いきおいよくみず新聞しんぶんをぬらしました。
 メラメラとえているのは、グリルというさかなくところとおくにあるたくさんあなならんだところです。おかあさんはまず、おくあなうえれた新聞紙しんぶんしならべました。【6】つぎに、グリルをすと、おおきくしてきました。ぼくたちはびっくりしてこえません。おかあさんはグリルのうえれた新聞紙しんぶんしせると、すぐにグリルをめました。すこちいさくなったようながします。【7】おかあさんはまた、グリルをしてれた新聞紙しんぶんしせました。ぼくたちはおかあさんのうしろでじっとています。それをなんかえすとだんだんえてきました。ぼくはほっとして、
「よかった。火事かじになるかとおもったよ。」
いました。
【8】「あぶなかったね。」
うおにいちゃんのかおは、まるでおばけ屋敷やしきからてきたときのようでした。ぼくは、おにいちゃんもこわかったんだなとおもいました。
 おかあさんは、
「やったやった。あぶなかったけどなんとかなるもんだね。こういうのを火事場かじば馬鹿力ばかぢからってうんだね。」
得意とくいそうです。【9】こわかったけど、スリル満点まんてんでした。さわぎがわったときにはドラゴンボールもわっていました。ぼくたちが、
「あーあ、ドラゴンボール見逃みのがししちゃったよ。」
うと、おかあさんは、
「まあ、いいじゃん。火事かじにならなかったんだから。」
わらいました。【0】

言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかい ωおめが


長文ちょうぶん 2.2しゅう
 【1】ぼくは、べんとうをとりだそうとして、ごそごそと、カバンのなかをさがしました。
 そのころは、きゅうしょくはありませんでした。
 みんな、アルミニュームのべんとうばこに、ごはんとおかずをつめて、もってきていたのです。
 【2】ところが、どんなにさがしても、べんとうばこはありませんでした。
 わすれんぼうの名人めいじんだったぼくは、しゅくだいはもちろんのこといつだって、べんとうをわすれるくせがありました。
 【3】かあさんが、毎朝まいあさつくってくれるのに、ぼくは、うっかりして、台所だいどころのすみっこだのつくえのうえだのに、いちしゅうあいだに、いちかいやかいは、かならずわすれました。
 【4】そんなとき、ぼくはうちまでかけていっては、かあさんたちに、
「また、べんとうがないてるずら。」
なんて、からかわれながら、つめたくなったごはんを、くちなかへながしこむようにいそいでたべたものです。
 だから、そのも、そうすればよかったのです。
 【5】ところが、そのは、となりのみなもとげんちゃんが、あわてたぼくのようすを、じっとつめて、そして、やさしいこえで、じしんありげに、そっと、ささやいたのです。
「そうか! のんちゃんわかったよ。おめんちは、おべいこめがないんだろ。【6】おらあ、おめえ、よくべんとうわすれるなあって、おもってたけど、そうじゃあなかったのか。そうだったのか。」
 そういわれると、ぼくも、ほんとに、そんなもちになってくるのでした。
 【7】だから、みなもとげんちゃんの同情どうじょうしたことばにはなんにもこたえないで、あわてていすにすわりなおし、しょんぼりとしたをむいていました。
 ちょうどそのとき、前沢まえさわまえざわ先生せんせいが、はいってきたのです。
【8】「おおい、きょうは、みんなと会食かいしょくするぞ。」
と、いわれてから、もじもじしているぼくに、がついたのでしょう。
代田しろたしろた、どうした。」
と、たずねました。
 ぼくはきゅうにかなしくなってきて、「ううっ。」と、しゃくりあげて、なきだしたのです。
 【9】すると、みなもとげんちゃんが、
先生せんせい、のんちゃんは、べんとうがないんです。」
と、べんかいしてくれたのでした。
 先生せんせいは、にもしないで、
「ああ、そうか、わすれたのか。」
と、いってから、きょうだんのつくえのほうにいこうとしました。【0】ところが、みなもとげんちゃんは、
先生せんせい、そうじゃあないんです。のんちゃんは、べんとうがもってこられないんです。」
と、おもわせぶっていったのです。
 ぼくは、ぎょっとしました。
 いや、ぼくよりも先生せんせいのほうが、もっとおどろいたようでした。
「そうかあ!」
と、しばらくたちどまって、かんがえているようでした。
 それから、おもいだしたように、
「ああ、きょうはつごうで、会食かいしょくはやめだ。」
と、いわれてから、
代田しろたしろた、はなしがあるから、いっしょにこい。」
と、のどくそうに、やさしいこえでぼくにはなしかけるのでした。
 先生せんせいは、ぼくを、ようむいんしつのとなりのたたみのへやに、つれていきました。
 それから、りょうで、ぼくのかたをかるくたたいてから、
「おまえ、ずーっと、おべんとうをたべていなかったのか?」
と、ききました。
 ぼくは、みょうにみじめなもちになってきました。
――はい――、というかわりに「こくり」とあたまをさげました。
 すると、いよいよられていったあわれな東北とうほくどもにおもえてきました。
 しゃっくり、しゃっくりをくりかえしながら、なきだしていました。

「ほらふきうそつきものがたり」『げんこつゴツン』(代田しろたのぼる)より


長文ちょうぶん 2.3しゅう
 【1】先生せんせいは、
「もういい、もういい。どうも、はじめてで、じじょうがわからなくて、のどくをしたのう。さあ、そこにすわれ。」
といって、もうしわけなさそうに、ぼくをつめるのでした。
 【2】それから、先生せんせいは、じぶんのべんとうをはんぶんずつにわけて、
「さあ、たべろ。なあにえんりょするな。人間にんげんちゅうもんはなあ、いいか、どんなにつらいことがあっても、けっしてへこたれるんじゃあねえぞ。」
と、やさしくいってくれるのでした。
 【3】そういわれれば、いわれるほど、ぼくは、
「ううっ!」
といって、しゃくりあげてなきました。
 しゃくりあげながらも、先生せんせいから、もらったおべんとうをたべていました。
 わけてくれたおかずのしおじゃけも、こうやどうふのにしめも、おいしくておいしくて、みんなたいらげました。
 【4】ところが、そのあたりから、ゆめがさめはじめたようでした。
――おまえは、うそをついて、先生せんせいのべんとうをたべたのだ。
 どこからか、そんなこえがきこえます。
――いや、あれはゆめのなかのぼくで、ほんとは東北とうほく少年しょうねんなんだ。
 そんな、べんかいもきこえました。
 【5】しばらくすると、
――まあいいや、とにかく、こんどのあたらしい先生せんせいから、やさしいこえをかけてもらって、べんとうをわけてもらったのは、ぼくだけなんだから。
と、いばったこえもきこえました。
【6】――いや、おもいちがいをしたみなもと(げんちゃんが、わるいのだ。みなもと(げんちゃんのくそぼうずめ。
 こんどは、みなもと(げんちゃんのせいにしたこえもでてきました。
 とにかく、ぼくは、おもいあまってしまいました。
 【7】そのおもいあまったもちは、うちにかえってからも、つづいていました。
 つぎのになりました。
 先生せんせいにあうのが、こわくなりました。
――いっそ、ずるやすみするか。
と、おもいました。
 でも、ぼくのうちは、かんしがきびしくて、とてもだめです。
【8】――ええ! どうにでもなれ。
 ぼくははんぶんやけっぱちになって、しぶしぶと学校がっこうにいったのです。
 やっぱり、おもっていたとおりでした。
 ぼくは、一時いちじあいだめに、しょくいんしつによびつけられました。
 【9】いがぐりあたまのぎょろめの前沢まえさわ先生せんせいは、ぼくを、にらみつけて、
代田しろたしろた! よくも、おれをだましたな。」
 そういうなり、げんこつで、
「ゴツン」「ゴツン」
と、ぼくののうてんを、ちからいっぱいなぐりました。
「いたたっ!」「いたたっ!」
 【0】からのでるほどのいたみが、ずしんと、からだぜんたいにひびいてきました。
 でも、ぼくは、こえをだしませんでした。
 もちろん、なきもしませんでした。
 いや、かえって、この「げんこつ」で、むねのなかのもやもやが、すうっと、きえていくのがわかりました。

「ほらふきうそつきものがたり」『げんこつゴツン』(代田しろたのぼる)より


長文ちょうぶん 2.4しゅう
 シマウマのからだ模様もようは、まるで横断おうだん歩道ほどうのようです。横断おうだん歩道ほどう模様もようはとても目立めだつので、シマウマのしろくろ模様もようも、草原そうげんなか目立めだってしまい、肉食にくしょくじゅう簡単かんたんつかってしまうのではないかとおもうかもしれません。しかし、そんなことはありません。
 アフリカの日差ひざしは強烈きょうれつです。昼間ひるま太陽たいようがぎらぎらとりつけて大地だいちあつくなると、かげろうがちのぼります。シマウマのんでいるサバンナ地帯ちたいは、ひろくなだらかなおかのところどころに、ひくしげみや、背丈せたけたかくさむらがあります。ゆらゆらするかげろうのなかで、シマウマの姿すがたはちょうどくさにまぎれて、えにくくなります。あのシマ模様もようは、ライオンやハイエナの嗅覚きゅうかくがとどかないところにいるかぎり、まもるのにとても都合つごうがよいのです。このように、身体しんたいからだえにくくさせるいろのことを、保護ほごしょくびます。
 シマウマが、なぜ横断おうだん歩道ほどうのような模様もようをしているかについて、もうひとせつがあります。それは、サシバエ(しバエ)からまもるためというせつです。アフリカには、ツェツェバエというおおきなハエがいて、アブのようにひと動物どうぶつします。ツェツェバエという名前なまえは、ボツワナの言葉ことばで「うしたおしてしまうハエ」という意味いみです。ハエにとっては、さかええある名前なまえかもしれません。人間にんげんがこのハエにされると、からだなか病原びょうげんたいはいって、ときにはいのちとすこともあります。
 ツェツェバエのからると、シマウマのシマ模様もようえにくいらしく、シマウマのまわりにたかるハエは、ほかの動物どうぶつくらべてぐんとすくないのです。
 ところで、シマウマのしま模様もようは、いちとうずつすべてことなっています。人間にんげん指紋しもんにはひとつもおなじものがありませんが、シマウマの模様もようもちょうどそれとています。わたしたち人間にんげんからると、どれもおなじようにえる模様もようですが、ひとつとしておなじものがありません。
 さて、しまのつく動物どうぶつは、ほかにもいます。シマリス、シマダイ、シマヘビ、島田しまだくん。それは人間にんげんです。

 言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかいκかっぱ


長文ちょうぶん 3.1しゅう
【1】「あ、宿題しゅくだいわすれてた。」
学校がっこういて、教室きょうしつはいったぼくは、宿題しゅくだいわすれたことにがつきました。昨日きのうさん丁目ちょうめ公園こうえんあそびにっておそくまでおにごっこをしました。三月さんがつになってからずいぶんびたのでろくまであそんでいいことになりました。【2】いえいえかえったらやろうとおもっていたのに、すっかりわすれてしまったのです。
 先生せんせいまえわらせてしまおうと大急おおいそぎでランドセルから宿題しゅくだいのプリントをしました。ぼくがプリントをやろうとすると、
中田なかたくん。もしかしたら、それ、宿題しゅくだい?」
と、ダイちゃんが、小林こばやし先生せんせい真似まねをしてやってきました。【3】小林こばやし先生せんせいというのは、ぼくたちの担任たんにん先生せんせいです。まるでおわら芸人げいにんみたいな面白おもしろ先生せんせいです。
 ダイちゃんが先生せんせい真似まねをしたので、まわりにいたみんながげらげらわらいました。ぼくたちは調子ちょうしって次々つぎつぎ先生せんせい真似まねをしました。【4】突然とつぜん、ゆきちゃんが、
さん年生ねんせいになったら、どの先生せんせい担任たんにんになるのかな。」
いました。ぼくは、いすからすべちそうになりました。
小林こばやし先生せんせいじゃないの?」
と、おもわずさけんでしまいました。【5】みんなは、ちょっとあきれたかおで、
らないの? さんねんになったら先生せんせいわるって、おかあさんがってたよ。」
と、口々くちぐちいました。ぼくは全然ぜんぜんりませんでした。かんがえたこともありませんでした。ずっと先生せんせい一緒いっしょのような気持きもちでいたのです。
 【6】先生せんせいつくえうしろにってあるポケモンカレンダーをました。春休はるやすみまであとなんにちあるのかりたくて、ぼくはかぞはじめました。
いち、ニ、さんよんろくななはちきゅうじゅう。あとじゅうかい!」
あとじゅうかい学校がっこうたら小林こばやし先生せんせいとおわかれなのだとおもうと、きゅうさびしくなってきました。【7】どうして大事だいじなことをってくれないのかとおかあさんに文句もんくいたくなってきました。今日きょうよる絶対ぜったいってやるぞとおもいました。
 ぼくがテレビをていると、ものぶくろをぶらげたおかあさんが仕事しごとからかえってきました。
【8】「もうはるだね。まだあかるいもんね。はるになると、なんだかうきうきしちゃうね。」
なんてうれしそうにいます。ぼくはおかあさんのかおないで、
さんねんになったら小林こばやし先生せんせいじゃなくなるんだって。」
不機嫌ふきげんそうにいました。【9】おかあさんはものぶくろいてぼくのよこすわりました。
「そうだね。おかあさんも小林こばやし先生せんせいのファンだったからさびしいよ。ずっと小林こばやし先生せんせいだったらいいのにね。でも、そんないじけたかおをしていると、小林こばやし先生せんせい元気げんきがなくなっちゃうよ。」
って、ぼくの背中せなかをぽんとたたきました。【0】小林こばやし先生せんせいたのしいことが大好だいすきです。さびしいけれど、最後さいごまで元気げんきかおでいようとぼくはおもいました。

言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかい ωおめが


長文ちょうぶん 3.2しゅう
 【1】ふとがついたとき、しっかりと、にもってきたふろしきづつみが、ぬれているのです。くすりをつつんできた、あのふろしきづつみです。
 はっとして、ゆきみちにうずくまると、つつみをといてみました。【2】みずぐすりがこぼれて、さんぶんいちぐらいへっているのです。こなぐすりのふくろは、べったりとぬれて、ちゃいろのしみをつくっていました。コルクのせんが、ゆるんでいたのです。ほてっていたからだじゅうのあせが、つめたくなるほど、びっくりしました。
 【3】そのくすりだいがいくらだったか、いまはおもいだせませんが、わがやのくらしのなかで、それは、たいへんなおかねだったことだけは、たしかです。けんこうほけんなどはなかった、ずっとむかしのはなしです。
 どうしたら、よかっぺか――
 【4】わたしは、ゆきうえに、べったりと、すわりこんでしまいました。
 このままへかえったら、ははがどんなにがっかりするか……、うんとしかられることは、わかりきっています。もういちどもどってくすりをもらうには、おかねがありません。【5】年生ねんせいだったわたしには、どうしたらいいのか、わかりませんでした。
 そのとき、ちいさなみずおとがきこえてきました。みちばたのいしがきのあいだから、ちょろちょろとながれでている、わきみずおとです。学校がっこうのいきかえりに、きまってのんでいくみずでした。【6】だれがもってくるのか、みじかい青竹あおだけが、かけひのようにさしこんでありました。青竹あおだけは、ときどきだれかにひきぬかれます。すると、フキのっぱをまるめて、さしこんであることもありました。
 わきみずは、なつのように、ふきだしてはおりません。【7】あまだれのように、ぽつん、ぽつんと、そこだけ、ゆきをとかしておちていました。
 わたしは、おもわず、まえとうしろをまわしました。ひとっこひとり、あらわれません。たちあがると、そのかけひのしたに、くすりびんを、あてがっていたのです。
 【8】びんのなかのくすりは、うすちゃいろになりましたが、三日みっかぶんのそのもりまで、いっぱいになりました。
 しっかりせんをすると、びんだけをふろしきにつつみなおし、こなぐすりのふくろは、ふところのはだのところまで、じかにいれました。【9】からだのぬくもりで、すこしでもかわかそうとしたのです。
 そして、のろのろ、あるきだしました。あるきながら、うそのいいわけを、いっしょうけんめいかんがえていました。
「いってきたよ。」
 わたしは元気げんきのないこえで、そうあいさつしながら、おもい大戸おおどおおどをあけました。
 【0】いろりには、がもえていて、けだるそうなかおをして、はははおきていました。
 わたしは、だまって、あがりはなにこしをおろすと、ははのほうにせなかをむけたまま、ゆっくりと、ながぐつをぬぎました。そのようすが、ふだんとはちがうことに、ははづいたのでしょう。
「どうかしたんか? あたまでもいてえだか? くすりは、もらえたんか?」
と、やつぎばやに、ききました。
「もらってきたけえど……。いしゃどんからでたとこのすいったまりへおとしちまって……。」
 わたしは、ふところからぬれたこなぐすりをだすと、いろりばたからはとおい、あがりはなのいたのまに、ひざをついてなきだしたのです。
 みちみち、かんがえてきたうそのいいわけを、とうとういってしまったじぶんが、こわくなっていたのかもしれません。
「ぬれたぐれえ、かわかせばすむこった。あっち(心配しんぱい)はねえ。こんだっから、いつけるだよ。」
 ないているわたしが、かわいそうだったのか、ははは、やさしくそういっただけで、ぬれたくすりぶくろを、かわかすように、いろりのすみにおきました。
 いろのうすくなったみずぐすりは、いつもいれておくだなへ、じぶんでそっとしまいました。
 さむいけれど、ははとむきあって、いろりのにあたるのは、つらかったので、
「おひるごろっから、あたまがいたくってー。」
 そういって、こたつのなかへもぐりこみました。
「かぜっけなだっぺあ、かぜにこたつはどくだぜ、ちゃんとふとんにねて、ひとあせかいたがいい。」
 むりやり、ふとんにねかされたのでした。
 をつぶると、
(くすりって、なんのみずでつくるのだんべえか。くすりのなかへ、ただのみずをたしてしまって、どくにはならなかっぺえか――。)
 と、つぎつぎ、またしんぱいになりました。

「ほらふきうそつきものがたり」『かけひのみず』(宮川みやがわひろ)より


長文ちょうぶん 3.3しゅう
 【1】ふいに、わたしは、かたのあたりをうしろからぐいとおされて、ころびそうになりました。ふりむくと、
「おい、じゃまだぞ。どけよ。」
 そばに、グローブをつけたのっぽのおとこが、わたしをおろしてたっていました。【2】しらないまにわたしは、やきゅうのコースのまんなかにたっていたのです。はっとがつくのといっしょに、
「さっさといけよ。のろまのあんぽんたん。」
「どかないと、ぶんなぐるぞ。」
 東京とうきょうべんのわるくちが、ポンポンいりみだれて、わたしのみみにとびこんできました。【3】ぶんなぐるなどといわれたのは、うまれてはじめてです。それに、あるけっていったって、どっちへいけばいいのかわかりません。わたしは、あたまがかっとなって、からだをかたくしてつったったまま、なきそうになりました。【4】そのとき、
「どうしたの、キミちゃん。」
 よかった、としえちゃんでした。かけとおしてきたのか、まだ、ふうふういっていました。わたしは、ほっとして、どもりながら、
「あの、あのう、あのひとたち、たたくって。じゃまだって、ここにいると……。」
 【5】じぶんでなにをいったのか、きれぎれにそれだけいうと、きゅうにかなしくなって、ポロポロ、なみだがでてきました。
「どのが? ああわかった、けんちゃんでしょ。おかあさーん、けんちゃんがね、キミちゃんをぶったんだって。」
 【6】わざとそういったのか、かんちがいしたのか、としえちゃんは、うちのほうへむかって、大声おおごえでさけんだのです。元気げんきなおばさんのことだから、そのこえをきいたら、ひばしかほうきをもって、すっとんでくるかもしれません。【7】わたしは、あわてて、ちがうって、せつめいしようとしましたが、なきながらだし、それに、東京とうきょうべんでいおうとするので、ことばがうまくいえません。
 【8】いっしゅん、おとこたちは、おどろいたように、ポカンとつったっていましたが、けんちゃんとよばれた、いちばんのよわそうなが、なきそうなこえをふりしぼって、
「ぶちゃしないよォ、いなかっぺの、うそつきィ。」
と、ありったけのこえでさけぶと、くるりとうしろをむき、ワーッとなきながら、いちもくさんにおかをかけおりていきました。【9】ほかのも、くものをちらすように、にげさっていきました。
 ゆうやけはいつのまにかきえて、はださむいゆうやみがおかのうえにもただよいはじめていました。
【0】「さ、いきましょ。」
と、としえちゃんは、ねえさんぶって、わたしのかたにをまわしあるきだしました。
 「いなかっぺの、うそつき」――そのときになって、はじめて、このことばのいみが、おもく、わたしにのしかかってきました。
 うそつきは、どろぼうのはじまり。うそをいうと、んでから、えんまさまにしたをぬかれるって、いつもかあさんがいう。わたしは、東京とうきょうに、みんなのまえでうそつきといわれた。しらない土地とちで、しらないが、「いなかっぺの、うそつき」と、はっきりそういった。それも、あんなにくやしがって、なきながら。――「いなかっぺ」って、そんなにわるいものなのかしら、それに、わたしは、ほんとに「うそつき」なのだろうか。このことは、かあさんと秋田あきたいえへかえってからも、あたまからきえませんでした。
 とおいとおいむかしのちいさなちいさなできごとです。けんちゃんとよばれたあのも、いまはおじいちゃんになって、どこかでまごとあそんでいるかもしれません。それとも、日本にっぽんじゅうのわかものたちが、せんそうにつれていかれた、あのころ、中国ちゅうごくか、マレーおきのうみで、みじかいいのちをちらしてしまったのかもしれません。
 戸山とやまはらも、いまは学校がっこうやビルがたちならび、ひろいどうろができ、すっかりかわってしまいました。あのあたりのまちのようすも、どこがどうなったのか、おもいだすこともできません。あそんでいるどもたちも、みんな、しらないかおばかりです。
 それなのに、あの東京とうきょうのうらまちの、ちいさいおかからた、ゆうぐれどきのものがなしいけしきと、ちいさなわたしのなかでピンクいろにふくらんでいったおおきななみだと、あの東京とうきょうおとこのかなしそうなこえだけが、カラーテレビのように、いまもはっきりと、わたしのに、みみに、のこっているのです。

「ほらふきうそつきものがたり」『いなかっぺのうそつき』(増村ますむら王子おうじきみこ)より


長文ちょうぶん 3.4しゅう
 【1】夏休なつやすみのともといえばやはりカブトムシです。昆虫こんちゅう王様おうさまぶにふさわしいその姿すがたは、どもたちの視線しせんをとらえてはなしません。ペットショップのカブトムシコーナーは、毎年まいとし黒山くろやまひとだかりができていますし、採集さいしゅうツアーも登場とうじょうするほどです。
 【2】いかにも丈夫じょうぶそうな姿すがたのカブトムシですが、そのいのちはそれほどながいものではありません。たまごからかえり、ふゆした幼虫ようちゅうは、さなぎへと姿すがたえ、なつになると成虫せいちゅう、つまりカブトムシへと変身へんしんしますが、成虫せいちゅうになってからのいのちはおよそいちげつほどといわれています。【3】ですから、夏休なつやすみがわるころは、ちょうどカブトムシのいのちもつきる時期じきにあたるのです。クワガタムシも、カブトムシとならんで人気にんきがあります。カブトムシがひとなついのちなのにたいして、クワガタムシの場合ばあい種類しゅるいによっては越冬えっとうできるものもあります。えっとうれしくなってしまうでしょう。
 【4】大切たいせつそだてていたカブトムシのかなしいものですが、んでしまったからといってすぐに飼育しいくケースを処分しょぶんしてはいけません。ケースのなか腐葉土ふようどをそっとのぞいてみましょう。もしかしたら、ちいさなたまごつかるかもしれません。【5】直径ちょっけいさんミリ程度ていどしろくてまるたまごです。孵化ふか直前ちょくぜんたまごおおきさはミリ程度ていどになり、いろ黄色おうしょくあじびてきます。このたまごをじょうずにそだてることができたら、大切たいせつにしていたカブトムシのせい対面たいめんできるがやってくるのです。
 【6】たまごからかえった幼虫ようちゅうは、おもに腐葉土ふようどべておおきくなります。幼虫ようちゅう時代じだい摂取せっしゅした栄養えいようが、成虫せいちゅうのカブトムシのおおきさを決定けっていづけけます。いったん成虫せいちゅうになってしまったら、どんなに樹液じゅえきったところでそれ以上いじょうおおきくはなりません。【7】立派りっぱおおきさのカブトムシは、幼虫ようちゅう時代じだい十分じゅうぶん栄養えいようっていたのです。もしも人間にんげんがカブトムシとおな性質せいしつだったらどうでしょう。成人せいじんしたらいくらべてもふとらないわけですから、ダイエットにはげんでいる大人おとなにとってはなんともうらやましいはなしです。
 【8】通常つうじょういちひきぴき幼虫ようちゅうさなぎになるまでにべる腐葉土ふようどりょうは、洗面せんめん山盛やまもいちはいぶんにもなるそうです。カブトムシは、そんな大量たいりょう腐葉土ふようどをかぶっとむしゃむしゃべてしまうのです。さすがに昆虫こんちゅう王者おうじゃおどろいてしまいます。
 【9】友達ともだち自慢じまんできるくらいのおおきなカブトムシをそだてるためには、良質りょうしつ腐葉土ふようどえず補充ほじゅうしてあげることが大切たいせつです。また、飼育しいくケースのなかのフンをのぞいたり、掃除そうじをしたり、根気こんきよく世話せわつづけることが必要ひつようです。
 【0】では、カブトムシとクワガタムシでは、どちらがつよいでしょうか。カブトムシの得意とくいわざは、カブトりでしょう。クワガタムシの得意とくいわざは、もちろんクワかためです。結果けっかは、カブトもクワガタも、おたがいをムシしてけになりました。

 言葉ことばもり長文ちょうぶんちょうぶん作成さくせい委員いいんかいωおめが