ペドフィリア

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フランスのイラストレーター、マルティン・ファン・メーレの「生者しょうじゃの死しの大おおいなる踊おどり」（13ページ）。

ペドフィリア（英えい: pedophilia）とは、成人せいじんもしくは思春期ししゅんき後期こうきによる優先ゆうせん的てきもしくは排他はいた的てきな二に次じ性徴せいちょう前まえの児童じどうに対たいして性欲せいよくを抱いだく精神せいしん障害しょうがいのことである[1][2]。精神せいしん医学いがくで定義ていぎされた性せい嗜好しこう障害しょうがいのひとつ。略りゃくして俗ぞくにペドと呼称こしょうされる。類義語るいぎごには小児しょうに性愛せいあい（しょうにせいあい）・小児しょうに愛あい（しょうにあい）・児童じどう性愛せいあい（じどうせいあい）・婉曲えんきょく的てきに幼児ようじ好すき（ようじずき）がある。思春期ししゅんきの子こどもへの性的せいてき嗜好しこうはエフェボフィリア（英えい: ephebophilia）という。

医学いがく的てき疾患しっかん（性せい嗜好しこう障害しょうがい）を指さすが、欲求よっきゅう不満ふまんで日常にちじょう生活せいかつに支障ししょうをきたすか、児童じどうとの性行為せいこういを試こころみるような社会しゃかい不適合ふてきごうをきたしていないペドフィリア的てき性的せいてき嗜好しこう、優先ゆうせん的てきもしくは排他はいた的てきではない小児しょうにへの性的せいてき関心かんしん、児童じどう性せい虐待ぎゃくたい（チャイルド・モレステーション）を指さして用もちいられる場合ばあいがあるが、誤用ごようである。

概念がいねん[編集へんしゅう]

言葉ことばと概念がいねんの由来ゆらい[編集へんしゅう]

ペドフィリア（pedophilia）は、ギリシア語ごで「子こども」を意味いみする「πぱいαあるふぁῖς, παιδός (paîs, paidós)」と、「友好ゆうこう的てきな愛あい」もしくは「友情ゆうじょう」を意味いみする「φιλία (philía)」を組くみ合あわせた言葉ことばである[3]。

ペドフィリアは歴史れきし上じょう、古ふるくから存在そんざいしていたと考かんがえられるが、概念がいねんの命名めいめい、定義ていぎ、研究けんきゅうは19世紀せいきに始はじまる。

精神せいしん医学いがく上うえの概念がいねんとしては、精神せいしん病理びょうりに対たいし深ふかい識見しきけんを備そなえていたウィーン大学だいがく教授きょうじゅリヒャルト・フォン・クラフト＝エビングが、1886年ねんの著書ちょしょ「性的せいてき精神せいしん病理びょうり」において最初さいしょに提唱ていしょうしたとされる。同書どうしょでは、児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたい者ものの司法しほう精神せいしん医学いがく的てき分析ぶんせきなどがなされている。また、大人おとなの男女だんじょからの少年しょうねんへの性的せいてき虐待ぎゃくたいにも触ふれられている。ジークムント・フロイトの1905年ねんの著作ちょさく「性せい理論りろんに関かんする三みっつのエッセイ」では、純粋じゅんすいな小児しょうに性愛せいあい者しゃは稀まれであり、その中なかでは思春期ししゅんき前まえの少女しょうじょが対象たいしょうとなることが多おおいと記しるされている[4]。オーギュスト・フォーレルはクラフト＝エビングとは異ことなり、1908年ねんに小児しょうに性愛せいあい者しゃ（"Pederosis"）は矯正きょうせい可能かのうではないとの考察こうさつを記しるしている[5]。 また、異常いじょう心理しんり学がくでは、「性せいの異常いじょう心理しんり」として「性せい対象たいしょう異常いじょう」の下位かい範疇はんちゅうにおいて児童じどう・小児しょうにを性愛せいあいの対象たいしょうとする性せい倒錯とうさくとして位置付いちづけられた。20世紀せいき半なかばまで、精神せいしん医学いがくにおいても性せい倒錯とうさくとして把握はあくされたが、今日きょうの精神せいしん医学いがくにおいては、性せい嗜好しこう障害しょうがいとされる。 20世紀せいき初頭しょとうには、pedophiliaの語かたりは広ひろく定着ていちゃくしてゆき、多おおくの医学いがく辞典じてん（例たとえば1918年ねんの「tedman's Medical Dictionary第だい5版はん」など）に掲載けいさいされるようになった。1952年ねんには、「精神せいしん障害しょうがいの診断しんだんと統計とうけいマニュアル第だい1版はん（DSM-I）」にもペドフィリアの概念がいねんが掲載けいさいされた[6] 。DSM-IおよびDSM-IIでは、性的せいてき倒錯とうさくの一種いっしゅであると分類ぶんるいされ、診断しんだん基準きじゅんは掲載けいさいされなかったが、1980年ねんのDSM-IIIでは詳細しょうさいの記述きじゅつと診断しんだんのガイドラインも掲載けいさいされ[7]、1987年ねんの改訂かいてい版ばんDSM-III-Rでは診断しんだん基準きじゅんが更新こうしんされた[8]。

現在げんざいの精神せいしん医学いがくでの概念がいねん[編集へんしゅう]

ペドフィリア
概要がいよう
診療しんりょう科か 精神せいしん医学いがく, 心理しんり学がく
分類ぶんるいおよび外部がいぶ参照さんしょう情報じょうほう
ICD-10 F65.4
ICD-9-CM 302.2
MeSH D010378
「精神せいしん障害しょうがい#定義ていぎ」も参照さんしょう

WHOの疾病しっぺい及および関連かんれん保健ほけん問題もんだいの国際こくさい統計とうけい分類ぶんるい11版はん（ICD-11）では、ペドフィリア障害しょうがいは、持続じぞく的てきな性的せいてき想像そうぞう、夢想むそう、衝動しょうどう、もしくは行動こうどうにより明あきらかになる、持続じぞく的てきで、集中しゅうちゅう的てきで、かつ二に次じ性徴せいちょう前まえの児童じどうに関かんする性的せいてき興奮こうふんの非常ひじょうに強つよい様式ようしきで特徴とくちょうづけられるとしている。

現在げんざい、米国べいこく精神せいしん医い学会がっかい (APA) の診断しんだん・統計とうけいマニュアル第だい5版はん（DSM-5）では小児しょうに性愛せいあい障害しょうがい (Pedophilic Disorder) に関かんして以下いかの記述きじゅつがある。DSM-IV-TR以前いぜんでは小児しょうに性愛せいあい (pedophilia) の診断しんだん名めいが使つかわれていた[9]。

  • 規準きじゅんA ： 少すくなくとも6ヶ月かげつ間あいだにわたり、思春期ししゅんき前まえの子こどもまたは複数ふくすうの子こども(通常つうじょう13歳さい以下いか)との性行為せいこういに関かんする強烈きょうれつな性的せいてきに興奮こうふんする空想くうそう、性的せいてき衝動しょうどう、または行動こうどうが反復はんぷくする。
  • 規準きじゅんB ： これらの性的せいてき衝動しょうどうを実行じっこうに移うつしたことがある、またはその性的せいてき衝動しょうどうや空想くうそうのために著いちじるしい苦痛くつう、または対人たいじん関係かんけい上じょうの困難こんなんを引ひき起おこしている。
  • 規準きじゅんC ： その人ひとは少すくなくとも16歳さいで、基準きじゅんAに該当がいとうする子こどもより少すくなくとも5歳さいは年長ねんちょうである。
    • 注記ちゅうき ： 青年せいねん期き後期こうきの人ひとが12-13歳さいの子こどもと性的せいてき関係かんけいをもっている場合ばあいは含ふくめないこと。

成人せいじんと性的せいてきに成熟せいじゅくした青年せいねんとの接触せっしょくは、とくに両者りょうしゃが同性どうせいの場合ばあいは社会しゃかい的てきに承認しょうにんされていないが、しかし必かならずしも小児しょうに性愛せいあいと関連かんれんするものではない。ただ1回かいの出来事できごとは、特とくに加害かがい者しゃ自身じしんが青年せいねんの場合ばあいには、診断しんだんにとって必要ひつような持続じぞく的てきあるいは支配しはい的てきな傾向けいこうの存在そんざいを証明しょうめいするものではない。しかしながら、小児しょうに性愛せいあい者しゃのうちには、成人せいじんの性的せいてきパートナーを愛好あいこうし続つづけながらも適切てきせつな接触せっしょくを得えるのに慢性まんせい的てきに挫折ざせつしているため、習慣しゅうかん的てきにその代理だいりとして小児しょうにに向むかう者ものが含ふくまれている。思春期ししゅんき以前いぜんの自分じぶんの子供こどもを性的せいてきにからかう者ものは、時ときに他たの子供こどもたちにも同様どうような近ちかづき方かたをするが、いずれの場合ばあいも彼かれらの行動こうどうは小児しょうに性愛せいあいを示唆しさするものである。[10]

（注ちゅう：DSM-IV-TRは「このマニュアルには精神せいしん障害しょうがいの分類ぶんるいを提示ていじしているが、「精神せいしん障害しょうがい」の概念がいねんに対たいして、正確せいかくな境界きょうかいを設定せっていするに十分じゅうぶんな定義ていぎは与あたえていない」と述のべている通とおり、DSM-IV-TRの記述きじゅつを単純たんじゅんに厳密げんみつな定義ていぎと捉とらえてはならない。診断しんだん規準きじゅんの提示ていじはあくまで参考さんこうの為ためで、資格しかくのない一般人いっぱんじんが診断しんだんを行おこなう為ためではない。

なお、日本にっぽんでは医学いがく上じょう18歳さい未満みまん（17歳さい以下いか）の者ものを小児しょうにに含ふくめているが(医学いがく上じょうの小児しょうにを何なん歳さいまでとするかは諸説しょせつある[11][12])、18歳さい未満みまんへの性的せいてき愛好あいこうのすべてが小児しょうに性愛せいあいとみられるわけではない。 日本にっぽんの学齢がくれいでは、13歳さいに達たっするのは中学校ちゅうがっこう1年生ねんせい～2年生ねんせい、5歳さい年長ねんちょうの18歳さいに達たっするのは高等こうとう学校がっこう3年生ねんせい～大学だいがく1年生ねんせい。11歳さいに達たっするのは小学校しょうがっこう5年生ねんせい～6年生ねんせい、5歳さい年長ねんちょうの16歳さいに達たっするのは高等こうとう学校がっこう1年生ねんせい～2年生ねんせい。16歳さい以上いじょうの人ひとと年齢ねんれい差さが4歳さいの場合ばあいは規準きじゅんに含ふくまないため、12歳さい～13歳さいの人ひとと16歳さいの人ひと、13歳さいの人ひとと17歳さいの人ひと、また16歳さい未満みまんの人ひとと13歳さい以下いかの人ひとの関係かんけいはペドフィリアの定義ていぎに含ふくまない。

性的せいてきに成熟せいじゅくする平均へいきん年齢ねんれいをめぐっては男女だんじょ共どもに低下ていか傾向けいこうにあり、1880年ねんの約やく18歳さいから、1980年ねんには12.5歳さいにまで低下ていかしている。性せい交渉こうしょうを初はじめて経験けいけんする年齢ねんれいと38個この遺伝子いでんし変異へんいとの間あいだには関連かんれん性せいがあり、遺伝子いでんし的てきな要因よういんにより「人ひとが性交せいこうを始はじめる年齢ねんれい差さの約やく25%を説明せつめいできる」[13][14][15][16]。総合そうごう的てき臨床りんしょう見地けんちによって診断しんだんが行おこなわれるのは前述ぜんじゅつの通とおりであるが、16 - 17歳さいの者ものへの性的せいてき愛好あいこうが小児しょうに性愛せいあいとされるのはむしろまれである。

年齢ねんれい・学齢がくれい早見はやみ表ひょう
児童じどう満年齢まんねんれい 学年がくねん 満年齢まんねんれい 学年がくねん
11歳さい以下いか 小学校しょうがっこう5年ねん～小学校しょうがっこう6年ねん以下いか 16歳さい以上いじょう 高等こうとう学校がっこう1年ねん～高等こうとう学校がっこう2年ねん以上いじょう
12歳さい以下いか 小学校しょうがっこう6年ねん～中学校ちゅうがっこう1年ねん以下いか 17歳さい以上いじょう 高等こうとう学校がっこう2年ねん～高等こうとう学校がっこう3年ねん以上いじょう
13歳さい以下いか 中学校ちゅうがっこう1年ねん～中学校ちゅうがっこう2年ねん以下いか 18歳さい以上いじょう 高等こうとう学校がっこう3年ねん～大学だいがく1年ねん以上いじょう

割合わりあい[編集へんしゅう]

二に次じ性徴せいちょう前まえ（もしくは操作そうさ的てきに特定とくてい年齢ねんれい未満みまん）の児童じどうに対たいしても性的せいてき興味きょうみも持もつペドフィリア的てき性的せいてき関心かんしん、二に次じ性徴せいちょう前まえの児童じどうに対たいして優先ゆうせん的てきもしくは排他はいた的てきな性的せいてき関心かんしんを持もつペドフィリア的てき性的せいてき嗜好しこう、ペドフィリア的てき性的せいてき嗜好しこうの中なかで社会しゃかい不適合ふてきごうになっているペドフィリアの人々ひとびとの割合わりあいに関かんしての研究けんきゅうや調査ちょうさ報告ほうこくがある。

  • 日本にっぽんでは唯一ゆいいつNHKによる調査ちょうさが存在そんざいする。『日本人にっぽんじんの性せい行動こうどう・性せい意識いしき』[17]では13歳さい未満みまんの相手あいてとのセックスについて、「してみたい」、「どちらかといえばしてみたい」、「どちらかといえばしたくない」、「したくない」、「実際じっさいにしたことがある」、「無む回答かいとう」の選択肢せんたくしでアンケートを行おこなった。「してみたい」と積極せっきょく的てき肯定こうてい回答かいとうした男性だんせいは、10代（16 - 19歳さい）6%、20代だい5%、30代だい4%、40代だい1%、50代だい8%、60代だい0%であった。他方たほう、女性じょせいにおいては、積極せっきょく的てき肯定こうてい回答かいとうはすべての層そうでほぼゼロに近ちかく、消極しょうきょく的てき肯定こうてい回答かいとうも10代に2%が見みられるのみである。これらについて、10代-40代だいでは「どちらかといえばしてみたい」の消極しょうきょく的てき肯定こうていも、積極せっきょく的てき肯定こうていとほぼ同数どうすうかそれ以上いじょうあった。「無む回答かいとう」は30代だい以下いかでは1割わり以下いかだが、年齢ねんれいと共ともに大おおきく増加ぞうかし、60代だいでは半数はんすうに迫せまった。「無む回答かいとう」の比率ひりつは、各かく年代ねんだいとも男女だんじょ間あいだに大おおきな差さは見みられない。
  • アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくにおけるキンゼイ報告ほうこく（1975年ねん）での調査ちょうさ及および、他たの研究けんきゅう[18]が示しめす数字すうじでは、成人せいじん男性だんせいの少すくなくとも25%が小児しょうにに対たいし性的せいてき魅力みりょくを感かんじていると述のべている。
  • ドイツの匿名とくめいパネルデータのオンライン調査ちょうさ[19]によると、4.1%の男性だんせいが二に次じ性徴せいちょう前まえの児童じどうとの性行為せいこういを夢想むそうし、0.1%がペドフィリア的てき性的せいてき嗜好しこうを持もっており、さらに社会しゃかい不適合ふてきごうになる性せい嗜好しこう障害しょうがいのペドフィリアは0.06%であった。
  • カルフォルニア大学だいがくロサンゼルス校こう心こころ理学部りがくぶポール＝オーカミによれば性欲せいよくの第だい一いちの対象たいしょうが思春期ししゅんき前まえの子こどもだというアメリカ人じんの割合わりあいは1%前後ぜんごだという。ただし「小児しょうに性愛せいあい者しゃ」の意味いみは法令ほうれいや心理しんり学者がくしゃの判断はんだん、記者きしゃの偏見へんけんによって左右さゆうされるため、人口じんこうに占しめる小児しょうに性愛せいあい者しゃの割合わりあいは1%・5%・21%・50%、いずれも正ただしいという。
  • ペドフィリア（小児しょうに性愛せいあい）が異常いじょうあるいは精神せいしん障害しょうがい（Mental Disorder）かどうかについては、議論ぎろんの余地よちがある。かつてAPAの精神せいしん障害しょうがい診断しんだん基準きじゅん DSMから同性愛どうせいあいを外はずすことに尽力じんりょくしたリチャード・グリーン（Richard Green）等とうは、小児しょうに性愛せいあい感情かんじょうを持もつ一般人いっぱんじんは、20-25%存在そんざいし、小児しょうに性愛せいあい的てき刺激しげき物ぶつへの反応はんのう率りつは27.7%と、広範こうはんに存在そんざいすることから、ペドフィリアをDSMより取とり除のぞくことを主張しゅちょうしている[20]。

類型るいけい[編集へんしゅう]

一般いっぱんに報告ほうこくされている事例じれいでは、男性だんせいの小児しょうに性愛せいあい者しゃのケースが、女性じょせいのそれを明あきらかに圧倒的あっとうてきに上回うわまわっている。

また、DSM-IVは、診断しんだんにおける補足ほそく項目こうもくとして、次つぎのような三みっつのポイントについて留意りゅういし記載きさいするよう奨すすめている。

  1. 小児しょうに性愛せいあい者しゃが対象たいしょうとする児童じどうについて：a）女児じょじのみを対象たいしょうとするか、b）男児だんじのみを対象たいしょうとするか、c）男女だんじょに関係かんけいなく対象たいしょうとして性的せいてきに誘引ゆういんされるか。
  2. 対象たいしょう児童じどうとの関係かんけいが、「近親きんしん姦かん」となるか否ひか。
  3. 性愛せいあい対象たいしょうにおけるヴァリエーション：つまり、a）もっぱら児童じどうのみを対象たいしょうとして、成人せいじんや若わかい青年せいねん、少年しょうねん・少女しょうじょに性的せいてき嗜好しこうを持もたないか、b）性的せいてき嗜好しこう対象たいしょうが、児童じどうのみではなく、広ひろがりを持もつか。

小児しょうに性愛せいあいの類型るいけいは明あきらかに存在そんざいすると思おもわれている。しかし現在げんざい、その素因そいんや他たの性せい嗜好しこうとの相関そうかん等とうについて、実証じっしょう的てきに確認かくにんできるものはないに等ひとしく、定さだまった説せつはない。

原因げんいん[編集へんしゅう]

ペドフィリアはそうなりたくてなるものではなく、貧富ひんぷ・教育きょういく・宗教しゅうきょう・性別せいべつ問とわず、世界中せかいじゅうに存在そんざいしている[21]。その原因げんいんはわかっておらず、先天的せんてんてきなものか後天的こうてんてきなものかに関かんしても結論けつろんは出でていない[22][23][24]。

ペドフィリアは児童じどうポルノとの関係かんけいがよく議論ぎろんされており、その因果いんが関係かんけいに関かんしてはさまざまな主張しゅちょうがある[25][26][27][28]。

小児しょうに性愛せいあい障害しょうがいと診断しんだんされた人ひとは、生うまれながらにして子こどもへの性せい嗜好しこうを最初さいしょから有ゆうしていたわけではなく、多おおくの場合ばあい、児童じどうポルノを通とおして「子こどもは性的せいてきな存在そんざいである」という認識にんしきを強化きょうかし、認知にんちを歪ゆがめていくとする考察こうさつもある[25][29]。性せい犯罪はんざいに関かんする加害かがい者しゃ臨床りんしょうを専門せんもんとする斉藤さいとう章あきら佳けいによれば、児童じどうを対象たいしょうとしたポルノを見みる行為こういを繰くり返かえし重かさねると、「小児しょうに＝性的せいてき対象たいしょう」だと無意識むいしきに刷すり込こまれて、行動こうどう化かへのハードルが格段かくだんに低ひくくなるという[30]。そのため「児童じどうポルノがあるから現実げんじつの子こどもに被害ひがいがいかない」「現実げんじつとファンタジーの区別くべつはついている」という認識にんしきは誤あやまりであると語かたっている[29]。ペドフィリア当事とうじ者しゃのヒアリングでは、95%が「児童じどうポルノが加害かがい行為こういのトリガーになる」と答こたえた[31]。小児しょうに性愛せいあい者しゃは正常せいじょうな人ひとと比くらべて精神病せいしんびょう質しつと認知にんちの歪ゆがみを高たかく示しめすことが報告ほうこくされている[32]。小児しょうに性愛せいあい者しゃではない児童じどう性せい虐待ぎゃくたい者しゃは精神病せいしんびょう質しつの傾向けいこうがあるが、小児しょうに性愛せいあい者しゃはその傾向けいこうはなかったという研究けんきゅうもある[33][34]。

一方いっぽうで、ハワイ大学はわいだいがくのミルトン・ダイアモンドは「児童じどうポルノの合法ごうほう化かは子こどもへの性的せいてき虐待ぎゃくたいの発生はっせい率りつの低下ていかと関連かんれんがある」と示しめした[35]。そのため、準じゅん児童じどうポルノの提供ていきょうを提案ていあんしている[35]。

児童じどうポルノの利用りようが必かならずしも現実げんじつの未成年みせいねん者しゃへの性的せいてきな行動こうどうに直結ちょっけつするとも限かぎらず、研究けんきゅうでも明確めいかくな結論けつろんは出でていないため、軽率けいそつな一般いっぱん化かをしないように注意ちゅうい喚起かんきもされている[36]。

小児しょうに性愛せいあいに関かんする情報じょうほうを提供ていきょうする支援しえんプロジェクト「PedoHelp」や、小児しょうに性愛せいあい者しゃのためのサポートグループ「Virtuous Pedophile」では、児童じどうを性的せいてきに扱あつかった写真しゃしんや動画どうがから離はなれるように助言じょげんされている[22][37]。

性せい障害しょうがい専門せんもん医療いりょうセンターSOMECの福井ふくい裕ひろし輝てるは、子こどもにしか興味きょうみがない「純粋じゅんすい型がた」と、大人おとなに興味きょうみはあるがなにかしらの理由りゆうで性的せいてき欲求よっきゅうが子こどもに向むかう「非ひ純粋じゅんすい型がた」の2種類しゅるいのうち、純粋じゅんすい型がたについては、遺伝いでん性せいが高たかい3つくらいの遺伝子いでんしが関係かんけいしているのではないかと推測すいそくされているとし、親おやがそうでなくても、遺伝子いでんしによる先天的せんてんてきな特徴とくちょうであり、非ひ純粋じゅんすい型がたについては、ストレスや、成人せいじん女性じょせいに相手あいてにされないといった環境かんきょう的てき要因よういんが大おおきいと語かたる[38]。

Fiona DyshnikuやRachel L Fazioらによる、小児しょうに性愛せいあい者しゃの遺伝いでん的てき、身体しんたい的てきな特徴とくちょうに関かんする研究けんきゅうも行おこなわれている[39][40][41]。

小児しょうに性愛せいあい者しゃは内気うちきやうつ病びょうである傾向けいこうが高たかいと報告ほうこくされている[42]。司法しほう心理しんり学がくコンサルタントのデレク・パーキンス教授きょうじゅは、「小児しょうに性愛せいあいは精神せいしん障害しょうがいと認定にんていされている。本人ほんにんの意志いしで選えらぶものではない」「小児しょうに性愛せいあいを行動こうどうに移うつさずにやっていける人ひとも多おおい」としている。また、カナダの臨床りんしょう心理しんり学者がくしゃであるジェームズ・カンター博士はかせは、脳のう内ないの「混こん線せん」が原因げんいんだとし、妊娠にんしん初期しょきの段階だんかいで胎児たいじの脳のうがどのように形成けいせいされるかが鍵かぎだと主張しゅちょうしている[43][44]。

小児しょうに性愛せいあい者しゃの多おおくは子こどものときに性的せいてき虐待ぎゃくたいを受うけた経験けいけんがあるという主張しゅちょうも流布るふされているが、研究けんきゅうではそれは否定ひていされている[45]。

小児しょうに性せい犯罪はんざい者しゃとの違ちがい[編集へんしゅう]

「チャイルド・マレスター」も参照さんしょう

ペドフィリア（小児しょうに性愛せいあい）という用語ようごは子こどもへの性せい犯罪はんざいを行おこなう者ものに対たいして一般いっぱん的てきによく使つかわれる[46][47]。しかし、子こどもに対たいし優先ゆうせん的てきもしくは排他はいた的てきな性的せいてき関心かんしんを抱いだく人間にんげんを小児しょうに性愛せいあい者しゃ (ペドファイル、pedophile) といい、子こどもに対たいして性的せいてきな虐待ぎゃくたいを行おこなう犯罪はんざい者しゃを小児しょうに性せい犯罪はんざい者しゃ（チャイルド・マレスター）とは区別くべつされる[48]。

ペドフィリアは小児しょうに性せい犯罪はんざい者しゃを説明せつめいする重要じゅうような要因よういんとして科学かがく的てきにも広ひろく認知にんちされている[49]。一般いっぱん的てきにチャイルド・マレスターのうち25 - 50%の範囲はんいの者ものがペドフィリアであると推定すいていされている[50]。2006年ねんの調査ちょうさによれば、チャイルド・マレスターのサンプルのうち35%がペドフィリアであった[51]。人口じんこうに占しめるペドファイルの比率ひりつは1%未満みまんと考かんがえられており、極きわめて高たかい児童じどう性せい虐待ぎゃくたいの相対そうたいリスクとなる。小児しょうに性愛せいあい犯罪はんざいを犯おかしたペドファイルが一部いちぶの犯罪はんざいにおいて一般いっぱんと比くらべて大幅おおはばに高たかい再犯さいはん率りつを示しめすため、ペドファイルの危険きけん性せいは変かわらないが、性的せいてき嗜好しこうだけが原因げんいんとは限かぎらないい[48][52]。また、ペドフィリア的てき性的せいてき嗜好しこうのない者ものが児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたいを行おこなうことも多おおくある[53][54][55]。例たとえば、ストレス、夫婦ふうふ問題もんだい、成人せいじんパートナーと接触せっしょく不能ふのう、反はん社会しゃかい的てき傾向けいこう、強つよい性欲せいよく、アルコールなどが原因げんいんになることもある[56][57]。児童じどう性せい虐待ぎゃくたい研究けんきゅう者しゃでアメリカアルフレッド大学だいがくコミュニケーション学がく助教授じょきょうじゅのパメラ・D・シュルツは『9人にんの児童じどう性せい虐待ぎゃくたい者しゃ』の中なかで、実害じつがいを及およぼしている者もの（チャイルド・マレスター）の7割わりはペドフィリアの傾向けいこうがないという調査ちょうさ結果けっかを記載きさいしている。

研究けんきゅうの限界げんかいを指摘してきする意見いけんもある。ペドフィリアに関かんする研究けんきゅうのほとんどが子こどもに対たいする犯罪はんざいで有罪ゆうざい判決はんけつを受うけた男性だんせいを対象たいしょうとしており[58][59]、本来ほんらいのペドフィリアにおいて問題もんだい視しされる性的せいてき虐待ぎゃくたいとは、必かならずしも身体しんたい的てき虐待ぎゃくたいをともなうものだけでなく、子こどもに性的せいてき欲求よっきゅうを押おし付つける行為こうい自体じたいも含ふくめられ[60]、児童じどうの性的せいてき虐待ぎゃくたい自体じたいがそもそもほとんど報告ほうこくされないこと、さらに子こどもに危害きがいを加くわえていない小児しょうに性愛せいあい者しゃの存在そんざいがほぼ可視かし化かされていないこと、これらの理由りゆうでペドフィリアの既存きそん研究けんきゅうには大おおきなデータの欠落けつらくがあると問題もんだい視しされている[45]。ただし、全ぜん人口じんこうに占しめるペドファイルの割合わりあいの調査ちょうさはあり[61]、ペドフィリアだけが逮捕たいほ・有罪ゆうざいになりやすい理由りゆうはないため、これらの批判ひはんはペドフィリアの危険きけん性せいを疑うたがわせるものではない。

治療ちりょうと支援しえん[編集へんしゅう]

ペドフィリアは、激はげしい怒いかり・恐怖きょうふ・拒絶きょぜつの対象たいしょうになりやすく、世間せけんでは悪あくや罪つみとみなされやすい[62]。精神せいしん障害しょうがいの中なかでも最もっとも社会しゃかい的てきスティグマを背負せおっているもののひとつとされる[63]。1998年ねん、3人にんの心理しんり学者がくしゃがアメリカ心理しんり学がく協会きょうかい（APA）の学術がくじゅつ雑誌ざっし『Psychological Bulletin』に、「大人おとなとの未成年みせいねん者しゃの性行為せいこういは必かならずしも害がいにはならない。強要きょうよう・強制きょうせいされる行為こういとそうでないものとを分わけて考かんがえる必要ひつようがある」という内容ないようの論文ろんぶんを発表はっぴょうし、これに対たいして連邦れんぽう議会ぎかいの両院りょういんがその論文ろんぶんを強つよく非難ひなんする決議けつぎ案あんを可決かけつ、ミシガン大学だいがく教授きょうじゅのブライアン・キムバトラーはこの連邦れんぽう議会ぎかいの対応たいおうについて苦言くげんを呈ていした[64]。

小児しょうに性愛せいあいに関かんする情報じょうほうを提供ていきょうする支援しえんプロジェクト「PedoHelp」では、小児しょうに性愛せいあい者しゃは怪物かいぶつや虐待ぎゃくたい者しゃではなく支援しえんを必要ひつようとする人ひとであると説明せつめいしている[65]。

児童じどうへ性的せいてきな接触せっしょくはしないと主張しゅちょうするペドフィリアの人ひとたちは苦悩くのうと不安ふあんを抱かかえ、自己じこ嫌悪けんおや自殺じさつを考かんがえるケースもある[43]。小児しょうに性愛せいあい者しゃの約やく46％が自身じしんの性的せいてき関心かんしんが原因げんいんで自殺じさつを考かんがえたことがあるとの調査ちょうさ結果けっかもある[63]。

そのためできるだけ早はやい時期じきに医療いりょうの助たすけが必要ひつようとされ、専せん門もんのセラピストを紹介しょうかいする慈善じぜん団体だんたいもあるが、支援しえん制度せいどは不十分ふじゅうぶんで、ペドフィリア当事とうじ者しゃもなかなか専門せんもん家かに相談そうだんしようとしないことがある[43]。また、自分じぶんの意思いしで行動こうどうを抑おさえられず、逮捕たいほされないかぎりずっと性せい犯罪はんざい行為こういを続つづける傾向けいこうが強つよい[31]。その理由りゆうとして、児童じどうへの性的せいてき接触せっしょくを悪わるいことであると認識にんしきせず、「純粋じゅんすいな愛情あいじょうだ」「性教育せいきょういくのため」「相手あいても望のぞんでいた」などと正当せいとう化かすることも挙あげられる[30][58][66]。さらに事件じけんが報ほうじられた際さい、「（被害ひがい者しゃである）児童じどうが悪わるい」と非難ひなんする声こえもインターネット上じょうでたびたびあがるように、児童じどう側がわの「非行ひこう」として片かたづけようとする人ひともいる[67]。これらの思考しこうの背後はいごには、反はん社会しゃかい性せいパーソナリティ障害しょうがいまたは自己じこ愛あい性せいパーソナリティ障害しょうがいが一部いちぶある可能かのう性せいも指摘してきされている[58]。

ペドフィリアの治療ちりょうは薬物やくぶつ療法りょうほうもあるものの、基本きほんは「行動こうどう変容へんよう」と「認知にんちのゆがみ」の観点かんてんから認知にんち行動こうどう療法りょうほうのアプローチをとり、とにかく問題もんだい行動こうどうを止とめることが優先ゆうせんされる[23]。アメリカのメーガン法ほうでは、GPS着用ちゃくようによる位置いち把握はあくや、法定ほうてい雇用こよう主ぬしへの情報じょうほう開示かいじ、ネットでの個人こじん情報じょうほうの公開こうかいなどを小児しょうに性せい犯罪はんざい者しゃに対たいして実施じっししているが、これによって孤立こりつし、再犯さいはんが起おきる可能かのう性せいもあり、継続けいぞく的てきな治療ちりょう教育きょういくを組くみ合あわせないと意味いみがないと指摘してきする専門せんもん家かの声こえもある[23]。

宗教しゅうきょう[編集へんしゅう]

ユダヤ教きょう[編集へんしゅう]

ユダヤ教きょうのタルムードによると、少女しょうじょは3歳さいと1日にちを経へれば結婚けっこんをすることができた。ミシュナーの『ニッダー』44bと『サンヘドリン』55bによると、父親ちちおやが許可きょかした場合ばあいは、3歳さいと1日にちの少女しょうじょは相手あいてと性交せいこうすることによって婚約こんやくが遂行すいこうされる[68][69]。また、『アヴォダー・ザラー』によると、星辰せいしん崇拝すうはい者しゃの少女しょうじょは3歳さいと1日にちで性行為せいこういをすることができるという[70]。3歳さい以下いかの少女しょうじょの処女しょじょ膜まくは何なん度ど破やぶられても再生さいせいすると考かんがえられていたため、3歳さい以下いかの少女しょうじょと性行為せいこういをした成人せいじん男性だんせいは、木片もくへんで自みずから処女しょじょ膜まくを傷きずつけた女性じょせいと同おなじ200ヅヅの結婚けっこん契約けいやく額がくに値あたいすると『ケトゥボット』は記述きじゅつしている[71]。

ミシュナーでは「乳首ちくびが縮ちぢむ」という言葉ことばを「乳房ちぶさが出でる」という意味いみで用もちいており[72]、12歳さい半はんと1日にち以後いごの少女しょうじょは「乳首ちくびが縮ちぢむ」時期じきと考かんがえられ、そのような少女しょうじょはボゲレトと呼よばれた。12歳さいと1日にちから12歳さい半はんと1日にちまでの少女しょうじょは陰毛いんもうが2本ほん生はえるとされ、そのような少女しょうじょはナアラーと呼よばれる。12歳さい半はんと1日にち以下いかの少女しょうじょはクタンナーという。結婚けっこん相手あいてとしての女性じょせいはこの3つの年齢ねんれい帯たいに区分くぶんされ、それぞれの区分くぶんに応おうじて結婚けっこんの際さいに結むすぶ契約けいやくの内容ないようが変化へんかした[73]。

キリスト教きりすときょう[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「カトリック教会きょうかいの性的せいてき虐待ぎゃくたい事件じけん」を参照さんしょう

イスラーム[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「イスラーム世界せかいの少年しょうねん愛あい」および「イスラームと児童じどう性愛せいあい」を参照さんしょう

ヒンドゥー教きょう[編集へんしゅう]

ヒンドゥー教きょうでも、10歳さい前後ぜんこうの少女しょうじょとの結婚けっこん・セックスは広ひろく認みとめられていた。現代げんだいでも農村のうそん部ぶでは、10歳さい前後ぜんこうの少女しょうじょとの結婚けっこん・セックスが見みられる。

関連かんれん書籍しょせき[編集へんしゅう]

  • Faller, Kathleen Coulborn : Child Sexual Abuse, (Columbia University Press) ISBN 0231064713
  • Groth, A. Nicholas, Birnbaum, H. Jean : Men Who Rape: The Psychology of the Offender, (Perseus Publishing, October 2001) ISBN 0738206245

出典しゅってん・注記ちゅうき[編集へんしゅう]

[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]
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参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

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