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障害学会神戸大会高森レジュメ

報告ほうこくしゃ共同きょうどう報告ほうこく場合ばあい代表だいひょうしゃ
氏名しめい(ふりがな):高森たかもりあきら(たかもりあきら)
報告ほうこく題目だいもく(40以内いない):<飼育しいく>とはなにか −横塚よこつか 晃一こういちの<障害しょうがいにわとりこうがかりとしてー
発表はっぴょう要旨ようし(2,000以内いない)[註、文献ぶんけん図表ずひょうとうふくむ]:

問題もんだい提起ていき
 報告ほうこくしゃは、えにくいインペアメントをつが、障害しょうがいしゃとは承認しょうにん/ラベリングされることなく社会しゃかい生活せいかついとなむグレーゾーンの人々ひとびと社会しゃかい参加さんかじょうきょう注目ちゅうもくしながら、事例じれいあつ調査ちょうさつづけてきた。調査ちょうさなかとく注目ちゅうもくしたのは、大人おとなになってから発達はったつ障害しょうがい診断しんだんされた中途ちゅうと診断しんだんしゃたちの診断しんだんまえ社会しゃかい参加さんかじょうきょうである。中途ちゅうと診断しんだんしゃたちのおおくは普通ふつう学級がっきゅう在籍ざいせきし、教育きょういく課程かていえたのち労働ろうどう市場いちばにおいて通常つうじょうわくはたらいていた。女性じょせい中途ちゅうと診断しんだんしゃでは恋愛れんあいおよ結婚けっこん経験けいけんしたものすくなくなく、心身しんしん機能きのう不全ふぜん理由りゆう社会しゃかい参加さんか制度せいどてき禁止きんし制限せいげんされたものはほとんどいなかった。しかし、中途ちゅうと診断しんだんしゃたちの参加さんかじょうきょうけると、学校がっこうでは孤立こりつおよびいじめ、職場しょくばではハラスメントおよ失業しつぎょう家庭かていでは虐待ぎゃくたいおよびDVを経験けいけんしたものすくなからず存在そんざいすることを、過去かこった事例じれい検討けんとうあきらかにした。報告ほうこくしゃ自身じしん調査ちょうさによれば、グレーゾーンの人々ひとびとたしかに社会しゃかいなか不利益ふりえき集中しゅうちゅうしやすい。しかし、その不利益ふりえきえやすい心身しんしん機能きのう不全ふぜん障害しょうがいしゃとはことなる特徴とくちょうち、排除はいじょおよ障害しょうがいしゃ差別さべつという言葉ことばでは説明せつめいしにくい要素ようそふくんでいる。いったい、グレーゾーンの人々ひとびと集中しゅうちゅうしやすい不利益ふりえきはどのように説明せつめいすることが可能かのうなのだろうか。
研究けんきゅう方法ほうほう
 この問題もんだいかんがえるうえ重要じゅうよう示唆しさあたえてくれたのは、CPしゃあおしばかい理論りろんてき指導しどうしゃであった横塚よこつか晃一こういちの<障害しょうがいにわとりこうであった。横塚よこつかみずからがにわとり飼育しいくした経験けいけんから、@にわとり小屋こやなかめられたにわとり集団しゅうだんなかにはかならず<障害しょうがいにわとり>の役割やくわりあたえられるにわとりつくされることA<障害しょうがいにわとり>をにわとり小屋こやから保護ほごすると、べつにわとりが<障害しょうがいにわとり>の役割やくわりあたえられ、<障害しょうがいにわとり>がにわとり集団しゅうだんからなくなることはないことB養鶏ようけいにわとりもそれぞれの理由りゆうから集団しゅうだんなかに<障害しょうがいにわとり>を必要ひつようとしていることをあきらかにした。報告ほうこくしゃ横塚よこつかえる心身しんしん機能きのう不全ふぜん障害しょうがいしゃであることをまえたうえで、<障害しょうがいにわとりこうがグレーゾーンの人々ひとびと社会しゃかい参加さんかじょうきょう説明せつめいするじょうきわめて重要じゅうよう視点してん提供ていきょうしていると判断はんだんした。ほん報告ほうこくでは、横塚よこつかの<障害しょうがいにわとりこうを、いじめがく提唱ていしょうしゃ内藤ないとう朝雄あさお提唱ていしょうする<飼育しいく>という概念がいねんによって検討けんとうした。内藤ないとうによれば、<飼育しいく>とは「相手あいて自分じぶんよりよわ立場たちば固定こていすること」であり、相手あいて集団しゅうだんからそうとしているわけではないてんが<排除はいじょ>とはことなっているとする。内藤ないとうの<飼育しいく概念がいねんを<障害しょうがいにわとりこう検討けんとうつうじてさらにげ、グレーゾーンの人々ひとびと研究けんきゅう役立やくだてることがほん報告ほうこくねらいである。
考察こうさつ
 <障害しょうがいにわとりこうを<飼育しいく>という観点かんてんから検討けんとうした結果けっか以下いかさんてんのことがあきらかになった。
(1)<障害しょうがいにわとり>は、にわとり集団しゅうだんからすために迫害はくがいされているのではなく、むしろ迫害はくがいするために必要ひつようとさえされている、というてん重要じゅうようである。にわとりにとって、みずからの保身ほしんのためには<障害しょうがいにわとり>の役割やくわり固定こていされたにわとり不可欠ふかけつである。養鶏ようけいにとっても、生産せいさんりょくとなるにわとりをできるだけおおのこしておくために<障害しょうがいにわとり>の役割やくわり固定こていされたにわとり必要ひつようとされる。にわとりからも養鶏ようけいからもにわとり集団しゅうだんなか必要ひつようとされているというてんが<排除はいじょ>とはあきらかにことなる<飼育しいく>の重要じゅうよう特徴とくちょうである。
(2)養鶏ようけいはともかく、にわとりには障害しょうがいしゃという概念がいねん存在そんざいしないので、<障害しょうがいにわとり>の集中しゅうちゅうてき迫害はくがいにわとり集団しゅうだんない生態せいたい秩序ちつじょ、あるいはパワー・バランスによってしょうじている可能かのうせいたかい。<飼育しいく>は心身しんしん障害しょうがいしゃという概念がいねんたない集団しゅうだんでも発生はっせいするというてんが、<障害しょうがいしゃ差別さべつ>ともことなっている。<障害しょうがいしゃ差別さべつ>は<障害しょうがいしゃ>という概念がいねんがあってはじめて成立せいりつする。
(3)<飼育しいく>には発生はっせいしやすい環境かんきょうがある。具体ぐたいてきには、空間くうかんざされており@関係かんけい解体かいたいすること、距離きょりくことが困難こんなん環境かんきょうA法律ほうりつおよ第三者だいさんしゃのチェックがとどかず、集団しゅうだんない恣意しいてきなルールおよびパワー・バランスの支配しはいりょくきわめてつよ環境かんきょうげられる。
【まとめ】
 報告ほうこくしゃ過去かこあつめた事例じれい参照さんしょうすると、グレーゾーンの人々ひとびとが<飼育しいく>を経験けいけんしやすいのは家庭かていおよ小中学校しょうちゅうがっこうである。このふたつの集団しゅうだん、あるいは空間くうかん関係かんけい解体かいたいむずかしい、法律ほうりつおよ第三者だいさんしゃのチェックがとどきにくいという<飼育しいく>を発生はっせいさせやすい環境かんきょう条件じょうけんすべそなえている。就労しゅうろうまえのグレーゾーンの人々ひとびと家庭かていおよ学校がっこうで<飼育しいく>をおお経験けいけんしている理由りゆうも、このてんもとめることができる。
 以上いじょうのことから、<飼育しいく概念がいねんは、グレーゾーンの人々ひとびと家庭かていおよ学校がっこうにおいて集中しゅうちゅうしやすい不利益ふりえき説明せつめいするじょうでは非常ひじょう有効ゆうこうであることがあきらかになった。しかし、雇用こようされるがわ退職たいしょくする自由じゆうがあり、雇用こようしゃから解雇かいこされる可能かのうせいのある職場しょくば場合ばあい家庭かていおよ学校がっこうくらべると関係かんけい解体かいたいすることは容易よういであるため、べつ概念がいねんによって説明せつめいする必要ひつようがあるとえるだろう。