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障害学会神戸大会玉井レジュメ

報告ほうこくしゃ共同きょうどう報告ほうこく場合ばあい代表だいひょうしゃ
氏名しめい(ふりがな):玉井たまい智子さとこ(たまいともこ)
報告ほうこく題目だいもく(40以内いない):「手話しゅわくちばなしも」でたのしく 〜聴覚ちょうかく障害しょうがいけん母親ははおやへの支援しえんかんがえる〜
発表はっぴょう要旨ようし(2,000以内いない)[註、文献ぶんけん図表ずひょうとうふくむ]:

1. はじめに
ろうしゃ聴覚ちょうかく障害しょうがいしゃとう以下いか聴覚ちょうかく障害しょうがいしゃとうとする)は、その障害しょうがいによるこえにくさから音声おんせい言語げんご獲得かくとく困難こんなんがあり、またけん聴者ちょうしゃ多数たすうめる音声おんせい言語げんご環境かんきょうにおいては、情報じょうほう収集しゅうしゅうにおいて不便ふべん困難こんなんいられている。そして聴覚ちょうかく障害しょうがいの9わり以上いじょうけん両親りょうしんからまれることから、親子おやこあるいは家族かぞくあいだのコミュニケーションについても音声おんせい言語げんご選択せんたくすればつうじにくさを、また手話しゅわ選択せんたくした場合ばあいには当事とうじしゃ以外いがい家族かぞく違和感いわかんを、それぞれかんじながら生活せいかつする場合ばあいすくなくない。聴覚ちょうかく障害しょうがい教育きょういく療育りょういく歴史れきしにおいても訓練くんれんによる音声おんせい言語げんご獲得かくとくみみき(あるいは相手あいてくちびるうごきをり)音声おんせい言語げんごはなす)が障害しょうがい克服こくふくであるという方向ほうこうせいつらぬかれ、保護ほごしゃおも母親ははおや)は、家庭かていにおける訓練くんれん立場たちばにない、わが発声はっせいはつ訓練くんれん全力ぜんりょくそそ状況じょうきょうられた。しかし一方いっぽう成人せいじん聴覚ちょうかく障害しょうがいしゃとうのかかえる問題もんだいとして、社会しゃかい生活せいかつにおいてその経験けいけん不足ふそく情報じょうほう不足ふそく情報処理じょうほうしょり経験けいけん不足ふそくとう背景はいけいとした生活せいかつ技術ぎじゅつとうじゅくによるくらしづらさが報告ほうこくされている。
これらのことから、聴覚ちょうかく障害しょうがいしゃのくらしづらさの改善かいぜんについて検討けんとうするために、まず、幼児ようじたのしい母子ぼしコミュニケーションを目標もくひょうとした環境かんきょう整備せいび検討けんとうし、手話しゅわふくめた母子ぼしコミュニケーションを支援しえんする目的もくてき地域ちいき幼稚園ようちえん生活せいかつにおけるコミュニケーション支援しえん目的もくてきで4年間ねんかんにわたり実施じっしした。その結果けっか母子ぼし環境かんきょうからの支援しえん指導しどうなかには、母親ははおや不安ふあんにさせるなどの悪影響あくえいきょうあたえる状況じょうきょうられることがわかった。このことから、専門せんもんしょくしゃ支援しえんしゃとう環境かんきょう因子いんし母子ぼしあたえる影響えいきょうとその阻害そがい因子いんし背景はいけいについて考察こうさつする。
2. 対象たいしょう方法ほうほう
難聴なんちょうA人工じんこう内耳ないじ以下いか内耳ないじとする)手術しゅじゅつ2さい1かげつ内耳ないじ装用そうよう聴力ちょうりょく30〜35dBでしべる)(以下いか、Aとする)とそのけん母親ははおや(30だい以下いか母親ははおやとする)。家族かぞく父親ちちおやかる難聴なんちょう)と3にんで、父親ちちおや両親りょうしん(ともにけん聴)が近在きんざい母親ははおや両親りょうしん(ともにけん聴)はくるまで1あいだほどの距離きょり在住ざいじゅう
A聴覚ちょうかく障害しょうがい告知こくち1さい6かげつごろより母親ははおや独学どくがく手話しゅわ単語たんご生活せいかつ活用かつようしていた。筆者ひっしゃ難聴なんちょうへの聴能訓練くんれんとう実施じっし機関きかんに「手話しゅわ親子おやこコミュニケーションのさそい」をおこない、母親ははおやおうじ、手話しゅわ学習がくしゅう開始かいしとなった。おおむねつき1かい手話しゅわ学習がくしゅう実施じっしし、母親ははおや手話しゅわコミュニケーション支援しえんおよび意見いけん聴取ちょうしゅおこなった。その地域ちいき幼稚園ようちえん入園にゅうえんともない、Aのコミュニケーション状況じょうきょう考慮こうりょして手話しゅわふくめたコミュニケーション環境かんきょう整備せいび目的もくてきにした参与さんよ観察かんさつ幼稚園ようちえん依頼いらいし、許可きょかされた。幼稚園ようちえんにはおおむねつき1かいのペースで参与さんよ観察かんさつおもむき、園児えんじくだえん教員きょういんらに意見いけん聴取ちょうしゅした。母子ぼしと、母子ぼし人々ひとびと状況じょうきょうについてICF国際こくさい生活せいかつ機能きのう分類ぶんるい以下いか、ICFとする)をもちいて整理せいりした。
3. 結果けっか考察こうさつ
母親ははおやはAのコミュニケーション手段しゅだんについて「くちばなし手話しゅわも」を希望きぼうした。筆者ひっしゃは「親子おやこたのしいやりり(健康けんこうてき母子ぼし関係かんけい基盤きばんとした自由じゆうなコミュニケーション)」と、「たのしい集団しゅうだん生活せいかつくちばなしるためやききとり、発声はっせいはつ過度かど緊張きんちょう集中しゅうちゅうもとめられない、大人おとなともどもとも自由じゆうなかかわりができる)」を目標もくひょうに、環境かんきょう整備せいび実施じっしした。その結果けっか幼稚園ようちえん入園にゅうえんまでの1年間ねんかんには、「くちばなし手話しゅわも」というコミュニケーション環境かんきょうたいする専門せんもんしょくしゃとうや、母親ははおやおよび父親ちちおや両親りょうしん、A同様どうよう内耳ないじ装用そうよう保護ほごしゃとうからの否定ひていてき態度たいど質問しつもん疑問ぎもん母親ははおや不安定ふあんていにする状況じょうきょうられた。地域ちいき幼稚園ようちえん選択せんたくたっては、教育きょういく委員いいんかいとう意見いけんおよ指導しどう地域ちいき幼稚園ようちえん生活せいかつする内耳ないじ装用そうよう母親ははおやたち(先輩せんぱい)の経験けいけんだん情報じょうほう入園にゅうえん希望きぼうたいする幼稚園ようちえん関係かんけいしゃとう対応たいおうなど、その折々おりおりに、母親ははおやまよいやなやみをかかえた。
幼稚園ようちえん生活せいかつにおいては入園にゅうえん当初とうしょ担任たんにん教員きょういんとう以前いぜんべつ聴覚ちょうかく障害しょうがい入園にゅうえんしたさい自主じしゅてき手話しゅわ講習こうしゅうかいかようなど、「手話しゅわくちばなしも」にたいして協力きょうりょくてきであったが、A音声おんせい言語げんごコミュニケーションりょく向上こうじょうとともに、「はつえたので、手話しゅわはやめたほうがよいのではないか」「手話しゅわはもうしなくてもよいか」などの意見いけんえた。母親ははおやもまた「手話しゅわくちばなしも」としつつも実際じっさいのAとのやりとりでは、「手話しゅわくちばなし」もしくは「くちばなしのみ」にかたむ様子ようすられ、くわえて、A音声おんせいのみでききとりできているかどうか「ためし」、A当惑とうわくするという場面ばめんられた。
これらのことから、A母親ははおや専門せんもんしょくしゃとうは、阻害そがい因子いんしする可能かのうせいがあるとともに、母親ははおや自身じしんもわがたいする阻害そがい因子いんしとなる可能かのうせいしめされた。このような阻害そがい因子いんし背景はいけいには、手話しゅわをコミュニケーション手段しゅだんとすることにたいする違和感いわかん労力ろうりょくくわえ、専門せんもんしょくしゃとうおやとしての立場たちばから「こえる、音声おんせいはなせる」ことを「発達はったつする、びる」と同義どうぎととらえ、「ばしてやりたい」というおもとう存在そんざいしており、あらためて「支援しえん」についての共通きょうつう認識にんしきおよび連携れんけいとう必要ひつようせいしめされたとかんがえる。