概要がいよう

日本にっぽんの政治せいじ家か。出身しゅっしんは東京とうきょう都と新宿しんじゅく区く。本籍ほんせきは山口やまぐち県けんで、衆議院しゅうぎいん議員ぎいんとしては下関しものせき市しおよび長門ながと市しを区域くいきとする山口やまぐち4区くを地盤じばんとしていた。

第だい90・96・97・98代だい内閣ないかく総理そうり大臣だいじん、第だい21・25代だい自民党じみんとう総裁そうさい（在任ざいにん：2006年ねん9月がつ～2007年ねん9月がつ、2012年ねん9月がつ～2020年ねん9月がつ）。2006年ねんに内閣ないかく総理そうり大臣だいじんに就任しゅうにん。当時とうじ52歳さいの年齢ねんれいでの就任しゅうにんであり、戦後せんご日本にっぽんにおける最年少さいねんしょう総理そうり大臣だいじんであった。しかし、2006年ねん時じの内閣ないかく総理そうり大臣だいじん就任しゅうにんは、健康けんこう問題もんだいを理由りゆうに早期そうきに辞任じにん。その6年ねん後ごの2012年ねんに二に度目どめの内閣ないかく総理そうり大臣だいじんに就任しゅうにんする。第だい二に次じ安倍あべ内閣ないかくは、約やく7年ねん8ヶ月かげつの長期ちょうき政権せいけんとなるも、再度さいど持病じびょうが悪化あっかしたことを理由りゆうに辞任じにんした。

2022年ねん7月がつ8日にち、奈良なら県けん奈良なら市しで選挙せんきょ応援おうえんの演説えんぜつ中ちゅうに自作じさく銃じゅうで撃うたれ死去しきょした。67歳さいだった。

プロフィール

父ちちは安倍あべ晋すすむ太郎たろう、父方ちちかた祖父そふは安倍あべ寛ひろし、母方ははかた祖父そふは岸きし信介しんすけ、大叔父おおおじは佐藤さとう栄作えいさくという、政治せいじ家か一家いっか。同おなじ党とうに所属しょぞくする岸きし信夫しのぶは実弟じってい。

兄あにの安倍あべ寛ひろし信しんは三菱商事みつびししょうじ子会社こがいしゃの元もと副ふく社長しゃちょう・実業じつぎょう家か。

妻つまの安倍あべ昭恵あきえはラジオパーソナリティ等とうで活動かつどう。子供こどもはいない。

経歴けいれき

政治せいじ家かとなるまで

東京とうきょう都と新宿しんじゅく区く生うまれ。中学校ちゅうがっこうから大学だいがくまでをエスカレーター式しきの私立しりつ校こう成蹊学園せいけいがくえんで過すごし、成蹊大学せいけいだいがく法学部ほうがくぶ政治せいじ学科がっかを卒業そつぎょう。小学生しょうがくせいの頃ころは平沢ひらさわ勝栄かつえいが家庭かてい教師きょうしについていた。

南みなみカリフォルニア大学だいがくへの留学りゅうがくの後のち神戸製鋼所こうべせいこうしょに勤務きんむ、3年ねん後ごに退社たいしゃして父ちちの秘書ひしょを務つとめる。

内閣ないかく総理そうり大臣だいじん就任しゅうにんまで

1991年ねんに父ちちの死去しきょに伴ともない出馬しゅつば、第だい40回かい衆議院しゅうぎいん議員ぎいん総そう選挙せんきょで初はつ当選とうせん。

2005年ねん10月がつに発足ほっそくした第だい3次じ小泉こいずみ純一郎じゅんいちろう改造かいぞう内ない閣かくで内閣ないかく官房かんぼう長官ちょうかんとして初はつ入閣にゅうかく。麻生あそう太郎たろう・谷垣たにがき禎一ていいち・福田ふくだ康夫やすおと並ならぶ「ポスト小泉こいずみ」(麻あさ垣かき康三やすぞうとも)の有力ゆうりょく候補こうほとみなされた。

1度目どめの内閣ないかく総理そうり大臣だいじん時代じだい

小泉こいずみの任期にんき満了まんりょうに伴ともなう総裁そうさい選せんで麻生あそう太郎たろうと谷垣たにがき禎一ていいちを大差たいさで破やぶって自由民主党じゆうみんしゅとう総裁そうさいに選出せんしゅつされ、2006年ねん、9月26日にちの臨時りんじ国会こっかいで内閣ないかく総理そうり大臣だいじんに指名しめいされる。小泉こいずみ政権せいけんの継承けいしょう者しゃとして自民党じみんとう内ないからは非常ひじょうに期待きたいが高たかかった。戦後せんご最年少さいねんしょうの首相しゅしょうであり、また、初はつの戦後せんご生うまれの首相しゅしょうであった。

在任ざいにん中ちゅうは特とくに教育きょういく政策せいさくを重視じゅうしし、中曽根なかそね康弘やすひろ政権せいけん以降いこうの「ゆとり教育きょういく」から「詰つめ込こみ教育きょういく」への回帰かいきをはかり、教育きょういく基本きほん法ほうを改正かいせいした。

内閣ないかくについて安倍あべは「美うつくしい国くにづくり内閣ないかく」と命名めいめいしたが、マスコミからは「論功行賞ろんこうこうしょう内ない閣かく」「お友達ともだち内ない閣かく」とされた。以前いぜんから安倍あべに近ちかい筋すじだった議員ぎいんや、総裁そうさい選せんにあたって安倍あべの当選とうせんをバックアップした人物じんぶつが数多かずおおく並ならんだためである。

同年どうねん5月がつ28日にちには光熱こうねつ水すい費ひが無償むしょうである議員ぎいん会館かいかんを主しゅたる事務所じむしょとしながら500万まん以上いじょう計上けいじょうし「ナントカ還元かんげん水すいとかいうものを付つけている」等とうと答弁とうべんしていた松岡まつおか利勝としかつ農水のうすい大臣だいじんが自殺じさつ。現職げんしょく大臣だいじんの自殺じさつは戦後せんご初はつであった。

2007年ねん1月がつ27日にちには柳澤やなぎさわ伯はく夫おっと厚あつ労ろう大臣だいじんが「女性じょせいは子供こどもを産うむ機械きかい」と発言はつげん。更さらに後ごを継ついだ赤城あかぎ徳彦とくひこ農水のうすい大臣だいじんも事務所じむしょ費ひに1000万まんほど計上けいじょうしたことなどが発覚はっかく。

このような就任しゅうにん当初とうしょからの疑惑ぎわくの多おおさや大臣だいじんの相次あいつぐ不適切ふてきせつ発言はつげんも重かさなり、政権せいけん支持しじ率りつは低下ていか。7月29日にちに行おこなわれた第だい21回かい参院さんいん選せんにおいて自民党じみんとうは30議席ぎせきも減へらし、結党けっとう以来いらい守まもり続つづけてきた参議院さんぎいん第だい一いち党とうの座ざも失うしなう大だい惨敗ざんぱいとなった。

9月12日にちには持病じびょうの悪化あっかを理由りゆうに突如とつじょとして辞任じにん会見かいけんを開ひらき、26日にちに総そう辞職じしょくした。

一般いっぱん議員ぎいん時代じだい

その後ご自身じしんの弱点じゃくてんだった健康けんこう問題もんだい（潰瘍かいよう性せい大腸だいちょう炎えん）を新薬しんやくアサコールの助たすけで寛解かんかいし克服こくふく。

2012年ねん9月がつ、前任ぜんにんの谷垣たにがき総裁そうさいの後任こうにんとして総裁そうさい選せんに臨のぞみ、石破いしば茂しげるを破やぶって再度さいど総裁そうさいに登板とうばん。今回こんかいは野党やとう党首とうしゅとしての登板とうばんとなった。

2度目どめの内閣ないかく総理そうり大臣だいじん時代じだい

同年どうねん12月がつの衆議院しゅうぎいん選挙せんきょで自民党じみんとうを293議席ぎせきの大だい勝利しょうりに導みちびき、再度さいどの首相しゅしょう登板とうばんを果はたした。一度いちど総理そうりの職しょくを退しりぞいた政治せいじ家かが再ふたたび総理そうり大臣だいじんとなるのは、戦後せんご史しでは吉田よしだ茂しげる以来いらいで、平成へいせいに入はいってからは初はつのことである。

第だい二に次じ安倍あべ内閣ないかくでは麻生あそう太郎たろう元もと首相しゅしょう、谷垣たにがき禎一ていいち元もと総裁そうさいを再ふたたび大臣だいじんとして起用きようする一方いっぽう、下村しもむら博文ひろぶみ、山本やまもと一太かずた、稲田いなだ朋美ともみなど初はつ入閣にゅうかくの人材じんざいも起用きよう。側近そっきんの官邸かんてい官僚かんりょうとしては今井いまい尚しょう哉ら経済けいざい産業さんぎょう省しょう出身しゅっしんの官僚かんりょうを重用じゅうようした。

「日本にっぽんを取とり戻もどす」をスローガンに掲かかげ、外交がいこう面めんでは日米にちべい同盟どうめいの元もとで積極せっきょく的てきな外交がいこう方針ほうしんを打うち出だし、「中国ちゅうごく包囲ほうい網もう」の形成けいせいを目指めざしてアジア・アフリカ諸国しょこくとの関係かんけいを強化きょうか。後述こうじゅつの通とおりイランやインドとはアメリカと一線いっせんを画かくする自主じしゅ的てきな友好ゆうこう外交がいこうを展開てんかいした。政府せいふ主導しゅどうのクールジャパンキャンペーンによる日本にっぽん文化ぶんかの輸出ゆしゅつ、TPPへの参加さんかを目指めざし、原子力げんしりょく発電はつでんの輸出ゆしゅつ等とうを向むけた方針ほうしんを推進すいしん。2020年ねんの夏季かきオリンピック招致しょうち活動かつどうにも注力ちゅうりょくし、招致しょうちした。

内政ないせい面めんでは「アベノミクス」と称しょうした経済けいざい政策せいさくを展開てんかい。年率ねんりつ2%のインフレ、年率ねんりつ3%の名目めいもく経済けいざい成長せいちょう率りつを掲かかげたが、在任ざいにん中ちゅうにはいずれも達成たっせいできなかった。

2014年ねん5月がつ30日にちには内閣ないかく人事じんじ局きょくを設立せつりつし、側近そっきんの官邸かんてい官僚かんりょうが省庁しょうちょうの枠わくを超こえて腕うでを振ふるう体制たいせいを確立かくりつ。政府せいふが指定していした公文書こうぶんしょを機密きみつ化かすることができる特定とくてい秘密ひみつ保護ほご法ほう、市民しみんの人権じんけんや自由じゆうを侵害しんがいするおそれが強つよく反対はんたい意見いけんが根強ねづよいテロ等とう準備じゅんび罪ざい法ほう(共謀きょうぼう罪ざい法ほう)、従来じゅうらいの政府せいふ憲法けんぽう解釈かいしゃくに反はんして集団しゅうだん自衛じえい権けんを認みとめる安全あんぜん保障ほしょう関連かんれん法案ほうあんといった、長年ながねんにわたり反対はんたいが根強ねづよかった法案ほうあんについても圧倒的あっとうてき勢力せいりょくを背景はいけいに成立せいりつさせている。

同年どうねんにはNHKの経営けいえい委員いいんも刷新さっしんし、「政府せいふが『右みぎ』と言いうものを『左ひだり』と言いうわけにはいかない」と就任しゅうにん会見かいけんで発言はつげんした籾井もみい勝人まさと会長かいちょうをはじめ、百田ひゃくだ尚樹なおき、長谷川はせがわ三千子みちこら安倍あべ肝きもいりの保守ほしゅ的てき人物じんぶつに固かためた人選じんせんが問題もんだい視しされた。

2017年ねんには首相しゅしょう本人ほんにんが関かかわるスキャンダルが続発ぞくはつ。新あたらしい教育きょういく施設しせつの整備せいびに係かかる土地とち売却ばいきゃくにおいて安倍あべから便宜べんぎが図はかられたのではないかとする森友もりとも学園がくえん問題もんだい、愛媛えひめ県けんへの獣しし医学部いがくぶ新設しんせつにおいて「総理そうりのご意向いこう」による選定せんていが行おこなわれたのではないかとする加計かけ学園がくえん問題もんだい（2つ合あわせていわゆるモリカケ問題もんだい）が相次あいついで取とり沙汰ざたされ、不信ふしんが高たかまった。

12月26日にちに、靖国神社やすくにじんじゃに参拝さんぱいした。第だい一いち次じ安倍あべ政権せいけん時代じだいに参拝さんぱい出来できなかったことを「痛恨つうこんの極きわみ」と発言はつげんしていたことから、ようやく念願ねんがんが叶かなった形かたちである。なお、この靖国やすくに参拝さんぱいは衛藤えとう晟一せいいち首相しゅしょう補佐ほさ官かんがアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくに事前じぜんに打診だしんしており、アメリカの反対はんたいを押おし切きって決行けっこうしたものであった。アメリカが緊張きんちょうを高たかめる行為こういだとして参拝さんぱいに失望しつぼうを表明ひょうめいしたのに対たいし、衛藤えとう補佐ほさ官かんが不満ふまんを表明ひょうめいしたこと（後ご撤回てっかい）や安倍あべ総理そうり自身じしんが第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん前まえの独どく仏ふつ関係かんけいと現在げんざいの日にち中ちゅう関係かんけいを重かさね合あわせる演説えんぜつをしたことなども重かさなって、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくなどからも右傾うけい化かを危惧きぐする声こえもあがった。

しかし、上記じょうきのような国内外こくないがいの波紋はもんがありながらも、同年どうねん末まつ突如とつじょ行いった衆議院しゅうぎいん解散かいさんでは自民党じみんとうは291議席ぎせき(追加ついか公認こうにんを含ふくむ)を獲得かくとく。与党よとう全体ぜんたいでは3分ぶんの2を超こえる大勝たいしょうを収おさめ、「安倍あべ一いち強きょう体制たいせい」を盤石ばんじゃくなものとした。

さらにその後ご2017年ねんの衆院しゅういん選せんでも勝利しょうりをおさめ、第だい98代だい内閣ないかく総理そうり大臣だいじんに選出せんしゅつされる。日本国にっぽんこく憲法けんぽう下かでの総理そうり4選せんは吉田よしだ茂しげると並ならび最多さいた。

2019年ねん10月がつに予定よてい通どおり消費しょうひ税率ぜいりつを10%に引ひき上あげた。ただし、酒類しゅるい・外食がいしょくを除のぞく飲食料品いんしょくりょうひんなど一部いちぶの商品しょうひんについては税率ぜいりつを8%に据すえ置おいた。2020年ねんのコロナ禍かでは全国ぜんこく一斉いっせい休校きゅうこうを要請ようせい、アベノマスク配布はいふを実施じっしするなどの対応たいおうを実施じっし。また、感染かんせん収束しゅうそくを待またず観光かんこう業界ぎょうかい支援しえんとして「GoToキャンペーン」を開始かいししたが、いずれも当否とうひについて評価ひょうかが大おおきく割われることとなった。

2020年ねん8月がつ28日にち、潰瘍かいよう性せい大腸だいちょう炎えんが再ふたたび悪化あっかし始はじめた事ことを理由りゆうに、二に度目どめの首相しゅしょう辞任じにんを行おこなう意向いこうを表明ひょうめいした。但ただし、スムーズな引ひき継つぎを行おこなう為ため、代理だいり等とうは立たてず、9月16日にちの総理そうり大臣だいじん指名しめい選挙せんきょまで任務にんむを続行ぞっこうし、後任こうにんである菅かん義よし偉えらへの引ひき継つぎをもって、首相しゅしょう在任ざいにん期間きかんにピリオドを打うった。在任ざいにん期間きかんは通算つうさん3188日にち、第だい二に次じ安倍あべ政権せいけん発足ほっそく以降いこうだけでも2822日にちに及および連続れんぞく・通算つうさんともに憲政けんせい史上しじょう最長さいちょうである（2位いは連続れんぞく在任ざいにん期間きかんでは大叔父おおおじ佐藤さとう栄作えいさくの2798日にち、通算つうさん在任ざいにん期間きかんでは桂かつら太郎たろうの2886日にち）。

内閣ないかく総理そうり大臣だいじん退任たいにん後ご

2021年ねん11月9日にち、自民党じみんとうの最大さいだい派閥はばつである細田ほそだ派はこと清和せいわ政策せいさく研究けんきゅう会かいは安倍あべの会長かいちょう就任しゅうにん要請ようせいを全会ぜんかい一致いっちで決定けっていし、11日にちに正式せいしきに就任しゅうにん。細田さいだ派はは安倍あべ派はに衣替ころもがえすることになった。

同年どうねん12月がつ15日にちには安倍あべ政権せいけん下かの2013年ねんから菅かん義よし偉えら政権せいけん下かの2021年ねん4月がつまで「建設けんせつ工事こうじ受注じゅちゅう動態どうたい統計とうけい」の改竄かいざんが発覚はっかく。なお、「建設けんせつ工事こうじ受注じゅちゅう動態どうたい統計とうけい」は内閣ないかく府ふの基幹きかん統計とうけいである国民こくみん経済けいざい計算けいさん（GDP統計とうけい）にも影響えいきょうする指標しひょうである。

退陣たいじん後ごも、後任こうにんの菅かん義よし偉えらとの良好りょうこうな関係かんけいをアピール。その後任こうにんの岸田きしだ文雄ふみおが首相しゅしょうに就任しゅうにん後ごは、対立たいりつ派閥はばつである岸田きしだへの牽制けんせいの意図いともあってか、台湾たいわん関係かんけいについて「台湾たいわん有事ゆうじは日本にっぽんの有事ゆうじ、日米にちべい同盟どうめいの有事ゆうじ」であると発言はつげんしたり、ロシアによるウクライナ侵攻しんこうに際さいして「核かく共有きょうゆうの議論ぎろんを進すすめる必要ひつようがある」と発言はつげんするなど、首相しゅしょう時代じだいにはしていなかった強気つよきな言動げんどうが目立めだつ。

死去しきょ、その後ご

2022年ねん7月がつ8日にち11時半じはん頃ごろ、奈良なら県けんの大和やまと西大寺さいだいじ駅えき周辺しゅうへんで街頭がいとう演説えんぜつ中ちゅうに背後はいごから自作じさく銃じゅうで統一教会とういつきょうかいに恨うらみを持もつ元もと自衛隊じえいたい員いんの男おとこに銃撃じゅうげきされる事件じけんが発生はっせい。振ふり返かえった際さいに発射はっしゃされた2発はつ目めで2発はつが命中めいちゅう。それぞれ左ひだり胸むねと首くびを貫通かんつうした。心肺しんぱい停止ていし、意識いしき不明ふめいの重体じゅうたいであり、現場げんばで医師いしによる応急おうきゅう処置しょちが行おこなわれた後のち、ドクターヘリで病院びょういんへと運はこばれたが、その日ひの午後ごごに死亡しぼうが確認かくにんされた。享年きょうねん67。奇くしくも父ちち・安倍あべ晋すすむ太郎たろうと同おなじ年齢ねんれいであった（詳細しょうさいは「安倍晋三あべしんぞう銃撃じゅうげき事件じけん」を参照さんしょう）。

葬儀そうぎは7月がつ12日にちに増上寺ぞうじょうじで執とり行おこなわれ会場かいじょうには献花けんか台だいも設置せっちされた。

遺体いたいは霊柩車れいきゅうしゃで首相しゅしょう官邸かんていや自民党じみんとう本部ほんぶなどゆかりのある地ちを巡めぐった後のち、桐きりヶ谷たに斎場さいじょうにて荼毘だびに付ふされた。

葬儀そうぎの際さい、地元じもとの下関しものせき市しをはじめとする全国ぜんこく各地かくちの自治体じちたいが市役所しやくしょなどの施設しせつに半旗はんきを掲かかげ記帳きちょう所しょを設もうけるなどして弔意ちょういを表あらわした。また、東京とうきょう都とや山口やまぐち県けん、福岡ふくおか市し、仙台せんだい市し、川崎かわさき市し、帯広おびひろ市しなどいくつかの教育きょういく委員いいん会かいが小中学校しょうちゅうがっこうや高校こうこうなどに半旗はんき掲揚けいようを要請ようせいしたが、「教育きょういくの中立ちゅうりつ性せいを損そこなう」として物議ぶつぎを醸かもした。

日本にっぽん政府せいふは従したがえ一いち位いに叙じょし、大だい勲くん位い菊花きっか章あきら頸飾および大だい勲くん位い菊花きっか大だい綬章じゅしょうの追贈ついぞうを決定けってい。そしてかつての同期どうきにして盟友めいゆう、岸田きしだによって9月がつ27日にちに国葬こくそうを行おこなうことが決定けっていした。既すでに葬儀そうぎは行おこなわれてはいるが、功績こうせきを鑑かんがみて「弔意ちょういを国くに全体ぜんたいとして示しめす」ということである。戦後せんごの首相しゅしょう経験けいけん者しゃの葬礼そうれいは内閣ないかくと自民党じみんとうによる「合同ごうどう葬そう」が主流しゅりゅうとなっており、国葬こくそうは吉田よしだ茂しげる以来いらい戦後せんご2例れい目め（佐藤さとう栄作えいさくの「国民こくみん葬そう」を含ふくめても3人にん目め）と異例いれいのことである。また、山口やまぐち県けんも10月がつ15日にちに県民けんみん葬そうを実施じっしした。

しかしながら彼かれの国葬こくそうについては「国葬こくそうを行おこなうに足たる明確めいかくな根拠こんきょ法令ほうれいが無ない(※)」ために国民こくみんからも反対はんたい意見いけんも数多かずおおく挙あげられており、一部いちぶでは「国葬こくそうの差さし止とめ」を求もとめる訴訟そしょうまで行おこなわれていたが、岸田きしだはそんな国民こくみんの声こえに対たいして説得せっとくを放棄ほうき。無視むしを決きめ込こんで国葬こくそうを強行きょうこうしたため、物議ぶつぎを醸かもし、岸田きしだ政権せいけんの支持しじ率りつは急落きゅうらくした。

なお極きわめて近ちかいタイミングで行おこなわれた他国たこくの国葬こくそうであるイギリスのエリザベス2世せいの国葬こくそうが安部あべの国葬こくそうと比較ひかくされやすい。費用ひように関かんしてだけでも在任ざいにん期間きかんが70年ねんというイギリスで史上しじょう最もっとも長ながく君主くんしゅを務つとめてたエリザベス2世せい元もと女王じょおうの国葬こくそう費用ひようは推定すいてい13億おく円えんと言いわれており、対たいして総理そうり大臣だいじんの在任ざいにん期間きかんが僅わずか8年ねん8か月げつだけという安部あべの国葬こくそう費用ひようの16億おく円えんの方ほうが上回うわまわることについても批判ひはんの声こえが大おおきい。

また批判ひはんの声こえとしても上述じょうじゅつのように岸田きしだは安部あべの同期どうきであり盟友めいゆうであったため、「安部あべの国葬こくそうを行おこなうことによって、その同期どうきであり盟友めいゆうである岸田きしだ自身じしんの地位ちいを盤石ばんじゃくにするためのプロパガンダである」という見方みかたもあり、全体ぜんたいとして厳きびしい意見いけんが多おおく、そういう意味いみでも本当ほんとうに国葬こくそうを行おこなうに足たる人物じんぶつであったかは疑問ぎもんが残のこる。

※：国葬こくそうの理由りゆうとしては「総理そうり大臣だいじんを長ながく務つとめた」「選挙せんきょ活動かつどう中ちゅうに暗殺あんさつされた」の二に点てんのみが基本きほん的てきに挙あげられ、後者こうしゃは論外ろんがいとして、前者ぜんしゃについても「明確めいかくにどれだけの期間きかん在籍ざいせきすれば国葬こくそうの対象たいしょうたり得えるのか？またその期間きかんは何なにを根拠こんきょにした長ながさなのか？」については明確めいかくな根拠こんきょ法令ほうれいが無ないことを含ふくめて一切いっさい語かたられていない(歴代れきだい最長さいちょうの任期にんきだからという声こえだからとの声こえもあるが、政治せいじ家かというのは長ながく務つとめれば良よいものではなく、何なにを成なしたかを評価ひょうかすべきである。そもそも安部あべ政権せいけんは支持しじ率りつこそ50％強きょうあったものの、上述じょうじゅつの「加計かけ学園がくえん問題もんだい」、「森友もりとも学園がくえん問題もんだい」、そして参加さんか者しゃ数すう・支出ししゅつ額がくの肥大ひだい化かによる予算よさんの二に倍ばい強きょうと予算よさんを遥はるかに超こえる税金ぜいきんの無駄遣むだづかいや一般人いっぱんじんである自身じしんの妻つまを参加さんか者しゃとして招待しょうたいする、招待しょうたい者しゃ名簿めいぼの廃棄はいきを行おこなうといった数々かずかずの問題もんだい点てんを抱かかえた「桜さくらを見みる会かい問題もんだい」等とう、様々さまざまな問題もんだいが悪わるい意味いみで話題わだいとなっており、少すくなくとも手放てばなしで誉ほめ称たたえることができる人物じんぶつではなかった)。

2022年ねん11月22日にち、下関しものせき市し東大和ひがしやまと町まちと長門ながと市しの選挙せんきょ事務所じむしょを同年どうねん12月がつ末まつに閉鎖へいさすることを発表はっぴょうした。安倍あべの死しにより空席くうせきとなった山口やまぐち4区くの後継こうけい者しゃ探さがしは難航なんこうしたが、昭恵あきえらが主導しゅどうして下関しものせき市しの議会ぎかい議員ぎいんを務つとめていた吉田よしだ真しん次じを擁立ようりつし、2023年ねん4月がつの補選ほせんで対抗たいこう馬ばの有田ありた芳生よしおを下くだして当選とうせんを果はたした。安倍あべの死後しご、"安倍あべ派は"こと清和せいわ政策せいさく研究けんきゅう会かいの会長かいちょうは空席くうせきとなったが、高市たかいち早苗さなえの支持しじ者しゃの集会しゅうかいの際さいに安倍あべの遺影いえいが掲かかげられるなど、右派うはの間あいだで偶像ぐうぞうとしての存在そんざい感かんを発揮はっきし続つづけている。

政治せいじ家かとしての評価ひょうか

安倍あべは自民党じみんとう右派うはの清和せいわ政策せいさく研究けんきゅう会かいに所属しょぞくし、竹中たけなか平蔵へいぞうをブレーンとして重用じゅうようし新しん自由じゆう主義しゅぎ路線ろせんを走はしった保守ほしゅ派はの代表だいひょう格かくとしてよく知しられる。（宗教しゅうきょう右翼うよくを含ふくむ）急進きゅうしん右派うはをコア支持しじ層そうとし、「憲法けんぽう改正かいせい」や「岩盤がんばん規制きせいの改革かいかく」を訴うったえてはいたものの、実際じっさいには金融きんゆう緩和かんわや女性じょせいの経済けいざい参加さんか、「働はたらき方かた改革かいかく」の推進すいしんなど左派さは・中道ちゅうどうのお株かぶを奪うばうような政策せいさくも推進すいしんしており、（自民党じみんとうの政治せいじ家かにはよくあることだが）単純たんじゅんな右派うはとは言いい難がたかった側面そくめんがある。また、安倍あべ自身じしんは排外はいがい的てきなナショナリストではなく、「もはや、国境こっきょうや国籍こくせきにこだわる時代じだいは過すぎ去さりました」と宣言せんげん、「外国がいこく人じん労働ろうどう者しゃの雇用こよう」をアベノミクスの施策しさくに掲かかげるなどグローバリズムに肯定こうてい的てきであった。「外交がいこうの安倍あべ」と言いわれるほど積極せっきょく的てきな対外たいがい政策せいさくは右派うはだからこそ可能かのうだった側面そくめんもあったと言いえる（中道ちゅうどう・左派さは的てきな政治せいじ家かが推進すいしんすると「売国ばいこく的まと」とみなされる恐おそれがあるため）。

日本にっぽん国内こくないでの評価ひょうかは立場たちばによって分わかれる一方いっぽう、海外かいがいからは保守ほしゅ・リベラルを問とわず評価ひょうかは高たかい。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくの共和党きょうわとうのドナルド・トランプが盟友めいゆうとしてその死しを深ふかく悼いたんだ一方いっぽう、政敵せいてきであったヒラリー・クリントンも「民主みんしゅ主義しゅぎの擁護ようご者しゃであり、経済けいざい発展はってんには女性じょせいの参加さんかが不可欠ふかけつと強つよく信しんじていました」と賛辞さんじを送おくっている。西側にしがわ諸国しょこくからは「自由じゆう貿易ぼうえきと民主みんしゅ主義しゅぎの守護しゅご者しゃ」とみられる一方いっぽう、発展はってん途上とじょう国こくや欧州おうしゅうのナショナルアイデンティティを重視じゅうしする立場たちばからはハンガリーのオルバーン・ヴィクトルやブラジルのジャイール・ボルソナーロなどと並ならぶ「反はんグローバリズムの旗手きしゅ」の一人ひとりとして扱あつかわれることがあり（上述じょうじゅつの通とおり安倍あべはグローバリズムに肯定こうてい的てきであり、これは誤解ごかいに近ちかいのだが）、安倍あべ政権せいけんが見みる人ひとによって異ことなる姿すがたを見みせる"玉虫色たまむしいろ"の評価ひょうかを受うけていることが興味深きょうみぶかい。

実際じっさいに追悼ついとう演説えんぜつでも野田のだは天皇陛下てんのうへいかの生前せいぜん退位たいいに向むけた環境かんきょう整備せいびを官邸かんていで議論ぎろんした際さいに、「冷静れいせい沈着ちんちゃくなリアリストとして、柔軟じゅうなんな一いち面めんを併あわせ持もっていた」と振ふり返かえっている。

対外たいがい関係かんけい

インド

インドのナレンドラ・モディ首相しゅしょうとは非常ひじょうに親密しんみつ的てきで、互たがいに個人こじんレベルでも強つよい信頼しんらい関係かんけいがあり、また、インドが日本にっぽんと同様どうように中国ちゅうごくとの領土りょうど問題もんだいを抱かかえていることもあってか、安倍あべ首相しゅしょうは日本にっぽんとインドの関係かんけいを非常ひじょうに重要じゅうよう視しする傾向けいこうがあるとされる。

また、2007年ねん4月がつにまだ首相しゅしょうとなる以前いぜんに訪日ほうにちしたモディとすでに会談かいだんしており、2012年ねん12月に第だい46回かい衆議院しゅうぎいん議員ぎいん総そう選挙せんきょに圧勝あっしょうした安倍晋三あべしんぞう総裁そうさいが首相しゅしょうに就任しゅうにんすることが決きまった時ときも、最初さいしょに祝福しゅくふくの意いを伝つたえた海外かいがい要人ようじんの一人ひとりがモディだったという。

そのモディは、首相しゅしょう就任しゅうにん後ごである2014年ねん8月がつ30日にちに初はつ来日らいにちし、京都きょうと市しの京都きょうと迎賓館げいひんかんで安倍あべ首相しゅしょうの主催しゅさいする非公式ひこうしきの夕食ゆうしょく会かいに招待しょうたいされており、夕食ゆうしょく会かいでは東京とうきょう裁判さいばん(極東きょくとう国際こくさい軍事ぐんじ裁判さいばん)で、東條とうじょう英機ひでき首相しゅしょうをはじめとした被告ひこく全員ぜんいんの無罪むざいを主張しゅちょうしたインド人じん判事はんじのラダ・ビノード・パール博士はかせについて語かたり合あい、モディ首相しゅしょうは「インド人じんが日本にっぽんに来きてパール判事はんじの話はなしをすると尊敬そんけいされる。自慢じまんできることだ。パール判事はんじが東京とうきょう裁判さいばんで果はたした役割やくわりは我々われわれも忘わすれていない」と述のべ、その功績こうせきを共ともに称となえ合あった。

翌日よくじつには二に人にんは共ともに真言宗しんごんしゅうの仏教ぶっきょう寺院じいんである東寺とうじを訪おとずれ、大日如来だいにちにょらい像ぞうの前まえで合掌がっしょうしている。

9月1日にちの日ひ印しるし首脳しゅのう会談かいだんでは、日本にっぽんによる政府せいふ開発かいはつ援助えんじょ(ODA)を含ふくむ約やく3.5兆ちょう円えん規模きぼの投融資とうゆうしの実施じっしや、原子力げんしりょく協定きょうていの妥結だけつに向むけた協議きょうぎの加速かそく、インド海軍かいぐんと日本にっぽん海上かいじょう自衛隊じえいたいの海上かいじょう共同きょうどう訓練くんれんの定例ていれい化かなどを盛もり込こんだ「日にちインド特別とくべつ戦略せんりゃく的てきグローバル・パートナーシップのための東京とうきょう宣言せんげん」と題だいする日にち印しるし共同きょうどう声明せいめいに署名しょめいし、両国りょうこく関係かんけいを、「特別とくべつな戦略せんりゃく的てきグローバルパートナーシップ」に格上かくあげすることで一致いっちした。

2015年ねん12月12日にちには3回かい目めとなるインド訪問ほうもんを行おこない、モディ首相しゅしょうとの会談かいだんは5回かい目めとなった。

会談かいだんでは、日本にっぽん国こく自衛隊じえいたいとインド軍ぐんの防衛ぼうえい装備そうび協力きょうりょくの推進すいしんなどの安全あんぜん保障ほしょう協力きょうりょくや、経済けいざい協力きょうりょくの具体ぐたい化か、文化ぶんか・人的じんてき交流こうりゅうの強化きょうかについて協議きょうぎし、インド西部せいぶのムンバイからアーメダバード間あいだを結むすぶ、高速こうそく鉄道てつどう計画けいかくにおける、日本にっぽんの新幹線しんかんせんシステム導入どうにゅうで合意ごういしたことを受うけて、「日にち印しるし新しん時代じだいの幕開まくあけにふさわしいプロジェクトだ。他たの高速こうそく鉄道てつどう路線ろせんにも導入どうにゅうされることを期待きたいする」と述のべている。

また、平和へいわ的てき目的もくてきに限定げんていする条件じょうけんのもと、日本にっぽんからの原発げんぱつ技術ぎじゅつ供与きょうよを可能かのうにする日ひ印しるし原子力げんしりょく協定きょうていの締結ていけつに原則げんそく合意ごういし、核かく拡散かくさん防止ぼうし条約じょうやく(NPT)非ひ加盟かめい国こくであるインドと、日本にっぽんの歴史れきし上じょう初はじめて原子力げんしりょく協定きょうていを結むすぶこととなり、安倍あべ首相しゅしょうは「日本にっぽんによる協力きょうりょくを平和へいわ目的もくてきに限定げんていする内容ないようを確保かくほした」と評価ひょうかしており、モディ首相しゅしょうも「両国りょうこくの戦略せんりゃく的てきパートナーシップの新あらたなレベルを示しめすシンボルだ」と語かたっている。

ASEAN

安倍あべは第だい二に次じ安倍あべ政権せいけん発足ほっそく後ご１ヵ月かげつ以内いないにベトナム・タイ・インドネシアを歴訪れきほうしたほか、麻生あそう太郎たろう副ふく総理そうりのミャンマー訪問ほうもんなど、閣僚かくりょうがASEAN主要しゅよう国こくを次々つぎつぎと訪問ほうもんした。 「自由じゆう」「民主みんしゅ主義しゅぎ」「基本きほん的てき人権じんけん」「法ほうの支配しはい」など普遍ふへん的てき価値かちの実現じつげんと、経済けいざい連携れんけいネットワークを通つうじた繁栄はんえいを目指めざし、日本にっぽんはASEANの対等たいとうなパートナーとして共ともに歩あゆんでいく旨むねのメッセージを各国かっこく首脳しゅのうに伝達でんたつした上うえ、2013年ねん1月がつ18日にちには、訪問ほうもん先さきのインドネシアにおいて、「対たいASEAN外交がいこう5原則げんそく」を発表はっぴょうした。

2015年ねん5月がつ27日にちには、太田おおた昭宏あきひろ国土こくど交通こうつう相しょうとタイのプラジン・チャントーン運輸うんゆ相しょうが国土こくど交通省こうつうしょう内うちで会談かいだんし、日本にっぽんの新幹線しんかんせん方式ほうしきの導入どうにゅうを前提ぜんていに高速こうそく鉄道てつどうの調査ちょうさを始はじめる覚書おぼえがきを締結ていけつした。 調査ちょうさの対象たいしょうとなったのはバンコクからチェンマイ間あいだを結むすぶ約やく670kmの路線ろせんで、総そう工費こうひは1兆ちょう円えん(約やく2800億おくバーツ)超ちょうという規模きぼとなる。安倍あべ政権せいけんが成長せいちょう戦略せんりゃくで掲かかげるインフラの海外かいがい輸出ゆしゅつに弾はずみをつけるという思惑おもわくであったが、日本にっぽん企業きぎょうは採算さいさんが見込みこめないとして後うしろ向むきであり、安倍あべ政権せいけん後ごも進展しんてんは見みられない。

他ほかにも安倍あべ政権せいけんは2013年ねん7月がつに東南とうなんアジア諸国しょこくのビザ発給はっきゅう要件ようけんの緩和かんわを行おこなっており、それによって東南とうなんアジア諸国しょこくからの訪日ほうにち観光かんこう客きゃくは急増きゅうぞうしている。

中央ちゅうおうアジア

親日しんにち的てきでありながら北朝鮮きたちょうせん等ひとしの"ならず者もの国家こっか"とも親交しんこうを結むすんでいる国くにが多おおいことを踏ふまえ、日本にっぽんが国際こくさい犯罪はんざいを締しめ上あげる際さいの根回ねまわしに奔走ほんそうした。ここでは調停ちょうてい者しゃとしての顔かおを発揮はっきしている。

インドの大敵たいてきであるパキスタンとも友好ゆうこう的てきで、経済けいざい協力きょうりょくを推おし進すすめて親交しんこうを深ふかめながら、北朝鮮きたちょうせんによる諸しょ問題もんだいへの理解りかいを求もとめたり、テロ組織そしき対策たいさくへの重要じゅうよう性せいを指摘してきするなど、硬軟こうなん織おり交まぜた外交がいこうを展開てんかいしている。

アフガニスタンにおいても、独立記念日どくりつきねんびなどの要所ようしょを抑おさえて親交しんこうを深ふかめつつ、日本にっぽんの立たち回まわりへの理解りかいを得えていた。

そもそも一帯いったいは日本にっぽん企業きぎょうによる農業のうぎょう改革かいかくや灌漑かんがい計画けいかくが進行しんこうしており、極きわめて日本にっぽんへの好感こうかん度どが高たかく、それを生いかした立たち回まわりは日本にっぽんの伝統でんとう的てきな方針ほうしんであるが、安倍あべ首相しゅしょうはこれをよく守まもり、更さらに推おし進すすめたと言いえよう。

民間みんかんでは、安倍あべ首相しゅしょうの訪問ほうもん後ごに日本にっぽんとの関係かんけいを重視じゅうしする国民こくみんがさらに増加ぞうかし、日本語にほんご教育きょういくの需要じゅようが高たかまるなどの影響えいきょうが確認かくにんされている。

中東ちゅうとう

トルコやサウジアラビアといった親日しんにち国こくに限かぎらず、中東ちゅうとう広域こういきで人気にんきが高たかい。中なかにはイランのような「米国べいこくはむろんその同盟どうめい国こくも敵てき」と公言こうげんする国くにもあるが、そういった反米はんべいの国くにとも対たい米べい交渉こうしょうを取とり持もつなど、ここでも広ひろく調停ちょうてい者しゃとして信頼しんらいされていた。

2020年ねん1月がつに中東ちゅうとう歴訪れきほうした際さいにはサウジ側がわとイラン側がわが共ともに「安倍あべ総理そうりが我わが国くにの味方みかたをして相手あいて国こくに釘くぎを刺さした」と報道ほうどうしあうなど、強つよい期待きたいのほどが窺うかがえる。

中国ちゅうごくにおけるウイグル人じんの人権じんけん救済きゅうさい活動かつどうも積極せっきょく的てきに行いっていたため、中近東ちゅうきんとうのテュルク系けい諸国しょこくからも厚あつい信頼しんらいを集あつめていた。

2020年ねん8月がつの辞任じにん発表はっぴょうに際さいしては、トルコを始はじめとする諸国しょこくから口くちを揃そろえて「中東ちゅうとう和平わへいに貢献こうけんした」との賛辞さんじが述のべられた。

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく

上記じょうきの「価値かち観かん外交がいこう」や反共はんきょう主義しゅぎ的てきな政治せいじ信念しんねん、台湾たいわん有事ゆうじ発言はつげんなど反はん中ちゅう派はのイメージがある安倍あべだが、実際じっさいには日にち中ちゅう関係かんけいの進展しんてんにも大おおいに貢献こうけんしている。

安倍あべは首相しゅしょう就任しゅうにん後ご翌月よくげつの2006年ねん10月がつ8日にちに電撃でんげき訪中ほうちゅうし、温ゆたか家宝かほう首相しゅしょう、胡錦濤こきんとう国家こっか主席しゅせきとの会談かいだんで、両氏りょうしの訪日ほうにちを招請しょうせいし関係かんけい修復しゅうふくの第一歩だいいっぽを踏ふみ出だした。戦後せんご歴代れきだい首相しゅしょうのうち、中国ちゅうごくを初はつ外遊がいゆう先さきに選えらんだのはこれが初はじめてであった。

第だい二に次じ安倍あべ政権せいけん発足ほっそく時じには、民主党みんしゅとう政権せいけんの尖閣諸島せんかくしょとうを巡めぐっての対応たいおう（中国ちゅうごく漁船ぎょせん衝突しょうとつ事件じけんと尖閣諸島せんかくしょとうの国有こくゆう化か）のまずさにより、日にち中ちゅう関係かんけいは国交こっこう正常せいじょう化か後ご最悪さいあくの状態じょうたいとなっていたが、安倍あべは2014年ねん11月に習近平ひらた国家こっか主席しゅせきと会談かいだん。尖閣せんかく問題もんだいに関かんしては「対話たいわと協議きょうぎを通つうじて不測ふそくの事態じたいを避さける」と合意ごういし、一応いちおうの関係かんけい修復しゅうふくにこぎつけている。中国ちゅうごくの外交がいこう戦略せんりゃくである「一帯いったい一路いちろ」に関かんしては、2017年ねん5月がつのフォーラムに党とう幹事かんじ長ちょうの二に階かい俊博としひろと腹ふく心しんの今井いまい尚しょう哉を派遣はけんして親書しんしょを手渡てわたし、条件じょうけん付つき参画さんかくを表明ひょうめい。AIIBの日本にっぽん参加さんかについても前向まえむきな考かんがえを示しめし、中国ちゅうごく政府せいふは日本にっぽん政府せいふの姿勢しせいを歓迎かんげいした。同年どうねん12月がつの東京とうきょうでの会議かいぎで、安倍あべはインド太平洋たいへいよう構想こうそうと一帯いったい一路いちろの連携れんけいを推進すいしんする考かんがえを表明ひょうめいした。