かけざん順序じゅんじょ問題もんだい

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かけざん順序じゅんじょ問題もんだい(かけざんのじゅんじょもんだい)[1]は、かけざんによってかいられる算数さんすう文章ぶんしょうだいにおいて、解答かいとう(15など)がっていてもしき(3 x 5など)の順序じゅんじょ想定そうていぎゃくだとバツとされる採点さいてん方針ほうしん是非ぜひをめぐる論争ろんそうである[2]。「かけざん順序じゅんじょ強制きょうせい問題もんだい[3]かけざんしきただしい順序じゅんじょ[4]かけざん順番じゅんばん[5]などともわれている。

概要がいよう[編集へんしゅう]

想定そうてい解答かいとうとなるしき(等号とうごうひだり)とこたえ(等号とうごうみぎ)のわせが"A x B = C(A,B,C は具体ぐたいてき非負ひふ整数せいすう)"となる文章ぶんしょうだいたいし、"B x A = C"としたときすくなくともしき正解せいかいとなる採点さいてん基準きじゅんられていることが日本にっぽん一部いちぶ小学校しょうがっこうなどで確認かくにんされている。この当否とうひほんこうにあたる。日本にっぽん学習がくしゅう指導しどう要領ようりょう解説かいせつでは、かけざん順序じゅんじょ概念がいねん一定いってい明確めいかくさで存在そんざい規定きていされ[6]文科ぶんかしょう担当たんとうしゃ自然しぜん順序じゅんじょ存在そんざいせい学習がくしゅう意義いぎについて肯定こうていてき立場たちば明言めいげんしている[7]同省どうしょう担当たんとうしゃ一方いっぽう順序じゅんじょ概念がいねんもとづく正解せいかい判定はんていについて、実施じっし有無うむ裁量さいりょう問題もんだいとする見解けんかいしめしている[2][7][8]。これより過去かこ典拠てんきょ文部もんぶ科学かがくしょうによる学習がくしゅう指導しどう要領ようりょうおよび指導しどう要領ようりょう解説かいせつでは順序じゅんじょ規定きていされていないとしたものもある[8]

すくなくとも日本にっぽんにおける順序じゅんじょは「(1つぶんのかず)×(いくつぶん)」のようにさだめられる。日本にっぽん小学生しょうがくせい教科書きょうかしょ学習がくしゅう参考さんこうしょ例示れいじされているしきはこの順序じゅんじょにほぼ統一とういつされている[よう出典しゅってん]。これにしたがぎゃく順序じゅんじょかれたしき正解せいかいとみなす記述きじゅつは、各社かくしゃ教科書きょうかしょ指導しどうしょおよび一部いちぶ教科書きょうかしょ学習がくしゅう参考さんこうしょられる[よう出典しゅってん]

日本にっぽんでは、1972ねん朝日新聞あさひしんぶん報道ほうどうされて以来いらい、この問題もんだい数学すうがくしゃらにたびたびげられてきた[9]たとえば、1つぶんのかず×いくつぶんもとまるかけざん文章ぶんしょう問題もんだいでは、「6にんのこどもに、1人ひとり4こずつみかんをあたえたい。みかんはいくつあればよいでしょうか。」という設問せつもんたいする、「(しき)6 × 4 = 24(こたえ)24 」という解答かいとう正解せいかいにすべきかどうか[10]問題もんだいとなった。日本にっぽん小学校しょうがっこうにおいて、1つぶんのかず×いくつぶん順序じゅんじょかれているしきのみを正解せいかいとする採点さいてん方針ほうしん散見さんけんされ、しき正解せいかいとしこたえを正解せいかいとすることがられていた。このような事例じれいたいして、交換こうかん法則ほうそくつからどちらの順序じゅんじょでもよい[11]、トランプくばりのように1こずつわたしたは6をひとつぶん(1じゅんぶん)とかんがえることもできる[12]などの批判ひはん集中しゅうちゅうした。ふるくは高木たかぎ貞治さだはるなどのいた教科書きょうかしょでも実質じっしつてきに「1つぶんのかず×いくつぶん」とおなじしかたでざんを「定義ていぎ」している。

世界せかいてきには順序じゅんじょ不問ふもんにしている[13]との調査ちょうさ結果けっかもある。

歴史れきしてき経緯けいい[編集へんしゅう]

文部省もんぶしょうは1951ねん, 小学校しょうがっこう学習がくしゅう指導しどう要領ようりょう算数さんすうへん(試案しあん)昭和しょうわ26ねん(1951)改訂かいていばん[14]において

いちさつ5えんのノートを,6さつったら,いくら支払しはらえばよいでしょう。」という問題もんだいくときには,「5えん×6」として,その結果けっかもとめるのが普通ふつうである。ところが,この問題もんだいを,「ノートを6さついました。どれも1さつ5えんでした。ぜんぶでいくら支払しはらったらよいでしょう。」とすると,「6×5=30(えん)」として結果けっかもとめるこどもがでてくるであろう。

こどもが,このようなあやまった解決かいけつをするのは,かけざん意味いみをひととおり理解りかいしているにしても,その理解りかい形式けいしきてきになっていることをしめしているといえる。

問題もんだいが,どんな形式けいしきされようとも また,いくつかの条件じょうけんがどんな順序じゅんじょいてあろうとも,かけざんしきしめすとすれば,(グループのおおきさ)×(グループの個数こすう)=(りょう全体ぜんたいおおきさ)であることが,こどもにじゅうぶん理解りかいされておらなければならない。この一般いっぱんがふじゅうぶんなために,6×5=30(えん)というようなしきくのである。

記述きじゅつしたが、正式せいしき学習がくしゅう指導しどう要領ようりょうおよび学習がくしゅう指導しどう要領ようりょう解説かいせつにはこのような記述きじゅつがなされることはなかった。

1951ねん4がつ16にち数学すうがくしゃ遠山とおやまあきららを中心ちゅうしん数学すうがく教育きょういく協議きょうぎかいすうきょうきょう)が結成けっせいされた。かずきょうきょうは、かけざんを4 × 6 = 4 + 4 + 4 + 4 + 4 + 4 のように累加るいかとして導入どうにゅうするのはよくないと主張しゅちょうした。累加るいかでは4 × 1/3のような分数ぶんすうのかけざんてきたときに説明せつめいむずかしくなるからである。 教育きょういく現場げんばにおいては「かけざん

1あたりりょう × いくつぶん

だてしきするべきである」ととなえた教師きょうしもおり、「『さんのウサギにみみはいくつあるでしょうか』というときに、『3×2』というしきてると、『さんほんみみうさぎいる』ことになってしまうでしょう?」などとして、遠山とおやまあきらおよびすうきょうきょう対立たいりつした[よう出典しゅってん]

1972ねん1がつ26にち朝日新聞あさひしんぶん[10]によると、大阪おおさか小学校しょうがっこうで「6にんに4ずつミカンをくばる」という問題もんだい出題しゅつだいされたが、「6 × 4 = 24 こたえ24こ」という答案とうあんこたえにマルがつけられ、しきにバツがつけられて「4 × 6」がただしいと指導しどうされたという。これに異議いぎをとなえ文部省もんぶしょう質問しつもんじょうおくおやあらわれ、かけざん順序じゅんじょの「正解せいかい」をめぐって論争ろんそうこった。

1972ねん遠山とおやまあきらは、『科学かがく朝日あさひ』1972ねん5がつごうで、4 × 6だけを正解せいかいとすることについては否定ひていてき見解けんかいしめした。その理由りゆうは「6にん1個いっこずつミカンをくばることを4かいかえすと、6ずつのまとまりが4つあるとかんがえられるから」というものである[12]

1977ねん数学すうがくしゃもりあつしは、『科学かがく朝日あさひ』に『かず現象げんしょうがく』を連載れんさいし、5がつごうに「次元じげんことにする3しゅ乗法じょうほう」として出版しゅっぱんしたなかで、「大学だいがく入試にゅうしなどでは、『1人ひとり1個いっこずつくばると6にんたいしては6必要ひつようになる。1人ひとりたり4にするためには、それを4かいかえさなければならない』というようにかなければだい減点げんてんされる。6にんを6かいに、4ひとを4かい転換てんかんするところをかないと、それぞれ1わり程度ていど減点げんてん、わざわざ間接かんせつてきにマワリミチしたことで1わりぐらい減点げんてん。」「日本にっぽんは『4の6ばいしきに4 × 6とくが、ヨーロッパでは『6ばいの4』しきに6 × 4とく、日本にっぽんのほうが合理ごうりてき」と主張しゅちょうした[15]

1984ねん数学すうがくしゃ矢野やの健太郎けんたろうは、『おかしなおかしな数学すうがくしゃたち』[16]出版しゅっぱんした。このほん遠山とおやまあきらについてのこう[17]で、名古屋なごやのラジオきょくから、名古屋なごや小学校しょうがっこうで「ミカンを4つずつ6にんひとくばりたいとおもう。ミカンは全部ぜんぶでいくつあればよいか」という問題もんだいに6 × 4 = 24とこたえたどもがいて、教師きょうしはこれを0てんにしたということをかされ、意見いけんもとめられたのにたいしてどちらでもいとこたえたことをしるしている。矢野やの理由りゆうけを1あいだほどかけてかんがえたが、いち週間しゅうかん遠山とおやまあきらはなしたところ、遠山とおやまあきらはそううようにかんがえるがときどきあることおよび、カードしきくばりとよんでいてもともとっていたというエピソードをべている。

1993ねん数学すうがくしゃ伊藤いとう武広たけひろはぎうえ紘一こういち原田はらだみのるは、小学生しょうがくせい算数さんすうおしえる教師きょうし整数せいすうたまきZの代数だいすうてき構造こうぞうなどの数学すうがくてき素養そよう必要ひつようであるとする論文ろんぶん[18]出版しゅっぱんした。そのきっかけは、筆者ひっしゃらのうちいちにん長男ちょうなんが2年生ねんせいとき、「3まいさらにりんごが2ずつのっているとき全部ぜんぶでりんごがなんあるか」という問題もんだいたいして「3 × 2 = 6」と解答かいとうしたところ担任たんにん教師きょうしが「こたえの6はただしいけれども,しきは3 × 2ではなく 2 × 3でなければならない」と指導しどうしたことである[18]。その問答もんどうで、教師きょうしは「リンゴが2ずつのっているさらが3まいあるから2+2+2すなわち2 × 3 = 6である。2+2+2は2の3ばいすなわち2 × 3であって3の2ばいすなわち3 × 2ではないこれを同数どうすう累加るいかという。」「2(リンゴのかず)が被乗数ひじょうすう,3(さら枚数まいすう)が乗数じょうすうでそれぞれちがう意味いみっている(立場たちばちがう)から2 × 3と 3 × 2はおなじではない 」などの主張しゅちょうをしたことが報告ほうこくされている[18]

1994ねん心理しんり学者がくしゃまもりいちゆう伊藤いとう武広たけひろら(1993)の論文ろんぶん[18]について、なぜたまきぐん知識ちしき必要ひつよう素養そようなのかしめされていないと批判ひはんする論文ろんぶん[19]出版しゅっぱんした。このなかで、まもりいちゆう教師きょうし対応たいおう十分じゅうぶんだったと評価ひょうかしている[19]

2001ねん7がつ24にち教育きょういく課程かてい部会ぶかいだい2かい)にて上野うえのけんなんじ京都大きょうとだい学理がくりがく研究けんきゅう教授きょうじゅ)は

とくいま教員きょういん免許めんきょじょう取得しゅとくする課程かていにおいて、とく小学校しょうがっこう中学校ちゅうがっこうにおいて、せんもん課程かてい勉強べんきょうすくぎるとおもうんです。

きのうも、わたし友人ゆうじん広島ひろしま地方ちほう新聞しんぶん投書とうしょらんおくってきたんですけれども、小学校しょうがっこうで、長方形ちょうほうけい面積めんせき計算けいさんをしなさいというテストがていて、しきが△になって、こたえが○になっていた。なぜしきが△になったかというと、学校がっこうでは、長方形ちょうほうけい面積めんせきたて×よこだとおしえたのに、そのよこ×たていていたからだというんですね。でも、長方形ちょうほうけいよこたてというのは、ひっくりかえせばどうでもなることですから、そんなことどうでもいいことですし、ざん順番じゅんばんえてもいいわけですからね。

みなさん、おわらいになるけれども、現実げんじつこっていることなんです。わたし息子むすこ場合ばあいも、中学校ちゅうがっこう幾何きか問題もんだいで、わからないからかれたことがありまして、息子むすこのノートをると、わたしったこととちがかたがしてあるんですね。どうして、さっきったのとちがうのといたら、教科書きょうかしょではこういてある。それは、「ゆえに」か、「よって」か、「したがって」かの言葉ことばちがいなんです。だから、どういてもただしいのにその教科書きょうかしょどおりにいておかないと5てんかれるというんですね。

ばかげているんですけれども、これは先生せんせい本当ほんとうにはわかっておらないから、自信じしんがなくて、つい教科書きょうかしょいてあるものにしか○をあげられなくなってしまっているのだとおもいます。そういうことを改善かいぜんするためにぜひ、なんらかの対策たいさくってほしいとおもいます。

べた。

2007ねん数学すうがくしゃ岩永いわながきょうゆう伊藤いとう武広たけひろら(1993)[18]もりいちゆう(1994)[19]論文ろんぶんさい検討けんとうする論文ろんぶん発表はっぴょうした[20]岩永いわなが教師きょうしあやまりとだんじるとともに、その原因げんいん考察こうさつし、教科書きょうかしょおよび指導しどうしょ記述きじゅつ不適切ふてきせつであることを指摘してきした[20]

2008ねん小学校しょうがっこう学習がくしゅう指導しどう要領ようりょう解説かいせつ算数さんすうへんp147[21]では

長方形ちょうほうけい面積めんせき)=(たて)×(よこ)(もしくは(よこ)×(たて))

ただきがかれている。

『3×2だと、みみが3ほんえたウサギが2、ということになるよ』と先生せんせい[22]

2008ねん京都きょうと大学だいがく田中たなか耕治こうじは、さくといほうによるパフォーマンス評価ひょうか出題しゅつだいれいとして「4×8=32となるようなおはなしをつくってください」をげ、採点さいてん基準きじゅんひとつに、「乗数じょうすう被乗数ひじょうすう意味いみ区別くべつされているか(とくに正比例せいひれいがたでは「4」は「いちあたりりょう」,「8」は「いくつぶん」と区別くべつされているか)」をしめした[23]。ここで正比例せいひれいがたは「いちあたりりょう×いくつぶん全体ぜんたいりょう」であらわされる[24]

2011ねん1がつ15にち 朝日新聞あさひしんぶん 夕刊ゆうかんはなまる先生せんせい公開こうかい授業じゅぎょう[22]では、「3 × 2だと3ほんみみのウサギが2いることになる。」「2 × 8だと2ほんあしのタコが8ひきいることになる。」という授業じゅぎょう肯定こうていてきにとりあげた。

2011ねん5がつ26にち算数さんすう教育きょういく高橋たかはしまことは『かけざんには順序じゅんじょがあるのか』[11]あらわし、「指導しどうしょ[注釈ちゅうしゃく 1]は「しき」と「計算けいさん」を区別くべつしてあつかっており、「計算けいさん」では交換こうかん法則ほうそくつが「しき」には順序じゅんじょ意味いみがあるので勝手かって順序じゅんじょえることはできないとしている」と指摘してきした[25]。また、このような指導しどうたいしては以下いかのような批判ひはんがなされていると指摘してきした[26]

  1. かけざんには交換こうかん法則ほうそくつから、「いくらぶん × 1あたりりょう」という順序じゅんじょいてもよい。
  2. かりに「1あたりりょう × いくらぶん」の順序じゅんじょくとしても、どちらのかずを「1あたりりょう」としてもよい。
  3. そもそも、かけざんは「1あたりりょう」と「いくらぶん」のせきだけではない。 — 高橋たかはしまこと、『かけざんには順序じゅんじょがあるのか』[26]

高橋たかはしは、小学校しょうがっこう算数さんすう教育きょういく浸透しんとうしつつある、かけざんしきには順序じゅんじょ存在そんざいするという指導しどうほう警鐘けいしょうらしている。本来ほんらいただしい」しき順序じゅんじょとはかけざんおしえるうえでのたんなる道具どうぐだったはずなのに、教師きょうしたちは「数学すうがくてきにも算数さんすうてきにも」根拠こんきょがあるとしんはじめているようにみえるからである[27]

2012ねん12月25にち小林こばやし道正みちまさかずとはなにか』[28]発行はっこうされた。小林こばやし道正みちまさ本書ほんしょで (1あたりりょう)×(いくつぶん)=(全体ぜんたいりょう)、(いくつぶん)×(1あたりりょう)=(全体ぜんたいりょう) いずれでもいことを明示めいじてきべる (p.44) とともに、特定とくてい順序じゅんじょかなくてはならないとおもっているひとがおおいことについてこまったことであると評価ひょうかした (p. 46)。

2014ねん青山学院大学あおやまがくいんだいがく教授きょうじゅ坪田つぼた耕三こうぞうは、きゅうきゅうさんだん学習がくしゅうにおいて、「(ひとぶん)×(いくつぶん)=(全体ぜんたい)のしき意味いみ確認かくにんしていきたい。」としたのち、「チューリップがたくさんありました。どもが7にんいます。そこで,このチューリップを3ほんずつくばったら,ちょうどなくなりました。チューリップはなんほんあったのでしょう。」という文章ぶんしょうだいでは、しき約束やくそくにそって「3×7」とくことを確認かくにんするよう主張しゅちょうした[29]

2014ねん志村しむら五郎ごろうは、『数学すうがくをいかにおしえるか』のなかでざん順序じゅんじょしょうに4ページをさき、「結局けっきょくどちらでもよいのにどちらがただしいかをかんがえさせるのは余計よけいあるいは無駄むだなことをかんがえさせているわけである」と指摘してきし、そんなことはやめるべきであるとろんじた[30]

日本にっぽんにおけるかけざん順序じゅんじょ指導しどう現状げんじょう[編集へんしゅう]

学習がくしゅう指導しどう要領ようりょう学習がくしゅう指導しどう要領ようりょう解説かいせつ記述きじゅつ[編集へんしゅう]

学習がくしゅう指導しどう要領ようりょうでは、乗法じょうほう記号きごう×」は乗法じょうほう意味いみなどとともにだい2学年がくねん学習がくしゅうすることとなっている。

小学校しょうがっこう学習がくしゅう指導しどう要領ようりょう解説かいせつ算数さんすうへん[31]では、× の左側ひだりがわひとぶんかず(かけられるかず被乗数ひじょうすう)、右側みぎがわにいくつぶんにあたるかず(かけるかず乗数じょうすう)をいているしきおおられる[よう出典しゅってん]。いくつかれいしめす。

だい2学年がくねんでは、「乗数じょうすうが1えればせき被乗数ひじょうすうぶんだけえること」を活用かつようして、4 × 9 = 36から、4 × 10 = 40(36より4だけえる)などをもとめる。数学すうがくてきには「被乗数ひじょうすうが1えればせき乗数じょうすうぶんだけえること」もえるが、4 × 9 = 36から5 × 9 = 45をもとめるといった事例じれいかれていない。だい2学年がくねんではこのほか、乗法じょうほうしきから場面ばめん問題もんだいをつくる活動かつどうにおいて、3 × 4のしきたいし、「プリンが3ずつはいったパックが4パックあります。プリンは全部ぜんぶいくつありますか。」という問題もんだい例示れいじしている。「プリンが4ずつはいったパックが3パックあります。プリンは全部ぜんぶいくつありますか。」というような問題もんだいをつくるどもへの指導しどうについては、規定きていされていない。

だい3学年がくねんでは、筆算ひっさんにおいて被乗数ひじょうすう乗数じょうすう区別くべつされる。23 × 45だと45が乗数じょうすうであり、これを45 = 40 + 5とみて、23 × 40と23 × 5にけて計算けいさんする。(ちゅう実際じっさいには23=20+3とみて、23×40=20×40+3×40、23×5=20×5+3×5と分解ぶんかいするので、結局けっきょく23×45=20×40+3×40+20×5+3×5となり、筆算ひっさんにおいても被乗数ひじょうすう乗数じょうすう事実じじつじょうまった区別くべつされないことがわかる。)

またおなじくだい3学年がくねん除法じょほう導入どうにゅうされるが、そのさい除法じょほうの「意味いみ」には「等分とうぶんじょ包含ほうがんじょ」(#等分とうぶんじょ包含ほうがんじょ参照さんしょう)があるとして、それと乗法じょうほうを、包含ほうがんじょは3 × □ = 12、等分とうぶんじょは□ × 3 = 12である、などと関連付かんれんづけさせている。

高学年こうがくねんでは小数しょうすう乗法じょうほう学習がくしゅうするが、だい4学年がくねんでは乗数じょうすう整数せいすうである場合ばあいかぎられる。0.1 × 3ならば、0.1 + 0.1 + 0.1の意味いみである。だい5学年がくねんでは乗数じょうすう小数しょうすうとなる乗法じょうほう学習がくしゅうし、「1 mのながさが80えんぬのを2.5 mったときの代金だいきん」は、80 × 2.5であらわされる。

言葉ことばしきについても、「1 mのおもさ × ぼうながさ = ぼうおもさ」「(単価たんか)×(個数こすう)=(代金だいきん)」と一貫いっかんしている。なお中学校ちゅうがっこう学習がくしゅう指導しどう要領ようりょう解説かいせつ数学すうがくへん[32]では、いくつかの言葉ことばしきならんで「(値段ねだん)=(単価たんか)×(個数こすう)」がしるされている。

しかし、場面ばめん対応たいおうするかけざんしきは、つねひとつというわけではない。だい2学年がくねんでは、「12のおはじきを工夫くふうしてならべる」という活動かつどうにおいて、つぎのようにおはじきをならべ、複数ふくすうしき記載きさいしている。これは「ひとつのかずをほかのかずせきとしてみる」ことを意図いとしたものである。

●●●●●●
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2×6 または6×2
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3×4 または4×3

だい4学年がくねん長方形ちょうほうけい面積めんせき公式こうしきでは、「(長方形ちょうほうけい面積めんせき)=(たて)×(よこ)(もしくは(よこ)×(たて))」とある。

学習がくしゅう指導しどう要領ようりょうは「教育きょういく課程かてい標準ひょうじゅん」「かく教科きょうかおしえる内容ないよう」をさだめたものであり、例示れいじとして片方かたがた順序じゅんじょしめしているところはあっても、その片方かたがた順序じゅんじょでのみしきくことを要請ようせいするぶん存在そんざいせず、他方たほう順序じゅんじょ正解せいかいとすることもない。学習がくしゅう指導しどう要領ようりょう学習がくしゅう指導しどう要領ようりょう解説かいせつもとづき教材きょうざい授業じゅぎょう、テストとして具体ぐたいされていくなかで、特定とくてい順序じゅんじょ選択せんたくされる。そのとき、ぎゃく順序じゅんじょかれたしき正解せいかいとするか正解せいかいとするかは様々さまざまである[33]

文部もんぶ科学かがくしょう初等しょとう中等ちゅうとう教育きょういくきょく教育きょういく課程かてい中日新聞ちゅうにちしんぶん取材しゅざいこたえて「かけざん意味いみ理解りかいさせるようさだめているが、順序じゅんじょについてはくにさだめるものではない」とべるとともに、指導しどう要領ようりょう解説かいせつの「10 × 4は、10がよっつあることから、40になる」を根拠こんきょに「順序じゅんじょ意味いみがある」とする解釈かいしゃくについては「ふかかんがえすぎだとおもう」と否定ひていしている[34]

教科書きょうかしょ教科書きょうかしょ指導しどうしょ記述きじゅつ[編集へんしゅう]

日本にっぽん学校がっこう教育きょういくでは、小学校しょうがっこう2年生ねんせい算数さんすうでかけざん導入どうにゅうおこなわれる。小学校しょうがっこう2年生ねんせい算数さんすう教科書きょうかしょでは、

1つぶんのかず × いくつぶん = ぜんぶのかず

として、かけざん導入どうにゅうがなされる。
(このふし説明せつめいでは、フォントの都合つごうじょう、xと×の見分みわけがつきにくい部分ぶぶんがあるのでxをm、yをnにえる。)

たとえば、

☆1(ア) 1 さつ m えんのノートを8 さついます。代金だいきんをn えんとしてmとnの関係かんけいしきあらわしましょう。 — けいりんかん しょう6算数さんすう教科書きょうかしょ『わくわく算数さんすう6じょう』 p.58

という問題もんだい正解せいかいは「m × 8 = n」と教科書きょうかしょしめされている。

この教科書きょうかしょ指導しどうしょ[注釈ちゅうしゃく 1]では、

☆1の(ア)でいえば、m × 8 = n でも n = m × 8 でもただしいが、「1さつ m えんのノートを8 さつい、代金だいきんがn えんであるときの関係かんけいしき」という文章ぶんしょうながれからいけば、m × 8 = nを推奨すいしょうしたい。 ただし、m × 8 が 8 × m になっている場合ばあいは、「8 えんのノートがm さつ」という意味いみになってしまうので問題もんだいぶんとはわない。つねしき意味いみをしっかりと意識いしきさせることが大事だいじである。 — けいりんかん しょう6算数さんすう教科書きょうかしょ『わくわく算数さんすう6じょう指導しどうしょしゅ註 p.58

説明せつめいされている。ただし、これは日本語にほんご構文こうぶんしたがってしきつくった場合ばあいであって、たとえば、関係かんけい代名詞だいめいし使つかった英語えいご構文こうぶんしたがってしきてると、順序じゅんじょぎゃくになる。さらに、

1個いっこ m えん弁当べんとうを3 まとめてうと、80 えんやすくなります。
このときの代金だいきんあらわしているしきは、つぎのどれですか。

(あ) m×3+80
(い) 3×m+80
(う) m×3-80
(え) 3×m-80

という問題もんだいがあり、(う)のみを正解せいかいとしている。このように、現行げんこうけいりんかん教科書きょうかしょでは小学しょうがく6ねんいたるまで「特定とくてい順序じゅんじょあらわされるしきのみがただしい」とし、現場げんば教員きょういんけのマニュアルでも順序じゅんじょぎゃくになったしき意味いみぶんわないとしている。

小学校しょうがっこう算数さんすう教材きょうざいでは解答かいとうらんが「しき」と「こたえ」にかれているのが通例つうれいである。教員きょういんは、指導しどうしょしたがって、「しき」のらんて、児童じどう問題もんだいぶんりをただしくできているかどうかを採点さいてんすることになる。まさしくりができていないとされるしきかたをしている児童じどうは、こたえただしくても「しき」がただしくないので正解せいかいだとされることがある[34]。このような場合ばあいは、「しき」にバツをつけて「こたえ」にマルをつけるのが通例つうれいである。

中日新聞ちゅうにちしんぶん取材しゅざいたいして、東京書籍とうきょうしょせきは、文章ぶんしょうだい意味いみ理解りかいしているかを判別はんべつするがかりとしてしき順序じゅんじょるといい、また、指導しどう要領ようりょう解説かいせつに「10 × 4は、10がよっつあることから、40になる」といった記述きじゅつがあることを根拠こんきょに「順序じゅんじょ意味いみがある」と主張しゅちょうした[34]

児童じどう理解りかい[編集へんしゅう]

伊藤いとうひろし報告ほうこく[35]によると、 「ここに4まいのふくろがあります。かずやきみが,1まいのふくろにりんごを3こずつれました。りんごは,ぜんぶでなんこありますか」 という設問せつもんたいして、小学しょうがく3年生ねんせい34めいちゅう、8にんが3 × 4, 1人ひとりが3+3+3+3, 21にんが4 × 3とこたえ、その解答かいとうが4にんだった。 また、をかかせたところ

どうして,そのようなしきになったか,いておしえてください。

  • しき正答せいとうで,にもまさしくあらわすことができた児童じどう(8めい
  • しきあやまこたえでも,にはまさしくあらわすことができた児童じどう(21めい
  • しき正答せいとうで,にはまさしくあらわすことができなかった児童じどう(1めい
  • しきあやまこたえで,にもまさしくあらわすことができなかった児童じどう(4めい

という結果けっかた。ここで、4 × 3はあやまこたえとみなされている。

また、一旦いったんにもとづいてしきこたえをくことができるようになった児童じどうが、かけざん順序じゅんじょ指導しどうされたのち文章ぶんしょうだいけないとし、しきくのを躊躇ちゅうちょするようになったれい報告ほうこくされている[36]

ただしい順序じゅんじょ」をかせるための指導しどう[編集へんしゅう]

児童じどうに「ただしい」順序じゅんじょしきかせるのはむずかしいことであり、そのために、いろいろな方法ほうほう開発かいはつ実践じっせんされている。

しきとあうえらんでせんむすびなさい…

たとえば、田中たなか博史ひろふみ文章ぶんしょうせんむすぶこととしきせんむすぶことを練習れんしゅうするドリルを開発かいはつした[37]。このドリルでは、たとえば、「3 × 2」と「3のさらに2ずつリンゴがのっている」をむすぶとあやまこたえであるということになる。

ほかに

「3 × 2は3ほんみみのウサギが2、2 × 8は2ほんあしのタコが8ひきいるという意味いみになります。」[22]などと指導しどうおこなう。
えがかせて、のなかでひとかたまりになっているものを「1つぶんのかず」にするように指示しじする[よう出典しゅってん]
サンドイッチの法則ほうそく」という特殊とくしゅ規約きやく遵守じゅんしゅするように指示しじする[よう出典しゅってん]

といった「ただしい順序じゅんじょ指導しどう展開てんかいされる。

たとえば「3にんに4ずつミカン」の場合ばあいえがかせると、各自かくじが4ずつミカンをっていて、のなかでミカン4がひとかたまりになっているので、4を「1つぶんのかず」として、4 × 3と「だてしき」しなければならない。

「100えんのノートを8さつ」の場合ばあいだと、単位たんい助数詞じょすうし)に注目ちゅうもくして えん × さつ = えん のようにサンドイッチのかたちにするのがただしく、100 × 8 = 800 が正解せいかいとされる[よう出典しゅってん]。このような「だてしき」のしかたをサンドイッチの法則ほうそくとよぶ。

「かけざんただしい順序じゅんじょ」にたいする批判ひはん[編集へんしゅう]

交換こうかん法則ほうそくたすので、どの順序じゅんじょいても正解せいかいにすべきでない[編集へんしゅう]

おもて形式けいしき(アレイ)にならべたみかん
答案とうあんに6×4=24というしきいてぺけをつけられたある児童じどう父兄ふけいは、「6×4=4×6というのは一般いっぱんてき常識じょうしきであるし、数学すうがくじょう交換こうかん法則ほうそくにもとづく真理しんりでもある」と指摘してきした。 — 朝日新聞あさひしんぶん、1972ねん1がつ26にち

「6にんのこどもに、1人ひとり4こずつみかんをあたえたい」というかけざん問題もんだいにおいて、交換こうかん法則ほうそくから6×4は4×6はおなになるため、正解せいかいにすべきでないという主張しゅちょうがある。

このかけざん問題もんだいには交換こうかん法則ほうそく適用てきようできる。理由りゆうひとつは、この問題もんだいこうとしたときにイメージをするためにおもて形式けいしき(アレイ)にならべてえがいた場合ばあいたてからはじめるしき(6×4)もよこからはじめるしき(4×6)もかられ、このたてよこ対等たいとうせい交換こうかん法則ほうそく前提ぜんていであるからである[38][注釈ちゅうしゃく 2][注釈ちゅうしゃく 3]

ひとつぶんのかずめつけるのはよくない[編集へんしゅう]

4つずつくばるか 6つずつくばるかによってひとつぶんのかずわる。
みかんをくばるのに,トランプをくばるときのやりかたくばると,1回分かいぶんが6こ,それを4かいくばるのだから,それをおもかべるどもは,むしろ,6×4=24 という方式ほうしきをたてるほうが合理ごうりてきだといえる。 — 遠山とおやまあきらりょうとはなにか I, p116

「6にんのこどもに、1人ひとり4こずつみかんをあたえたい」というかけざん問題もんだいにおいて、「1つぶんのかず」が1人ひとりくばる4こであるとはかぎらない。

トランプくばりのように6にんに1こずつみかんをくば場合ばあい、1じゅんくばる6こを「1つぶんのかず」とかんがえてもおかしくない。 それを 4じゅんするというしき「6×4=24」は、1つぶんのかず × いくつぶん = ぜんぶのかずという数学すうがくてき思考しこうもとづいたかけざんになる[注釈ちゅうしゃく 4]

出題しゅつだいしゃ恣意しいてき想定そうていする「1つぶんのかず」は、むしろただしい数学すうがくてき思考しこうたいする阻害そがい要因よういんともなりうることから、解答かいとうせい不正ふせい影響えいきょうすべきではない。

順序じゅんじょでは文章ぶんしょうだい意味いみ理解りかいしているかを判別はんべつできない[編集へんしゅう]

かけざん順序じゅんじょで「り」がただしくできているかあるいは「文章ぶんしょうだい意味いみ理解りかいしているか」を判定はんていするというかんがかた不合理ふごうりである。 伊藤いとうひろし報告ほうこく[35]のようにえがかせた場合ばあいることによって児童じどうまさしく問題もんだいぶんっているか判断はんだんできる。その結果けっか小学しょうがく3年生ねんせいにおいて、順序じゅんじょりが適切てきせつにできていても問題もんだい登場とうじょうしたじゅん児童じどうのほうがおおいし、「ただしい順序じゅんじょ」でないしきいた児童じどうでも適切てきせつりができていることが報告ほうこくされている。

また、えん × さつ = えん のようにサンドイッチのかたちにするのがただしいなどと指導しどうすれば、数値すうち単位たんい助数詞じょすうし)をれば機械きかいてきに「ただしいだてしき」ができてしまうことになる。問題もんだいぶんまさしくらせるという当初とうしょ目的もくてき逆行ぎゃっこうするものである。

このように、かけざん順序じゅんじょで「り」がただしくできているか判定はんていするというかんがかた不合理ふごうりであり、説得せっとくりょくをもたない。

テストは教育きょういくいち手段しゅだんであり、正解せいかいにしてわらせるべきではない[編集へんしゅう]

これ(朝日新聞あさひしんぶん、1972ねん1がつ26にち)をんでまずかんじたことは、(中略ちゅうりゃく)テストは教育きょういくいち手段しゅだんであって、その目的もくてきではない。(中略ちゅうりゃく)6×4といたどもがいたら、バツをつけるまえに(中略ちゅうりゃく)いいかわるいかを討議とうぎさせるといいだろう。そうすると、その討議とうぎ過程かていで、そのがまちがっていたら、なぜあやまりとされたかを納得なっとくするだろう。また、4×6といたどもも、その説明せつめいをきいて6×4のかんがかたがわかって、賛成さんせいするかもしれない。(中略ちゅうりゃく)バツをつけてわりにしたら、せっかくのチャンスをのがすことになってしまう。 — 遠山とおやまあきらりょうとはなにか I, p114

一見いっけん正解せいかいことなる解答かいとうげて討議とうぎさせれば、なぜあやまりかをることや、ただしいかんがかたをいろいろることができ、教育きょういくの1つの手段しゅだんになるので、かけざん順序じゅんじょことなっていても正解せいかい可能かのうせいがあるテストは、すぐに正解せいかいにしてわらせるべきではないという主張しゅちょうである。

この主張しゅちょうでは、正解せいかいかどうかは討議とうぎのちあきらかになるのだが、討議とうぎはいるまでの採点さいてん方法ほうほうや、まさしく理解りかいしているかどうかを調しらべる目的もくてきのテストのあつかいについては言及げんきゅうされていない(テストはてんることが目的もくてきではないことは言及げんきゅうされている) 。しかし、解答かいとうかれたかけざん順序じゅんじょことなるかどうかだけで、かけざん理解りかいただしいかどうかを調しらべることができないことはしめされている。

多面ためんてきにものをちから論理ろんりてきかんがえるちからそだてることに悪影響あくえいきょう[編集へんしゅう]

かならずしも「1つぶんのかず × いくつぶん = ぜんぶのかず」というパターンにあてはめてかんがえなければならないわけではない。

「3にんにそれぞれ4ずつミカンをくばった。ミカンは全部ぜんぶなんか」という問題もんだいは、長方形ちょうほうけいかたちならべていてあるミカンのかずもとめる問題もんだいおなじものであるとみなせる。このようにかんがえた場合ばあい、「3 × 4」「4 × 3」いずれもただしいことは自明じめいである。また、かけざんしきを「1つぶんのかず × いくつぶん = ぜんぶのかず」ではなく「いくつぶん × 1つぶんのかず = ぜんぶのかず」と解釈かいしゃくすることもできる。

「3 × 2 で3ほんみみのウサギが2、2 × 8 で2ほんあしのタコが8ひきという意味いみになります。」という解釈かいしゃく不適切ふてきせつである[よう出典しゅってん]

「かけざんただしい順序じゅんじょ」を推進すいしん擁護ようごする主張しゅちょう[編集へんしゅう]

「1つぶんすう」×「いくつぶん」の順序じゅんじょ約束やくそくになっている[編集へんしゅう]

かけざんしきは「1つぶんすう」×「いくつぶん」のじゅん約束やくそくになっているので、問題もんだいぶんからまさしくって、そのとおりにしきけるようにしましょう。 —  Benesse 小学生しょうがくせい学習がくしゅうQ&A

かけざんしきは「1つぶんすう」×「いくつぶん」であるとおしえているからその順序じゅんじょ約束やくそくになっているので、×の左右さゆうかずぎゃくになったしき意味いみことなり、正解せいかいであるという主張しゅちょうである[39]

「1つぶんすう」×「いくつぶん」の順序じゅんじょ約束やくそくがあれば、1つぶんすうといくつぶんがそれぞれただしくれているかどうかを、問題もんだいぶんしき順序じゅんじょをあえてぎゃくにした問題もんだいによって確認かくにんできる[14]

かけざん数字すうじ文章ぶんしょうあらわれる数字すうじをあえてぎゃくにした問題もんだいぶん
いちさつ5えんのノートを,6さつったら,いくら支払しはらえばよいでしょう。」という問題もんだいくときには,「5えん×6」として,その結果けっかもとめるのが普通ふつうである。ところが,この問題もんだいを,「ノートを6さついました。どれも1さつ5えんでした。ぜんぶでいくら支払しはらったらよいでしょう。」とすると,「6×5=30(えん)」として結果けっかもとめるこどもがでてくるであろう。 こどもが,このようなあやまった解決かいけつをするのは,(以下いかりゃく — 文部省もんぶしょう、1951ねん

田中たなか博史ひろふみは、しきを「1つぶんすう」×「いくつぶん」の順序じゅんじょき、ぎゃく順序じゅんじょしき意味いみことなることを明確めいかくにした、きゅうきゅうカルタ という算数さんすう教材きょうざい開発かいはつした[40]

「5 × 8」
ふだ)1はこに5こりのチョコレートが8はこあります。
「8 × 5」
ふだ)チョコレートが5はこあります。1はこは8こりです。

カードのこたえのかずて5 × 8のこたえをろうとすると、これまでは40のこたえが2まいあって、どちらのしきかわかりませんでした。このカードならかずよこ文章ぶんしょうだいいてありますので、それをることにより、判別はんべつすることができます。 — 田中たなか博史ひろふみ、2011ねん

「1つぶんすう」×「いくつぶん」の順序じゅんじょ約束やくそくがあるという擁護ようご主張しゅちょうは、戦後せんごすぐの算数さんすう指導しどうからられ、現在げんざいにおいても根強ねづよい。 1951ねん 小学校しょうがっこう学習がくしゅう指導しどう要領ようりょう算数さんすうへん(試案しあん)、数学すうがく教育きょういく協議きょうぎかい、1972ねん 大阪おおさか小学校しょうがっこう、1977ねん もりあつし、1993ねん 伊藤いとう武広たけひろはぎうえ紘一こういち原田はらだみのる、2008ねん 田中たなか耕治こうじ、2011ねん 守屋もりや誠司せいじ田中たなか博史ひろふみ、2014ねん 坪田つぼた耕三こうぞうくわしくは『#かけざん順序じゅんじょ問題もんだい経緯けいい』のしょう参照さんしょうのこと。

「1つぶんすう」×「いくつぶん」の順序じゅんじょほう合理ごうりてきである[編集へんしゅう]

日本にっぽんは「4の6ばいしきに4×6とくが,欧米おうべいでは「6ばいの4」しきに6×4とく.これは(中略ちゅうりゃく言語げんご習慣しゅうかんからている.ただし,日本にっぽんしきほう合理ごうりてきというのが世界せかい相場そうば中略ちゅうりゃく)「4の6ばいしき操作そうさをあとから日本にっぽんしき便利べんりになる.最近さいきんのコンピューター言語げんごはこちらが便利べんりだし,欧米おうべいでヨコきをひだりからみぎいているときも,6xと逆行ぎゃっこうするよりも,x6とつづけるほうがやりやすい. —  もりあつしかず現象げんしょうがく p67,p76

かけざんは、「1つぶんすう」×「いくつぶん」のように、操作そうさ内容ないようである乗数じょうすうのちほう合理ごうりてきであるとの判断はんだん世界せかいてきおお[よう出典しゅってん]。 なお、乗算じょうざん における被乗数ひじょうすう定義ていぎけられるほうかず(1つぶんすう)、乗数じょうすう定義ていぎけるほうかず(いくつぶん)である。

英文えいぶんしき操作そうさ操作そうさ順序じゅんじょ加算かさん減算げんざんのときとことなる

乗数じょうすうみぎくと、四則しそく演算えんざんのすべてが 操作そうさされるかず操作そうさするかずじゅん統一とういつでき合理ごうりてきである。欧米おうべいでは「6×」のかた普及ふきゅうしているが[41][42]、2をくひきざんは「−2」のようにき、演算えんざんによって数字すうじ記号きごう位置いち関係かんけいぎゃくである。

電卓でんたくで4を6ばいする場合ばあい、4、×、6、= のじゅんしても、6、×、4、= のじゅんしてもただしい計算けいさん結果けっか表示ひょうじされるが、6ばいしたのちさらに2ばいする場合ばあいつづけて ×、2、= のじゅんすしかない。 ぎゃくポーランド記法きほうおこな一部いちぶ電卓でんたく(HP-15Cなど)では、4、Enter、6、× のじゅんしたのち、2、× のじゅんすことができるが、四則しそく演算えんざんすべてがぎゃくポーランド記法きほうになるため、さらに3を場合ばあい、3、- のじゅんさなければならない。 四則しそく演算えんざんのうちかけざんだけ順序じゅんじょわる電卓でんたく存在そんざいしない。

プログラミング言語げんごは、被乗数ひじょうすう乗数じょうすう順序じゅんじょにこだわりはない。 変数へんすうaを6ばいしたあらわしきは、a * 6 でも 6 * a でも記述きじゅつできる。 変数へんすう a は数値すうちだけでなく文字もじれつにできる言語げんごPythonなど)もあり、たとえば "W"*3 や 3*"W" の評価ひょうか結果けっかは "WWW" になる。World Wide Web Consortiumの略称りゃくしょうであるW3C乗数じょうすうみぎにある。Rubyは 3*"W" とけないが、これは文字もじれつのクラスに * 演算えんざんのメソッドがあり、数値すうちのクラスに文字もじれつ引数ひきすうつ * 演算えんざんのメソッドがないためである。 クラス(オブジェクト)を被乗数ひじょうすう、メソッドを乗数じょうすう場合ばあい被乗数ひじょうすう乗数じょうすう順序じゅんじょがあるとることもできる。 変数へんすう a を6ばいする(その結果けっかをまた変数へんすう a にもどす)しきは、a *= 6 のように乗数じょうすうみぎ記述きじゅつすることになる。

なお、CPUとう内部ないぶ演算えんざん処理しょり機械きかいアセンブリ言語げんご)では被乗数ひじょうすう乗数じょうすう順序じゅんじょ明確めいかく区別くべつされる。両者りょうしゃ意識いしきして乗算じょうざん命令めいれい発行はっこうしないとプログラマーの意図いとことなるバグ無駄むだ処理しょり増加ぞうかにつながる。

その推進すいしん擁護ようごする主張しゅちょう[編集へんしゅう]

兵庫教育大学ひょうごきょういくだいがく大学院だいがくいん教授きょうじゅ 加藤かとうあきら児童じどうにかけざんをどのような場面ばめん使つかうのかを理解りかいさせるためには、かけざん順序じゅんじょ意味いみがあるとすべき。
筑波大学つくばだいがく附属ふぞく小学校しょうがっこう算数さんすう研究けんきゅうきょうあい学園がくえん大学だいがく前橋まえばし国際こくさい大学だいがく講師こうし 田中たなか博史ひろふみえがくことにきてきたどもは、大人おとな指示しじされなくても簡略かんりゃくしたえがくようになる。これはいが、かけざん順序じゅんじょをまもらないのはみとめられない。
「なぞってえがきましょう」

また、「かけざん順序じゅんじょぎゃくになっているのは、かけざん意味いみ理解りかいしていないからであり、かけざん意味いみ理解りかいしていないと、わりざん理解りかいできない。」などとして、「かけざんただしい順序じゅんじょ」のただしさを主張しゅちょうしたりする[よう出典しゅってん]。これは、以下いかのような論法ろんぽうである。

  1. ただたんに「わりざんはかけざん逆算ぎゃくさんだ」と指導しどうするだけでは、じゅうぶんな理解りかいられない。
  2. なぜならば、わりざんには、「12のミカンを3にんけると、1人ひとりなんもらえるか」(等分とうぶんじょ)というパターンと「12のミカンを3ずつけると、ミカンをもらえるのは何人なんにんか」(包含ほうがんじょ)というパターンがある。
  3. おなじわりざんとよばれているものなのに出題しゅつだいパターンが2つあるので、ただたんに「わりざんはかけざん逆算ぎゃくさんだ」と指導しどうするだけでは、じゅうぶんな理解りかいられない。
  4. それゆえ、かけざん学習がくしゅうのときに、なんでひとかたまりになっているか・かたまりがいくつあるかを意識いしきして、問題もんだいぶんりをさせる必要ひつようがある。

このように、「かけざん順序じゅんじょ意味いみをもたせることによって、りがただしくできているか判断はんだんできる。」というかんがえにもとづいて、「問題もんだいぶんりをしてからだてしきするように指導しどうしないとただ計算けいさんができるだけで応用おうよう問題もんだい対応たいおうできなくなる。」「わりざん理解りかいできなくなる。」などという主張しゅちょうがなされ、かけざん順序じゅんじょにこだわった指導しどう展開てんかいされている[よう出典しゅってん]

ぜん国学院大学栃木短期大学こくがくいんだいがくとちぎたんきだいがく正木まさき孝昌たかまさは、問題もんだいこたえをもとめるには,どちらの順序じゅんじょでもどちらでもいいにもかかわらず、「しきには,その情景じょうけい表現ひょうげんするという機能きのうがある。その機能きのう大切たいせつにするためには」特定とくてい順序じゅんじょかなければならないと主張しゅちょうした[43]

筑波大学つくばだいがく附属ふぞく小学校しょうがっこう算数さんすう研究けんきゅう中心ちゅうしんメンバーの田中たなか博史ひろふみは、意味いみづけのためにかけざんしき数値すうち順序じゅんじょせいもとめるのがたりまえだというかんがえをしめした[44]。また、ざん初期しょき指導しどうまで等分とうぶんじょ包含ほうがんじょ理解りかいさい順序じゅんじょまっているほうが児童じどうにもわかりやすいと主張しゅちょうした[44]

さらに、田中たなか博史ひろふみは、

ふねが5そうあります。1そうに4にんずつることにします。」このような問題もんだいぶんになっているとどもたちはかならしき間違まちがえますよね。「5 × 4」ときます。いままでぶんなかてきた順番じゅんばんかず使つかってしきくだけで、ずっとまるをもらえていたたちは、かならずこういう問題もんだいっかかります。
ところが、このまえ2年生ねんせいいてびっくりしたことなのですが、「そろそろしき反対はんたいかなきゃいけないころだ」とうんです(笑)。「なんで?」とくと、「プリントは、ほうになるとそういうふうにしないとバツになることがおおい」とうのです。そういえばそうですよね。まとめのテストの文章ぶんしょうだいわりは、かならしきぎゃくになる場合ばあい問題もんだいおおいのです。まあ、統計とうけいてきにみるちから素晴すばらしいものがあるかもしれませんが(笑)、それではやはり意味いみがありません。

そこで、このぶんのちに「何人なんにんることができますか」とくのを一度いちどやめて、にしてみようと指示しじをします。にすることでイメージさせるのです。文章ぶんしょうだいんだらにさせます。にするところがかんがえるところです。まさしくえがけたら、文章ぶんしょうっていることになります。ったしきをつくるところは、おしえていいとおもいます。「この場面ばめんを、このようなしきくんだよ。」とおしえます。算数さんすうしき外国がいこく一緒いっしょで、どもにとってはあたらしい言葉ことばですから、おしえなければいけません。 — 田中たなか博史ひろふみ東洋館とうようかん出版しゅっぱんしゃ プレミアム講座こうざライブ 田中たなか博史ひろふみ算数さんすう授業じゅぎょうのつくりかた p62

べ、文章ぶんしょうだい内容ないようまさしくえがければができていると判断はんだんできるが、それだけでは不十分ふじゅうぶんで「かけざんただしい順序じゅんじょ」をまもらないのは間違まちがであるとした。その理由りゆうとして、「算数さんすうしき外国がいこく一緒いっしょで、どもにとってはあたらしい言葉ことばですから、おしえなければいけません。」とべ、「文章ぶんしょうだい内容ないようしき翻訳ほんやくする」というかんがかた支持しじした。

そのうえで、「抽象ちゅうしょう」については、以下いかのような見解けんかいしめした。

どもが大作たいさくえがき、いつまでたっても抽象ちゅうしょうしません」とうから、「本当ほんとうにたくさんえがかせていますか」とわたしがききかえしたところ、それほどたくさんはえがかせていないのです。文章ぶんしょうだいんではえがく。たくさんえがかせる。それだけでいいんです。しきや、こたえをもとめさせないで、おはなしんだらえがくことをいっぱいやらせると、どもはそのうちにきてきます。 — 田中たなか博史ひろふみ東洋館とうようかん出版しゅっぱんしゃ プレミアム講座こうざライブ 田中たなか博史ひろふみ算数さんすう授業じゅぎょうのつくりかた p62

えがくことにきてきたどもは、大人おとな指示しじされなくても、文章ぶんしょうだい内容ないようあらわす簡略かんりゃくしたえがくようになり、抽象ちゅうしょうしてかんがえるようになるという。しかし、

このようにえがいたのに、もししきを「5 × 4」といたとすると、このりができないのではなくて、しき意味いみ間違まちがえておぼえているだけとなります。治療ちりょうするところがわりますよね。

しきを「5 × 4」といたどもに「ちゃんと文章ぶんしょうんでごらん」といくら指導しどうしてもだめです。このぎゃくおぼえているわけですから。にできたら、その算数さんすう言葉ことばあらわなおして「4 × 5」とくんだよと、ここは確認かくにんしていいところです。「こういうのことを4 × 5とうんだよ」とおしえるのです。 — 田中たなか博史ひろふみ東洋館とうようかん出版しゅっぱんしゃ プレミアム講座こうざライブ 田中たなか博史ひろふみ算数さんすう授業じゅぎょうのつくりかた p62

として、かけざんしきには具体ぐたいてき状況じょうきょうあらわす意味いみがあるのでただしい順序じゅんじょがあるというかんがえをしめし、ただしい順序じゅんじょしたがわないどもは治療ちりょうしなければならないと主張しゅちょうした。

ディポール大学だいがく教育きょういく学部がくぶ高橋たかはし昭彦あきひこは、かけざんしきにおいて特定とくてい順序じゅんじょのみがただしいというかんがえを前提ぜんていに、どちらでもよいとかんがえる先生せんせい学生がくせいおおいアメリカの教育きょういくレベルをひく評価ひょうかするかんがえをしめした[42]

等分とうぶんじょ包含ほうがんじょ[編集へんしゅう]

かけざん順序じゅんじょ問題もんだい関連かんれんし、除法じょほうについて初等しょとうてき教育きょういく手法しゅほうとして、(整数せいすうの)除法じょほうの「意味いみ」として等分とうぶんじょ包含ほうがんじょの2種類しゅるい分類ぶんるい導入どうにゅうをはかる、というものがある。あるりょうが「基準きじゅんとなるりょう」の「いくぶん」にじょされるかをかんがえるとき、「基準きじゅんとなるりょう」をもとめるのが等分とうぶんじょ、「いくぶん」になるかをもとめるのが包含ほうがんじょである。

等分とうぶんじょ包含ほうがんじょについて東京書籍とうきょうしょせき算数さんすう教科書きょうかしょ著者ちょしゃ1人ひとり加藤かとうあきら兵庫教育大学ひょうごきょういくだいがく大学院だいがくいん教授きょうじゅ)は、

「2ねん かけざん」でべたように、「3×4」のしき意味いみは、のように「3あつまり」が「4つぶん」あること、つまり「おなすうずつのあつまり」が「いくつぶん」かあるときに、全体ぜんたい個数こすうもとめる計算けいさんがかけざんでした。数学すうがくてきにはたしざん逆算ぎゃくさんがひきざんであり、かけざん逆算ぎゃくさんがわりざんです。したがって、わりざんとは、かけざんしき意味いみの「おなすうずつ」と、「いくつぶん」をもとめるときに使つか演算えんざんなのです。 — 加藤かとうあきら文溪堂ぶんけいどうかあさんの算数さんすうノート p78

として、

(ア) 12このおはじきを、おなすうずつ4つにける場合ばあい(「等分とうぶんじょ(とうぶんじょ)」といいます) — 加藤かとうあきら文溪堂ぶんけいどうかあさんの算数さんすうノート p78
(イ) 12このおはじきを、3こずつける場合ばあい(「包含ほうがんじょ(ほうがんじょ)」といいます) — 加藤かとうあきら文溪堂ぶんけいどうかあさんの算数さんすうノート p79

べている[45]。なお、ここで「しき意味いみ」なるかたりてくるが、『「3×4」の意味いみは「3あつまり」が「4つぶん」あること』といったような「しき意味いみ」の定義ていぎ(「だてしき」といった、やはりその世界せかいのみの用語ようご使つかわれる)は、日本にっぽん一部いちぶ初等しょとう教育きょういく世界せかいにだけ存在そんざいする「定義ていぎ」である(かけざん順序じゅんじょ問題もんだい)。[よう出典しゅってん]

海外かいがいでのかけざん導入どうにゅう[編集へんしゅう]

中国ちゅうごくでは、かけざん導入どうにゅうから、因子いんし × 因子いんし = せきと、左右さゆう対等たいとうかたちおしえ、両方りょうほう順序じゅんじょしめしている[13]

アメリカでは、「一般いっぱんてき指導しどうされているかけざん意味いみは、(いくつぶん)×(ひとつぶん) = (全部ぜんぶかず)であり、日本にっぽんのそれとは順序じゅんじょぎゃくである」とされる[42]。しかし、数学すうがく教育きょういくにおいて、しき順序じゅんじょ重視じゅうしされていないようである。

たとえば、わたし黒板こくばん自転車じてんしゃが3だいならんでいるいて、タイヤのかずもとめるしきは、2 × 3か、それとも3 × 2か、とうと、教員きょういん養成ようせい課程かてい学生がくせいばかりでなく、現場げんば算数さんすうおしえている先生せんせいも、ほとんどが、どちらでもかまわないという。その理由りゆうは、「どっちでもこたえは6だから」というのである。おどろくなかれ、大学だいがく数学すうがく教育きょういくおしえているひとなかにもこのようなひとすくなくないのである。 — 高橋たかはし昭彦あきひこ東洋館とうようかん出版しゅっぱん 筑波大学つくばだいがく附属ふぞく小学校しょうがっこう算数さんすう研究けんきゅう 企画きかく編集へんしゅう 算数さんすう授業じゅぎょう論究ろんきゅう 2012ねん平成へいせい24ねん論究ろんきゅうII かけざんきわめる p54 「小学校しょうがっこうでかけざんおしえるのはなにのためか」

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ a b 指導しどうしょとは、教科書きょうかしょ出版しゅっぱんしゃ現場げんば教員きょういんけに作成さくせいするマニュアルであって、文部もんぶ科学かがくしょう作成さくせいする学習がくしゅう指導しどう要領ようりょうとは関係かんけいがない。学校がっこう関係かんけいしゃ以外いがいもの指導しどうしょ閲覧えつらんしたり購入こうにゅうしたりすることは非常ひじょう困難こんなんである。国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんおよび公益こうえき財団ざいだん法人ほうじん教科書きょうかしょ研究けんきゅうセンター附属ふぞく教科書きょうかしょ図書館としょかんでは閲覧えつらんできるが、現行げんこうはん学校がっこう教育きょういく関係かんけいしゃ以外いがい複写ふくしゃみとめられていない。
  2. ^ 数学すうがくてきには、交換こうかん法則ほうそくたす代数だいすうけいではひだり作用さようみぎ作用さよう区別くべつがなくなることが保障ほしょうされている。つまり、交換こうかん法則ほうそくたす自然しぜんすう自然しぜんすうのかけざんひとぶん×いくつぶんのように左右さゆう区別くべつする必要ひつようせい数学すうがくてきにはない。 ただし、コンピューター・シミュレーションなどでよく使用しようされる行列ぎょうれつのかけざんは、交換こうかん法則ほうそくたさないため、作用さよう作用さよう)という観点かんてんあつかわれるべきである。岩永いわながきょうゆう 2007, p. 4
  3. ^ 交換こうかん法則ほうそくたすことはけっして自明じめいではなく、また直感ちょっかん正当せいとうできることではない。数学すうがくてきには、交換こうかん法則ほうそくは、(ひだり分配ぶんぱい法則ほうそく(a+b)×c=a×c+b×cによって証明しょうめいされるべきことであり、また、(みぎ分配ぶんぱい法則ほうそくa×(b+c)=a×b+a×cは乗法じょうほう定義ていぎからあきらかであるが、(ひだり分配ぶんぱい法則ほうそくはそうではなく、これまた本来ほんらい乗法じょうほう定義ていぎから証明しょうめいされるべきことである。なお、行列ぎょうれつせきかわであるのは、そもそも行列ぎょうれつ加法かほう生成せいせいもとひとつではなく、複数ふくすうある生成せいせいもと同士どうし乗法じょうほうがそもそもかわであるからである。かず場合ばあい生成せいせいもとは1ひとつしかないので、生成せいせいもと同士どうしせき当然とうぜんかわとなる。)
  4. ^ じつはトランプくばりは分配ぶんぱい法則ほうそくもとづいている。たとえば6×4はざん定義ていぎもとづけば6+6+6+6だが、6の定義ていぎである1+1+1+1+1+1にもとづけば(1+1+1+1+1+1)×4とあらわせる。ここで(ひだり分配ぶんぱい法則ほうそく(a+b)×c=a×c+b×cを使つかえば1×4+1×4+1×4+1×4+1×4+1×4となり1×4=4であるから4+4+4+4+4+4とあらわせる。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 高橋たかはしまこと 2011, p. 117,118.
  2. ^ a b ざん順序じゅんじょ問題もんだい」はやっぱり決着けっちゃくがつかない”. 東洋とうよう経済けいざいeducation×ICT. 東洋とうよう経済けいざい (2021ねん7がつ27にち). 2023ねん12月13にち閲覧えつらん
  3. ^ 黒木くろきげん 2014.
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参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

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  • 高橋たかはしまこと『かけざんには順序じゅんじょがあるのか』岩波書店いわなみしょてん岩波いわなみ科学かがくライブラリー〉、2011ねんISBN 978-4000295802 
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  • 遠山とおやまあきらりょうとはなにか I』太郎たろうろうしゃ遠山とおやまあきら著作ちょさくしゅう数学すうがく教育きょういくろんシリーズ〉、1978ねん8がつ21にち 
  • 田中たなか耕治こうじ教育きょういく評価ひょうか岩波書店いわなみしょてん、2008ねんISBN 978-4-00-028050-1 
  • 高橋たかはし昭彦あきひこ小学校しょうがっこうでかけざんおしえるのはなにのためか」『算数さんすう授業じゅぎょう研究けんきゅうだい80かん東洋館とうようかん出版しゅっぱんしゃ、2012ねん3がつ1にち、54-55ぺーじISBN 978-4-491-02781-4 
  • 田中たなか博史ひろふみ田中たなか博史ひろふみ算数さんすう授業じゅぎょうのつくりかた東洋館とうようかん出版しゅっぱんしゃ〈プレミアム講座こうざライブ〉、2009ねんISBN 978-4-491-02398-4 
  • 田中たなか博史ひろふみ「かけざん指導しどう系統けいとうについて」『算数さんすう授業じゅぎょう研究けんきゅうだい80かん東洋館とうようかん出版しゅっぱんしゃ、2012ねん3がつ1にち、26-27ぺーじISBN 978-4-491-02781-4 
  • 田中たなか博史ひろふみ目的もくてきは,「え」のちからそだてること」『算数さんすう授業じゅぎょう研究けんきゅうだい80かん東洋館とうようかん出版しゅっぱんしゃ、2012ねん3がつ1にち、66-67ぺーじISBN 978-4-491-02781-4 
  • 田中たなか博史ひろふみ田中たなか博史ひろふみたのしくてちからがつく算数さんすう授業じゅぎょう55の知恵ちえ : おいしい算数さんすう授業じゅぎょうレシピ 2』文溪堂ぶんけいどう、2011ねん、48ぺーじISBN 978-4894237230 
  • 正木まさき孝昌たかまさ「かけざんのイメージをそだてたい」『算数さんすう授業じゅぎょう研究けんきゅうだい80かん東洋館とうようかん出版しゅっぱんしゃ、2012ねん3がつ1にち、52-53ぺーじISBN 978-4-491-02781-4 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]