バター

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バター(加塩かしお
バターとバターナイフ
100 gあたりの栄養えいよう
エネルギー 2,999 kJ (717 kcal)
0.06 g
糖類とうるい 0.06 g
食物しょくもつ繊維せんい 0 g
81.11 g
飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん 51.368 g
トランス脂肪酸しぼうさん 3.278 g
一価いっか飽和ほうわ 21.021 g
あたい飽和ほうわ 3.043 g
0.315 g
2.166 g
0.85 g
ビタミン
ビタミンA相当そうとうりょう
(86%)
684 µg
(1%)
158 µg
0 µg
チアミン (B1)
(0%)
0.005 mg
リボフラビン (B2)
(3%)
0.034 mg
ナイアシン (B3)
(0%)
0.042 mg
パントテンさん (B5)
(2%)
0.11 mg
ビタミンB6
(0%)
0.003 mg
葉酸ようさん (B9)
(1%)
3 µg
ビタミンB12
(7%)
0.17 µg
コリン
(4%)
18.8 mg
ビタミンC
(0%)
0 mg
ビタミンD
(10%)
60 IU
ビタミンE
(15%)
2.32 mg
ビタミンK
(7%)
7 µg
ミネラル
ナトリウム
(48%)
714 mg
カリウム
(1%)
24 mg
カルシウム
(2%)
24 mg
マグネシウム
(1%)
2 mg
リン
(3%)
24 mg
鉄分てつぶん
(0%)
0.02 mg
亜鉛あえん
(1%)
0.09 mg
マンガン
(0%)
0 mg
セレン
(1%)
1 µg
成分せいぶん
水分すいぶん 15.87 g
コレステロール 215 mg
%はアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおける
成人せいじん栄養えいよう摂取せっしゅ目標もくひょう (RDI割合わりあい
出典しゅってん: USDA栄養えいようデータベース英語えいご
バター(100gなか)のおも脂肪酸しぼうさん種類しゅるい[1]
項目こうもく 分量ぶんりょう (g)
脂肪しぼう 81.11
飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん 51.368
4:0(酪酸 03.226
6:0(カプロンさん 02.007
8:0(カプリルさん 01.19
10:0(カプリンさん 02.529
12:0(ラウリンさん 02.587
14:0(ミリスチンさん 07.436
16:0(パルミチンさん 21.697
18:0(ステアリンさん 09.999
一価いっか飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん 21.021
18:1(オレインさん 19.961
あたい飽和ほうわ脂肪酸しぼうさん 03.043
18:2(リノールさん 02.728
18:3(αあるふぁ-リノレンさん 00.315

バターえい: butter)とは、牛乳ぎゅうにゅうから分離ぶんりしたクリームってがためた食品しょくひんである[2]漢字かんじは「牛酪ぎゅうらくぎゅうらく」とう。

概説がいせつ[編集へんしゅう]

バターは牛乳ぎゅうにゅうから分離ぶんりしたクリームを凝固ぎょうこさせた(るなどしてがためた)食品しょくひんである、乳製品にゅうせいひん一種いっしゅ常温じょうおんではわずかに黄色おうしょくあじをおびた白色はくしょく固体こたい主成分しゅせいぶん脂肪しぼうちち脂肪しぼう)である[2]ビタミンAをはじめ各種かくしゅビタミン栄養素えいようそ豊富ほうふふくんでいる。100グラムのバターをるために、原料げんりょうちちやく4.8リットル必要ひつようとされる。

バターを意味いみする英語えいごの「butter」は広義こうぎには、なんらかのちち原料げんりょうとし、クリームをて、ちちちゅう脂肪しぼうぶん凝固ぎょうこさせたものをひろしている。だが、日本語にほんご「バター」の語源ごげんである英語えいごbutter」というかたりラテン語らてんごbutyrum」を由来ゆらいとし、うしウシ)のチーズ意味いみするギリシャboutyron」が由来ゆらいである。また漢語かんごでは牛酪ぎゅうらくである。これらの表記ひょうきからもあきらかなように、バターはウシの乳汁にゅうじゅう牛乳ぎゅうにゅう)を原料げんりょうとするのが一般いっぱんてきである。なお、ウシ以外いがい乳汁にゅうじゅう原料げんりょうとしたバターもあるものの、本稿ほんこうでは以降いこうとくことわりがないかぎり、牛乳ぎゅうにゅう原料げんりょうとしたバターについて記述きじゅつする。

日本にっぽんでは近年きんねんてい脂肪しぼうちちこのまれるようになり、副産物ふくさんぶつちち脂肪しぼう生産せいさん過剰かじょう気味ぎみわれていたが、2007ねんまつからしばらくのあいだ乳牛にゅうぎゅう生産せいさん調整ちょうせいなどの悪条件あくじょうけんかさなり、バター不足ふそく発生はっせいした。詳細しょうさいについてはバター不足ふそく参照さんしょうのこと。

種類しゅるい[編集へんしゅう]

発酵はっこう 発酵はっこう
ゆうしお 発酵はっこうゆうしおバター 発酵はっこうゆうしおバター
日本にっぽん通常つうじょう市販しはんされるバター)
食塩しょくえん使用しよう
(かつてのしおバター)
発酵はっこう食塩しょくえん使用しようバター 発酵はっこう食塩しょくえん使用しようバター

原料げんりょうちち乳酸にゅうさん発酵はっこうさせてからつくる「発酵はっこうバター」(醗酵はっこうクリームバター)と、発酵はっこうさせずそのままつくる「発酵はっこうバター」(スイートクリームバター)とがあり、それぞれに食塩しょくえん添加てんかした「ゆうしおバター」と添加てんかしない「食塩しょくえん使用しよう」バターがあり、都合つごう4種類しゅるいかれる。

食塩しょくえん使用しようバターは、かつて「しおバター」としょうしていたが、しお製造せいぞうしても生乳せいにゅう由来ゆらいする塩分えんぶん微量びりょうふくまれることから、厚生こうせい労働省ろうどうしょう栄養えいよう表示ひょうじ基準きじゅんにより食品しょくひん正規せいき表示ひょうじもとめられ、「しお」という言葉ことば使つかえなくなった。

日本にっぽん市販しはんされているバターは「発酵はっこうゆうしお」または「発酵はっこう食塩しょくえん使用しよう」がおおい。

ゆうしおバターの場合ばあいは、1.8%以下いか食塩しょくえんくわえられている。

発酵はっこうバターは手間てまがかかり高額こうがく製品せいひんおおいこともあり、流通りゅうつうりょうすくない。

性質せいしつ[編集へんしゅう]

  • バターにふくまれる脂肪酸しぼうさん様々さまざま種類しゅるいがある(融点ゆうてんがバラバラな脂肪酸しぼうさんふくまれている)。ただし、パルミチンさんが3わりじゃくオレインさんが4ぶんの1じゃくミリスチンさんステアリンさんが1わりきょうめており、以上いじょうの4しゅで、バターにふくまれる脂肪酸しぼうさんのほぼ75 %めている。このため、つぎのような性質せいしつつ。
    • 酸化さんかによって劣化れっかする。
    • 冷蔵庫れいぞうことうやすと、バターナイフるのに多少たしょうりょくるほどかたくなる。
    • 15前後ぜんごになると、可塑かそせいのある状態じょうたいとなる。
    • 室温しつおん(20℃程度ていど)にすると、固体こたいあぶら指数しすうが15 %にちかづき、十分じゅうぶんやわらかい状態じょうたいとなる。パンったり、洋菓子ようがしつくったりするさいにはこの状態じょうたいがよく使つかわれる。
    • 30℃前後ぜんこうになると、融解ゆうかいはじまる。
    • 40℃にちかづくと、固体こたいあぶら指数しすうは0 %、つまり完全かんぜん液体えきたいとなる。なお、この液体えきたいになった状態じょうたいのバターを「かしバター」とう。
  • かしバターを凝固ぎょうこしない温度おんど放置ほうちすると、ちち脂肪しぼう以外いがい蛋白質たんぱくしつなど(ちち漿)がそこしずむ。上澄うわずみはとおった黄色おうしょくっぽいいろをしており、これを「ましバター」とう。ましバターは、通常つうじょうのバターでは風味ふうみつよすぎるような場合ばあい使つかわれる。
  • 独特どくとくかおりをつ。なお、醗酵はっこうバターのかお成分せいぶんとしては、ジアセチルなどがられる。バターのジアセチルの含有がんゆうりょうは、ヨーグルトラムあかワインコニャック[3]マーガリンをバターにせるために、ジアセチルの香料こうりょう使つかわれている。
  • バターのうす黄色おうしょくうし飼料しりょう牧草ぼくそう)にふくまれるカロテンにゅう脂肪しぼう蓄積ちくせきしたもの。夏場なつばなどに青草あおくさべたうしのバターは黄色おうしょくみがつよくなり、冬場ふゆばなどにくさべたうしのバターは白色はくしょく[4][5]
  • クリーミングせい。バターを撹拌かくはんして、空気くうきふくませることができる性質せいしつ。パウンドケーキなどのお菓子かしづくりで空気くうきふくませることでふっくらとしたしょくかんとなる。
  • ショートニングせい。クリームじょうにしたバターがうすいフィルムじょうびる性質せいしつ生地きじなかうすひろがることで余分よぶんなグルテンの形成けいせいふせぎ、サクサクとしたしょくかんとなる。

製造せいぞう方法ほうほう[編集へんしゅう]

  1. 牛乳ぎゅうにゅうからクリームを分離ぶんりする。
  2. 攪拌れて攪拌し、脂肪しぼうかたまりをつくる。
  3. 冷水れいすい洗浄せんじょうし、脂肪しぼうぶん以外いがいバターミルク除去じょきょする。
  • なおにゅう脂肪しぼう粒子りゅうし同士どうしがくっついて分離ぶんりすることをふせぐ「均質きんしつ」(Homogenization)の工程こうていている牛乳ぎゅうにゅうについてはクリームを分離ぶんりすることができない。日本にっぽん市販しはんされている牛乳ぎゅうにゅうについては、「ノンホモ(ジナイズド)」とう表示ひょうじがあるものからならば自宅じたく牛乳ぎゅうにゅうからつくることが可能かのうであり、その表示ひょうじ牛乳ぎゅうにゅう場合ばあいはこの均質きんしつけており、つくることは困難こんなんである。
  • ミキサー撹拌かくはんするとびんれてるよりも手早てばやくできる。また、ホイップクリーム(Chantilly cream)をミキサーで製造せいぞうちゅうに、過度かど撹拌かくはんのために脂肪しぼうぶんかたまることがある。

なお家庭かていでも上記じょうき方法ほうほう市販しはん動物どうぶつせいなまクリームからつくることも可能かのうだが、市販しはんひんくらべて割高わりだかとなる。

保存ほぞんほう[編集へんしゅう]

10℃以下いかでの保存ほぞんのぞましいとされる。冷凍庫れいとうこれておくと長持ながもちする。レストランなどではバターディッシュやバタークーラーなどの容器ようきれてテーブルにきょうされることもある。

歴史れきし[編集へんしゅう]

かつてのヨーロッパでバター製造せいぞう使つかわれたおけなかにクリームをれ、中央ちゅうおうぼう上下じょうげさせて攪拌する

容器ようきれた生乳せいにゅう偶然ぐうぜんれただけでもバターは出来できるため、起源きげん不明ふめいすくなくともメソポタミア文明ぶんめい時代じだい紀元前きげんぜん5世紀せいきごろ)には存在そんざいしていた。『聖書せいしょ』や『マハーバーラタ』(ちちあぶらとして)にも記述きじゅつ存在そんざいするので、その時代じだいには存在そんざいしていたとされる。

そうしてアブラハムはバター(しこりちち)と牛乳ぎゅうにゅううし調理ちょうりしたものをり、かれらのまえそなえ、したかれらのそばに給仕きゅうじし、こうしてかれらは食事しょくじした。 — 『創世そうせい』18:8

バターがつくられだした当初とうしょかわせいふくろ生乳せいにゅうれてるし、それをぼうってすってつくっていたとられる。その、バターはケルトヴァイキングベドウィンといった牧畜ぼくちくさかんなしょ民族みんぞくへとつたわっていった。

バターは古代こだいギリシア時代じだいスキタイから地中海ちちゅうかい世界せかいわたり、「うしのチーズ」を意味いみする「ブトゥルム」[6]ばれた。野蛮やばんじんものられたこと、オリーブオイル普及ふきゅうしていたこと、チーズとちが保存ほぞんせいいことなどから、かみからだくすり[7]化粧けしょうひん潤滑油じゅんかつゆとして、ごく一部いちぶ使つかわれていた。

みなみヨーロッパでは中世ちゅうせいになってもバターはほとんどられておらず、イタリア料理りょうりしょにバターが登場とうじょうするのは15世紀せいきになってからのことである。ピレネーアルプス山脈あるぷすさんみゃく以北いほくのヴァイキングとノルマンじん征服せいふくけた地域ちいきからバターは定着ていちゃくはじめ、14世紀せいきにかけてオランダスイスへとひろがったが、ノルマンけいではない貴族きぞくにとっては「野蛮やばんじんもの」という見方みかたわらず、まずしいものものとみなされていた。フランス本格ほんかくてき食用しょくようとして利用りようされすと、ようやく貴族きぞくもバターをはじめた。

アントワーヌ・ヴォロン『バターのやま

歴史れきし学者がくしゃジャン・ルイ・フランドラン英語えいごばんは14世紀せいきから17世紀せいきのヨーロッパにおけるバター・オイルけん画定かくていしており、現在げんざいでもヨーロッパでは「オリーブオイルが主流しゅりゅう地域ちいき」と「バターが主流しゅりゅう地域ちいき」がはっきりとかれている。基本きほんてきに、バターを保存ほぞんしやすい寒冷かんれい土地とちでバターが普及ふきゅうしているとてもいい。それスカンジナビアではすくなくとも12世紀せいきごろにバターの輸出ゆしゅつはじまった。

12世紀せいきサン=ドニキリスト教きりすときょう司祭しさいにより、よんしゅんぶし期間きかんちゅうにバターをべることが「にくち」のきんおかすかどうか、はじめて問題もんだい提起ていきされた。その、14世紀せいきになって正式せいしきつみになるとめられた。すでにバターにしたしんでいた地域ちいき貴族きぞく富裕ふゆうそう禁欲きんよくにバターをべる贖宥じょうけ、そのための寄進きしんカトリック教会きょうかいおおいにうるおった。ジャン・ルイ・フランドランは、16世紀せいき宗教しゅうきょう改革かいかくとバター・オイル文化ぶんかけん地図ちずじょう関連かんれんについて指摘してきしている[8]

また、バターはランプあぶら代用だいようともされた。ルーアンにあるルーアンだい聖堂せいどうの「バターのとう」は16世紀せいきよんしゅんぶし実際じっさいにランプのあぶらにバターを使つかっていたことからこう名付なづけられたとされる[9]

日本にっぽんでは江戸えど時代じだい徳川とくがわ吉宗よしむねが、明治めいじ時代じだいにはエドウィン・ダンがバターを試作しさくしている。江戸えど時代じだいにはごくわずかではあるが生産せいさんされており、オランダ由来ゆらいする「ぼうとろ」、あるいは「しろ牛酪ぎゅうらく」という名称めいしょうばれ、購入こうにゅうしゃけずってべたり、かしてんだ[10]本格ほんかくてきにバターが日本にっぽんひろまったのは明治維新めいじいしんのち政府せいふ外国がいこくじん相手あいて乳製品にゅうせいひん供給きょうきゅうするため、酪農らくのう普及ふきゅう指示しじしてからである。

19世紀せいきまつ戦争せんそう混乱こんらんでバターの価格かかく高騰こうとうし、ナポレオン3せい命令めいれいで、バターの安価あんか代用だいようひんとしてつくられたのがマーガリンである。

用途ようと[編集へんしゅう]

チベット仏教ぶっきょうもちいられるバターランプ

調味ちょうみりょうのほか、パンなどのスプレッドソース材料ざいりょう食用しょくようソテーいたあぶらとう)といった用途ようと幅広はばひろ使つかわれる。とく小麦粉こむぎことの相性あいしょうきわめてい。小麦粉こむぎこおも原料げんりょうとした食品しょくひん料理りょうりであればほぼなににでもうが、ゆうしお食塩しょくえん使用しよう用途ようとことなることもある。 食塩しょくえん使用しようバターは洋菓子ようがしによく使つかわれる。トーストホットケーキなどに使つかうものはゆうしおのものがおおいが、塩分えんぶんひかえているひとなどや、文化ぶんかけんによっては食塩しょくえん使用しようのものを使つか場合ばあいもある。

そのほか、様々さまざま食材しょくざい香辛料こうしんりょうなどをくわえたバターもある。たとえばバターのなかレーズンれたレーズンバターもある。クラッカーうえなどにそのかたまりせてべる場合ばあいなどに利用りようされる。パセリバター、レモンバター、にんにくバターなどもあり、オードブルのほかにステーキカレーライスなどにえられる。日本にっぽんでは安納あんのういもサツマイモ一種いっしゅ)、ウニなどの海産物かいさんぶつとブレンドした「べるバター」が各種かくしゅ製造せいぞう販売はんばいされている[11]

ラードわりとしてラーメン使つかわれることもある。香港ほんこん台湾たいわんの「ラードごはん」のように、米飯べいはんにバターと醤油じょうゆをまぶしてべるひともいる(バターごはん)。

アメリカではバターをころもつつんでげたげバターばれるスナック菓子すなっくがしつくられている。

バタークリーム[編集へんしゅう]

バターに砂糖さとう、さらに卵白らんぱくあるいは卵黄らんおうわせ、空気くうきれて撹拌かくはんさせてクリームじょうにしたものはバタークリーム[12]ばれ、ケーキのアイシング糖衣とうい)やもの使つかわれる[13][14][15]

冷蔵れいぞう冷凍れいとう設備せつび普及ふきゅうし、なまクリームでデコレーションすることが容易よういになるまでは、バタークリームを使つかうことがおおかった。ただし、純正じゅんせいのバターではなく、マーガリンやショートニング使用しようしてクリームに加工かこうしたものもあった。

バターランプ[編集へんしゅう]

すんでじゅつとおり、歴史れきしてきにはランプの燃料ねんりょうとして使用しようされたれいもある。またチベット仏教ぶっきょう寺院じいんでは、蝋燭ろうそくではなくバターランプ (Butter lamp使つかわれる[16]

代用だいようバター[編集へんしゅう]

マーガリン」は 植物しょくぶつなど材料ざいりょうからつくられ、バターの安価あんか代替だいたいひんとして使つかわれる場合ばあいがある。マーガリンは冷蔵庫れいぞうこないなどの低温ていおんにおいてもかたくならない性質せいしつがあり、使用しようしやすいめんがある。おおくのマーガリンには香料こうりょう使用しようされており、加熱かねつすると風味ふうみんでしまうが、バターはかえって風味ふうみす。口語こうごではマーガリンをしてバターとぶこともあるが、誤用ごようである。

ピーナッツバターのように用途ようと外観がいかんているがバターをふくまない食品しょくひんや、バターピーナッツなど実際じっさいにはパームなどが使つかわれるがバターに風味ふうみたせた食品しょくひん名前なまえ使つかわれることもある。マーガリンとう区別くべつするため、本来ほんらいのバターを「ほんバター」と呼称こしょうすることもある。

その類似るいじのものとして、ジアセチルという食品しょくひんよう香料こうりょうもあり、バター風味ふうみポップコーンなどにおおもちいられている。

生産せいさん生産せいさんりょう[編集へんしゅう]

インド 433まんトン、EUけん 206まんトン、アメリカ 82まんトン、ニュージーランド 47まんトン、日本にっぽん 6.3まんトン。(2011ねん[17]

インドではヒンドゥーきょう教義きょうぎによって、牛肉ぎゅうにく食用しょくよう制限せいげんされているため、菜食さいしょく主義しゅぎものおおい。かれらはりない栄養えいようおも殺生せっしょうせずにられる牛乳ぎゅうにゅうやバターでおぎなう。

バター不足ふそく[編集へんしゅう]

日本にっぽん[編集へんしゅう]

日本にっぽんでは2007ねんまつからバターの原材料げんざいりょうである生乳せいにゅう酪農らくのううしからしぼちち生産せいさんりょう減少げんしょうによりバター不足ふそく業界ぎょうかいかくメーカーで発生はっせいしている。これは以前いぜん牛乳ぎゅうにゅう余剰よじょう原因げんいんとする2006年度ねんどからの生産せいさん調整ちょうせい乳牛にゅうぎゅう削減さくげんされているのにくわえ、国内こくない猛暑もうしょ輸入ゆにゅうもとオーストラリアやヨーロッパの旱魃かんばつにより生産せいさん減少げんしょうしたためである。かくメーカーでは出荷しゅっか数量すうりょう制限せいげん価格かかく改定かいてい実施じっししている。

小売こうりてんにおいても特売とくばい減少げんしょう一人ひとりたりの購入こうにゅう数量すうりょう制限せいげん在庫ざいこれによる販売はんばい中止ちゅうしなど、一般いっぱん消費しょうひしゃにも影響えいきょうしょうじている。またバターを使用しようしたケーキるい値上ねあげなどの影響えいきょうた。

これらのバター不足ふそくたいして当時とうじ農林のうりん水産すいさん大臣だいじんだった若林わかばやし正俊まさとしは、乳業にゅうぎょうメーカーにたいしてバターの増産ぞうさん要請ようせいした。また、のう畜産ちくさんぎょう振興しんこう機構きこう業務ぎょうむよう冷凍れいとうバターの輸入ゆにゅう前倒まえだおしして実施じっしし、追加ついか輸入ゆにゅうおこなとう対策たいさくおこなった(バターは日本にっぽんでは関税かんぜい割当わりあてせい指定してい物品ぶっぴん)。これらの対策たいさく結果けっかすこ時間じかんはかかったもののバター不足ふそくおさまった。

そのとしによってはバター不足ふそく散発さんぱつてき発生はっせいし、その都度つど緊急きんきゅう輸入ゆにゅうおこなわれた[18]。2016ねん深刻しんこくなバター不足ふそくおちいったため、農林水産省のうりんすいさんしょうは2017年度ねんどのバター輸入ゆにゅうりょう前年度ぜんねんどやく2ばいの13,000トンに設定せっていしている[19]

北欧ほくおう[編集へんしゅう]

だいいち世界せかい大戦たいせんなか中立ちゅうりつこくデンマーク交戦こうせんこくへバターの輸出ゆしゅつ強化きょうか。この結果けっか同国どうこくでは子供こども中心ちゅうしんちち脂肪しぼう不足ふそくによる眼球がんきゅう乾燥かんそうしょう多発たはつした[20]

ノルウェーフィンランドひとし北欧ほくおう諸国しょこくでは2011ねんあきからバターの供給きょうきゅう不足ふそくによる価格かかく高騰こうとう発生はっせいした。当年とうねんなつ長雨ながあめ原因げんいん生乳せいにゅう生産せいさんりょうんでバターの供給きょうきゅうりょう減少げんしょう[21][22]くわえて炭水化物たんすいかぶつダイエットアトキンスダイエット)の流行りゅうこう冬場ふゆばクリスマスシーズンを直撃ちょくげきしたためである[21][22]北欧ほくおうではクリスマスに大量たいりょう菓子かしつく風習ふうしゅうがあることと[22]こうカロリーの食事しょくじらないとふゆさむさをしのげないためバターの消費しょうひ増加ぞうかする。これらのくにでは乳製品にゅうせいひん市場いちば特定とくてい企業きぎょうによる寡占かせん状態じょうたいであり、バターの輸入ゆにゅうにかかる関税かんぜいたかさもあって品薄しなうす状態じょうたい解消かいしょうされる目処めどだてたっていない[22]。バターを密輸みつゆしようとして拘束こうそくされるもの[21][22]

象徴しょうちょう[編集へんしゅう]

西洋せいようでは、生活せいかつ象徴しょうちょうとして「バター」という言葉ことばもちいられることがある。「大砲たいほうかバターか」という言葉ことば軍事ぐんじ大砲たいほう)か生活せいかつ(バター)のどちらを優先ゆうせんするか、という意味いみもちいられる。

バターは神聖しんせいな、魔術まじゅつてき食料しょくりょうなされていた。民話みんわあかずきんがお見舞みまいにバターのつぼっていくように、ブルターニュではバターに病気びょうきちからがあるとされ、患者かんじゃのベッドのかたわらにバターをいた。そして患者かんじゃくなるとバターもめる風習ふうしゅうがあった。『リグ・ヴェーダ』では火中かちゅうにバターをしんいのったとある。酸敗さんぱいしたヤクのバターからつくチベットバターちゃ神聖しんせいものとしてまれる[23]

また、脂肪しぼうぶんおおもの象徴しょうちょうともなっており、たとえば、ペカン脂肪しぼうぶんおおいナッツがれることから、「バターの」と比喩ひゆされる[24]ほかにも、アボカド果肉かにく脂肪しぼうぶんやく16 %もふくまれているのが特徴とくちょうだが、これほど果肉かにく脂肪しぼう豊富ほうふなことは、いわゆる「果物くだもの」の範疇はんちゅうはいるものとしてはめずらしい[25]。このために「バターフルーツ」とも「もりのバター」とも比喩ひゆされる。

日本にっぽんでは、「バター」が西洋せいようふう象徴しょうちょうとしてあつかわれ、西洋せいようもの西洋せいようかぶれの様式ようしき、こってりしていてくどいふうなもの、さらにてんじて派手はでいろ使づかいのデザインにたいして「バタ臭ばたくさ」と形容けいようすることがある[26]

健康けんこう[編集へんしゅう]

ハーバード大学だいがく医学部いがくぶによると、飽和ほうわ脂肪酸しぼうさんのう健康けんこうによくないので[27]、バターはあまりたいのうくないとされているが、認知にんちしょう予防よぼう地中ちちゅう海食かいしょく一種いっしゅであるMINDダイエットでは、バターは飲食いんしょくぶつ一部いちぶになっている[28]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ USDA National Nutrient Database
  2. ^ a b デジタル大辞泉だいじせん
  3. ^ 香料こうりょうジアセチルの安全あんぜんせいについて 日本にっぽん香料こうりょう工業こうぎょうかい 2007ねん9がつ3にち
  4. ^ バターとは|バター研究けんきゅうしつ 雪印ゆきじるしメグミルク
  5. ^ ちちのうまみのかたまり「バターラボ研究けんきゅうへん」|べよう!乳製品にゅうせいひんしょくる|明治めいじしょくいく 株式会社かぶしきがいしゃ 明治めいじ
  6. ^ ギリシアラテンこぼし: buturum
  7. ^ フジテレビトリビア普及ふきゅう委員いいんかい『トリビアのいずみ〜へぇのほん〜 5』講談社こうだんしゃ、2004ねん 
  8. ^ トゥーサン=サマ 1998, pp. 118–122.
  9. ^ Soyer, Alexis (1977) [1853]. The Pantropheon or a History of Food and its Preparation in Ancient Times. Wisbech, Cambs.: Paddington Press. p. 172. ISBN 0-448-22976-5.
  10. ^ 歴史れきしなぞさぐかいへん江戸えど食卓しょくたく』61ぺーじ河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ
  11. ^ しょくのフロンティア】食材しょくざい風味ふうみゆたかな「べるバター」安納あんのういも、ウニ…あざやか『日経にっけいMJ』2020ねん3がつ2にち(フードめん
  12. ^ えい: buttercream
  13. ^ 「バター‐クリーム」『大辞泉だいじせん小学館しょうがくかん
  14. ^ 「bútter・crèam」『ランダムハウス英語えいごだい辞典じてん
  15. ^ 「バタークリーム」『情報じょうほう知識ちしき事典じてんimidas集英社しゅうえいしゃ
  16. ^ 国王こくおう陛下へいか主催しゅさいのバターランプ点火てんかしきから小学生しょうがくせいのマーチまで―ブータンのひとびとも被災ひさいしゃ応援おうえん
  17. ^ USDA FAS『Dairy: World Markets and Trade』
  18. ^ 農水のうすい緊急きんきゅう輸入ゆにゅう発動はつどう小手先こてさき バター不足ふそく慢性まんせい”の深刻しんこく週刊しゅうかんダイヤモンド』(2014ねん11月4にち)2017ねん2がつ5にち閲覧えつらん
  19. ^ 「バター輸入ゆにゅう1まん3せんトンに 農水省のうすいしょう17年度ねんど計画けいかく国内こくない生産せいさん不足ふそく倍増ばいぞう方針ほうしんどうしんweb・北海道新聞ほっかいどうしんぶん(2017ねん1がつ27にち)2017ねん2がつ5にち閲覧えつらん
  20. ^ 下川しもかわ耿史 『環境かんきょう年表ねんぴょう 明治めいじ大正たいしょうへん(1868-1926)』p322 河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ 2003ねん11月30日刊にっかん 全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:20522067
  21. ^ a b c クリスマスがむかえられない!”. afpbb.com (2021ねん12月15にち). 2021ねん6がつ5にち閲覧えつらん
  22. ^ a b c d e ノルウェーのバター不足ふそく危機ききしんダイエットほう流行りゅうこう原因げんいん” (2011ねん12月17にち). 2021ねん6がつ5にち閲覧えつらん
  23. ^ トゥーサン=サマ 1998, p. 123.
  24. ^ 印南いなみ さとし 監修かんしゅう『Cook 料理りょうり全集ぜんしゅう別巻べっかん 材料ざいりょう事典じてん』p.141 千趣会せんじゅかい 1979ねん発行はっこう
  25. ^ 印南いなみ さとし 監修かんしゅう『Cook 料理りょうり全集ぜんしゅう別巻べっかん 材料ざいりょう事典じてん』p.143 千趣会せんじゅかい 1979ねん発行はっこう
  26. ^ "バタ臭ばたくさい". デジタル大辞泉だいじせん. コトバンクより2024ねん2がつ11にち閲覧えつらん
  27. ^ Fat that's bad for the heart, brain” (英語えいご). Harvard Health (2012ねん10がつ1にち). 2022ねん6がつ6にち閲覧えつらん
  28. ^ Harvard Health” (英語えいご). www.health.harvard.edu. 2022ねん6がつ6にち閲覧えつらん

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • マグロンヌ・トゥーサン=サマ ちょ玉村たまむらゆたかおとこ やく世界せかい食物しょくもつ百科ひゃっかはら書房しょぼう、1998ねんISBN 4562030534 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]