ヒト

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ヒト
生息せいそく年代ねんだい: 0.195–0 Ma
更新こうしん現在げんざい
保全ほぜんじょうきょう評価ひょうか
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類ぶんるい
ドメイン : かく生物せいぶつ Eukaryota
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
かい : 真正しんしょう後生ごしょう動物どうぶつかい Eumetazoa
階級かいきゅうなし : 左右さゆう相称そうしょう動物どうぶつ Bilateria
うえもん : 新口にのくち動物どうぶつじょうもん Deuterostomia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
もん : 脊椎動物せきついどうぶつもん Vertebrata
うえつな : 四肢しし動物どうぶつじょうつな Tetrapoda
つな : 哺乳ほにゅうつな Mammalia
下綱しもつな : しんじゅう下綱しもつな Eutheria
上目うわめ : おもかじ上目うわめ Euarchontoglires
大目おおめ : あるじじゅう大目おおめ Euarchonta
: 霊長れいちょう Primate
: ちょくはなざる Haplorrhini
下目しため : 真猿しんえんがた下目しため Simiiformes
小目こもく : せまはな小目こもく Catarrhini
うえ : ヒトうえ Hominoidea
: ヒト Hominidae
: ヒト Homininae
ぞく : ヒトぞく Hominini
ぞく : ヒトぞく Hominina
ぞく : ヒトぞく Homo
たね : ヒト H. sapiens
学名がくめい
Homo sapiens Linnaeus1758
亜種あしゅ

ヒトひとえい: human)とは、広義こうぎにはヒトぞくHominina)にぞくする動物どうぶつ総称そうしょうであり[1]狭義きょうぎには現生げんなまの(現在げんざい生息せいそくしている)人類じんるい学名がくめい : Homo sapiens)、ホモ・サピエンス・サピエンスホモサピエンスサピエンスHomo sapiens sapiens)を[2]人間にんげん(にんげん)ともいわれる。

「ヒト」はいわゆる「人間にんげん」の生物せいぶつがくうえ標準ひょうじゅん和名わみょうである。生物せいぶつがくじょうたねとしての存在そんざい場合ばあいには、片仮名かたかなもちいて、「ヒト」と表記ひょうきすることがおおい。

ほん記事きじでは、ヒトの生物せいぶつがくてき側面そくめんについてべる。現生げんなま人類じんるい狭義きょうぎのヒト)におもきをいて説明せつめいするが、その説明せつめいにあたって広義こうぎのヒトにも言及げんきゅうする。

ヒトの分布ぶんぷ

概説がいせつ[編集へんしゅう]

ヒトとは、いわゆる人間にんげんのことで、学名がくめいがホモ・サピエンスあるいはホモ・サピエンス・サピエンスとされている動物どうぶつ標準ひょうじゅん和名わみょうである。Homo sapiens は「知恵ちえのあるひと」という意味いみである。

古来こらいひと万物ばんぶつ霊長れいちょうであり[3]、そのためひと動物どうぶつ、さらにはすべての生物せいぶつから区別くべつされる」というかんがえは普通ふつうられるが、生物せいぶつ学的がくてきにはそのような判断はんだんはない。「ヒトの祖先そせんサルである」とわれることもあるが、生物せいぶつ学的がくてきには、ヒトはサルヒトヒトぞくぞくする、とかんがえられており、「サルからべつ生物せいぶつ進化しんかした」というせつ証明しょうめいする決定的けっていてき証拠しょうこはまだなく、依然いぜんとしてサルぞく一種いっしゅなされている。アフリカ類人猿るいじんえん一種いっしゅであるとされ、生物せいぶつがくてきると、ヒトにもっともちかいのはヒト以外いがい大型おおがた類人猿るいじんえんである[2]。ヒトとその大型おおがた類人猿るいじんえんヒトうえ構成こうせいしている[4][5]

では、生物せいぶつがくてき方法ほうほうだけでヒトとその類人猿るいじんえん区別くべつができるのかとうと、現生げんなまのヒトと類人猿るいじんえん形態けいたい学的がくてきには比較的ひかくてき簡単かんたん区別くべつがつくが、DNAの塩基えんき配列はいれつではきわめてており、また早期そうきさるじん化石かせき類人猿るいじんえんとヒトとのなかあいだてき形態けいたいをしているため、線引せんひき・区別くべつをするためのてんあきらかではない[2]結局けっきょくのところ、「ヒト」というのは、直立ちょくりつそく歩行ほこうおこなうこと、およびヒト特有とくゆう文化ぶんかっていることで、類人猿るいじんえん線引せんひき・区別くべつしているのである[2]。つまり、じつ生物せいぶつがくてき手法しゅほう視点してんだけでは不十分ふじゅうぶんで、結局けっきょく視点してん論点ろんてんぜつつ区別くべつおこなわれている。

分類ぶんるいがくじょう位置いちについてうと、現生げんなま人類じんるいホモ・サピエンス分類ぶんるいされるが[2]、ホモ・サピエンスには現生げんなま人類じんるい以外いがいにもきゅう人類じんるいふくまれる[2]現生げんなま人類じんるいはすべてこのたね(ヒト)に分類ぶんるいされている。

ヒトの身体しんたいてき特徴とくちょうのかなりの部分ぶぶんは、直立ちょくりつそく歩行ほこうおこなうことへの適応てきおう結果けっかしょうじた形質けいしつである[2]

直立ちょくりつそく歩行ほこうによって、ヒトは体躯たいくたいして際立きわだっておおきな頭部とうぶささえること可能かのうになった。結果けっか大脳だいのう発達はったつをもたらし、きわめてたか知能ちのうた。くわえて上肢じょうし自由じゆうになったことにより、道具どうぐ製作せいさく使用しようおこなうようになり、ぶり言語げんご発声はっせい発音はつおん言語げんご発達はったつき、文化ぶんか活動かつどう可能かのうとなった[2]

分布ぶんぷ南極大陸なんきょくたいりく北極圏ほっきょくけん一部いちぶ島嶼とうしょのぞ世界せかい陸地りくち全体ぜんたいおよび、もっともひろ分布ぶんぷする生物せいぶつしゅとなっている[2]

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

まず、哺乳類ほにゅうるい類人猿るいじんえんなどとの区別くべつ成立せいりつさせてべる。

直立ちょくりつそく歩行ほこう[編集へんしゅう]

現存げんそん生物せいぶつ唯一ゆいいつヒトのみが直立ちょくりつそく歩行ほこうおこなう。 そく歩行ほこうのみなら鳥類ちょうるいカンガルー一時いちじてきそく歩行ほこうであれば一部いちぶ哺乳類ほにゅうるいおこなえるが、あたまからあしまでまっすぐばした直立ちょくりつ姿勢しせいるのはヒトのみ。

コミュニケーション能力のうりょく[編集へんしゅう]

のう声帯せいたい発達はったつしており、(身振みぶだけでなく)音声おんせい音声おんせい言語げんご)・手話しゅわ文字もじ書記しょき言語げんご)によるコミュニケーションはかれる。

音声おんせいによる会話かいわ能力のうりょく獲得かくとくした年代ねんだいホモぞく発生はっせい以降いこうで、25まんねん以上いじょうまえとされている。この研究けんきゅう形質けいしつ人類じんるいがく言語げんごがく考古学こうこがくなどの学問がくもん関連かんれんする。ヒトには、言語げんご獲得かくとく能力のうりょく生得しょうとくてきそなわっているとかんがえられており、のう言語げんご損傷そんしょうたない人間にんげん幼児ようじ短期間たんきかん発話はつわ能力のうりょく獲得かくとくする。

一方いっぽう文字もじ発明はつめい紀元前きげんぜん3500ねんごろとされており、生物せいぶつがくじょう人類じんるいではごく最近さいきんである。しかも初等しょとう教育きょういく普及ふきゅうおおくの個体こたい識字しきじ能力のうりょくるようになったのはこの100-300ねん程度ていどであり、アイヌなど本来ほんらい文字もじ存在そんざいしなかった文化ぶんか文明ぶんめいもある。アメリカ大陸あめりかたいりくイロコイぞく現代げんだいまでいちまんねんにわたる口述こうじゅつ伝承でんしょうをしてきたともされる[6][ようページ番号ばんごう]。そのため文字もじ認識にんしき能力のうりょく個体こたいおおきく、発話はつわどう時期じき文字もじ理解りかい能力のうりょく個体こたいから、成人せいじん文字もじきに困難こんなんかかえるディスレクシアばれる個体こたいまでいる。

音声おんせいによる会話かいわ視覚しかくによる文字もじとも、時代じだいるごとに情報じょうほうりょうえ、表現ひょうげん多様たよう複雑ふくざつし、適応てきおうした個体こたい適応てきおうしていない個体こたいコミュニケーション能力のうりょくしょうじる。

(ヒト以外いがいの、とくサルのコミュニケーション能力のうりょくについては京都大学霊長類研究所きょうとだいがくれいちょうるいけんきゅうしょ[7]研究けんきゅうくわしい。)

総体そうたい[編集へんしゅう]

こまかくは後述こうじゅつ参照さんしょうすべきだが、全体ぜんたいとして「大型おおがた」「れる」「ちゅう速度そくど長距離ちょうきょり移動いどうする」「調理ちょうりされたしつい、多様たよう食物しょくもつべる」「投擲とうてきなど自分じぶんからだからはなれたものを利用りようする」ことが動物どうぶつとしてのヒトの特徴とくちょう生態せいたいてき地位ちいといえる。

外観がいかんてき特徴とくちょう[編集へんしゅう]

ヒト

サルとしてはきわめて大型おおがたたね。これよりおおきいものにゴリラオランウータンがあるが、いずれもサルとしてはぐんいておおきい。なお、動物どうぶつ一般いっぱんには頭部とうぶ先端せんたんからしり、またはまでのながさを測定そくていするが、ヒトでは該当がいとうする部位ぶい退化たいかしており標準ひょうじゅんおおきさとして直立ちょくりつたかさ(身長しんちょう)を測定そくていすることがおおいので、たねとの直接ちょくせつ比較ひかくむずかしい。

体長たいちょうゆう成体せいたいでおおよそ160〜180cm、体重たいじゅうは50〜90kg程度ていどめすゆうよりややちいさく、やく10%げん程度ていどてよい。基本きほんてきからだ仕組しくみについて、サル共通きょうつう特徴とくちょう類人猿るいじんえん共通きょうつう特徴とくちょう以外いがいに、ヒトに独自どくじ特徴とくちょうとしては、以下いかてんげられる。

  • 完全かんぜん直立ちょくりつ姿勢しせいれる。あたま両足りょうあしうらあいだ真上まうえ位置いちにある。
  • 乳幼児にゅうようじのぞいて、ほとんどの場合ばあいそく歩行ほこうおこなう。
  • 前足まえあし背中せなかめん位置いちちかい。
  • うしあししゅでいう前足まえあし)よりもながく、かかとがある。
  • からだ表面ひょうめんのほとんどのうすく、ほとんどの皮膚ひふ露出ろしゅつする。

以下いかかく部分ぶぶんについて説明せつめいする。

頭部とうぶ[編集へんしゅう]

頭頂とうちょう非常ひじょうおおきくまるい。これはのうのうち大脳だいのう発達はったつしているためである。のうには、大脳だいのうあいだのうちゅうのうこうのう小脳しょうのう延髄えんずいがある。顔面がんめんはほぼ垂直すいちょく、あごの先端せんたんがややとがる(おとがい)。顔面がんめんには、2つのみみひとつのはなくちがある。顔面がんめんうえからうしろにかけてもう頭髪とうはつ)が密生みっせいする。頭髪とうはつおおわれる部分ぶぶん以外いがいはだ露出ろしゅつすることがおおいが、ゆう顔面がんめん下部かぶ密生みっせいすることがある(ひげ)。うえ、まぶたのややじょう一対いっつい横長よこなが隆起りゅうきがあり、ここに密生みっせいする(まゆ)。はなまえ突出とっしゅつし、鼻孔びこう下向したむきにひらく。くち周囲しゅうい粘膜ねんまく一部いちぶつね反転はんてんしてそといている(くちびる)。

どう[編集へんしゅう]

直立ちょくりつ姿勢しせいであることによって、背面はいめんはやや中央ちゅうおうがくぼんだややゆみなりな平面へいめんし、むねはらがややまえしたかたちになる。また、両側りょうがわ肩胛骨けんこうこつがほぼどういち平面へいめんならび、たいらな背中せなか形成けいせいする。むねには気管支きかんしはい心臓しんぞうがある。心臓しんぞうひだりにあることがおおく、みぎにある場合ばあい内臓ないぞうぎゃくという。心臓しんぞうからは動脈どうみゃく静脈じょうみゃく血液けつえきながれている。はらには、ちょう大腸だいちょう小腸しょうちょう十二指腸じゅうにしちょう直腸ちょくちょう盲腸もうちょう)、肛門こうもん肝臓かんぞう膵臓すいぞう脾臓ひぞう膀胱ぼうこう尿道にょうどうなどの臓器ぞうきがある。 どうささえる脊椎せきつい骨盤こつばんによってめられる。そのため、霊長れいちょうとはちが直立ちょくりつ姿勢しせいによって発生はっせいする上部じょうぶ加重かじゅう軽減けいげんするためにややゆみなりにまれている。ただし、すべての加重かじゅう軽減けいげんできるものではなく、そのことがヒト独特どくとく脊椎せきついおも腰椎ようつい)に加重かじゅうストレスがかかった損傷そんしょう状態じょうたいである腰痛ようつうこす要因よういんになる。

どう下部かぶには生殖せいしょくがある。ゆう精巣せいそう睾丸こうがん陰茎いんけいなど。めす卵巣らんそう子宮しきゅうちつなど。めすではむね一対いっつい乳房ちぶさ発達はったつする。また、腰骨こしぼね幅広はばひろくなっており、こし後部こうぶおおくの筋肉きんにく脂肪しぼうがつき、まる発達はったつする(しり)。しり隆起りゅうきしゅとしてそく歩行ほこうによって必要ひつようとされたために発達はったつしたものとかんがえられる。しかしめすしり脂肪しぼう蓄積ちくせきおおくてより発達はったつし、乳房ちぶさ発達はったつとも性徴せいちょうひとつとされる。とくに、めすにおける乳房ちぶさ性的せいてき成熟せいじゅくはじまるとすぐに発達はったつはじまり、妊娠にんしんによってさらに発達はったつするとはいえ、妊娠にんしん保育ほいく期間きかんにもその隆起りゅうき維持いじされるてんで、ヒトに特異とくいなものである。これには、性的せいてきアピールの意味いみがあるとされるが、その進化しんか過程かてい理由りゆうについては様々さまざま議論ぎろんがある。乳房ちぶさこう参照さんしょう

前足まえあし[編集へんしゅう]

前足まえあしは「うで」、とくしゃくこつ・橈骨よりさき部分ぶぶんは「」とばれ、歩行ほこうには使つかわれない。あえて四足しそく歩行ほこうおこな場合ばあいにはひらがわにつけあるき、チンパンジーなどにられるようなナックル・ウォーク一般いっぱんてきでない。

かた関節かんせつ自由じゆうおおきく、うでっすぐにうえばし、あるいは左右さゆうひろげてややうしろにげることが可能かのうである。親指おやゆび完全かんぜんひらかいう。指先ゆびさき器用きようであり、発達はったつした大脳だいのうはたらきもありささやかな操作そうさ可能かのう

後足あとあし[編集へんしゅう]

後足あとあしは「あし」、とく地面じめんせっする部分ぶぶんたんに「あし」ともばれ、歩行ほこうのためにとくしている。ひざ完全かんぜんばした姿勢しせいれる。ひざ四足しそく歩行ほこうにここを接地せっちさせるので肥厚ひこうしやすい。かかと爪先つまさきがアーチを形成けいせいし、あいだ部分ぶぶん土踏つちふまず)がややく。これによって接地せっち衝撃しょうげき吸収きゅうしゅうする。まれに土踏つちふまずのほとんどない形状けいじょう(いわゆる「扁平足へんぺいそく」)の個体こたいもある。

体毛たいもうについて[編集へんしゅう]

ヒトは往々おうおうにして「はだかのサル」といわれる。実際じっさいにはであるわけではなく、ひらあしうらなどをのぞけば、ほとんどはおおわれている。しかし、そのだい部分ぶぶんみじかく、ほそくて、直接ちょくせつ皮膚ひふることができる。このような皮膚ひふ状態じょうたいは、哺乳類ほにゅうるいでは水中すいちゅう生活せいかつのものや、一部いちぶ穴居けっきょせいのものにられる。ヒトの生活せいかつはいずれにもてはまらないので、そのような進化しんかきた原因げんいんについては様々さまざませつがあるが、定説ていせつはない。代表だいひょうてきなのは以下いかのようなせつである。

  • 外部がいぶ寄生虫きせいちゅうがとりつきにくくする、あるいはそれらをりやすくするための適応てきおう
  • からだひょう露出ろしゅつすることで、放熱ほうねつ効率こうりつげて、持久じきゅうりょくげるための適応てきおう
  • ようがた成熟せいじゅくネオテニー)の結果けっか
  • 性的せいてき接触せっしょく効果こうかげるための適応てきおう
  • 一時期いちじき水中すいちゅう生活せいかつおくったなごり。(みずからない頭髪とうはつだけがのこったというせつアクアせつ参照さんしょう。)

全身ぜんしんはだかちかいが、とくかぎられた部分ぶぶんだけにしょうじる。それには生涯しょうがい維持いじされるものと、せい成熟せいじゅくにつれて発生はっせいするものがある。おおよそのパターンはあるが、実際じっさい様子ようすには雌雄しゆう人種じんしゅ、および個体こたいおおきい。

密生みっせいする部位ぶいは、すうしょかぎられる。それらは、以下いかのようである。                             

  • 頭部とうぶうえからうしろにかけて(頭髪とうはつ)・うえ横長よこなが部位ぶいまゆ)・まぶたえん睫毛まつげ)・鼻孔びこううち鼻毛はなげ):この部分ぶぶんは、ごくおさなころからく、成人せいじんまでそれを維持いじする。とく頭髪とうはつ生涯しょうがいつづけ、はなっておくとすうメートルにたっするが、ほとんどの個体こたいみずから(あるいは個体こたい依頼いらいして)道具どうぐもちいて適度てきどながさにととのえている。老化ろうかすすむにつれて頭髪とうはつうすくなる場合ばあいがあり、それはゆうとくいちじるしい(ハゲ)が、個体こたいおおきい[ちゅう 1]
  • わきした脇毛わきげ)・股間こかん性器せいき上部じょうぶ周辺しゅうへんから肛門こうもん周辺しゅうへんにかけて(陰毛いんもう):いずれもだい性徴せいちょう発達はったつ並行へいこう発達はったつする。
  • かおはなからしたみみからあごにかけて(ひげ)・むね中心ちゅうしんせん周辺しゅうへん胸毛むなげ)・あしひざからしたすね):これも性徴せいちょう発達はったつにしたがって出現しゅつげんするが、ゆう顕著けんちょで、めすではあまり発達はったつしない。ゆうでもこれらのさには個体こたいがあり、ほとんどえないものもいる。

なお、哺乳類ほにゅうるい顔面がんめんには上述じょうじゅつ体毛たいもうとはべつに、感覚かんかく器官きかんとしてのほら(どうもう)」がえているが、ヒトの顔面がんめんからはほら完全かんぜん消失しょうしつしている。

内部ないぶ形態けいたい[編集へんしゅう]

  • 汗腺かんせん - あせ分泌ぶんぴつするせんであり、口唇こうしんかめあたまのぞ全身ぜんしん分布ぶんぷする。ヒトの汗腺かんせんにはエクリンせんアポクリンせんの2しゅ存在そんざいする。
  • のう - 大脳だいのうきわめてよく発達はったつし、からだ全体ぜんたいとの重量じゅうりょうでは哺乳類ほにゅうるいちゅう最大さいだいである。
  • 肝臓かんぞう - 生命せいめい機能きのう必要ひつよう物質ぶっしつ一部いちぶ合成ごうせいして身体しんたいほか組織そしきおくり、組織そしきより老廃ろうはいぶつ有害ゆうがい物質ぶっしつって無害むがいはか巨大きょだい代謝たいしゃ組織そしきである。また、胆汁たんじゅうさんせい分泌ぶんぴつするそと分泌ぶんぴつせんでもあり、体温たいおん維持いじ必要ひつようねつさんせいする主要しゅよう臓器ぞうきでもある。
  • 心臓しんぞう - 機能きのうてき解剖かいぼうがくてき左右さゆうけられる。みぎしんけいはいのぞ身体しんたい各部かくぶ血管けっかんけいからだ循環じゅんかん)からうえしただい静脈じょうみゃくとおして血液けつえき静脈じょうみゃく)をり、はい動脈どうみゃくとおしてはい血管けっかんけいはい循環じゅんかん)に血液けつえきおくす。はいでガス交換こうかんえた血液けつえき動脈血どうみゃくけつ)ははい静脈じょうみゃくとおってひだりしんけい流入りゅうにゅうし、ひだり心室しんしつ強大きょうだいはく出力しゅつりょくによってからだ循環じゅんかんへとふたたおくされる。
  • はい - はなはな閉時にはくちとおして吸入きゅうにゅうされた空気くうきはい循環じゅんかんおくまれた静脈じょうみゃくとのあいだおも酸素さんそ二酸化炭素にさんかたんそ交換こうかんおこな臓器ぞうきである。空気くうき血液けつえきはい胞壁と血管けっかん内皮ないひかいして隣接りんせつし、かく気体きたいのガスぶんあつ勾配こうばいしたがってその移動いどうゆるす。すなわち、酸素さんそはよりぶんあつたか空気くうきからぶんあつひく血液けつえきかって移動いどうし、二酸化炭素にさんかたんそはよりぶんあつたか血液けつえきからぶんあつひく空気くうきへと移動いどうする。この結果けっか動脈血どうみゃくけつ酸素さんそみ、二酸化炭素にさんかたんそすくない血液けつえきとなる。また、はい血管けっかん膨大ぼうだい毛細血管もうさいけっかんゆかゆうしており、静脈じょうみゃくはすべてこれをとおってからだ循環じゅんかんへとはいるため、静脈じょうみゃくちゅう一部いちぶ物質ぶっしつ代謝たいしゃ物理ぶつりてき濾過ろか役割やくわりたす。
  • 膵臓すいぞう - 膵臓すいぞうそと分泌ぶんぴつせん内分泌腺ないぶんぴつせんよりなる。そと分泌ぶんぴつせんではおおくの消化しょうか酵素こうそ(トリプシン、キモトリプシン、リパーゼ、アミラーゼとう)がさんされ、膵管の分泌ぶんぴつするアルカリ性あるかりせい液体えきたいこんじて膵液をつくる。消化しょうか酵素こうそおおくは活性かっせいたない前駆ぜんくたいかたちで膵液にふくまれ、これがペプシンや十二指腸じゅうにしちょう上皮じょうひすりえん存在そんざいするペプチダーゼによって部分ぶぶん分解ぶんかいされること活性かっせいのある酵素こうそしょうじる。内分泌腺ないぶんぴつせんはランゲルハンスとうばれ、インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、VIPなどをさんしている。
  • 腎臓じんぞう - 血液けつえき濾過ろかし、血球けっきゅう大分おおいたりょう物質ぶっしつのぞいた濾液(はら尿にょう)をさんし、これから必要ひつよう物質ぶっしつさい吸収きゅうしゅうして尿にょうさんせいする臓器ぞうきである。さい吸収きゅうしゅうされる物質ぶっしつおおくあるが、代表だいひょうてきなものとしてナトリウム、カリウムとう電解でんかいしつ、グルコースやアミノ酸あみのさんとう栄養素えいようそしょう分子ぶんしタンパクとうがある。また、水分すいぶんもほとんどがさい吸収きゅうしゅうされる。このため、いちにちさんされるげん尿にょうは200リットルと膨大ぼうだいりょうにもかかわらず、尿にょうりょうは1 - 2リットル程度ていどとなる。このよう尿にょうさんせい過程かていで、身体しんたい不要ふよう老廃ろうはいぶつさい吸収きゅうしゅう効率こうりつわるいため、尿にょうちゅう濃縮のうしゅくされることになる。電解でんかいしつ水分すいぶん自由じゆうすい)のさい吸収きゅうしゅうりつ調節ちょうせつすることで、腎臓じんぞう身体しんたい体液たいえきりょう調節ちょうせつするきわめて重要じゅうよう組織そしきである。また、腎臓じんぞう赤血球せっけっきゅうさんせい刺激しげきするエリスロポエチンや、体液たいえきりょう血圧けつあつ増大ぞうだい上昇じょうしょうさせるレニン-アンギオテンシン-アルドステロンけい駆動くどうするレニンを分泌ぶんぴつする内分泌ないぶんぴつ臓器ぞうきでもある。
  • (食道しょくどう含) - 食物しょくもつ胃液いえきこんじ、一時いちじてき保持ほじする臓器ぞうきである。胃液いえき消化しょうか酵素こうそであるペプシンをふくむが、胃液いえき自体じたい消化しょうか機能きのう必須ひっすではない。むしろ、食事しょくじいちにとられた食物しょくもつ保存ほぞんしておき、徐々じょじょ十二指腸じゅうにしちょうおく機能きのうしゅ機能きのうである。このため、保持ほじしている食物しょくもつちゅう細菌さいきん増殖ぞうしょくしないように、つよ酸性さんせい胃液いえきこんじて保存ほぞんする必要ひつようがあるのである。つよ酸性さんせいである胃酸いさん粘膜ねんまく障害しょうがいされないように、上皮じょうひ細胞さいぼう粘液ねんえきさんして防御ぼうぎょしている。このよう防御ぼうぎょ因子いんし阻害そがいするものがあると、粘膜ねんまく障害しょうがいしょうじて胃潰瘍いかいようができる可能かのうせいがある。防御ぼうぎょ因子いんし阻害そがい要因よういんとしてはH.pyloriが最大さいだい要因よういんであり、その喫煙きつえん、ストレス、NSAIDとう薬剤やくざい粘膜ねんまくりゅう減少げんしょうとうがあげられる。
  • 小腸しょうちょう - 食物しょくもつ吸収きゅうしゅう可能かのうかたちまで分解ぶんかいし、それを吸収きゅうしゅうする臓器ぞうきである。まず食物しょくもつは膵液とざり、大雑把おおざっぱ分解ぶんかいされる。これがさらに小腸しょうちょう上皮じょうひ細胞さいぼうすりえんにある分解ぶんかい酵素こうそ各種かくしゅペプチダーゼやたんとう分解ぶんかい酵素こうそとう)でアミノ酸あみのさんたんとう状態じょうたいまで分解ぶんかいされ、上皮じょうひ細胞さいぼうない吸収きゅうしゅうされる。すりえん存在そんざいする酵素こうそ吸収きゅうしゅう可能かのうかたちにまで分解ぶんかいする意義いぎは、すりえんきわめてこまかなほろ絨毛じゅうもうからなり、この隙間すきまには細菌さいきん侵入しんにゅうできないため、ここで最終さいしゅうてき消化しょうかおこなわれれば細菌さいきんとの栄養素えいようそ競合きょうごうすくなくなることにあるとかんがえられている。
  • 大腸だいちょう - 大腸だいちょうおおきく結腸けっちょう直腸ちょくちょうけられる。結腸けっちょう栄養素えいようそ吸収きゅうしゅうされたのちざん渣から水分すいぶん電解でんかいしつ吸収きゅうしゅうし、便びんつく臓器ぞうきである。直腸ちょくちょう便びん排便はいべんまで保持ほじする臓器ぞうきである。消化しょうかかんには食物しょくもつ飲料いんりょうほか胃液いえきや膵液、ちょうえきなど、いちにち平均へいきんして10リットルちか水分すいぶん流入りゅうにゅうする。そのうち、やく1.5リットルが小腸しょうちょうにおいて吸収きゅうしゅうされ、のこりのほとんどを結腸けっちょう吸収きゅうしゅうする。便びんちゅう排泄はいせつされる水分すいぶんはわずか200ミリリットル程度ていどである。結腸けっちょう濃度のうど勾配こうばいさからって吸収きゅうしゅうできるのは電解でんかいしつしかない。水分すいぶん吸収きゅうしゅうされた電解でんかいしつかれて受動じゅどうてき吸収きゅうしゅうされるにすぎない。したがって、結腸けっちょう基本きほんてきには自由じゆうすい吸収きゅうしゅうする能力のうりょくたない。
  • 膀胱ぼうこう - 尿にょう排尿はいにょうまで保持ほじする臓器ぞうきである。陸上りくじょう生活せいかつをする哺乳類ほにゅうるいにおいては、尿にょう便びん魚類ぎょるいのごとくながしにするのははなはだ生存せいぞん不利ふりである。これは、尿にょう便びんながしにすれば、それをたどって捕食ほしょくしゃ容易ようい発見はっけんされてしまうためである。したがって、哺乳類ほにゅうるいでは便びん保持ほじする直腸ちょくちょう尿にょう保持ほじする膀胱ぼうこう発達はったつしたとかんがえられている。
  • 胆嚢たんのう - 胆嚢たんのう肝臓かんぞうさんされた胆汁たんじゅう保持ほじし、濃縮のうしゅくし、必要ひつようとき排出はいしゅつする臓器ぞうきである。胆汁たんじゅうかん細胞さいぼうさんされ、ほそきもかんきもないきもかん左右さゆうきもかんそうきもかんへとながれるが、そうきもかんから分岐ぶんきする胆嚢たんのうかんとおって胆嚢たんのう流入りゅうにゅうする。ここで水分すいぶん吸収きゅうしゅうなどがおこなわれて濃縮のうしゅくされ、保持ほじされる。小腸しょうちょう上皮じょうひから分泌ぶんぴつされるコレシストキニンなどの刺激しげきがあると胆嚢たんのう収縮しゅうしゅくして濃縮のうしゅくされた胆汁たんじゅう排出はいしゅつされる。これは胆嚢たんのうかんからそうきもかんとおり、膵管と合流ごうりゅうしたそうきもかん、そしてファーター乳頭にゅうとう十二指腸じゅうにしちょう流入りゅうにゅうする。
  • 副腎ふくじん - 副腎ふくじん皮質ひしつ髄質ずいしつからなり、皮質ひしつおもさん種類しゅるいのステロイドホルモンをさんし、髄質ずいしつはカテコラミンをさんせいする内分泌ないぶんぴつ臓器ぞうきである。皮質ひしつはさらに球状きゅうじょうそうたばじょうそう網状もうじょうそうよりなり、それぞれアルドステロン(こうしつコルチコイド)、コルチゾール(とうしつコルチコイド)、DHEA(男性だんせいホルモン前駆ぜんくたい)がしゅ産物さんぶつである。副腎ふくじん皮質ひしつ機能きのう不全ふぜんつながりうるきわめて重要じゅうよう疾患しっかんであり、これはすなわ副腎ふくじん皮質ひしつさんせいするホルモンの重要じゅうようせいしめすものでもある。副腎ふくじん髄質ずいしつはカテコラミン、とくにアドレナリンをさんせいする臓器ぞうきであり、交感神経こうかんしんけいけい共同きょうどうして「逃走とうそう闘争とうそう」の反応はんのうこす。
  • 脾臓ひぞう - 機能きのうてきには巨大きょだいリンパ腺りんぱせんかんがえてよい。ただし、リンパ腺りんぱせんがリンパけいぞくするのにたいし、脾臓ひぞう血管けっかんけいつながる。脾臓ひぞうではふる赤血球せっけっきゅう寿命じゅみょうはおよそ120にちである)がマクロファージに貪食どんしょくされて処理しょりされ、血液けつえきちゅう病原びょうげんたいなども濾過ろか貪食どんしょくされる。また、これにつづ適応てきおう免疫めんえき展開てんかいともなる。したがって、脾臓ひぞうにはきわめておおくのリンパ臚胞が存在そんざいする。脾臓ひぞう哺乳類ほにゅうるいでは血液けつえき保存ほぞんし、運動うんどう収縮しゅうしゅくすること血液けつえきりょう増加ぞうかさせる機能きのうがあるとされるが、ヒトにおいてはこのよう機能きのうはほとんどないとってよい。脾臓ひぞう摘出てきしゅつ生命せいめい維持いじという観点かんてんではおおきな影響えいきょうはないが、幼少ようしょうに脾摘をけると細菌さいきん感染かんせんしょうにかかりやすくなるなど、免疫めんえきのう低下ていかする可能かのうせいがある。

身体しんたい能力のうりょく[編集へんしゅう]

ヒトの後肢あとあし[編集へんしゅう]

ヒトはだい部分ぶぶん哺乳類ほにゅうるいとはことなり、後肢あとあしだけで直立ちょくりつ姿勢しせい普通ふつう姿すがたで、移動いどうしゅとしてこの体勢たいせい両足りょうあし交互こうごうごかす、いわゆる直立ちょくりつそく歩行ほこうおこなう。ゆっくり移動いどうするのをあるはや移動いどうするのをはしという。長距離ちょうきょり移動いどうかんしては能力のうりょくたかく、訓練くんれんすれば数時間すうじかんはしつづけることができる。

ヒトの前肢ぜんし[編集へんしゅう]

前肢ぜんししゅとしてものをつかむ、く、すなど操作そうさするのに使つかわれる。そのため、前肢ぜんし基部きぶ関節かんせつ自由じゆうたかい。通常つうじょう赤子あかご時期じきのぞいて、前足まえあし移動いどう使つかうことはない。類人猿るいじんえんのようにまえかがみになっても、両手りょうて地面じめんにつくことはまずない。ただし、きゅう傾斜地けいしゃちがけのぼさいには両手りょうて使つかうこともあるが、地面じめんさえてからだささえるよりはなにかをつかんでからだげるのが普通ふつうである。

ヒトの特筆とくひつすべき能力のうりょくとして、複雑ふくざつゆび運動うんどううで運動うんどうによる、道具どうぐ加工かこう武器ぶき使用しよう投擲とうてきがある。ものをつかんでげる能力のうりょくは、一部いちぶのサルのみがっているが、なかでもヒトは、個体こたいにもよるが速度そくどは150km/h、距離きょりすうじゅうmをゆうえる投擲とうてき能力のうりょくゆうしている。こうした能力のうりょく道具どうぐ武具ぶぐ進歩しんぽとも相乗そうじょう効果こうかてき向上こうじょうし、生活せいかつ必要ひつよう技能ぎのう狩猟しゅりょう)のほか、個体こたいたい個体こたい社会しゃかいたい社会しゃかい衝突しょうとつ喧嘩けんか縄張なわばあらそい・戦争せんそう)、そして娯楽ごらく文化ぶんかスポーツ)などを発達はったつ発展はってんさせる基礎きそ一端いったんにもなっている。

ヒトの体温たいおん調節ちょうせつ能力のうりょく[編集へんしゅう]

とく高温こうおんへの適応てきおう卓越たくえつしている。エクリンせん全身ぜんしんゆうし、水分すいぶん電解でんかいしつ充分じゅうぶん摂取せっしゅすれば高温こうおん環境かんきょうでもはげしい運動うんどう可能かのうである。エクリンせんによる発汗はっかん能力のうりょく発達はったつさせ、炎天下えんてんか長距離ちょうきょり疾走しっそうできるのは哺乳ほにゅう動物どうぶつなかではヒトのほかにはウマなど一部いちぶたねかぎられる。もっとも高温こうおんへの対応たいおう発汗はっかん機能きのうたよったことで、高温こうおんかつ多湿たしつにはたいせいよわい。

皮下脂肪ひかしぼう発達はったつしており低温ていおん環境かんきょうにも一定いってい適応てきおうせいゆうしているが、ヒトは哺乳ほにゅう動物どうぶつのように体毛たいもうでの体温たいおん保持ほじはできず、低温ていおんには衣服いふく対応たいおうしている部分ぶぶんおおきい。

ヒトの消化しょうか吸収きゅうしゅう能力のうりょく[編集へんしゅう]

消化しょうかかんみじかく、やあごがよわいなど消化しょうか吸収きゅうしゅう能力のうりょくひくい。動物どうぶつでしばしばみられるくそしょく通常つうじょうおこなわなず、それをおこな個体こたいはむしろ異常いじょう性的せいてき嗜好しこうっているとなされる場合ばあいがある。一般いっぱん食物しょくもつは、たとえばおな重量じゅうりょうにく・イモでも加熱かねつ調理ちょうりによって分子ぶんし結合けつごう変化へんかするため短時間たんじかん消化しょうか吸収きゅうしゅうでき、摂取せっしゅできるカロリーがえる。ヒトはそれをおこなわなければ生存せいぞんすら困難こんなんである反面はんめん消化しょうか吸収きゅうしゅう運動うんどう能力のうりょく低下ていかする時間じかんみじかい。

また、ビタミンC体内たいない合成ごうせいできない。かなりおおくの塩分えんぶん処理しょりできるが、海水かいすいでは生活せいかつできない。

ヒトのおよ[編集へんしゅう]

動物どうぶつはたいていまれつきおよげるが[よう出典しゅってん]、ヒト・ゴリラなどをふくむごく一部いちぶ霊長れいちょうるいだけが例外れいがいてきに、学習がくしゅうしないかぎおよげない。しかし訓練くんれんすれば20-30mの水中すいちゅうくぐことも可能かのうであり、200mまでもぐった記録きろくもある[8]

生活せいかつ[編集へんしゅう]

おおくの乳類にゅうるいおなじく有性ゆうせい生殖せいしょく胎生たいせいである。妊娠にんしん期間きかんやく266にちやく2 - 4kg前後ぜんこうまれる。

新生児しんせいじはサルとしてはきわめて無力むりょく状態じょうたいである。一般いっぱんのサルるいは、まれてすぐに母親ははおやからだにしがみつく能力のうりょくがあるが、ヒトの場合ばあいもよくえず、あたまげる(くびがすわる)ことすらできない状態じょうたいである。これは直立ちょくりつ歩行ほこうにより骨盤こつばん縮小しゅくしょうしたために、より未熟みじゅく状態じょうたい出産しゅっさんせざるをなくなったためとかんがえられている。しかしながら、出産しゅっさん直後ちょくご新生児しんせいじ自分じぶんからだささえるだけの握力あくりょくがあることがられ(数日すうじつえる)、また、体毛たいもう出産しゅっさんまではく、その一旦いったんけるなど、「はだか無力むりょく」なヒトの乳児にゅうじ性質せいしつてき獲得かくとくされたとするせつもある。

やく2ねんで、次第しだいい、あるき、言葉ことばあやつれるようになる。栄養えいよう程度ていどにもよるが、10ねんから20ねんまでのあいだ思春期ししゅんき)に性的せいてき成熟せいじゅく完了かんりょうする。からだ成長せいちょうはその前後ぜんご完成かんせいする。

だいたい12さい - 15さいのころに生殖せいしょく能力のうりょくるようになる。11さい未満みまん生殖せいしょく能力のうりょく個体こたい存在そんざいするが、めす場合ばあいはまだ身体しんたい成長せいちょう途中とちゅうであるために、妊娠にんしんにはおおきな危険きけんともなう。個体こたい成育せいいくする文化ぶんかによるが、雌雄しゆうどもに15さいぎたあたりから生殖せいしょくたい活発かっぱつになり、40さいくらいまではさかんな時期じきつづく。ゆう場合ばあい、その活動かつどう次第しだい低下ていかしていき老齢ろうれいたっしても生殖せいしょく能力のうりょくつものから50だい程度ていどうしなうものがいるなど個体こたいがかなりおおきい。それにたいしてめすでは通常つうじょう50 - 55さいくらいに閉経へいけいがあり、それを生殖せいしょく能力のうりょくうしなう。

老化ろうかすすむと骨格こっかく収縮しゅうしゅく筋力きんりょく低下ていか背骨せぼねぜんこごめ頭髪とうはつ代謝たいしゃ低下ていか一般いっぱんう「白髪はくはつ」や「禿かぶろげ」)などの変化へんかしょうじるが、これらには個体こたいがある。

多産たさん[編集へんしゅう]

サルなかもっと多産たさんである[よう出典しゅってん]

生物せいぶつがくじょういち個体こたいめす生涯しょうがいかず最大さいだいで15にん前後ぜんこうであるが、双子ふたごなどの胎児たいじおおい(ヒト以外いがい霊長れいちょうるいでは双子ふたご比較的ひかくてきめずらしい)。

現在げんざいでは経済けいざいてきめぐまれた社会しゃかいほど少子しょうしする傾向けいこうにあり、発展はってん途上とじょうこく戦時せんじでは多子おいご傾向けいこうつよくなる[よう出典しゅってん]工業こうぎょう以前いぜん社会しゃかいでは多産たさんであり、母子ぼしともに死亡しぼうリスクがたかかったが、医療いりょう発展はってん農業のうぎょう技術ぎじゅつ進歩しんぽ公衆こうしゅう衛生えいせい普及ふきゅうなどがおおきく影響えいきょうし、19世紀せいきすえ以降いこう、ヒトの個体こたいすういちじるしく増加ぞうかした。( → 詳細しょうさいは「人口じんこう爆発ばくはつ」を参照さんしょう

寿命じゅみょう[編集へんしゅう]

ヒトの平均へいきん寿命じゅみょう
50さい未満みまん
50さい以上いじょう
60さい以上いじょう
70さい以上いじょう
75さい以上いじょう
80さい以上いじょう

理想りそうてき環境かんきょう長生ながいきすることにてきしたヒトが、各種かくしゅ寿命じゅみょうちぢめる要因よういんのない状態じょうたい)でのヒトの最大さいだい寿命じゅみょうは120さいすこえる程度ていど想像そうぞうされる(もっとながきた個体こたい寿命じゅみょうが122さいであったことが確認かくにんされている)。だが実際じっさいには様々さまざま要因よういんにより寿命じゅみょうはそれよりもみじかくなる。めすほうが5ねんから10ねん程度ていど平均へいきん寿命じゅみょうながくなるようである。かつてヒトの平均へいきん寿命じゅみょうははるかにみじかく、35 - 50ねん程度ていどだった。現在げんざいでも、栄養えいよう条件じょうけん劣悪れつあく環境かんきょうおも後発こうはつ発展はってん途上とじょうこくおよ未開みかい社会しゃかい)では、35 - 50ねん程度ていどであることがおおい。

また生殖せいしょく可能かのう年齢ねんれいぎたのち生理せいりてき寿命じゅみょう非常ひじょうながい。2013ねん時点じてん平均へいきん寿命じゅみょうもっとながくにである日本にっぽんでは、女性じょせい平均へいきん寿命じゅみょうが86.61さい男性だんせい平均へいきん寿命じゅみょうが80.21さいとなっている[9]みぎにあるように地域ちいきによって平均へいきん寿命じゅみょうおおきくことなるのは乳児にゅうじ死亡しぼうりつちがいがおおきな原因げんいんである( → 詳細しょうさいは「寿命じゅみょう人間にんげん場合ばあい」を参照さんしょう)。

生殖せいしょく可能かのう以降いこう寿命じゅみょうながいことの理由りゆうについては、いくつかのせつがある。たとえば、「お祖母ばあさんのおかげ」だというせつでは、母親ははおや自分じぶん経験けいけんもとづいてむすめ子育こそだての手伝てつだいをおこなうことが子育こそだての成功せいこうりつおおきくげるためであろうとする( → 詳細しょうさいは「おばあさん仮説かせつ」を参照さんしょう)。

習性しゅうせい[編集へんしゅう]

ヒトの習性しゅうせいは、高度こうど発達はったつした知能ちのう集団しゅうだんない情報じょうほう伝達でんたつ発達はったつによって、それ以外いがいのすべての動物どうぶつとは非常ひじょうことなった様相ようそうせる[よう出典しゅってん]

文化ぶんかとの関連かんれん[編集へんしゅう]

一般いっぱん動物どうぶつ行動こうどう習性しゅうせい本能ほんのう行動こうどう学習がくしゅう行動こうどう知能ちのう行動こうどうの3つにけられる。本能ほんのう行動こうどう遺伝子いでんしレベルで確定かくていされ、生得しょうとくてきつけいているもので、昆虫こんちゅうなどによく発達はったつしている。学習がくしゅう行動こうどうは、それぞれの個体こたい経験けいけんによって後天的こうてんてきけるものである。知能ちのう行動こうどうは、これにるが、そのような学習がくしゅう基礎きそに、はじめての状況じょうきょうで、推測すいそくなどの判断はんだんをもとにおこなわれるものである。ひとにおいては、本能ほんのう行動こうどうはほとんどられず、学習がくしゅう行動こうどう知能ちのう行動こうどう発達はったつしているとえる。

しかしながら、現実げんじつひと行動こうどうがそれらによるものであるかとえば、かならずしもそうではない。日常にちじょうられる行動こうどうおおくは、個人こじん経験けいけん獲得かくとくしたものでも、推測すいそくなどによって判断はんだんしたものでもなく、その個体こたいぞくする集団しゅうだん伝統でんとうてき継承けいしょうされたものである。各々おのおの個体こたいは、おや周囲しゅうい個体こたいから見習みならう、あるいは積極せっきょくてき指示しじされることで行動こうどうける。これをなんぶかはむずかしいが、ひろ意味いみでの「文化ぶんか」というかたりをこれにてるかんがえもある。通常つうじょう文化ぶんかえば、言語げんご芸術げいじゅつ技術ぎじゅつ、あるいは社会しゃかいてきなものなどをすが、その発達はったつ伝達でんたつ形式けいしきだけをれば、共通きょうつうするものである。

このようなひろ意味いみ文化ぶんかかんがえれば、サルなどの動物どうぶつにもその片鱗へんりんられる。しかし、ひと場合ばあいには、動物どうぶつすれば、文化ぶんかてき決定けっていされる部分ぶぶん非常ひじょうおおきい。その内容ないよう地理ちりてきにまとまった集団しゅうだんによってある程度ていどまでは共通きょうつうする。このまとまりを民族みんぞくというが、そのなかにさらに多少たしょうとも異質いしつしょう集団しゅうだんられることもおおい。また、歴史れきしてき経過けいかなかで、いくつもの民族みんぞくみだれた状態じょうたいひとつのおおきな社会しゃかい形成けいせいする場合ばあいもあり、その様相ようそうはこれまた多彩たさいである。しかし、いずれにせよ、文化ぶんかはその民族みんぞくごとに多少たしょうとも固有こゆうであり、情報じょうほう意思いし伝達でんたつ使つかわれる言語げんご身振みぶ手振てぶりまでもがことなるので、意志いし疎通そつうすら困難こんなん場合ばあいもある。そのかかわりがあまりにふかく、多岐たきにわたるため、どこまでが文化ぶんか影響えいきょうであるかを判断はんだんするのが困難こんなん場合ばあいおおい。いわゆるジェンダーろんなどはそのれいである。

しかし一方いっぽうで、文化ぶんかちがいのおおくは程度ていどてき表面ひょうめんてきなものか[ちゅう 2]、もしくは集団しゅうだん(われわれ)と、集団しゅうだん(やつら)との差異さい強調きょうちょう[ちゅう 3]前者ぜんしゃ優越ゆうえつほこり、結束けっそくかためるためのプロパガンダてきなものでもあり[ちゅう 4]一段いちだんふかいレベルでひと社会しゃかい場合ばあい全体ぜんたい共通きょうつうする非常ひじょうにはっきりとした普遍ふへん特性とくせいかびがってくる。ヒューマン・ユニバーサル参照さんしょう

以下いかひと習性しゅうせいかんするおおまかな項目こうもく説明せつめいするにあたり、文化ぶんかちがいによってことなる部分ぶぶんれない程度ていどにまとめる。

しょくせい[編集へんしゅう]

植物しょくぶつくき種子しゅし果実かじつなどの植物しょくぶつしょく陸上りくじょう脊椎動物せきついどうぶつ脊椎動物せきついどうぶつ魚類ぎょるいなどの肉食にくしょく非常ひじょう幅広はばひろしょくせいゆうする雑食ざっしょくせいである。おおくのサルるいられるような昆虫こんちゅうなどのしょう動物どうぶつ捕獲ほかくのみならず、それにくわえてより大型おおがた哺乳類ほにゅうるい鳥類ちょうるい集団しゅうだんりをすることによって捕獲ほかくする狩猟しゅりょう魚介ぎょかいるい海洋かいよう哺乳類ほにゅうるい利用りようするりょうみずか動物どうぶつ飼育しいくして利用りようする畜産ちくさんなど、動物どうぶつせい食料しょくりょう利用りようはサルるいなかではきんている。これは、たか知能ちのう文化ぶんかてき情報じょうほう蓄積ちくせきによるところがおおきい。

一般いっぱんてき傾向けいこうとして、脂肪しぼうタンパク質たんぱくしつ豊富ほうふにくとうしつおおふくんだあまいものをこの[10]にくへの嗜好しこうたいしては、これが大脳だいのう発達はったつうながしたというせつもある。また糖分とうぶんおおふくんだあまいものへの嗜好しこうは、ホモ・サピエンスの祖先そせん果実かじつしょくおおっていたこと継承けいしょうとするせつもある。食物しょくもつにはしばしばしおあじ付加ふかおこなわれるが、これはヒトの発汗はっかん機能きのう動物どうぶつくらべて非常ひじょうによく発達はったつしており、大量たいりょう塩分えんぶん摂取せっしゅ必要ひつようとしているからである。菌類きんるいしょく習慣しゅうかん広範こうはんにみられ、ひがしアジアを中心ちゅうしん藻類そうるいこのんで摂取せっしゅする地域ちいきもある。肉食にくしょくでは、陸上りくじょう脊椎動物せきついどうぶつ魚類ぎょるい海水かいすいぎょ淡水魚たんすいぎょ)の摂取せっしゅもっと一般いっぱんてきだが、沿海えんかい島嶼とうしょ居住きょじゅうする個体こたいには海産かいさん軟体動物なんたいどうぶつかいあたまあしるい)や甲殻こうかくるいこのまれる。昆虫こんちゅうしょくについてはかつてかなりひろ範囲はんいでみられたものの、現在げんざい一部いちぶ地域ちいきをのぞいて一般いっぱんてきなものではなくなっているが、近年きんねん人類じんるい急増きゅうぞう起因きいんとなる世界せかい規模きぼ農作物のうさくもつ栄養分えいようぶん低下ていかけて、タンパクげん豊富ほうふ昆虫こんちゅうしょく価値かち見直みなおされはじめている。

正確せいかく年代ねんだい諸説しょせつあるが、最終さいしゅうごおりごろから、野生やせいのものをるのではなく、食料しょくりょうみずかそだてること、つまり農耕のうこう牧畜ぼくちくおおくの地域ちいきおこなわれるようになり、各地かくち地域ちいきったさまざまなかたち農業のうぎょう発達はったつした。現在げんざいでは、食料しょくりょうだい部分ぶぶんがこれでまかなわれている。なお、牧畜ぼくちく発達はったつによって、ヒトはヒト以外いがい哺乳ほにゅう動物どうぶつちち食物しょくもつとするようになった。

また、調理ちょうり技術ぎじゅつ当初とうしょにおいては摂食せっしょく可能かのう対象たいしょう範囲はんいおおきくひろげた。たとえばヒトは結晶けっしょう状態じょうたいデンプン消化しょうかできないが、加熱かねつ調理ちょうりによって結晶けっしょう破壊はかいし、小麦こむぎべいなどの自然しぜん状態じょうたいでは摂取せっしゅ不可能ふかのうなものも摂取せっしゅ可能かのうにした。のちには、たんなる食料しょくりょうではなく料理りょうりという文化ぶんかんだ。

動物どうぶつとしてはきわめて特殊とくしゅしょくせいとして、エタノールこのむこともげられる。エタノールはカロリーげんとしてすぐれているものの、同時どうじつよ毒性どくせいしめし、中枢ちゅうすう神経しんけい麻痺まひさせる作用さよう)があるが、ヒトはむしろこの麻痺まひ快感かいかんとしてれてきた。もっとも、エタノールの嗜好しこうには個体こたいおおきく、あまりこのまない個体こたいや、嫌悪けんおしめ個体こたいもかなりおおい。またひがしアジアけいのヒトのなかには、遺伝いでんてきアセトアルデヒド分解ぶんかい酵素こうそたず、エタノールを摂取せっしゅできない個体こたいもいる。

一方いっぽうで、個体こたいかれた環境かんきょうによって、あるいは個体こたいぞくする集団しゅうだん主体しゅたいてき選択せんたくにより、摂取せっしゅする食物しょくもつ制限せいげんする(される)場合ばあいられる。いちれいとして北極ほっきょく地帯ちたい生息せいそくするヒトは、魚介ぎょかいるい海洋かいよう哺乳類ほにゅうるいなどの肉食にくしょく中心ちゅうしんであり、植物しょくぶつ摂取せっしゅすることはまれである(植物しょくぶつ摂取せっしゅできる環境かんきょうにない)。主体しゅたいてき選択せんたくによる食物しょくもつ制限せいげんとしては、倫理りんりてき理由りゆうから肉食にくしょく忌避きひ植物しょくぶつしょくのみを選択せんたくするヒトがすくなくない。また、宗教しゅうきょう文化ぶんか集団しゅうだんによっては特定とくていしゅ動物どうぶつにくのみを禁忌きんきとする場合ばあいがある。一方いっぽう環境かんきょうやその個体こたい所属しょぞくする集団しゅうだんとは関係かんけいなく、その個体こたいのみの嗜好しこうによって摂取せっしゅする食物しょくもつ制限せいげんするれいられるが、これは偏食へんしょくばれており、しばしばヒトの所属しょぞくする集団しゅうだん規範きはんはずれた行動こうどうだとみなされる。

嗜好しこうひんとしてカロリーなどの必須ひっす栄養素えいようそじょうかならずしも利点りてんがないものをこの個体こたいる。コーヒーちゃタバコなどがげられる。

住居じゅうきょ使用しよう[編集へんしゅう]

ヒトはふるくよりそれなりのをつくっていたようである。洞窟どうくつくち付近ふきん生活せいかつにしていたれいは、北京ぺきん原人げんじんなどにられ、長期ちょうきにわたってたき維持いじしていた様子ようすられる。その動物どうぶつほねかわつくられたテントよう住居じゅうきょなどもられている。いずれにせよ、なんらかの屋根やねのある部屋へやつくるなり、既存きそんのものを利用りようするなりしていたようである。これがいわゆるいえ住居じゅうきょはじまりになるものとおもわれる。ただ、つく習性しゅうせい動物どうぶつにもられるため、ヒト特有とくゆうのものではない。ヒトのつく住居じゅうきょ)において特徴とくちょうてきなのは、その生息せいそく分布ぶんぷ非常ひじょうひろいことによって、それぞれの生息せいそく地域ちいき環境かんきょうそくした、さまざまな種類しゅるい住居じゅうきょつくることである。動物どうぶつくらべてきわめて高度こうど構造こうぞう住居じゅうきょつくることや、住居じゅうきょつく技術ぎじゅつ逐次ちくじ発展はってん改良かいりょうされていることも特徴とくちょうえるが、これはヒトの知能ちのうたかさや、ヒトが道具どうぐ使つかうことに由来ゆらいするものであり、このような特徴とくちょう住居じゅうきょ以外いがいにもられる。むしろ、ヒト以外いがい動物どうぶつみずからのむところ以外いがいには構造こうぞうぶつをほとんどつくらないが、ヒトは住居じゅうきょかぎらず多種たしゅ多様たよう人工じんこう構造こうぞうぶつつくることが特徴とくちょうといえる。

衣類いるい使用しよう[編集へんしゅう]

からだなにかでおおうことは、ほとんどの生息せいそくいきのヒトにおいておこなわれる。いわゆる衣服いふくである。これを、ヒトのからだおおわれていないことから発達はったつしたとるか、衣服いふく発達はったつによってがなくなったとるかは、判断はんだんかれる。しかし、それがかなりふる時代じだいさかのぼることは、衣服いふくシラミコロモジラミとして頭髪とうはつアタマジラミとのあいだ亜種あしゅのレベルでのたね分化ぶんかしょうじていることからも想像そうぞうされる。

気温きおんおうじてまと衣服いふく変更へんこうすることにより、体温たいおん調節ちょうせつする習性しゅうせいち、これと発達はったつした発汗はっかん機能きのう温度おんど安定あんていした住居じゅうきょわさっていちねんちゅう活動かつどう幅広はばひろ気候きこうへの適応てきおう可能かのうとしている。

古代こだいにおいては動物どうぶつ毛皮けがわ植物しょくぶつをそのまま、あるいは軽度けいど加工かこうほどこしてまとっていたが、繊維せんい生産せいさん加工かこうおこなうようになりぬの素材そざいのものに移行いこうしていった。

からだ着用ちゃくようするものには、からだ保護ほご目的もくてきとするものと、装飾そうしょく目的もくてきにするものとがあるが、両方りょうほうねる場合ばあいおおい。からだ保護ほご目的もくてきとするものとしては、まずこしまわりに着用ちゃくようし、生殖せいしょくかくすものが最低限さいていげんであるようである。装飾そうしょくにはさまざまなものがあるが、手首てくびくびなど、ほそいところにくものがよくられる。装飾そうしょく目的もくてきとしては、からだ直接ちょくせつ文字もじえがんだり(ずみあなをあける(ピアス)などの加工かこうおおくの民族みんぞくられる。また、頭髪とうはつうえなにかを突出とっしゅつさせるかたち装飾そうしょくは、非常ひじょうおおくの民族みんぞくられる。

ごくまれにであるが、裸族らぞくばれるなにけない習慣しゅうかんつヒトの集団しゅうだん存在そんざいするが、まったなにひと着用ちゃくようしないれいはまずない。生殖せいしょくかくこと最低限さいていげんであるため、裸族らぞくぞくするヒトであっても、オスはペニスケース装着そうちゃくしている場合ばあいおおい。またヌーディストばれる、衣類いるいまったけないヒトも存在そんざいするが、それらのヒトが衣類いるいけないのは、それがゆるされる特定とくていエリア・特定とくてい時期じきにのみかぎられている。

また、衣服いふく着用ちゃくよう常時じょうじとなったヒトは、衣服いふく着用ちゃくようせず、みずからの身体しんたい個体こたいにさらすことに嫌悪けんおかんつ(羞恥しゅうち)という習性しゅうせい文化ぶんか)をつようになった。生殖せいしょくおよび臀部でんぶをさらすことにたいしての嫌悪けんおかんおおくのヒトで共通きょうつうしているが、それ以外いがいのどこをさらすことに嫌悪けんおかんつかについては地域ちいきおおきい。また、さらすがわ個体こたいのみならず、さらされるがわ個体こたい嫌悪けんおかんつため、おおくのヒトの社会しゃかいでは、身体しんたい特定とくてい部位ぶいかなら衣服いふくおおうことを義務ぎむづける規範きはんつにいたった。一方いっぽうでヒトは、そのような規範きはんをあえてやぶり、身体しんたいをさらすことに快感かいかんおぼえる個体こたい存在そんざいする(みずからさらす場合ばあいと、個体こたいにさらさせてそれを場合ばあいとがある)。とく普段ふだん衣服いふくによってかくされている生殖せいしょくは、交尾こうびときにはかならずさらす必要ひつようがあるため、脱衣だつい行為こうい解放かいほうかん快感かいかん性的せいてき興奮こうふん密接みっせつむすびついており、そのため近代きんだい社会しゃかいでのせい風俗ふうぞく文化ぶんかストリップティーズポルノグラフィなど)の発展はってんにもつながっていった。

道具どうぐ使用しよう[編集へんしゅう]

上記じょうきのようなものをふくめて、生活せいかつのためにさまざまなものを加工かこうして利用りようする、ひろえば道具どうぐ使つかうことが、ヒトの特徴とくちょうのひとつでもある。ヒト以外いがい道具どうぐもちいる動物どうぶつは、一部いちぶのサルやラッコなどわずかなれいまる。

  1. 道具どうぐつくるための道具どうぐ、いわゆるてき道具どうぐ使用しようは、ヒトだけにかぎられている。また、闘争とうそうのための道具どうぐ武具ぶぐ武器ぶき)をつく使用しようするのもヒトにかぎられたことである。
  2. 使用しようも、ヒトの文化ぶんか発達はったつささえる重要じゅうよう要素ようそである。が、なぜヒトだけが近付ちかづき、使つかうことをおぼえたのかについては諸説しょせつある。
  3. くち連合れんごう仮説かせつでは、道具どうぐ食料しょくりょうはこぶために、両手りょうてにモノをちながらあるくことのできる、直立ちょくりつそく歩行ほこういたったとかんがえられている[11]

社会しゃかい生活せいかつ[編集へんしゅう]

一般いっぱんには集団しゅうだんつくって生活せいかつしている。雌雄しゆう成体せいたい子供こどもからなる集団しゅうだん家族かぞく)を構成こうせい単位たんいとし、それがあつまった集団しゅうだん構成こうせいするのが基本きほんだが、かならずしもこのかたちになるとはかぎらない。集団しゅうだん社会しゃかい)の構造こうぞうにもさまざまなものがある。基本きほんてきに、ホモ・サピエンスの社会しゃかいでは成熟せいじゅくしたオスが成熟せいじゅくしたメス、成熟せいじゅく個体こたい子供こども)にたいして優越ゆうえつし、場合ばあいによってはそれらの個体こたいへの干渉かんしょうけん支配しはいけんつことがある(「亭主関白ていしゅかんぱく」などとばれる)。とりわけ公的こうてき決定けっていでは、成熟せいじゅくしたオスの優位ゆうい非常ひじょうつよく、かつ明白めいはくである[12]ぎゃく家庭かていないなど、公的こうてきでは、成熟せいじゅくしたオスの権威けんい優越ゆうえつせいよわまり、不明瞭ふめいりょうとなるか、ときメス優位ゆうい事例じれいてくる[13]成熟せいじゅく個体こたいやメスにたいしては、劣位れつい代償だいしょうとして、成熟せいじゅくしたオス個体こたいからの恩恵おんけいてきな『庇護ひご』が一定いってい程度ていどあたえられる。

家系かけい継承けいしょう理念りねんについては、父系ふけい母系ぼけいそうけいさん種類しゅるいがあるが、ホモ・サピエンスのさまざまな社会しゃかいにおける家系かけい理念りねんると父系ふけい一番いちばんおおく、母系ぼけいそうけいはややすくない。ただし、父系ふけい継承けいしょう社会しゃかいであれ、母系ぼけい継承けいしょう社会しゃかいであれ、もう一方いっぽう系統けいとう自分じぶん血縁けつえんのある個体こたいたいしてもきんえん個体こたいとしてのじょういだくのが通常つうじょうであり[ちゅう 5]実際じっさいはすべての社会しゃかいにおいて、ホモ・サピエンスは、そうけいてき親族しんぞく意識いしきつといえる[14]

ホモ・サピエンスは、自分じぶん遺伝いでんてきにつながりのつよ個体こたいや、遺伝いでんてき利益りえき共有きょうゆうする配偶はいぐうしゃたいして、そのようなつながりのない個体こたいよりも、条件じょうけん同等どうとうのときは、よりつよ配慮はいりょしめ傾向けいこうがある[15]。(もっとも、これはヒトのみならずれを哺乳類ほにゅうるいではめずらしくない性質せいしつである。)

情報じょうほう伝達でんたつ[編集へんしゅう]

ヒトの集団しゅうだんないにおける情報じょうほう伝達でんたつは、身振みぶ手振てぶりや表情ひょうじょうによるものと、言語げんごかいしたものがある。

集団しゅうだんない個体こたいあいだ伝達でんたつ方式ほうしきとして言語げんごもちいるのは、ヒトの重要じゅうよう特徴とくちょうである。サルやクジラでは多彩たさい発音はつおんもちいて意思いし疎通そつうおこなれいられるが、これが言語げんごべるものなのかは定説ていせつていない(否定ひていてきせつおおい)。

ヒトは、所属しょぞくする集団しゅうだんごとにそれぞれことなる言葉ことばもちいる。ぎゃく使つかっている言葉ことばがヒトの集団しゅうだん区別くべつ指標しひょうとなることおおい。たとえば、身体しんたいてき、その差異さいがほとんどないヒトの集団しゅうだんが、その使つかっている言葉ことば単位たんいとして、べつ集団しゅうだん民族みんぞく)としてあつかわれるれいもある。また、ことなる言葉ことばもちいるヒトの集団しゅうだん民族みんぞく)があつまって、おおきな集団しゅうだん国家こっか)をつくさいに、そのおおきな集団しゅうだんなかでどの言葉ことば使つかうかを決定けっていする場合ばあいおおい。

集団しゅうだんごとのことなる言葉ことばについて、その差異さい度合どあいは様々さまざまである。差異さい非常ひじょうおおきい場合ばあいは、言葉ことばによる情報じょうほう伝達でんたつ完全かんぜん不可能ふかのうとなる。ことなる言葉ことばでも差異さい非常ひじょうちいさい場合ばあいは、情報じょうほう伝達でんたつにほとんど支障ししょう場合ばあいもある。集団しゅうだんによっては、オスとメスとでことなる言語げんご男性だんせい女性じょせい)を使つか場合ばあいすらあるが、これも差異さいちいさいれいであり、オス・メスあいだ情報じょうほう伝達でんたつ問題もんだいおこなえる。

これまで世界せかいのヒトの集団しゅうだんにおいて、なんらかの言語げんご使用しようしていなかったれい皆無かいむである。集団しゅうだんつくこと、その集団しゅうだんない言葉ことば使つかって情報じょうほう伝達でんたつすることは、ヒトのくべからざる特徴とくちょうである。

言語げんごたん情報じょうほう伝達でんたつのしくみであるだけでなく、たのしみ(文学ぶんがくなど)としても、思考しこう道具どうぐとしてももちいられた。また、言語げんごされた情報じょうほうなんらかのかたち保存ほぞんし、(口伝くでん文字もじひとし)、それによりヒトは集団しゅうだんとしての歴史れきし維持いじしている。

生活せいかつ環境かんきょう[編集へんしゅう]

ヒトは、環境かんきょうつくえる動物どうぶつであるとわれる。これは、とく現代げんだい文明ぶんめいつよられることで、かならずしもヒト一般いっぱん適用てきようできるとはおもえないが、しかしながら、一定いってい住居じゅうきょをもつ民族みんぞくは、その周囲しゅういすくなからずにすることがおおい。農業のうぎょうおこな場合ばあいは、さらにひろ区域くいき加工かこうする。また、作物さくもつ家畜かちくなど、人為じんいてき特定とくてい生物せいぶつ維持いじし、その天敵てんてき攻撃こうげきすることもおおい。そのにも、ヒトの生活せいかつには、その住居じゅうきょ使用しようする生物せいぶつツバメなど)、ヒトの食物しょくもつのこしなどを食料しょくりょうとする動物どうぶつゴキブリなど)、吸血きゅうけつせい昆虫こんちゅうノミなど)、雑草ざっそうなどさまざまな特有とくゆう生物せいぶつあつまっている。それらをまとめて人間にんげん生態せいたいけいということがある。

一方いっぽうでヒトが環境かんきょうつくえることにより、従来じゅうらいその環境かんきょう生息せいそくしていた動植物どうしょくぶつ駆逐くちくされるということが頻発ひんぱつしている。その過程かていおおくの動植物どうしょくぶつ絶滅ぜつめつしている。特定とくてい動植物どうしょくぶつ動植物どうしょくぶつ駆逐くちくし、絶滅ぜつめついやるれいはヒト以外いがいでもられるが、ヒトによって絶滅ぜつめつさせられた動植物どうしょくぶつ種類しゅるいはそれらより桁外けたはずれにおお[よう出典しゅってん]。またヒトが環境かんきょうつくえることにより、 ヒトみずからにとっても生息せいそく困難こんなん環境かんきょうへと変化へんかする場合ばあいもしばしばられる。たとえばチグリスがわユーフラテスがわあいだ沖積ちゅうせき平野へいやは、ヒトが環境かんきょうつくえた最古さいこ地域ちいきであるが、それによりヒトにとってあまりこのましい環境かんきょうとはえない砂漠さばく状態じょうたいへと変化へんかし、ヒトの生息せいそくすう減少げんしょうした。

生殖せいしょく子育こそだ[編集へんしゅう]

規範きはんてき配偶はいぐう[編集へんしゅう]

ヒトの性的せいてき活動かつどう非常ひじょう活発かっぱつである。ほとんど年間ねんかんつうじて性交せいこうおこなわれ、動物どうぶつとはことなり出産しゅっさんさだまっていない。

ホモ・サピエンスのオスは、一般いっぱんにメスにしてつよ性的せいてき嫉妬しっとしんち、ペアとなるメスとのオスとの交尾こうびにより、メスへの性的せいてき支配しはいけんおかされることに敏感びんかんである[16]。これはあとべるように、ホモ・サピエンスの生殖せいしょく子育こそだてにおける規範きはん形成けいせいおおきく関係かんけいしている。

ホモ・サピエンスのオスが性的せいてき魅力みりょくのあるメスをえら基準きじゅん文化ぶんかにより、時代じだいにより、個人こじんにより多様たようであるが、かく個人こじん平均へいきんれば普遍ふへんせいのあるわくないしたがっている。一般いっぱんに、乳房ちぶさ発達はったつ一定いってい水準すいじゅんえ、かつこしよりもしりのふくらみが顕著けんちょなメスを、性的せいてき魅力みりょくのあるメスとしてこの傾向けいこうがある[17]。これはそく歩行ほこうにより個体こたい女性じょせい生殖せいしょくしにくくなった結果けっか代替だいたいてきにセックスアピールほうとして進化しんかしたとかんがえられている。

雌雄しゆう個体こたいあいだでの性交せいこうによる受精じゅせいかくりつかならずしもたかくはなく、同一どういつのペアのあいだなんかえされるのが普通ふつうである。そのためホモ・サピエンスのセックスは、たんなる受精じゅせいのみを目的もくてきとするのではなく、性的せいてき快感かいかんつうじてたがいのしたしみをすはたらきも重要じゅうよう目的もくてきとしてつように進化しんかしたと一般いっぱんてきにはかんがえられる[18]現代げんだいにおいては器具きぐ薬剤やくざいもちいた避妊ひにんにより、明確めいかく生殖せいしょくはなされ快楽かいらくのみを目的もくてきとした性交せいこうおおおこなわれる。特定とくてい雌雄しゆうペアは一定いってい期間きかん持続じぞくするが、どの程度ていどつづくかにはさまざまな場合ばあいがある。

そのような関係かんけい一定いってい形式けいしき維持いじされることを婚姻こんいん結婚けっこんうが、集団しゅうだんなか公的こうてきみとめられるために、それぞれの文化ぶんかにおいて、さまざまなかたち儀礼ぎれいがある。しばしば、同性どうせい個体こたいあいだ同性愛どうせいあい)においてもこのような関係かんけいられるが、おおくの文化ぶんかにおいて雌雄しゆう個体こたいあいだにおけるそれとは、ことなるあつかいをける。

しかし、これにもさまざまな例外れいがいがあり、ペア同士どうし同意どういにより相手あいて特定とくていしないとするオープンマリッジ民族みんぞくてきちがい(ふくこん重婚じゅうこん)、または売春ばいしゅんられるのも通例つうれいである。

動物どうぶつにおける社会しゃかい構成こうせいは、その動物どうぶつ生殖せいしょくにかかわるせいのありかたおおきく影響えいきょうされるから、ヒトの場合ばあいに、本来ほんらいはどのような配偶はいぐう関係かんけいであったのかをろんじるものはおおい。現実げんじつ様々さまざまなヒトの社会しゃかいれば、一夫一婦いっぷいっぷせい同性どうせい結婚けっこん一夫多妻いっぷたさいせいいちつまおっとせいおっと多妻たさいせい、そしてわずかながら乱婚らんこんハレム英語えいごばんのいずれも、その実例じつれいがある。しかしヒトはボノボほど乱婚らんこんではないし、ゴリラほどハレムせい一般いっぱんてきられるわけでもない。また、どういち社会しゃかいでもその階層かいそうなどによってことなるかたちられることもめずらしくない。

一般いっぱんてきにいえば、ホモ・サピエンスのオス・メスの性的せいてき結合けつごうは、オス・メスが一対一いちたいいち結合けつごうする一夫一妻いっぷいっさいせい基本きほんとしており、このかたちをとる個体こたいがほとんどである。しかし、ホモ・サピエンスのオスにはおおくのメスと交尾こうびしたいという欲求よっきゅうあらわ傾向けいこうがあり、またホモ・サピエンスの社会しゃかい基本きほんてきにオス優位ゆうい[19][20]であるため、オスの性的せいてき欲求よっきゅうたいしてはメスのそれよりかなりの程度ていど寛大かんだいである傾向けいこうがある。それにもかかわらず、ホモ・サピエンスの社会しゃかいにおいて一夫一妻いっぷいっさいせい主流しゅりゅうなのは、だいいちにホモ・サピエンスのぜん個体こたいすうにおけるオスメスのはほぼ完全かんぜんな1たい1であること。だいにホモ・サピエンスのオスは現存げんそんするきんえんしゅのオスにくらべてかなり積極せっきょくてき子育こそだてに参加さんかし、その資源しげんコストのおおくを負担ふたんする傾向けいこうがあるため[21]、オスの利用りようできる資源しげんすくない場合ばあい一夫一妻いっぷいっさいでなく一夫多妻いっぷたさいをとれば、子育こそだてのコストをまかないきれず共倒ともだおれになる危険きけんがあるからである[22][23]

ゆえに、ホモ・サピエンスの本来ほんらいてき生活せいかつ形態けいたいである狩猟しゅりょう採集さいしゅう生活せいかつおくり、とみ蓄積ちくせき比較的ひかくてきすくない社会しゃかいでは、少数しょうすう有力ゆうりょくなオス個体こたいが2, 3ひきのメスにたいする性的せいてき資源しげん支配しはいけん行使こうしする程度ていど一夫多妻いっぷたさいせいられるのみである[22]。しかし、とみ蓄積ちくせきおおきい社会しゃかいでは、おおくの資源しげん利用りようできるたか地位ちいのオス個体こたいが、よりおおくのメスにたいして性的せいてき支配しはいけん行使こうしし、社会しゃかいさい上位じょういのオスにいたっては、純然じゅんぜんたるハレムせいちかくなることもすくなくない。一夫多妻いっぷたさいせいへの対応たいおう文化ぶんかがあるが、この制度せいど利用りようできるオス個体こたい社会しゃかい全体ぜんたいのオス個体こたい生息せいそくすうかられば、非常ひじょう少数しょうすうである。

また、これとぎゃく社会しゃかいなか劣位れついのオスが、最低限さいていげん交尾こうび機会きかい手段しゅだんとして、いちひきのメスにたいして複数ふくすうのオスが性的せいてき資源しげん支配しはいけん行使こうしすることがある。オス同士どうし連合れんごうとメスいちひき結合けつごう一夫多妻いっぷたさい一夫一妻いっぷいっさい同様どうよう持続じぞくてき性的せいてきパートナーシップである場合ばあい、これをいちつまおっとせいぶが、これは一夫多妻いっぷたさいせいくらべてもきわめてまれである。通常つうじょうは、いちひきのメスにたいする性的せいてき資源しげん支配しはいけん複数ふくすうのオスが時間じかんをずらして行使こうしするかたちをとり、これを売春ばいしゅんぶ。売春ばいしゅんによる交尾こうびでは生殖せいしょく目的もくてきとしないことがほとんどであり(おおくの場合ばあい避妊ひにんおこなわれる)、通常つうじょうはオスからメスに対価たいか支払しはらわれる形式けいしきるが、ごくまれにメスからオスに対価たいか支払しはらわれることもある。ホモ・サピエンスにおけるオスのメスにたいする性的せいてき支配しはいけん重視じゅうしから[ちゅう 6]一般いっぱんてき売春ばいしゅんおこなうメスは、一夫一妻いっぷいっさい一夫多妻いっぷたさいのように、いちひきのオスに性的せいてき支配しはいけんをささげるメスよりもひくられ、売春ばいしゅん交尾こうび機会きかいるオスも、売春ばいしゅんおこなうメスを尊重そんちょうする傾向けいこうよわい。売春ばいしゅんはホモ・サピエンスのきんえんしゅボノボにもられる。

このような形式けいしき交尾こうび機会きかいようとするオスが存在そんざいする理由りゆうとして、現代げんだいホモ・サピエンスのコミュニティではいち交尾こうび経験けいけんしていないオスは童貞どうていばれ、童貞どうていではないオスとくらべて社会しゃかいてきおとっているとられる場合ばあいおおいことがげられる。ただし売春ばいしゅん道徳どうとくてきとみなす文化ぶんかもあり、そうしたコミュニティでは売春ばいしゅん経験けいけんしたオスは童貞どうていのオスよりもひく評価ひょうかがなされることもある。

また一見いっけん乱婚らんこんられる場合ばあいも、けっして野放図のほうず交雑こうざつおこなわれているのではないことに留意りゅういする必要ひつようがある。たとえば、イヌイットにおける客人きゃくじんへのつま提供ていきょう、もしくは日本にっぽん農村のうそんられた、夜這よばや、歌垣うたがき祭礼さいれいでの乱交らんこう)も、その対象たいしょうかぎられたコミュニティない限定げんていされ、かつその方式ほうしき時期じき程度ていどなどもふくめて規定きていされ、厳格げんかくに(オス中心ちゅうしん秩序ちつじょなかでの)互酬せい適用てきようされる。またこれらの制度せいどにおける性的せいてき自由じゆうも、あくまでオスのメスにたいする性的せいてき資源しげん支配しはいけんという同一どういつ基盤きばんもとにしており、オス中心ちゅうしんでメスの意思いしへの配慮はいりょ二義的にぎてきである。夜這よばいについては、当該とうがいメス個体こたい性的せいてき資源しげん支配しはいけん獲得かくとくしたいとねが個体こたいと、そのメスの性的せいてき資源しげん保護ほごけんゆうするオスの個体こたいおおくの場合ばあいちちあに)の合意ごういがあれば、当該とうがいメス個体こたい意思いしにかかわらずみとめられることがおおい。また、イヌイットのつま提供ていきょうも、あくまでそのメスの性的せいてき資源しげん支配しはいけんゆうするおっとが、恩恵おんけいもしくは歓待かんたい意思いしにより、相手あいてのオスに一時いちじてきにメスの性的せいてき資源しげん使用しようけんあたえるというもので、メスの意思いし二義的にぎてきである。かつてのホモ・サピエンス社会しゃかいにおけるおや意思いしによる強制きょうせい結婚けっこんも、このようなメスの意志いし二義的にぎてきとする性的せいてき資源しげん所有しょゆうけん取引とりひき結果けっかである[ちゅう 7]

確実かくじつえるのは、これらのどれかをつ、あるいはそれらのあるわせをつヒトの社会しゃかい実在じつざいすること、そして、おそらくどの場合ばあいも、その内部ないぶおおくの例外れいがい逸脱いつだつ存在そんざいしていたであろう、ということである。

しかし、一般いっぱんてきにまとめれば、一夫一妻いっぷいっさい基調きちょうとしつつ、有力ゆうりょくなオスにかぎ一夫多妻いっぷたさい可能かのうとされ、また補助ほじょてき乱交らんこういちつまおっと売春ばいしゅんとうみとめるのが、ホモ・サピエンスの配偶はいぐうかんする規範きはん一般いっぱんてき傾向けいこうといえる。これは生物せいぶつがくてきて、ホモ・サピエンスのオスはきんえんしゅのオスほどではないにしろ、メスにくらべて大柄おおがらであることからも推察すいさつできる[24][25]

また、個体こたいおおきいが、ホモ・サピエンスのオスは、一般いっぱん過去かこ自分じぶん以外いがいのオスと交尾こうびをしなかったメス(処女しょじょ)にたいして、性的せいてきにプラスとなるほか条件じょうけんがまったく同等どうとうならそちらが交尾こうび相手あいてとしてよりいメスとみなす傾向けいこう[26]。そのため、処女しょじょうしなったメスにたいする差別さべつてきあつかいをおこな社会しゃかいもある。また、オスはとしかさねたのちも、性的せいてき価値かちのあるメスをセックスの相手あいてとしてこの傾向けいこうがあり、なかにはこれで雌雄しゆうペアの結合けつごう破壊はかいされることもある[27]

20世紀せいき後半こうはん以降いこう、これらのオス・メスの差別さべつたいし、これを是正ぜせいし、オスメス対等たいとう性的せいてき関係かんけいをつくり、かつ一夫一妻いっぷいっさいせい統一とういつしようという文化ぶんかてきうごきがつよいが、完全かんぜんではない。

規範きはんてき配偶はいぐう[編集へんしゅう]

ホモ・サピエンスの社会しゃかいにおいて、正当せいとうなメスにたいする性的せいてき資源しげん支配しはいけん獲得かくとく手順てじゅんまずに、その社会しゃかいのメスと交尾こうびおこなったオスは、当該とうがいメスの性的せいてき資源しげん支配しはいけんもしくは保護ほごけんゆうするオスの権利けんり侵害しんがいしたとして、社会しゃかいから制裁せいさいける。これをこんがいせい交渉こうしょうといい、不倫ふりんなどが代表だいひょうれいである。

とりわけ、集団しゅうだんとの戦争せんそう状態じょうたいでは、おおくの場合ばあい成熟せいじゅくしたわかいオスからなる戦闘せんとう集団しゅうだん兵士へいし)が、相手あいて集団しゅうだんぞくするメスをレイプすることがおおく、またそれが戦争せんそうにおけるオスらしさのたか表現ひょうげんであるとみなされる傾向けいこうがある[ちゅう 8]。これは、ホモ・サピエンスには『われわれとやつら』という基準きじゅんがあり、『われわれ』を倫理りんりてきに『やつら』よりも優遇ゆうぐうするためである[28][29]。ゆえに、相手あいてのメスがたとえそちらの社会しゃかい正当せいとうなオスによる庇護ひごけていても、当該とうがい戦闘せんとう集団しゅうだんぞくする社会しゃかいにおいてはそれは価値かちであるとみなされ、かつメスの意思いしそのものへの配慮はいりょもより一層いっそうよわくなり、ゆえに当該とうがいメス個体こたいたい性的せいてき資源しげん支配しはいけん自由じゆう行使こうししてよいとみなす傾向けいこうがあるからである。ただしこれも、戦争せんそうわったのち相手あいて集団しゅうだんがこちらの集団しゅうだん併合へいごうされ、『やつら』から『われわれ』にわる場合ばあいがあるため、戦争せんそう行為こうい統括とうかつするたか地位ちいのオスは、ある程度ていどレイプを抑制よくせいする命令めいれいすこともすくなくない。集団しゅうだんあいだでの闘争とうそうにおけるレイプや虐殺ぎゃくさつは、その萌芽ほうがれるものがチンパンジーにも存在そんざいしている[30]

メスのはんした交尾こうびであるレイプは、当該とうがいオス個体こたい性的せいてき欲求よっきゅう解消かいしょうと、当該とうがいオスによる当該とうがいメスにたいする威圧いあつ両面りょうめんふくんでいる。レイプの対象たいしょうとなるメスの年齢ねんれい幅広はばひろく、とく戦時せんじには子供こどもから老人ろうじんにまでおよぶが、同時どうじ内訳うちわければ、だい多数たすう性的せいてき成熟せいじゅくした10代から20だいのメスである[31]。『われわれ』の集団しゅうだんのメンバーである成熟せいじゅくしたオスによって庇護ひごされていないメスへのレイプにかんして、ホモ・サピエンス社会しゃかい伝統でんとうてき規範きはんでは普遍ふへんてき黙認もくにん、または承認しょうにんされる傾向けいこうがあり、実際じっさいにそのようなレイプがおおいことから、レイプのなかでも、このたねのレイプは進化しんかてき適応てきおうてきであるという指摘してき[32][33]

また、生殖せいしょくから逸脱いつだつした性的せいてき関係かんけいとして同性愛どうせいあい(homosexual)が生物せいぶつがくにおいてとく高等こうとう哺乳類ほにゅうるいひろ認知にんちされており(動物どうぶつ同性愛どうせいあい参照さんしょう)ホモ・サピエンスにおいては人口じんこうやく6パーセントに同性愛どうせいあいてき傾向けいこうみとめられるという調査ちょうさ結果けっか公表こうひょうされている(Wellings.1994 イギリス)。ただし、この結果けっかにはりょう性愛せいあい(bisexual)や機会きかいてき同性愛どうせいあいもとづくものをふくむ。またその比率ひりつには社会しゃかいてき文化ぶんかてき影響えいきょうおおきいとされ、その実施じっしされたおおくの調査ちょうさ結果けっかの閾値は2-13%である[34][35][36][37][38][39][40][41][42][43][44]。またオスにかぎれば、有史ゆうし以来いらい同性愛どうせいあい制度せいどされたれい多数たすう存在そんざいし、現代げんだいでは一部いちぶ地域ちいきにおいて同性どうせい結婚けっこん認可にんかされている(スペインオランダカナダなど) 。これは、同性どうせいあいだ配偶はいぐう規範きはんてき性格せいかくあたえたものであり、世界せかいてきには寛容かんようになる傾向けいこうであるが、一方いっぽう宗教しゅうきょうてき理由りゆうにおいて重刑じゅうけい国家こっかのこっている(サウジアラビアイランなど)。これにくわえ、性的せいてき少数しょうすうしゃふくまれるトランスジェンダーやインターセクシュアル(はん陰陽いんよう)。潜在せんざいてき相当そうとうすう存在そんざいする、他者たしゃたいして恒常こうじょうてき恋愛れんあい感情かんじょう性的せいてき欲求よっきゅういだかない性愛せいあいしゃについても留意りゅういする必要ひつようがある。

親子おやこ関係かんけい[編集へんしゅう]

ホモ・サピエンスの子育こそだてでは、一般いっぱん母親ははおやのほうがちちよりも相対そうたいてき子供こども密着みっちゃくした感情かんじょうてき物理ぶつりてき関係かんけいつことがおお[45]。しかし、オスおやきんえんしゅすればよりつよ子供こどもとのむすびつきを[45][46]

ホモ・サピエンスの祖先そせん現存げんそんするきんえんしゅおおくには、ごろしの習慣しゅうかんがあり、おやおおくの場合ばあいオスおや)にとって不利益ふりえきとなる子供こどもは、ころされることがすくなくない[ちゅう 9]。ホモ・サピエンスの親子おやこあいだでも、おやいのちいのちよりたっとく、おや(とりわけオスおや)は文字通もじどお生殺与奪せいさつよだつ権利けんりゆうするというのが普遍ふへんてき傾向けいこうである。ホモ・サピエンスの親子おやこ関係かんけいは、きんえんしゅにおける親子おやこよりもよりつよく、ながきずなむすばれており、この大権たいけん露骨ろこつかたちるわれることはすくないが、それでもおやからして、意思いしまたは行動こうどうさらには存在そんざい自体じたいおや利益りえきにあまりにもはんする場合ばあいおや容赦ようしゃなくこの大権たいけん行使こうしし、人生じんせいのありかたを強制きょうせいしたり、暴力ぼうりょくてき制裁せいさい教育きょういくあたえ、はなはだしくは中絶ちゅうぜつあいだき・虐待ぎゃくたいとういのちうばうこともけっしてまれではない[ちゅう 10]さらに、ごろしにさいしても、オスメスでいのち価値かち格差かくさがあり、一般いっぱん子供こどもがオスの場合ばあいより、メスの場合ばあいのほうが、条件じょうけんがまったく同等どうとう場合ばあいごろしへのハードルがひくい。

また、ただたんにこの大権たいけん行使こうしするほかきんえんしゅとホモサピエンスとの最大さいだいちがいは、ホモサピエンスはこの大権たいけん行使こうしかんして、これを正当せいとうする理論りろん思想しそうを、たか知能ちのうもちいてしたことである。これは儒教じゅきょうの『こう』がられているが、それにかぎらず普遍ふへんてきである。このたね思想しそうにより、たとえ実力じつりょくおやをしのぐまでに成長せいちょうし、おやいてちからうしなっても、おやおおくの場合ばあいたいする支配しはいけん一定いってい程度ていど存続そんぞくさせることができる。とはいえ、成長せいちょうしたによるいたおやごろしもまた、ころしほどではないにせよ、普遍ふへんてきられる。

しかし、そのような大権たいけん行使こうしという危険きけんせいはあるが、おおくの場合ばあいホモサピエンスの親子おやこ間柄あいだがらは、つよきずな情愛じょうあいむすばれ、子供こども生育せいいくたいしておや庇護ひご有益ゆうえき役割やくわりたしているのも事実じじつである。

21世紀せいき以降いこうではこのような大権たいけん自体じたい制限せいげんし、子供こども人権じんけんまもろうとする思想しそう文化ぶんかひろまり、世界せかいてき一応いちおう規範きはんとなっているが、完全かんぜんではない。

進化しんか[編集へんしゅう]

進化しんかにおける分類ぶんるいについてはヒトぞくを、ヒトの進化しんか全般ぜんぱんについて人類じんるい進化しんか参照さんしょう

分布ぶんぷ多様たようせい[編集へんしゅう]

ヒトの移動いどうルート

現在げんざいでは航空機こうくうきふねなどの遠距離えんきょり交通こうつう発達はったつし、また住居じゅうきょ環境かんきょう調節ちょうせつする技術ぎじゅつ発達はったつしているが、安定あんていてき確実かくじつ遠洋えんよう航海こうかい技術ぎじゅつ発達はったつする以前いぜんから、ヒトの分布ぶんぷはほぼぜん世界せかいにわたっている。人類じんるい祖先そせんやく20まんねんまえアフリカ中部ちゅうぶ現在げんざいボツワナ北部ほくぶ)に発生はっせいしたものとかんがえられている[47]。およそ10まんねんまえリフトバレーを起点きてんとして、アフリカ大陸たいりくて、アジアへとわたり、そのリング海りんぐかいかいえ、アメリカ大陸あめりかたいりくへとひろがった。ほぼ世界せかい全土ぜんどにヒトは離散りさんしていった[48][49]大陸たいりく主要しゅよう島嶼とうしょのうち、ほぼ唯一ゆいいつ例外れいがいとして、南極大陸なんきょくたいりくには定着ていちゃくしなかった。また、もっとおそ到達とうたつしたのはニュージーランドではないかとかんがえられる。それ以外いがい地域ちいきにおいては、寒帯かんたいから熱帯ねったいにわたるきわめて広範囲こうはんい分布ぶんぷいきをもっていた。サル基本きほんてき熱帯ねったい動物どうぶつであり、ヒト以外いがいでは日本にっぽん列島れっとう本州ほんしゅうニホンザル分布ぶんぷ北限ほくげんであることをかんがえると、格段かくだんひろい。

これは、ヒトが衣服いふく住居じゅうきょもちいてまも方法ほうほう発達はったつさせたためでもあるが、からだ構造こうぞうそのものも、寒冷かんれい気候きこう対応たいおうできたためとかんがえられる。たとえば、ベルクマンの法則ほうそくとおり、そのおおきいからだ体温たいおん維持いじするには有利ゆうりである。がなく、耳殻じかくみじかくてあついこともアレンの法則ほうそくにかなっている。また、たかがったはなは、鼻腔びこうながくすることで、冷気れいきあたためてはいながむことができるようにする、寒冷かんれい気候きこうへの適応てきおうであるとのせつもある。またヒトの形態けいたいがくてき多様たようせい原因げんいんせい淘汰とうたもとめるせつ存在そんざいする[50][51]。その一方いっぽうで、発汗はっかん機能きのう非常ひじょう発達はったつしており、暑熱しょねつへのたいせいもあることから、生活せいかつけん非常ひじょうひろくなったとかんがえられる。

このような分布ぶんぷいき拡大かくだいしたがって、形質けいしつ多様たようしたとかんがえられ、さまざまな変異へんいられる。それらの主要しゅようなものを分類ぶんるいして、人種じんしゅ名付なづけている。しかし、その区別くべつ範囲はんい客観きゃっかんてき明確めいかくでないことがおおい。また、どのような人種じんしゅあいだでも、生理せいりてき意味いみにおける生殖せいしょくてき隔離かくりみとめられない。前述ぜんじゅつのように、現在げんざい人類じんるいはすべてヒトという単一たんいつたねぞくするものとかんがえられ、人種じんしゅたねかつものとはなされない。ほんこうでは「ヒト」を亜種あしゅとしてホモ・サピエンス・サピエンスとしてあつかっているためモンゴロイド・コーカソイド・ネグロイドといった人種じんしゅは、チワワプードルセントバーナードのような生物せいぶつでいう品種ひんしゅ相当そうとうとしてあつかう。(もっとも人種じんしゅ亜種あしゅ段階だんかい分化ぶんかであるとする見解けんかいもある)このようなひろ分布ぶんぷいきちつつ、完全かんぜんたね分化ぶんかこっていないのは、動物どうぶつにはれいすくない(クマネズミドブネズミなど、人間にんげんによりひろめられたひろしそんしゅれいられる)。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 個体こたいべつとく遺伝いでんによるところがおおきい
  2. ^ れいとして、ドナルド・E・ブラウンは、ブルネイでのたかさと地位ちいとのせい相関そうかん関係かんけいげ、この関係かんけい自体じたい普遍ふへんてきだが、ブルネイに特有とくゆうなのはその頻度ひんどであるとしている。(ドナルド・ブラウン 2002, p. 3-4)
  3. ^ ホモ・サピエンスのしょ社会しゃかい構成こうせいいんは、実際じっさいじょうつよ普遍ふへんせい共有きょうゆうとは裏腹うらはらに、『われわれ』と『やつら』のあいだちがいをかたるのをこの傾向けいこうがある。(「ヒューマン・ユニバーサルズ」、ドナルド・ブラウン、2002、p2、p3、p8)
  4. ^ イスラーム世界せかいでも現実げんじつ社会しゃかいりっする規範きはんとしては、飲酒いんしゅ容認ようにんされているが、集団しゅうだんたいして『さけ異教徒いきょうと』とさげすむこと、または江戸えど時代じだい日本にっぽんで、現実げんじつ社会しゃかい規範きはんとしては四足しそくししにくべることがすくなからずられたにもかかわらず、朝鮮ちょうせんじん欧米おうべいじん使節しせつとうにくをおおっぴらにべる習慣しゅうかんのある社会しゃかいから人々ひとびとたいし、『四足しそくにくやつとう』とさげすんだことなどがれいである
  5. ^ これを『補足ほそくてき親子おやこ関係かんけい』という。(『Kinship and the Social Order: The Legacy of Lewis Henry Morgan』、Meyer Fortes、1969)
  6. ^ このようなホモ・サピエンスオスの平均へいきんしてつよ性的せいてき嫉妬しっとしんは、父性ふせい確認かくにんという意味いみつ(「人間にんげんはどこまでチンパンジーか」、ジャレド・ダイアモンド、1993、p136〜p140)
  7. ^ これを「花嫁はなよめう」と直接的ちょくせつてき表現ひょうげんすることもある(ジャレド・ダイアモンド 1993, p. 263)
  8. ^ 集団しゅうだんのメスにたいするレイプ・強制きょうせい売春ばいしゅんだけでなく、この場合ばあい相手あいて集団しゅうだんぞくする個体こたいへの虐殺ぎゃくさつ虐待ぎゃくたい横行おうこうする傾向けいこうがある(ジャレド・ダイアモンド 1993, p. 428〜p429)(「おとこ凶暴きょうぼうせいはどこからたか」、リチャード・ランガム、デイル・ピーターソン、1998、p161〜p163)
  9. ^ ゴリラおよびチンパンジーのころしはよくられている(「おとこ凶暴きょうぼうせいはどこからたか」、リチャード・ランガム、デイル・ピーターソン、1998、p204)
  10. ^ おやにとって必要ひつよう場合ばあい中絶ちゅうぜつごろしへの許容きょようせいつのは、人類じんるい社会しゃかい普遍ふへん性質せいしつまたはじゅん普遍ふへん性質せいしつである(ドナルド・ブラウン 2002, p. 249、250)

出典しゅってん[編集へんしゅう]

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参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]