門徒もんとさんの中なかで
浄土真宗じょうどしんしゅうでは、「般若心経はんにゃしんぎょう」は上あげないのですかと
疑問ぎもんに思おもっている方ほうがいるようです。
他たの宗派しゅうはでは広ひろく使つかわれている「般若心経はんにゃしんぎょう」ですが、
浄土真宗じょうどしんしゅうでは使つかわれません。

そもそも「般若心経はんにゃしんぎょう」とは「般若はんにゃ波羅蜜はらみつ多た心しん経けい」の略りゃくです。
この「般若はんにゃ」というのは真実しんじつを正まさしく見抜みぬく智慧ちえという意味いみで、
また「波羅蜜はらみつ」とは、
悟さとりに到達とうたつする為ための菩薩ぼさつの実践じっせん行ぎょうのことです。

しかしながら、
真実しんじつを正まさしく見抜みぬき、
厳きびしい修行しゅぎょうをして煩悩ぼんのうを断たち切きるのは至難しなんの業わざです。
ですから、
智慧ちえと行くだりによって煩悩ぼんのうを断たち切きろうと教おしえる「般若心経はんにゃしんぎょう」に対たいし、
浄土真宗じょうどしんしゅうの教おしえは阿弥陀如来あみだにょらいのお力ちからに一切いっさいのはからいを捨すてておまかせし、
それによって救すくわれるというものです。
したがって真宗しんしゅう門徒もんとが「般若心経はんにゃしんぎょう」を上あげることは、
かえって阿弥陀如来あみだにょらいのお力ちからを否定ひていすることになりますから、
浄土真宗じょうどしんしゅうでは「般若心経はんにゃしんぎょう」を上あげることはないわけです。

それでは浄土真宗じょうどしんしゅうでは一体いったい何なにを上あげるのかというと
「正信まさのぶ偈げ」を上あげるのが慣ならわしです。
これは親鸞しんらん聖人せいじんの主著しゅちょである『教行信証きょうぎょうしんしょう』の教おしえのエキスを、
七言しちごん、百ひゃく二に十じゅう句くの偈げ文ぶん（漢文かんぶんの詩し）にしたものが「正信まさのぶ偈げ」です。