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障害学会神戸大会鎌田レジュメ

報告ほうこくしゃ共同きょうどう報告ほうこく場合ばあい代表だいひょうしゃ
氏名しめい鎌田かまた一雄かずお鎌田かまた暢子ようこ
報告ほうこく題目だいもく(40以内いない):ユニバーサル絵本えほん
発表はっぴょう要旨ようし(2,000以内いない)[註、文献ぶんけん図表ずひょうとうふくむ]:

1.まえがき
 おおくの絵本えほん出版しゅっぱんされ、流通りゅうつうしている.絵本えほんは、文章ぶんしょうとの視覚しかくメディアで構成こうせいされており、視覚しかく受容じゅよう前提ぜんていとなっている[1].かせによる音声おんせい聴覚ちょうかく経路けいろもあるが、視覚しかくメディアをかいした使用しよう(コンテンツの理解りかい)が基本きほんである.このとき、たとえば視覚しかく障害しょうがいがあるども、大人おとなどもとう)にとっては、受容じゅようじょうのバリアがしょうじる.このバリアの解消かいしょう軽減けいげんのために、出版しゅっぱんされている絵本えほん文章ぶんしょう点訳てんやく原本げんぽんのテキスト部分ぶぶん添付てんぷし、てんあらわしたり説明せつめいぶんえたりしている[2].これとう対応たいおうは、出版しゅっぱんされた絵本えほんつバリアを、追加ついかてき操作そうさ解消かいしょうしようとするバリアフリー・デザインに対応たいおうする.
 これにたいし、絵本えほん創作そうさくのはじめから、障害しょうがいがあるにとってもそうでないにとってもおなじようにたのしめる(絵本えほん体験たいけんができる)よう目指めざすデザインもある.これは、ユニバーサル・デザインのかんがかた相当そうとうする.ほん発表はっぴょうでは、ユニバーサル・デザインのかんがかたを、絵本えほん創作そうさく導入どうにゅうした絵本えほん(ユニバーサル絵本えほん)の概念がいねんと、デザインアプローチとをべる.

 おばあちゃんが、ほそながいなすびを みせました.「どうだい、きれいなむらさきいろにできたろう」「つるつるしてひかってるね.あれ、でもてっぺんのところにとげがある」ぼくがゆびさすとおばあちゃんは「そうそう、へたにはとげがあるんだよ.よくきがついたね.えらい、えらい」とわらいました.
1 絵本えほんいち場面ばめん(「ナス」の記述きじゅつ).

2.ユニバーサル絵本えほん
(1)ユニバーサル絵本えほん概念がいねん 絵本えほん創作そうさく最初さいしょから、できるだけおおくのどもとう絵本えほん体験たいけん共有きょうゆうかんがえる.すなわち、ユニバーサル絵本えほんは、絵本えほんメディアをかいして、さまざまな特性とくせいどもとうのできるだけおおくがたのしむことができることを目指めざしてつくげたものを意味いみする.
(2)デザインアプローチ ユニバーサル絵本えほんのデザイン(創作そうさく)は、感覚かんかく障害しょうがいどもとうにとっても、文章ぶんしょうとで構成こうせいされている絵本えほん受容じゅよう理解りかい(コンテンツの理解りかい)できるようにすることである.絵本えほん創作そうさくでは、文章ぶんしょうとは排反はいはんてき補完ほかんするというかんがかた基本きほんにある(文章ぶんしょうとの冗長じょうちょうせいおさえる).しかし、視覚しかくだけではなく、聴覚ちょうかく触覚しょっかく味覚みかく嗅覚きゅうかくなどの感覚かんかくてき体験たいけん絵本えほん構成こうせい要素ようそとして採用さいようし、絵本えほん受容じゅよう経路けいろ冗長じょうちょうせい導入どうにゅうする.さらに、体験たいけんによる直接的ちょくせつてき理解りかい活用かつようできるようにする.以下いかに、ユニバーサル絵本えほん使用しよう形態けいたい考慮こうりょしたデザインアプローチをべる.
(a)絵本えほん使用しよう形態けいたい 体験たいけん経験けいけんすんでゆう知識ちしきはコンテンツ理解りかい重要じゅうようであるが、絵本えほん対象たいしょうとするものの実体験じつたいけん実物じつぶつ利用りようするかたもある.実体験じつたいけん積極せっきょくてき活用かつよう併用へいようした絵本えほん体験たいけん目指めざす.
(b)文章ぶんしょう構成こうせい 実物じつぶつ絵本えほん提示ていじする概念がいねん内容ないようとの関連かんれんにとってわかりやす構成こうせい採用さいようする.文章ぶんしょうとに冗長じょうちょうせい導入どうにゅうし、受容じゅよう経路けいろせまさの補償ほしょうはかる.
(3)ユニバーサル絵本えほん事例じれい 試作しさく絵本えほん(「おばあちゃんのやさい」.発表はっぴょう提示ていじ)のいち場面ばめん1)を説明せつめいする.この場面ばめんでは、田舎いなかのおばあちゃんがまごども)に、はたけからとってきた「ナス」(やさい)をせている.「ナス」の視覚しかくてき様態ようたいだけではなく、「とげ」、「やわらかさ」、「におい」などの触覚しょっかく嗅覚きゅうかくてき特性とくせいもちいて「ナス」を記述きじゅつする.感覚かんかくてき体験たいけん総合そうごう活用かつよう)によって、ごとの自然しぜん感覚かんかく刺激しげきとおして、絵本えほん体験たいけん共有きょうゆうができるようこころみている.
3.まとめ
 ユニバーサル絵本えほん概念がいねん試作しさくれいべた.絵本えほん創作そうさく(デザイン)に、制約せいやくしょうじるかもしれない.しかし、絵本えほん創作そうさく活動かつどう実質じっしつてきせばめるものではないとかんがえる.ユニバーサル絵本えほん概念がいねん使用しよう形態けいたいふくむ)が、どもとう絵本えほん体験たいけん拡大かくだい役立やくだてばさいわいである.
文献ぶんけん [1] 中川なかがわ正文まさふみ絵本えほん・わたしの旅立たびだち、NPO法人ほうじん絵本えほん子育こそだて」センター、2006.
[2] ふれあい文庫ぶんこ:http://homepage1.nifty.com/fbunko/ 
謝辞しゃじ 障害しょうがいがあるどもとう考慮こうりょした絵本えほんについて有益ゆうえきなご示唆しさとご意見いけんとをいただいた中川なかがわ正文まさふみ先生せんせい京都女子大学きょうとじょしだいがく名誉めいよ教授きょうじゅ)、齋藤さいとうことぶきはじめさん(京都女子大学きょうとじょしだいがく児童じどう文化ぶんか研究けんきゅうかいささゆりしゃ)、岩田いわた美津子みつこさん(てんやく絵本えほんふれあい文庫ぶんこ)にふか感謝かんしゃする.