サルモネラ

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サルモネラぞく
Salmonella enterica
分類ぶんるい
ドメイン : 細菌さいきん Bacteria
もん : プロテオバクテリアもん
Proteobacteria
つな : ガンマプロテオバクテリアつな
Gammaproteobacteria
: エンテロバクター
Enterobacterales
: ちょうない細菌さいきん
Enterobacteriaceae
ぞく : サルモネラぞく
Salmonella
学名がくめい
Salmonella
Lignieres 1900
たね
  • S. enterica(タイプしゅ
  • S. bongori

サルモネラ (Salmonella) は、グラム陰性いんせい 通性つうせい嫌気いやけせい桿菌かんきんちょうない細菌さいきんいちぞくサルモネラぞく)にぞくする細菌さいきんおも動物どうぶつ消化しょうかかん生息せいそくするちょうない細菌さいきん一種いっしゅであり、その一部いちぶはヒトや動物どうぶつ感染かんせんして病原びょうげんせいしめす。ヒトにたいして病原びょうげんせいつサルモネラぞく細菌さいきんは、さんるい感染かんせんしょう指定していされているちょうチフスパラチフスこすもの(チフスきん S. enterica serovar Typhiパラチフスきん S. enterica serovar Paratyphi A)と、感染かんせんがた食中毒しょくちゅうどくこすもの(食中毒しょくちゅうどくせいサルモネラ:ネズミチフスきん S. enterica serovar Typhimuriumちょうえんきん S. enterica serovar Enteritidisなど)とに大別たいべつされる。食品しょくひん衛生えいせい分野ぶんやでは、後者こうしゃにあたる食中毒しょくちゅうどく原因げんいんとなるサルモネラをとくサルモネラぞくきんぶが、一般いっぱんには、これらをして狭義きょうぎサルモネラあるいはサルモネラ菌さるもねらきんぶこともある。細胞さいぼうない寄生きせいせい細菌さいきんであり、チフスきんやパラチフスきんおもマクロファージ感染かんせんしてきんしょうを、それ以外いがい食中毒しょくちゅうどくせいサルモネラは腸管ちょうかん上皮じょうひ細胞さいぼう感染かんせんして胃腸いちょうえんこす性質せいしつち、この細胞さいぼうない感染かんせんがサルモネラの病原びょうげんせい関与かんよしている。

Salmonellaというぞくめいは、1885ねんアメリカでサルモネラぞく基準きじゅんかぶであるブタコレラきん S. enterica serovar Choleraesuis発見はっけんした細菌さいきん学者がくしゃダニエル・サルモン英語えいごばんにちなんで名付なづけられた。ただし、サルモネラぞくぞくする細菌さいきん分離ぶんりはそれ以前いぜんからおこなわれており、ヒトにたいする病原びょうげんせいサルモネラとして最初さいしょ分離ぶんりされたのはチフスきん S. enterica serovar Typhi である。チフスきん1880ねんカール・エーベルトにより命名めいめいされ、1884ねんゲオルク・ガフキーがそのじゅん培養ばいよう成功せいこうした。

細菌さいきんがくてき特徴とくちょう[編集へんしゅう]

サルモネラ(みぎ、2と4)と大腸菌だいちょうきんひだり、1と3)の鑑別かんべつ。(上段じょうだん乳糖にゅうとう分解ぶんかい指示しじやくふく培地ばいち(BTB培地ばいち)で培養ばいようすると、乳糖にゅうとう分解ぶんかいする大腸菌だいちょうきん (1) は培地ばいちへんし、分解ぶんかいしないサルモネラ (2) は培地ばいち青色あおいろになる。(下段げだん胆汁たんじゅうさん硫化りゅうか水素すいそ指示しじやくふく培地ばいち(SSB培地ばいち)で培養ばいようすると、胆汁たんじゅうさん感受性かんじゅせい大腸菌だいちょうきん発育はついく阻害そがいされてコロニーすう減少げんしょうするが(3、くろ矢印やじるし)、胆汁たんじゅうさんたいせいのサルモネラは通常つうじょうどおり発育はついくし、また硫化りゅうか水素すいそさんせいによりコロニーにくろへんがみられる(4、しろ矢印やじるし

サルモネラぞくは、ちょうない細菌さいきんブドウ糖ぶどうとう嫌気いやけてき発酵はっこうする、芽胞がほうたない、通性つうせい嫌気いやけせいのグラム陰性いんせい桿菌かんきん)にぞくする細菌さいきんであり、おおきさは0.5 × 2 µmぐらいの棒状ぼうじょうしゅうせいむち運動うんどうせいがある。サルモネラぞく細菌さいきん乳糖にゅうとう分解ぶんかいせず、またほとんどの菌株きんしゅ硫化りゅうか水素すいそさんし、リジンだつすみし、クエン酸くえんさん炭素たんそげんとして利用りようできる。これらの生化学せいかがくてき特性とくせいは、おなちょうない細菌さいきん腸管ちょうかん病原びょうげんせい細菌さいきん大腸菌だいちょうきん赤痢せきりきんなど)と鑑別かんべつするじょう重要じゅうようである。また、サルモネラ菌さるもねらきんマラカイトグリーン胆汁たんじゅうさんセレンさん抵抗ていこうせいがあるため、培地ばいちにこれらの物質ぶっしつくわえたものを選択せんたく培地ばいちとしてもちいることで、サルモネラを優先ゆうせんてき検出けんしゅつすることが可能かのうである。ねつさんにはよわいが乾燥かんそう低温ていおんにはつよく、冷凍れいとうしてもかつしない。この性質せいしつ冷凍れいとう食品しょくひんからもサルモネラ食中毒しょくちゅうどく発生はっせいするということに関連かんれんしている。

分類ぶんるい学名がくめい表記ひょうき[編集へんしゅう]

2005ねん現在げんざい、サルモネラぞく生物せいぶつがくてき性状せいじょうからS. entericaS. bongori分類ぶんるいされ、さらにS. entericaは6亜種あしゅ分類ぶんるいされる。また、血清けっせい学的がくてきには、細胞さいぼうかべリポとうたいであるO抗原こうげんと、むちタンパク質たんぱくしつであるH抗原こうげんわせで2,500種類しゅるい以上いじょう分類ぶんるいされる。

サルモネラぞく分類ぶんるい細菌さいきんなかでももっと混乱こんらんおおきいもののひとつであり、分類ぶんるい学名がくめい表記ひょうき統一とういつするための裁定さいてい頻繁ひんぱんおこなわれている。古典こてんてきなサルモネラぞく分類ぶんるいは、O抗原こうげんとH抗原こうげんわせにもとづいたもので、1926ねんにWhiteが提唱ていしょうにKaffmannが拡充かくじゅうした、Kaffmann-Whiteの抗原こうげんひょうしたがっておこなわれてきた。このきゅう分類ぶんるいでは、たとえばサルモネラぞくのうちO9:Hdというこう原型げんけいわせをつものをS. typhiきゅう和名わみょうちょうチフスきん)というひとつの生物せいぶつ学的がくてきしゅとしてあつかっていた。しかしこのKaffmannらの分類ぶんるいは、こう原型げんけいことなる細菌さいきんべつ生物せいぶつしゅとして命名めいめいできるというかんがえにしたがっていたため、その細菌さいきんがく分野ぶんや全体ぜんたいとして生化学せいかがくてき遺伝子いでんしがくてき分類ぶんるいおこなわれるようになると齟齬そごしょうじる結果けっかになった。そこで1985ねんには生物せいぶつがくてき分類ぶんるい整合せいごうさせることを目的もくてきS. choleraesuisの1ぞく1しゅとすることが提案ていあんされ、2002ねんにはS. entericaの1ぞく1しゅとすることが正式せいしききんめいとして承認しょうにんされた。さらにその、2005ねんにはS. entericaS. bongoriの1ぞく2しゅとし、entericaしたに6亜種あしゅもうける分類ぶんるいほう裁定さいていされた。

この分類ぶんるいほうによると、チフスきんやパラチフスきん食中毒しょくちゅうどくせいサルモネラなどの病原びょうげんせいサルモネラは、ほとんどS. enterica subsp. entericaぞくする。この亜種あしゅなかで、さらにKaffmann-Whiteの分類ぶんるいじゅんじた抗原こうげんせいちがいにもとづく、血清けっせいがた (serovar) による分類ぶんるいがなされており、たとえばチフスきん正式せいしき学名がくめいは「Salmonella enterica subspecies enterica serovar Typhi」となるが、subspecies enterica省略しょうりゃくして、S. enterica serovar Typhi略記りゃっきしてもかまわないことにされている。なお正式せいしきみとめられたものではないが、これをS. Typhi略記りゃっきすることもしばしばおこなわれており、ほん項目こうもくでも以下いかこの略記りゃっきほうしたがって表記ひょうきする。また研究けんきゅうしゃによってはきゅう分類ぶんるいめいである“S. typhi”や“S. choleraesuis”をもちいるひといまだに存在そんざいしている[だれ?]

2005ねん1がつ裁定さいていされた分類ぶんるいではサルモネラは以下いかのように分類ぶんるいされている[1]血清けっせいがた (serovar) についてはとく代表だいひょうてきなものだけを記載きさいした。

  • Salmonella enterica
    • subsp. enterica
      • serovar Choleraesuis ブタコレラきん
      • serovar Typhi チフスきん
      • serovar Paratyphi A パラチフスきん
      • serovar Paratyphi B
      • serovar Paratyphi C
      • serovar Typhimurium ネズミチフスきん
      • serovar Enteritidis ちょうえんきん
    • supsp. salamae
    • supsp. arizonae
    • supsp. diarizonae
    • supsp. houtenae
    • supsp. indica
  • Salmonella bongori

これらとはべつに、2005ねんS. subterranea記載きさいされたが、2010ねんにサルモネラぞくよりもむしろEscherichia hermanniiちかいことが報告ほうこくされ、2016ねんには非合法ひごうほうながら"Atlantibacter subterranea"という名称めいしょう提案ていあんされている[2]

  • Salmonella subterranea

サルモネラの細胞さいぼうない寄生きせい[編集へんしゅう]

サルモネラは、感染かんせんした宿主しゅくしゅ細胞さいぼうない細胞さいぼうがい両方りょうほう増殖ぞうしょくおこなうことが可能かのうな、細胞さいぼうない寄生きせいたい通性つうせい細胞さいぼうない寄生きせいせい細菌さいきん細胞さいぼうない寄生きせいきん)の一種いっしゅである。細胞さいぼうない寄生きせいきんには、サルモネラ以外いがい結核けっかくきんレジオネラリステリア・モノサイトゲネスなどが存在そんざいし、これら細胞さいぼうない寄生きせいきんおおくは、生体せいたいない異物いぶつ排除はいじょ担当たんとうしているマクロファージ貪食どんしょくされることで細胞さいぼうないまれ、その、その殺菌さっきん機構きこうのがれてマクロファージない増殖ぞうしょくするものが大半たいはんである。これにたいして、サルモネラは積極せっきょくてき細胞さいぼうはたらきかけて、細胞さいぼうエンドサイトーシス活性かっせいさせる機能きのうゆうしているため、マクロファージ以外いがいの、通常つうじょうならば貪食どんしょく活性かっせいたない腸管ちょうかん上皮じょうひ細胞さいぼうなどにも侵入しんにゅうできる性質せいしつつ。

上皮じょうひ細胞さいぼうへの侵入しんにゅう[編集へんしゅう]

サルモネラの腸管ちょうかん上皮じょうひ細胞さいぼうへの侵入しんにゅうメカニズム

サルモネラの上皮じょうひ細胞さいぼうへの細胞さいぼうない侵入しんにゅうには、IIIがた分泌ぶんぴつ装置そうち(さんがたぶんぴつそうち)とばれる、細菌さいきん細胞さいぼうしつタンパク質たんぱくしつきん体外たいがい分泌ぶんぴつするための機構きこう関与かんよしている[3]。IIIがた分泌ぶんぴつ装置そうち細菌さいきんむち類似るいじ構造こうぞうたいであり、むち相当そうとうするタンパク質たんぱくしつ宿主しゅくしゅ細胞さいぼうして、その細胞さいぼう内部ないぶ直接ちょくせつエフェクター分子ぶんしばれるタンパク質たんぱくしつおく[4]

サルモネラの1つであるネズミチフスきん (S. Typhimurium) のIIIがた分泌ぶんぴつ装置そうち電子でんし顕微鏡けんびきょう写真しゃしん

サルモネラは大腸だいちょう上皮じょうひ細胞さいぼう表面ひょうめん付着ふちゃくし、そこで上皮じょうひ細胞さいぼうにIIIがた分泌ぶんぴつ装置そうちし、その内部ないぶにエフェクター分子ぶんしおくむ。このときおくまれるエフェクター分子ぶんし(サルモネラ染色せんしょくたいうえのSPI-1領域りょういき遺伝子いでんしにコードされた、SopE、SipAなどのタンパク質たんぱくしつ)は、細胞さいぼう骨格こっかく構成こうせいするアクチンさい構成こうせいする作用さようっており[5][6]、この作用さようによってサルモネラが付着ふちゃくした周辺しゅうへん細胞さいぼう形態けいたい変化へんか(ラフリングとばれる構造こうぞう変化へんか)して、付着ふちゃくしたきんたい周辺しゅうへん偽足ぎそくのような構造こうぞう発達はったつする。この偽足ぎそくさま構造こうぞう発達はったつ上皮じょうひ細胞さいぼうのエンドサイトーシスを促進そくしんし、このエンドサイトーシスによってサルモネラは上皮じょうひ細胞さいぼうないまれる(がね機構きこう[7]上皮じょうひ細胞さいぼうまれたサルモネラの一部いちぶオートファジーによって分解ぶんかいされるが、のこりはそのままエンドソームの内部ないぶ増殖ぞうしょくする。このような機構きこう細胞さいぼうない感染かんせんおこなうものには、サルモネラのほか赤痢せきりきん一部いちぶ病原びょうげんせい大腸菌だいちょうきん腸管ちょうかん侵入しんにゅうせい大腸菌だいちょうきん、EIEC)がある。

マクロファージでの増殖ぞうしょく[編集へんしゅう]

マクロファージによるサルモネラの貪食どんしょく。(上段じょうだんチフスせいサルモネラの場合ばあい:マクロファージにより殺菌さっきんされる。(下段げだん)チフスきん場合ばあい殺菌さっきん回避かいひしてマクロファージない増殖ぞうしょくする。

サルモネラぞく細菌さいきんのうち、チフスきんとパラチフスきんはマクロファージに感染かんせんしてその内部ないぶ増殖ぞうしょくする性質せいしつち、これがチフスせい疾患しっかん発症はっしょう関与かんよしている。サルモネラは、上記じょうきした機構きこうによって上皮じょうひ細胞さいぼう侵入しんにゅうする以外いがいにも、異物いぶつとして認識にんしきされることでマクロファージによって貪食どんしょくされる。

マクロファージはしょくきんとくした細胞さいぼうつよ殺菌さっきん機構きこうゆうしており、貪食どんしょくした異物いぶつをファゴソーム(しょく胞)というしょう胞にみ、これと細胞さいぼうないリソソーム融合ゆうごうしてファゴリソソームを形成けいせいすることで、リソソーム内部ないぶのさまざまな分解ぶんかい酵素こうそぐん活性かっせい酸素さんそなどのはたらきで分解ぶんかいする。チフスせいサルモネラをふくめて、おおくの細菌さいきんはこの機構きこうによって殺菌さっきんされ分解ぶんかいされる。

これにたいしてチフスきんは、ファゴソームの内部ないぶからそのしょう胞膜をかいしてIIIがた分泌ぶんぴつ装置そうち細胞さいぼうしつがわし、SPI-2とばれる遺伝子いでんし領域りょういきにコードされた、チフスきん特異とくいてきなエフェクター分子ぶんしぐん宿主しゅくしゅ細胞さいぼうしつ注入ちゅうにゅうする。このエフェクター分子ぶんしぐんは、ファゴソームとリソソームの融合ゆうごう阻害そがいする作用さようち、これによってファゴリソソームの形成けいせい抑制よくせいされる結果けっか、チフスきんしょくきん回避かいひすることが可能かのうになる。リソソームとの融合ゆうごう阻害そがいされたファゴソームは、やがてSCV (salmonella-containing vacuole) とばれる特殊とくしゅ形態けいたいしょう胞になり、チフスきんはこの内部ないぶ増殖ぞうしょくおこなう。この感染かんせんマクロファージがリンパ管りんぱかんから血液けつえき移行いこうすることによって、チフスきんもまた血液けつえきはいみ、きんしょう発生はっせいにつながる。サルモネラとおなじような機構きこうでマクロファージによる殺菌さっきんのがれる細菌さいきんにはレジオネラやブルセラがある。また結核けっかくきんもファゴソームとリソソームの融合ゆうごう阻害そがいする性質せいしつてんで、サルモネラに類似るいじ殺菌さっきん回避かいひ機構きこうつとえる。

病原びょうげんせい[編集へんしゅう]

サルモネラぞく細菌さいきん自然しぜんかいにおいて、さまざまな動物どうぶつ消化しょうか管内かんない一種いっしゅつねざいきんとして存在そんざいしている。しかしヒトにおいては、健康けんこうひと消化しょうかかんにおけるきんすうきわめてすくなく、その糞便ふんべんからは分離ぶんりされることはほとんどない。

一般いっぱんに、サルモネラしょうは、動物どうぶつ由来ゆらいおもたまごにく家禽かきん生乳せいにゅう)し、細菌さいきんふくまれたもの経口けいこう摂取せっしゅすることで感染かんせんする[8]一部いちぶのサルモネラはヒトにたいする病原びょうげんせいしめし、ちょうチフスあるいはパラチフスとばれるじゅうあつし感染かんせんしょうこすものと、胃腸いちょうえん食中毒しょくちゅうどく)をこすもののふたつに大別たいべつされる。前者ぜんしゃはそれぞれチフスきん (S. Typhi)、パラチフスきん (S. Paratyphi A) による疾患しっかんであり、これらをチフスせいサルモネラ、後者こうしゃ食中毒しょくちゅうどくせいサルモネラをチフスせいサルモネラとんで区別くべつすることがある。

チフスせいサルモネラはヒトのみに感染かんせんする細菌さいきんで、患者かんじゃ糞便ふんべんからべつのヒトに感染かんせんするほか、糞便ふんべんによって汚染おせんされた土壌どじょうみずなか残存ざんそんしているもの(これらの自然しぜん環境かんきょうちゅうではほとんど増殖ぞうしょくしない)が感染かんせんげんになる。これにたいして食中毒しょくちゅうどくせいサルモネラ菌さるもねらきんペットや、家畜かちく腸管ちょうかんつねざいきんとして存在そんざいするひとじゅう共通きょうつう感染かんせんしょうであり、そこから汚染おせんされた食品しょくひんなどが食中毒しょくちゅうどく原因げんいんとなる。食品しょくひん衛生えいせい分野ぶんやでは、この食中毒しょくちゅうどくせいサルモネラを問題もんだいにしてあつかうことがおおく、以前いぜんサルモネラ菌さるもねらきんサルモネラ菌さるもねらきんぞくという名称めいしょうんでいたが、1998ねんにはサルモネラぞくきんという名前なまえ変更へんこうされ、食品しょくひん衛生えいせいじょうはこれが正式せいしき名称めいしょうとしてあつかわれている。日本にっぽん家畜かちく伝染でんせんびょう予防よぼうほうではS. Gallinarum pullolumS. Gallinarum Gallinarumによる家禽かきんサルモネラ感染かんせんしょう法定ほうてい伝染でんせんびょうに、S. AbortuequiによるうまパラチフスS. EnteritidisS. TyphimuriumS. CholeraesuisS. Dublinによるサルモネラしょう届出とどけで伝染でんせんびょう指定していされている。

食中毒しょくちゅうどく[編集へんしゅう]

サルモネラ感染かんせんしょう
概要がいよう
診療しんりょう 感染かんせんしょう消化しょうか
症状しょうじょう 発熱はつねつ腹痛はらいた下痢げり嘔吐おうと
原因げんいん サルモネラぞくきん
合併症がっぺいしょう 敗血症はいけつしょうずいまくえん骨髄こつづいえん関節かんせつえんなど
治療ちりょう 輸液による全身ぜんしん状態じょうたい改善かいぜん
抗生こうせい物質ぶっしつ投与とうよ
早期そうき適切てきせつ治療ちりょうおこなえば致死ちしりつは1%以下いか
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
サルモネラによる胃腸いちょうえん食中毒しょくちゅうどく)の発症はっしょうメカニズム。(1) サルモネラが消化しょうかかん到達とうたつ。(2) IIIがた分泌ぶんぴつ装置そうちによって腸管ちょうかん上皮じょうひ細胞さいぼう細胞さいぼうない感染かんせん。(3) 感染かんせん細胞さいぼう機能きのう不全ふぜんにより腸管ちょうかんない液体えきたい貯留ちょりゅう下痢げり発症はっしょう)。(4) こうちゅうだま浸潤しんじゅんして炎症えんしょう増悪ぞうあくちょうえん症状しょうじょう

サルモネラ食中毒しょくちゅうどくは、ほんきん腸管ちょうかん上皮じょうひ細胞さいぼう感染かんせんした結果けっかしょうじる、腸管ちょうかんないへの液体えきたい貯留ちょりゅうこうちゅうだま浸潤しんじゅんによる炎症えんしょうによってきるとかんがえられている。典型てんけいてき感染かんせんがた食中毒しょくちゅうどくであり、そのおも症状しょうじょうは、つよ腹痛はらいた嘔吐おうとはげしい下痢げりなどの消化しょうか症状しょうじょう発熱はつねつなどである。下痢げり便びん緑色みどりいろ粘液ねんえきじったみずさま便びんであり、ときに海苔のり佃煮つくだにのようなねば血便けつべんとなることがある。また、細菌さいきんせい食中毒しょくちゅうどくくらべて高熱こうねつることがおおいのが特徴とくちょうである。通常つうじょう数日すうじつ〜1週間しゅうかん程度ていど回復かいふくするが、抵抗ていこうりょくのないものきんしょうこし重症じゅうしょうすることがある。まれにうち毒素どくそによる敗血症はいけつしょう合併がっぺいし、死亡しぼうすることがある。潜伏期せんぷくきあいだ平均へいきん12あいだほどといわれているが、S. Enteritidis場合ばあい3-4にちとなることもある。一般いっぱんてきなサルモネラぞくきんでは、発症はっしょうするのに10まん以上いじょうきんすう必要ひつようといわれているが、S. Enteritidisは100以下いかきんすうでも発症はっしょうすることがあり、食品しょくひんかいさないひとからひとへの感染かんせん報告ほうこくされている[9]

代表だいひょうてき原因げんいんきんには、S. EnteritidisS. TyphimuriumS. CholeraesuisS. Dublinげられる。従前じゅうぜんのサルモネラぞくきんによる食中毒しょくちゅうどくは、ネズミ媒介ばいかいするS. Typhimuriumなどによるものがおおく、日本にっぽんでも戦後せんごしばらくまではネズミの糞尿ふんにょうによって汚染おせんされた食品しょくひん原因げんいんとする食中毒しょくちゅうどく事件じけん頻発ひんぱつしていた。衛生えいせい状態じょうたい向上こうじょうにより過去かこのものとおもわれがちだが、最近さいきん感染かんせんりょくつよS. Enteritidis鶏肉とりにく鶏卵けいらんかいした食中毒しょくちゅうどく増加ぞうか問題もんだいになっている。

日本にっぽんにおける食中毒しょくちゅうどく発生はっせい件数けんすうの1-3わりがサルモネラぞくきん原因げんいんとされている[注釈ちゅうしゃく 1]とくに、鶏卵けいらん由来ゆらいする菓子かしによるだい規模きぼ食中毒しょくちゅうどく目立めだつ。鶏卵けいらんのサルモネラ汚染おせんは、かつてはニワトリ消化しょうか管内かんない寄生きせいしたサルモネラがそう排泄はいせつ卵殻らんかく外側そとがわ汚染おせんするためとかんがえられた。そのため、汚染おせん防止ぼうしには鶏卵けいらん洗浄せんじょう有効ゆうこうとされた。しかし、今日きょうではこうした卵殻らんかく外側そとがわからの汚染おせんのみではなく、S. Enteritidisなどがニワトリの卵巣らんそう卵管らんかん寄生きせいし、ここから鶏卵けいらんたまご細胞さいぼうそのもの、つまり卵黄らんおう部分ぶぶん細胞さいぼうない寄生きせいしたり、その外側そとがわ卵白らんぱくなどが保菌ほきんすることによって鶏卵けいらん汚染おせんしていることもられるようになった。しかもこうしてサルモネラに感染かんせんした鶏卵けいらんからはしばしば発生はっせいまっとうして健康けんこうひな孵化ふかすることがられており、保菌ほきんにわとりさい生産せいさんされることになる。こうした親子おやこあいだ垂直すいちょく感染かんせんかいたまご感染かんせんび、衛生えいせい状態じょうたい十分じゅうぶん配慮はいりょした鶏舎けいしゃでも汚染おせん鶏卵けいらん汚染おせん鶏肉とりにく生産せいさんされる原因げんいんとなっている。

また、厚生こうせい労働省ろうどうしょうの「食品しょくひんちゅう食中毒しょくちゅうどくきん汚染おせん実態じったい調査ちょうさ」によると、鶏肉とりにくにおけるサルモネラ汚染おせんりつは50%前後ぜんこうと、下記かきのようにたかいものとなっている。

にわとりミンチにくのサルモネラ汚染おせんりつ
2013 2014 2015 2016 2017 2018
検体けんたいすう 陽性ようせいすう 検体けんたいすう 陽性ようせいすう 検体けんたいすう 陽性ようせいすう 検体けんたいすう 陽性ようせいすう 検体けんたいすう 陽性ようせいすう 検体けんたいすう 陽性ようせいすう
31 15 48 33 18 55 35 22 63 28 14 50 43 21 49

ペット(イヌやネコ、家畜かちくなども保菌ほきんしている)から感染かんせんする事例じれい報告ほうこくされている。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは1960-1970ねんにかけてミシシッピアカミミガメ由来ゆらいする感染かんせん報告ほうこくされ、死亡しぼうれい報告ほうこくがある[10]。もっともこれは不衛生ふえいせい環境かんきょう飼育しいくされることも問題もんだいとされており、むやみに動物どうぶつれない、動物どうぶつれたのちには石鹸せっけんあらう、台所だいどころなどで飼育しいくしょうじた汚水おすい処理しょりしないなどの衛生えいせい管理かんりにより容易ようい予防よぼうすること可能かのう

治療ちりょう対症療法たいしょうりょうほうニューキノロンけい抗菌こうきんざいによる除菌じょきんになる。しかし、欧米おうべいではたいせいきん誘発ゆうはつする、ちょうない細菌さいきんくさむらみだ治癒ちゆおくらせるとして、高齢こうれいしゃ小児しょうにのぞ抗菌こうきんざい投与とうよすべきでないというかんがえが主流しゅりゅうになっている。とめ瀉剤しゃざいはいきん阻害そがいするのでもちいられない。

ちょうチフス、パラチフス[編集へんしゅう]

ちょうチフスの発症はっしょうメカニズム。(1) チフスきん消化しょうかかん到達とうたつ。(2) 上皮じょうひ細胞さいぼうおよびパイエルばん近接きんせつするM細胞さいぼう感染かんせん。(3) M細胞さいぼうかいしてマクロファージに感染かんせん。(4) ちょうあいだまくリンパぶし増殖ぞうしょくリンパ管りんぱかん血液けつえき全身ぜんしん感染かんせん
ちょうチフスの症状しょうじょう推移すいい。グラフは体温たいおん変化へんか

ちょうチフスはチフスきん経口けいこう感染かんせんにより発症はっしょうする。消化しょうかかん到達とうたつしたチフスきんは、腸管ちょうかん上皮じょうひにあるパイエルばん近接きんせつするM細胞さいぼう絨毛じゅうもう発達はったつせず、リンパだまやマクロファージに異物いぶつ提示ていじわたしをおこな細胞さいぼう)にまれ[11]、これをかいしてマクロファージによって貪食どんしょくされたのち殺菌さっきん回避かいひして、その細胞さいぼうない増殖ぞうしょくする。このマクロファージが腸管ちょうかんまくリンパぶし感染かんせんひろげることで、チフスきんはリンパぶし増殖ぞうしょくし、血液けつえきはいきんしょうこす。臨床りんしょう所見しょけんでは、2週間しゅうかんほどの潜伏期せんぷくきあいだのち段階だんかいてき体温たいおん上昇じょうしょうし40℃ほどの高熱こうねつつづき、バラ疹とばれる淡紅あわべにしょく発疹はっしんや脾腫などがあらわれる。つづいて、胆汁たんじゅうをとおしちょうない大量たいりょうはいきんされ、じゅう症例しょうれいではちょうかべ壊死えしこし腸管ちょうかん出血しゅっけつこる。その徐々じょじょ解熱げねつ回復かいふくいたる。

パラチフスちょうチフス同様どうよう症状しょうじょうていするが、ちょうチフスほどじゅうあつしにはならない。

治療ちりょうはニューキノロンけい抗菌こうきんざい投与とうよおもになるが、ニューキノロンざいてい感受性かんじゅせいきんがあり、その場合ばあいだいさん世代せだいセフェムけい抗生こうせい物質ぶっしつ使つかわれる。

感染かんせんげんひと糞便ふんべんであるため、衛生えいせい状態じょうたい地域ちいきでの発生はっせいすくない。アジアアフリカ中南米ちゅうなんべいなどで流行りゅうこうかえしているが、日本にっぽんでは年間ねんかん100れいほどが報告ほうこくされ、そのほとんどが海外かいがい感染かんせんしたものである。

感染かんせんしょう予防よぼうおよ感染かんせんしょう患者かんじゃたいする医療いりょうかんする法律ほうりつ施行しこうるい感染かんせんしょう指定していされていたが、2006ねん平成へいせい18ねん)12月8にち公布こうふの「感染かんせんしょう予防よぼうおよ感染かんせんしょう患者かんじゃたいする医療いりょうかんする法律ほうりつとう一部いちぶ改正かいせいする法律ほうりつ」によりさんるい感染かんせんしょう変更へんこうとなった[12]

健康けんこう保菌ほきんしゃ[編集へんしゅう]

サルモネラでは、感染かんせんしても発症はっしょうせずはいきんだけつづ場合ばあいがある。また、発症はっしょう症状しょうじょうおさまってから長期ちょうきにわたりはいきんつづ場合ばあいがある。これをサルモネラ(ちょうチフス、パラチフス)のあらわ感染かんせんしゃ健康けんこう保菌ほきんしゃ)という。食中毒しょくちゅうどくせいサルモネラ菌さるもねらきんあらわ感染かんせんしゃ通常つうじょう治療ちりょう対象たいしょうにならないが、食品しょくひん従事じゅうじしゃは、食中毒しょくちゅうどく予防よぼう観点かんてんから、はいきんまるまで抗菌こうきんざい服用ふくよう指導しどうされる。

アメリカでは20世紀せいき初頭しょとうにチフスきんあらわ感染かんせんしゃであるメアリー・マローンが、食品しょくひん関係かんけい職場しょくば転々てんてんとし、チフスきんをばらまいて多数たすう感染かんせんしゃおおきな問題もんだいとなった。

きんしょう臓器ぞうき感染かんせん[編集へんしゅう]

乳幼児にゅうようじ高齢こうれいしゃなど免疫めんえき機能きのう不十分ふじゅうぶん宿主しゅくしゅ場合ばあい損傷そんしょうした腸管ちょうかん粘膜ねんまくからサルモネラ菌さるもねらきんりゅうちゅう侵入しんにゅうすることがある。乳幼児にゅうようじ問題もんだいとなるのはずいまくえんであり、高齢こうれいしゃでは大動脈だいどうみゃく形成けいせいされたかゆしゅへのきん沈着ちんちゃくがある。後者こうしゃ大動脈だいどうみゃくこぶへと発展はってんするおそれがある。その各種かくしゅ臓器ぞうきへの感染かんせんがあるが、いずれも、血液けつえき培養ばいようりゅう感染かんせん立証りっしょうされないかぎりことさらに心配しんぱいする必要ひつようはない。

薬剤やくざいたいせい[編集へんしゅう]

ヒト、動物どうぶつとくにくようにわとり(ブロイラー)七面鳥しちめんちょう)などの動物どうぶつ由来ゆらい食肉しょくにく製品せいひんから分離ぶんりされたサルモネラにおいて、一般いっぱんてき抗菌こうきんざいへのざいたいせい頻繁ひんぱん検出けんしゅつされている。2015ねん欧州おうしゅう食品しょくひん安全あんぜん機関きかん(EFSA)の報告ほうこくによると、サルモネラ分離ぶんりかぶざいたいせいりつは、ヒト由来ゆらい:31.8%、ブロイラー由来ゆらい:56.0%、七面鳥しちめんちょう由来ゆらい:73.0%、ブタ由来ゆらい:37.9%という結果けっかであった[13]

2018-2019ねんには、重度じゅうど感染かんせんしょう治療ちりょう使用しようされる主要しゅよう抗生こうせい物質ぶっしつの1つであるシプロフロキサシンたいするたいせいたかまっている。2018ねんから2019ねんにかけて、シプロフロキサシンにたいする感受性かんじゅせい低下ていかしたサルモネラ菌さるもねらきんは、ヒトで9-11%、小売こうり鶏肉とりにくで18-31%、鶏肉とりにく製品せいひんサンプルで20-30%、にわとり盲腸もうちょう内容ないようぶつサンプルで26-32%増加ぞうかした[14]

取扱とりあつかいにたいする制限せいげん犯罪はんざい事例じれい[編集へんしゅう]

サルモネラぞくきんは、生物せいぶつテロ犯罪はんざい使用しようされる危険きけんせい指摘してきされており、実際じっさいにいくつかの犯罪はんざい利用りようされた実例じつれい過去かこ存在そんざいする。このため、そのあつかいには各国かっこく制限せいげんもうけられている。アメリカでは、アメリカ疾病しっぺい対策たいさくセンター (CDC) のさだめる病原びょうげんたいカテゴリのうち、カテゴリB(番目ばんめ危険きけんせいたかいカテゴリ)の「しょく安全あんぜんおびやかすもの」(Food safety threats) として、サルモネラがげられている[1]日本にっぽんでは、感染かんせんしょうほうが2007ねん改正かいせいされたさいに、チフスきん (S. Typhi) およびパラチフスAきん (S. Paratyphi A) が、よんしゅ病原びょうげんたい指定していされており、保管ほかん運搬うんぱん滅菌めっきんとうあつか基準きじゅんたした施設しせつあつかうことが義務ぎむづけられている[15]

バイオ犯罪はんざい[編集へんしゅう]

日本にっぽんではチフスきん赤痢せきりきん使つかったバイオ犯罪はんざい戦前せんぜん2かい戦後せんご1かい発生はっせいしている。

  • チフス菓子かし殺人さつじん事件じけん:1936ねん昭和しょうわ11ねん)から1937ねん昭和しょうわ12ねん)にかけて発生はっせい埼玉さいたまけん医師いしつま保険ほけんきんをかけ、チフスきん汚染おせんした菓子かし殺害さつがいしようとして失敗しっぱい。さらにつま診察しんさつした医師いし事件じけん露見ろけんしたとおもみ、その医師いし家族かぞくらにもチフスきん汚染おせんした菓子かし食物しょくもつべさせた[16]。18にん感染かんせん、うち4にん死亡しぼう[17]実行じっこうはん医師いしは1938ねん昭和しょうわ13ねん)に浦和うらわ地方裁判所ちほうさいばんしょ死刑しけい判決はんけつけた[18]
  • チフス饅頭まんじゅう事件じけん離婚りこん相手あいてとその家族かぞくへの復讐ふくしゅうのため、チフスきん・パラチフスきん汚染おせんした饅頭まんじゅうおくりつける。12にん感染かんせん、うち1にん死亡しぼう
  • 千葉大学ちばだいがくちょうチフス事件じけん千葉大学ちばだいがく医学部いがくぶ附属ふぞく病院びょういん医局いきょくいんが、担当たんとう患者かんじゃにチフスきん赤痢せきりきん注入ちゅうにゅうしたり、同僚どうりょう親戚しんせき細菌さいきん感染かんせんした食物しょくもつべさせた。64めい感染かんせん死亡しぼうしゃなし(冤罪えんざい可能かのうせいあり)[17]

汚染おせんされた輸入ゆにゅうひん[編集へんしゅう]

  • 1972ねん - アルゼンチンおよびブラジルから輸入ゆにゅうされた馬肉ばにくからパラチフスBきんサルモネラ菌さるもねらきん出典しゅってんママ)が検出けんしゅつされた[19]

利用りよう[編集へんしゅう]

S. Typhimurium(ネズミチフスきん)の突然変異とつぜんへんいかぶであるTAかぶ(TA98, TA100, TA1535, TA1538など)は、細菌さいきんもちいた変異へんいばらせい試験しけんエームス試験しけん)にもちいられる。

予防よぼう方法ほうほう[編集へんしゅう]

  • サルモネラ菌さるもねらきんによる食中毒しょくちゅうどく発生はっせい原因げんいん食品しょくひん加熱かねつ不足ふそく
  • S. typhiたいしては、ワクチンが有効ゆうこうである。
    • 経口けいこう弱毒じゃくどくせいワクチン (Ty21a): 隔日かくじつ投与とうよで、3かい欧州おうしゅうしき)または4かい米国べいこくしき)の接種せっしゅ前者ぜんしゃは3ねん後者こうしゃは5年間ねんかん抗体こうたい維持いじされる。相互そうご作用さようのある経口けいこうワクチンはいため、抗生こうせいざい投与とうよ以外いがいはとくに投薬とうやく注意ちゅういい。
    • かつワクチン (TyCPS): ポリサッカライドのすじちゅう。1かいで、15にちより2〜3ねん有効ゆうこう年数ねんすうであるが、接種せっしゅ2ねんは50-70%くらいまで下降かこうするため、3年間ねんかんたないとかんがえたほうい。
    • いずれも、日本にっぽん国内こくないでは、承認しょうにんなので、個人こじん輸入ゆにゅうをしている医療いりょう機関きかんでのみ接種せっしゅできる。
  • みなみアジア地域ちいきをはじめ、東南とうなんアジアでは、ざいたいせいS. typhi報告ほうこくされているので、ワクチンによる予防よぼう重要じゅうようである。
  • せいさんざい胃酸いさんをおさえるクスリ)服用ふくようしゃ摘出てきしゅつじゅつけたもの腸管ちょうかん感染かんせんしょうのリスクがたかまるので、ちょうチフスワクチンやコレラ・渡航とこうしゃ下痢げりワクチンの接種せっしゅがのぞましい。
食品しょくひん衛生えいせいてき観点かんてんからみたサルモネラ菌さるもねらきん生存せいぞん増殖ぞうしょく特性とくせい[20]
  • たい熱性ねっせいぜんたまご卵黄らんおうちゅうで60℃、3.5ふんかつ卵白らんぱくちゅうで55℃、3.5ふんかつ砂糖さとう食塩しょくえん添加てんかするとたい熱性ねっせい増加ぞうか食品しょくひんちゅうでは、68℃3.5ふんかつ
  • 増殖ぞうしょく温度おんど:10℃以下いか、46℃以上いじょう増殖ぞうしょく遅延ちえん。5℃以下いかおよび50℃以上いじょうでは増殖ぞうしょくしない。
  • 増殖ぞうしょくpH:pH 10以上いじょうまたは4.75以下いかでは増殖ぞうしょくしない。pH 4.0 マヨネーズちゅう生存せいぞん、pH 4.6 で増殖ぞうしょくする。pH 3.0-3.5(23℃)でかつ
  • 増殖ぞうしょく水分すいぶん活性かっせい:aw 0.95 以下いかでは増殖ぞうしょくしない。
  • 消毒しょうどくざいたいせい食品しょくひん製造せいぞうしょ使用しようされる通常つうじょう消毒しょうどくざい有効ゆうこう
  • 凍結とうけつ食品しょくひんちゅうサルモネラ菌さるもねらきん凍結とうけつではかつしない。
  • 乾燥かんそう食品しょくひんちゅうサルモネラ菌さるもねらきん乾燥かんそうたいして生存せいぞん、しかし増殖ぞうしょくはしない。ただし、乾燥かんそうするまでに増殖ぞうしょくすることがある。
  • たまご食品しょくひんみず希釈きしゃく非常ひじょううす希釈きしゃくえきちゅうでも増殖ぞうしょく

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 平成へいせい9ねん時点じてんでは日本にっぽんぜん食中毒しょくちゅうどく患者かんじゃのうちやく27%がサルモネラぞく原因げんいんであったが、平成へいせい22ねんから平成へいせい20ねんではサルモネラがやく10%とやや減少げんしょうしている。くわしくは厚生こうせい労働省ろうどうしょう食中毒しょくちゅうどく統計とうけい資料しりょう参考さんこうのこと。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ CDC. Salmonella Surveillance: Annual Summary, 2005. Atlanta, Georgia: US Department of Health and Human Services, CDC, 2007:Salmonella Annual Sumary 2005
  2. ^ Hata, H., et al. (2016). “Phylogenetics of family Enterobacteriaceae and proposal to reclassify Escherichia hermannii and Salmonella subterranea as Atlantibacter hermannii and Atlantibacter subterranea gen. nov., comb. nov.”. Microbiol Immunol. 60 (5): 303-11. doi:10.1111/1348-0421.12374. PMID 26970508. 
  3. ^ Collazo CM, Galán JE (September 1996). “Requirement for exported proteins in secretion through the invasion-associated type III system of Salmonella typhimurium”. Infection and Immunity 64 (9): 3524–3531. PMID 8751894. http://iai.asm.org/content/64/9/3524.long. 
  4. ^ Jorge E. Galán and Hans Wolf-Watz (November 2006). “Protein delivery into eukaryotic cells by type III secretion machines”. Nature 444 (7119): 567-573. doi:10.1038/nature05272. PMID 17136086. 
  5. ^ Humphreys D, Davidson A, Hume PJ, Koronakis V (February 2012). “Salmonella Virulence Effector SopE and Host GEF ARNO Cooperate to Recruit and Activate WAVE to Trigger Bacterial Invasion”. Cell Host Microbe 11 (2). doi:10.1016/j.chom.2012.01.006. PMID 22341462. 
  6. ^ Wendy Higashide, Shipan Dai, Veronica P. Hombs, Daoguo Zhou (june 2002). “Involvement of SipA in modulating actin dynamics during Salmonella invasion into cultured epithelial cells”. Cellular Microbiology 4 (6). doi:10.1046/j.1462-5822.2002.00196.x. PMID 12116966. 
  7. ^ Hardt WD, Chen LM, Schuebel KE, Bustelo XR, Galán JE (1998). “S. typhimurium encodes an activator of Rho GTPases that induces membrane ruffling and nuclear responses in host cells”. Cell 93 (5): 815-826. doi:10.1016/S0092-8674(00)81442-7. PMID 9630225. 
  8. ^ サルモネラしょう(チフス以外いがい)(ファクトシート)”. 20220509閲覧えつらん
  9. ^ サルモネラ感染かんせんしょう[リンク] 岩手大学いわてだいがく農学部のうがくぶ獣医じゅうい微生物びせいぶつがく教室きょうしつ 弘前大学ひろさきだいがく医学部いがくぶ細菌さいきんがく教室きょうしつ
  10. ^ 横浜よこはま衛生えいせい研究所けんきゅうじょ感染かんせんしょう疫学えきがく情報じょうほう
  11. ^ Mark A. Jepsona, M.Ann Clark (November-December 2001). “The role of M cells in Salmonella infection”. Microbes and Infection 3 (14-15). doi:10.1016/S1286-4579(01)01478-2. PMID 11755406. 
  12. ^ 感染かんせんしょうのページ(青森あおもりけん
  13. ^ Salmonella and Campylobacter show significant levels of resistance to common antimicrobials in humans and animals”. 20220509閲覧えつらん
  14. ^ US: Rising resistance among bacteria serotypes in poultry”. 20220509閲覧えつらん
  15. ^ 水口みずぐち康雄やすお病原びょうげん微生物びせいぶつあつかいと安全あんぜん」、『戸田とだしん細菌さいきんがく』33はん1さつ吉田よしだ眞一しんいちやなぎ雄介ゆうすけ吉開よしかい泰信やすのぶへん南山みなみやまどう、2007ねん
  16. ^ チフスきん菓子かし殺人さつじん意思いし検挙けんきょ東京日日新聞とうきょうにちにちしんぶん』(昭和しょうわ12ねん5がつ21にち夕刊ゆうかん)『昭和しょうわニュース辞典じてんだい6かん 昭和しょうわ12ねん-昭和しょうわ13ねん』p230 昭和しょうわニュース事典じてん編纂へんさん委員いいんかい 毎日まいにちコミュニケーションズかん 1994ねん
  17. ^ a b 杉島すぎしま正秋まさあき、『バイオテロの包括ほうかつてき研究けんきゅう朝日大学あさひだいがく法制ほうせい研究所けんきゅうじょ (2003)
  18. ^ 細菌さいきん死刑しけい判決はんけつ東京とうきょう朝日新聞あさひしんぶん』(昭和しょうわ13ねん7がつ5にち夕刊ゆうかん)『昭和しょうわニュース辞典じてんだい6かん 昭和しょうわ12ねん-昭和しょうわ13ねん』p231
  19. ^ 汚染おせん馬肉ばにく荷揚にあ拒否きょひ 横浜よこはま港湾こうわん労働ろうどうしゃさわぐ」『朝日新聞あさひしんぶん昭和しょうわ45ねん(1970ねん)9がつ17にちあさ15かん、14はん、22めん
  20. ^ 品川しながわくにひろしたまごおよたまご加工かこうひんにおけるサルモネラエンテリティディスの汚染おせんとその対策たいさく食品しょくひん衛生えいせいがく雑誌ざっし』 1999ねん 40かん 1ごう P.7-18, doi:10.3358/shokueishi.40.7

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]