この項目 こうもく では、哺乳類 ほにゅうるい の動物 どうぶつ について説明 せつめい しています。その他 た の用法 ようほう については「ヤギ (曖昧 あいまい さ回避 かいひ ) 」をご覧 らん ください。
山羊 やぎ 。
ヤギの鳴 な き声 ごえ
ヤギ (山羊 やぎ 、野羊 やぎ 、英 えい : Goat )は、ウシ科 か ヤギ属 ぞく (Capra )の動物 どうぶつ の総称 そうしょう である[1] 。
狭義 きょうぎ には家畜 かちく 種 たね Capra hircus (分類 ぶんるい によっては C. aegagrus の亜種 あしゅ Capra aegagrus hircus )を指 さ す[1] 。
アルガンノキ に登 のぼ る山羊 やぎ 。
家畜 かちく としてのヤギは大人 おとな しくてあまり動 うご かない草食 そうしょく 動物 どうぶつ というイメージがあるが、本来 ほんらい は非常 ひじょう に俊敏 しゅんびん で行動 こうどう 的 てき である。全体 ぜんたい 的 てき に高 たか くて狭 せま い場所 ばしょ 、特 とく に山岳 さんがく 地帯 ちたい の岩場 いわば などを好 この む種 しゅ が多 おお く、人間 にんげん が登 のぼ れないような急 きゅう な崖 がけ においても、ヤギは素早 すばや く登 のぼ ることができる。
古 ふる くから人類 じんるい に親 した しまれている家畜 かちく ではあるが、人馴 ひとな れしていない個体 こたい は見知 みし らぬ者 もの を見 み ると攻撃 こうげき してくることがあり、その際 さい の突進 とっしん の力 ちから は強力 きょうりょく なものであるため、不用意 ふようい に近 ちか づくと怪我 けが をするので要注意 ようちゅうい である。
ヤギは、幸 しあわ せな人 ひと の写真 しゃしん と怒 おこ っている人 ひと の写真 しゃしん を区別 くべつ できることから、ヤギが人間 にんげん の感情 かんじょう 状態 じょうたい を認知 にんち することができると示唆 しさ されている[2] 。
ヤギ(やぎ)は大和言葉 やまとことば であるが、漢字 かんじ では中国 ちゅうごく 語 ご と同 おな じ「山羊 やぎ 」を使 つか う。
肉食 にくしょく 獣 じゅう への警戒 けいかい で広 ひろ い水平 すいへい 視野 しや 角 かく を必要 ひつよう とすることから、瞳孔 どうこう は水平 すいへい に長 なが く、頭 あたま を50度 ど 以上 いじょう 傾 かたむ けても水平 すいへい を保 たも つようになっている[3] [4] 。
基本 きほん 的 てき に歪曲 わいきょく した2本 ほん の角 かく を持 も つ。まれに突然変異 とつぜんへんい で多角 たかく (英語 えいご 版 ばん ) になる場合 ばあい (polycerate goat)もある。角 かく は、防衛 ぼうえい 、縄張 なわば りの維持 いじ 、群 む れの序列 じょれつ [5] 、体温 たいおん 調整 ちょうせい [6] に使 つか われる。
雄 ゆう は優性 ゆうせい 遺伝 いでん 、雌 めす は劣性 れっせい 遺伝 いでん でヒゲが生 は えるが、雌 めす も出産 しゅっさん などでホルモンバランスが崩 くず れるとヒゲが生 は え、雄 ゆう は去勢 きょせい されるとヒゲが比較的 ひかくてき 薄 うす くなる場合 ばあい がある[7] 。ヒゲがある方 ほう が雌 めす の好感 こうかん 度 ど が高 たか く、発情 はつじょう 期 き になると雄 ゆう はヒゲまわりに自分 じぶん の尿 にょう をつけて雌 めす へのアピールとする[8] 。
季 き 節 ぶし 繁殖 はんしょく で秋 あき に繁殖 はんしょく し、妊娠 にんしん 期間 きかん は約 やく 5か月 げつ (約 やく 150日 にち )である[9] [10] 。
乳首 ちくび は基本 きほん 的 てき に2個 こ [11] であるが、ヤギの品種 ひんしゅ によってばらつきがありボア種 しゅ ヤギ (英語 えいご 版 ばん ) になると8個 こ 持 も つ[12] [13] 。
ヤギは2倍 ばい 体 たい で、染色 せんしょく 体 たい 数 すう は2n=60である[14] 。
平均 へいきん 10‐15歳 さい とされる[15] 。
一般 いっぱん 的 てき にヤギは紙 かみ を食 た べるというイメージが強 つよ いが、ヤギが食 た べても問題 もんだい のない紙 かみ はコウゾ やミツマタ を原料 げんりょう にした伝統 でんとう 和紙 わし である。現代 げんだい の日本 にっぽん 文化 ぶんか にこのような和紙 わし が登場 とうじょう することは極 きわ めて稀 まれ で、製造 せいぞう 工程 こうてい において有害 ゆうがい な薬品 やくひん が添加 てんか される洋紙 ようし はヤギの胃 い では消化 しょうか できず、食 た べると腸閉塞 ちょうへいそく を起 お こして死 し に至 いた るため、決 けっ して与 あた えてはならない。
ヤギの目 め
ヤギの骨格 こっかく
首 くび にある肉 にく 垂 たれ
序列 じょれつ を決 き める戦 たたか い。
ヤギは家畜 かちく として大昔 おおむかし から飼育 しいく され、用途 ようと により乳 ちち 用 よう 種 しゅ 、毛 け 用 よう 種 しゅ 、肉用種 にくようしゅ 、乳 ちち 肉 にく 兼用 けんよう 種 しゅ などに分化 ぶんか し、その品種 ひんしゅ は数 すう 百 ひゃく 種類 しゅるい に及 およ ぶ。ヤギは粗食 そしょく によく耐 た え、険 けわ しい地形 ちけい も苦 く としない。そのような強靭 きょうじん な性質 せいしつ から、山岳 さんがく 部 ぶ や乾燥 かんそう 地帯 ちたい で生活 せいかつ する人々 ひとびと にとって貴重 きちょう な家畜 かちく となっている。
ユーラシア 内陸 ないりく 部 ぶ の遊牧民 ゆうぼくみん にとっては、ヒツジ 、ウシ 、ウマ 、ラクダ とともに5種 しゅ の家畜 かちく (五 ご 畜 )のひとつであり、特 とく にヒツジと比 くら べると乾燥 かんそう に強 つよ いため、西 にし アジア の乾燥 かんそう 地帯 ちたい では重要 じゅうよう な家畜 かちく であり、その毛 け がテント の布地 ぬのじ などに使 つか われる。
ヤギの乳質 にゅうしつ はウシに近 ちか く、乳 ちち 量 りょう はヒツジよりも多 おお い。明治 めいじ 以降 いこう 、日本 にっぽん でも数 すう 多 おお くのヤギが飼 か われ、「貧農 ひんのう の乳牛 にゅうぎゅう 」とも呼 よ ばれたが、高度 こうど 経済 けいざい 成長 せいちょう 期 き を境 さかい として減少 げんしょう 傾向 けいこう にある。しかし、近年 きんねん ではヤギの愛 あい らしさ、粗放 そほう 的 てき 飼育 しいく に耐 た えうる点 てん 等 とう が再 さい 評価 ひょうか されつつある。これを受 う けて、ヤギ愛好 あいこう 者 しゃ ・生産 せいさん 者 しゃ ・研究 けんきゅう 者 しゃ が一堂 いちどう に会 かい する「全国 ぜんこく 山羊 やぎ サミット 」[16] が年 とし に1回 かい 、日本 にっぽん 国内 こくない で毎年 まいとし 開催 かいさい 場所 ばしょ を変 か えて開催 かいさい されており、年々 ねんねん 盛況 せいきょう になっている。
家畜 かちく 化 か の歴史 れきし [ 編集 へんしゅう ]
ヤギは新 しん 石器 せっき 時代 じだい の紀元前 きげんぜん 7千 せん 年 ねん ごろの西 にし アジア の遺跡 いせき から遺骨 いこつ が出土 しゅつど しており、家畜 かちく 利用 りよう が始 はじ まったのはその頃 ころ と考 かんが えられている。したがって、ヤギの家畜 かちく 化 か はイヌ に次 つ いで古 ふる いと考 かんが えられる。しかしながら、野生 やせい 種 しゅ と家畜 かちく 種 しゅ の区別 くべつ が難 むずか しく、その起源 きげん については確定 かくてい 的 てき ではない。またパサン (ベゾアール)が家畜 かちく 化 か されたと考 かんが えられているが、ヤギ属 ぞく 他 た 種 たね との種 たね 間 あいだ 雑種 ざっしゅ に由来 ゆらい する説 せつ もある。
したがって、初 はじ めて搾乳 さくにゅう が行 おこな われた動物 どうぶつ はヤギと考 かんが えられ、チーズ やバター などの乳製品 にゅうせいひん も、ヤギの乳 ちち から発明 はつめい された。乳 ちち 用 よう のほか、肉 にく 用 よう としても利用 りよう され、皮 かわ や毛 け も利用 りよう される。群 む れを作 つく って移動 いどう するヤギは、遊牧民 ゆうぼくみん の生活 せいかつ にも都合 つごう が良 よ く、肉 にく や毛皮 けがわ 、乳 ちち を得 え ることを目的 もくてき として、家畜 かちく 化 か された結果 けっか 、分布 ぶんぷ 域 いき を広 ひろ げていったと考 かんが えられる。一方 いっぽう 、農耕 のうこう 文明 ぶんめい においては飼育 しいく されていたものの遊牧民 ゆうぼくみん ほどは重宝 ちょうほう しなくなった。ヤギは農耕 のうこう そのものには役 やく にたず、ヒツジ の方 ほう が肉 にく や毛皮 けがわ が良質 りょうしつ であり、また、新 あら たに家畜 かちく 化 か されたウシの方 ほう が乳 ちち が多 おお く農作業 のうさぎょう に適 てき していたからである。ただし、現在 げんざい でも多 おお くの品種 ひんしゅ のヤギが飼育 しいく されている。
宗教 しゅうきょう 上 じょう ウシやブタ を利用 りよう しない文化 ぶんか においても、重要 じゅうよう な家畜 かちく とされる。子 こ ヤギ(キッド)の革 かわ は脂肪 しぼう 分 ぶん が少 すく なく、現代 げんだい でも靴 くつ や手袋 てぶくろ を作 つく るのに用 もち いられるが、西洋 せいよう では12世紀 せいき 以降 いこう 、4-6週 しゅう の子 こ ヤギの革 かわ が、羊皮紙 ようひし の原料 げんりょう としてヒツジ革 かわ と競合 きょうごう した。
日本 にっぽん の在来 ざいらい 種 しゅ については、15世紀 せいき 頃 ころ に東南 とうなん アジア から持 も ち込 こ まれた小型 こがた 山羊 やぎ が起源 きげん とされる。また、ヤギは粗食 そしょく に耐 た えることから、18 - 19世紀 せいき の遠洋 えんよう 航海 こうかい 者 しゃ が重宝 ちょうほう して船 ふね に乗 の せ、ニュージーランド やオーストラリア 、ハワイ などに持 も ち込 こ んだ経緯 けいい がある。ペリー 艦隊 かんたい も小笠原諸島 おがさわらしょとう などにヤギを持 も ち込 こ んでいる。日本 にっぽん ザーネン種 たね については明治 めいじ 以降 いこう に欧米 おうべい より輸入 ゆにゅう された。1775 -1776年 ねん に蘭 らん 館 かん 医師 いし として日本 にっぽん に滞在 たいざい したスウェーデン 人 ひと カール・ツンベルク (トゥーンベリ)は、「彼 かれ らはヒツジもヤギも持 も っていない」と記 しる している。ただし琉球 りゅうきゅう 王国 おうこく や九州 きゅうしゅう では、既 すで に家畜 かちく 化 か されていたようである。また、後述 こうじゅつ のシバヤギは、キリシタン 部落 ぶらく と呼 よ ばれた集落 しゅうらく で飼 か われ、隠 かく れキリシタンの貴重 きちょう な食料 しょくりょう 源 げん となっていたとされる。
ヤギ属 ぞく の生息 せいそく 域 いき 分布 ぶんぷ を示 しめ す図 ず 。黄土 おうど 色 しょく が家畜 かちく ヤギの祖先 そせん 種 しゅ である C. aegagrus 。
ヤギの家畜 かちく 化 か の歴史 れきし は、ヒツジの家畜 かちく 化 か の歴史 れきし と同 おな じくらいに古 ふる く、(2007年 ねん 時点 じてん における)ほとんどの考古 こうこ 学者 がくしゃ が、前 ぜん 9千年紀 せんねんき 半 なか ば(PPNB前期 ぜんき (英語 えいご 版 ばん ) )に南東 なんとう アナトリア のタウルス山脈 さんみゃく 南 みなみ 麓 ふもと で、ヤギの家畜 かちく 化 か が始 はじ まったと考 かんが えている[17] 。ヤギの家畜 かちく 化 か の動機 どうき は、食用 しょくよう 肉 にく 、乳 ちち 、毛 け や毛皮 けがわ 、燃料 ねんりょう のための獣 しし 糞 くそ の取得 しゅとく にあったと考 かんが えられ、その他 た に、実証 じっしょう は難 むずか しいが犠牲 ぎせい 祭祀 さいし 目的 もくてき も有力 ゆうりょく である[17] 。
なお、ヤギ家畜 かちく 化 か の中心 ちゅうしん 地 ち については、タウルス山脈 さんみゃく 南 みなみ 麓 ふもと 説 せつ のほかには、中心 ちゅうしん 地 ち が複数 ふくすう にあったとする説 せつ もあり、具体 ぐたい 的 てき には家畜 かちく ヤギの祖先 そせん 種 しゅ である野生 やせい のヤギ(Capra aegagrus ) の生息 せいそく 域 いき であるザグロス山脈 さんみゃく 西部 せいぶ が挙 あ げられている[17] 。しかしながら、在地 ざいち の Capra aegagrus が分布 ぶんぷ しているコーカサスですら、タウルス山脈 さんみゃく 南 みなみ 麓 ふもと かザグロス山脈 さんみゃく 西部 せいぶ で家畜 かちく 化 か された家畜 かちく ヤギが前 まえ 8千年紀 せんねんき に人為 じんい 的 てき に移入 いにゅう されたことが、分子生物学 ぶんしせいぶつがく 的 てき 手法 しゅほう に基 もと づく研究 けんきゅう により示 しめ されている[18] 。また、20世紀 せいき 後半 こうはん 時点 じてん では、考古 こうこ 時代 じだい のイラン高原 こうげん におけるヤギ飼育 しいく については組織 そしき 的 てき な研究 けんきゅう がなされていない現状 げんじょう がある[19] 。
西 にし アジア各地 かくち の遺跡 いせき から出土 しゅつど した、古代 こだい の人類 じんるい がゴミとして捨 す てたヤギの骨 ほね の調査 ちょうさ に基 もと づくと、ヤギ肉 にく の消費 しょうひ 量 りょう は、PPNB後期 こうき 初頭 しょとう (前 ぜん 7,500~前 まえ 7,300年 ねん 頃 ごろ )までは、家畜 かちく ヤギより野生 やせい ヤギの方 ほう が多 おお かった[17] 。それでもヤギの家畜 かちく 化 か は進展 しんてん し、PPNB後期 こうき 末 まつ (前 ぜん 7,000年 ねん 頃 ごろ )になると、本来 ほんらい は野生 やせい ヤギのいなかった地域 ちいき にまで、東西 とうざい は地中海 ちちゅうかい 沿岸 えんがん からザグロス山脈 さんみゃく まで、南北 なんぼく はタウルス山脈 さんみゃく からネゲヴ地方 ちほう まで広 ひろ がる西 にし アジアに広 ひろ がった[17] 。
イラン高原 こうげん では、前 ぜん 7,000年 ねん 頃 ごろ にヤギを組織 そしき 的 てき に繁殖 はんしょく させていた痕跡 こんせき を示 しめ す遺跡 いせき が非常 ひじょう に多 おお く見 み つかっている[19] 。ユーラシア大陸 たいりく の東 ひがし 半分 はんぶん への、イラン高原 こうげん からの家畜 かちく ヤギの拡散 かくさん ルートは、シルクロード 経由 けいゆ で北 きた アジア 、モンゴル高原 こうげん へいたるルートと、ハイバル峠 とうげ 経由 けいゆ でインド亜 あ 大陸 たいりく へいたるルートの2ルートがあったとする説 せつ が一般 いっぱん 的 てき である[20] 。西 にし アジアを除 のぞ くアジア各地 かくち の在来 ざいらい 種 しゅ (近代 きんだい 以後 いご に移入 いにゅう された品種 ひんしゅ ではない種 たね )は、遺伝 いでん 距離 きょり (英語 えいご 版 ばん ) に基 もと づいてモンゴルのグループ、その他 た の東 ひがし アジアのクラスタ、南 みなみ ・東南 とうなん アジアのグループの3系統 けいとう に分 わ けることができ、遺伝 いでん 的 てき 多様 たよう 性 せい も内陸 ないりく 部 ぶ から沿岸 えんがん ・島嶼 とうしょ 部 ぶ へ行 い くにしたがって失 うしな われていく傾向 けいこう が見 み られ、通説 つうせつ は分子生物学 ぶんしせいぶつがく 的 てき 観点 かんてん とも矛盾 むじゅん しない[20] [21] 。
山羊 やぎ 刺 ざ し。
奄美 あまみ 大島 おおしま の山羊 やぎ 汁 じる 。
山羊 やぎ の乳 ちち しぼり。
ヤギ肉 にく は、牧畜 ぼくちく を行 おこな う地域 ちいき ではおおむねポピュラーな食肉 しょくにく で、羊 ひつじ 肉 にく と区別 くべつ されずラム ・マトン として利用 りよう されることも多 おお い。東南 とうなん アジア では煮込 にこ み(山羊 やぎ 汁 じる )が普通 ふつう で、ローストなどは一部 いちぶ 特殊 とくしゅ 種類 しゅるい の山羊 やぎ だけに見 み られる調理 ちょうり 法 ほう である。南 みなみ アジア ではカレー に使 つか われる。ベトナム では薄切 うすぎ りにして炒 いた め物 ぶつ にしたり、焼肉 やきにく にしたり、鍋 なべ 料理 りょうり にされる。中華人民共和国 ちゅうかじんみんきょうわこく では、雲南 うんなん 省 しょう 、広西 ひろせ チワン族 ぞく 自治 じち 区 く などで一般 いっぱん 的 てき で、毛 もう が黒 くろ い「黒 くろ 山羊 やぎ 」を鍋 なべ 料理 りょうり やスープにすることが多 おお い。台湾 たいわん では元 もと 代 だい から飼育 しいく の記録 きろく があり、屋台 やたい や専門 せんもん 店 てん で出 だ されている薬 くすり 膳 ぜん 羊 ひつじ 肉 にく という煮込 にこ み料理 りょうり に黒 くろ 山羊 やぎ などの肉 にく を使 つか う店 みせ もある。地中海 ちちゅうかい 沿岸 えんがん でも骨 ほね を煮 に てスープを取 と ることが行 おこな われる。ヤギ肉 にく には独特 どくとく の臭気 しゅうき があり、南 みなみ アジアのエスニック料理 りょうり ではにおい消 け しのため香辛料 こうしんりょう が発達 はったつ した。
日本 にっぽん においては、南西諸島 なんせいしょとう 以外 いがい ではあまり馴染 なじ みがないが、沖縄 おきなわ 県 けん ではヤギは沖縄 おきなわ 本島 ほんとう 等 ひとし でヒージャー 、宮古島 みやこじま でピンザ 、多良間島 たらましま でピンダ と呼 よ ばれ、郷土 きょうど 料理 りょうり である沖縄 おきなわ 料理 りょうり に一般 いっぱん 的 てき に用 もち いられ、汁物 しるもの (山羊 やぎ 汁 じる )や刺身 さしみ (山羊 やぎ 刺 ざ し)として食 た べられる。特 とく に睾丸 こうがん の刺身 さしみ は珍重 ちんちょう される。沖縄 おきなわ と同様 どうよう に鹿児島 かごしま 県 けん の奄美 あまみ 料理 りょうり (奄美 あまみ 地方 ちほう の奄美 あまみ 大島 おおしま 、徳之島 とくのしま 、喜界島 きかいじま など)やトカラ列島 れっとう などでも年越 としこ しや祝 いわ いの席 せき の御馳走 ごちそう として振 ふ る舞 ま われる。喜界島 きかいじま には、ヤギ汁 じる や刺身 さしみ の他 ほか にヤギ肉 にく を血液 けつえき 、野菜 やさい とともに炒 いた める「からじゅうり(唐 から 料理 りょうり )」という炒 いた め物 ぶつ がある。
沖縄 おきなわ のヤギ汁 じる は馴 な れない者 もの は受 う けつけないほどの強烈 きょうれつ な臭 くさ みがあり、臭 くさ み消 け しに大量 たいりょう のヨモギ (ふーちばー)等 とう を入 い れるが、徳之島 とくのしま や喜界 きかい 島 とう の島 しま ヤギは臭 くさ みが少 すく なく、臭 くさ み消 け しを大量 たいりょう に使 つか う必要 ひつよう がないといわれる。なお、奄美 あまみ 大島 おおしま の北部 ほくぶ や徳之島 とくのしま では現在 げんざい ヤギと呼 よ び、喜界島 きかいじま ではヤジー と呼 よ ぶが、江戸 えど 時代 じだい にはヒンジャ 、ヒンザ などと呼 よ ばれており[22] 、奄美 あまみ 大島 おおしま 南部 なんぶ の瀬戸内 せとうち 町 まち を中心 ちゅうしん にまだこの呼 よ び方 かた が残 のこ っている。
ヤギ乳 ちち と乳 ちち 加工 かこう 品 ひん [ 編集 へんしゅう ]
ヤギ乳 ちち は、10か月 げつ の授乳 じゅにゅう 期間 きかん 中 ちゅう の最盛 さいせい 期 き (たいていは四 よん 期間 きかん 中 ちゅう の第 だい 三 さん 期 き )で、平均 へいきん 2.7〜3.6キログラム(約 やく 2.8〜3.8リットル)、泌乳初期 しょき は多 おお く生産 せいさん され、終 おわ り頃 ごろ になると少 すく なくなる。乳 ちち 脂肪 しぼう は平均 へいきん 3.5% である[23] 。
バター やチーズ 、ヨーグルト などにも加工 かこう されるが、ヤギ乳 ちち は牛乳 ぎゅうにゅう アレルギー のある人 ひと の代替 だいたい 飲料 いんりょう として好 この んで用 もち いられていた。また、牛乳 ぎゅうにゅう よりも乳糖 にゅうとう が少 すく なく、消化 しょうか 性 せい に優 すぐ れ、芳醇 ほうじゅん な風味 ふうみ もあるため、アレルギーのいかんにかかわらず好 この む人 ひと は多 おお い。同様 どうよう に乳糖 にゅうとう を分解 ぶんかい しづらい多 おお くの犬 いぬ 、猫 ねこ 、その他 た ペット用 よう に、ヤギミルクが販売 はんばい されている。
牧民 ぼくみん はヤギの乳 ちち を様々 さまざま に加工 かこう して用 もち いる。ヤギ乳 ちち のチーズ はシェーヴルチーズ と呼 よ び、白色 はくしょく で軽 かる い食 しょく 感 かん をもち、軽 かる い酸味 さんみ と特有 とくゆう の香 かお りをもつものが多 おお い。フランス のクロタン(Crotin de Chavignol )、ピコドン(Picodon de l'Ardeche )などが有名 ゆうめい 。
風味 ふうみ を生 い かしたアイスクリーム なども製造 せいぞう されている。また、アトピー性 せい 皮膚 ひふ 炎 えん にも有効 ゆうこう といわれている。アメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく では、メイヤンバーグ社 しゃ がヤギのミルクや粉 こな ミルク を広 ひろ く流通 りゅうつう させており、米国 べいこく 内 ない の大手 おおて のスーパーでは大抵 たいてい 手 しゅ に入 はい る(粉 こな ミルクは日本 にっぽん の輸入 ゆにゅう 雑貨 ざっか 店 てん でも売 う られている)。
太平洋戦争 たいへいようせんそう 中 なか は、牛 うし に比 くら べて大 おお きさが手頃 てごろ なことから、日本 にっぽん でも多 おお くの民家 みんか でヤギの飼育 しいく が行 おこな われ、食肉 しょくにく やミルクの供給 きょうきゅう 源 げん となった。しかし、敗戦 はいせん 後 ご はGHQの指導 しどう によりヤギ乳 ちち に代 か わって牛乳 ぎゅうにゅう が普及 ふきゅう したために、日本 にっぽん 国内 こくない における現在 げんざい の生 せい のヤギ乳 ちち の生産 せいさん 高 だか は少 すく ない。
栄養 えいよう についての注意 ちゅうい
米国 べいこく 小児科 しょうにか 学会 がっかい は、ヤギ由来 ゆらい の乳児 にゅうじ 用 よう ミルクを止 と めさせている。2010年 ねん 4月 がつ のレポート「乳幼児 にゅうようじ 用 よう の新鮮 しんせん なヤギ乳 ちち :神話 しんわ と現実 げんじつ 」の勧告 かんこく を要約 ようやく すると、「文化 ぶんか 的 てき な信念 しんねん やネットの誤 あやま った情報 じょうほう で、多 おお くの乳児 にゅうじ に良 よ いと考 かんが えられているが、殺菌 さっきん 消毒 しょうどく されていない生 せい のヤギミルクは、生命 せいめい を脅 おびや かすアレルギー 反応 はんのう 、溶血 ようけつ 性 せい 尿毒症 にょうどくしょう 症候群 しょうこうぐん 、感染 かんせん 症 しょう などを引 ひ き起 お こす可能 かのう 性 せい がある。」と報告 ほうこく している。未 み 治療 ちりょう のヤギ・ブルセラ症 しょう の死亡 しぼう 率 りつ は2%とされる。またアメリカ合衆国 あめりかがっしゅうこく 農務 のうむ 省 しょう によると、含 ふく まれる鉄分 てつぶん 、ビタミンC 、ビタミンD 、チアミン 、ナイアシン 、ビタミンB6 、およびパントテン酸 さん が乳幼児 にゅうようじ の栄養 えいよう ニーズの量 りょう と合致 がっち せず、腎臓 じんぞう に害 がい を与 あた え、代謝 たいしゃ 障害 しょうがい や重度 じゅうど の貧血 ひんけつ と高 こう ナトリウム血 ち 症 しょう を引 ひ き起 お こす可能 かのう 性 せい があるため推奨 すいしょう していない[24] [25] 。英国 えいこく 保健 ほけん 省 しょう [26] 、カナダ保健 ほけん 省 しょう [27] も、生 せい のヤギ乳 ちち を乳幼児 にゅうようじ へ与 あた える事 こと への危惧 きぐ を勧告 かんこく している。
繊維 せんい として防寒 ぼうかん 着 ぎ や敷物 しきもの 、タペストリーなどに用 もち いられる。上述 じょうじゅつ のアンゴラ (モヘア)やカシミア (カシミアウール)は特 とく に有名 ゆうめい 。
ヤギの毛 け は筆 ふで の素材 そざい としても用 もち いられる。非常 ひじょう に柔 やわ らかく含 ふく みがよいので、直 じか に人 ひと の顔 かお に当 あ てる化粧 けしょう 筆 ひつ の素材 そざい として好 この まれる。書道 しょどう 筆 ひつ や画筆 がひつ とする場合 ばあい も、細 こま かい線描 せんびょう よりにじみやぼかしを活 い かす用途 ようと に適 てき する。
ヤギの毛 け は服用 ふくよう ブラシにも使 つか われる。
医薬 いやく 領域 りょういき での利用 りよう [ 編集 へんしゅう ]
ヤギ、特 とく にシバヤギは、実験 じっけん 動物 どうぶつ として利用 りよう されている。ヤギは他 た の実験 じっけん 動物 どうぶつ よりも体 からだ が大 おお きく、血清 けっせい が大量 たいりょう にとれるため、ポリクローナル抗体 こうたい (主 おも に二 に 次 じ 抗体 こうたい )作製 さくせい のためにもしばしば用 もち いられる。また、遺伝子 いでんし 組 く み換 か え技術 ぎじゅつ により、乳汁 にゅうじゅう 中 ちゅう に有用 ゆうよう タンパク質 たんぱくしつ を分泌 ぶんぴつ するヤギが作成 さくせい されている。性 せい 成熟 せいじゅく が早 はや く、泌乳量 りょう が多 おお いことなどの点 てん で、ヤギは他 た の動物 どうぶつ に比 くら べ優 すぐ れている。
羊 ひつじ や牛 うし に比 くら べて好 す き嫌 ぎら いが少 すく なく固 かた い植物 しょくぶつ でもよく食 た べるほうなので除草 じょそう に利用 りよう される[28] 。他 ほか にも除草 じょそう 剤 ざい や草刈 くさか り機 き を使 つか わないので環境 かんきょう に優 やさ しく草 くさ 汁 じる などの悪臭 あくしゅう が出 で ない事 こと 、斜面 しゃめん の様 よう な地形 ちけい では人間 にんげん 以上 いじょう のパフォーマンスを発揮 はっき できるという利点 りてん があげられる。耕作 こうさく 放棄 ほうき 地 ち に放牧 ほうぼく することで雑草 ざっそう を除草 じょそう し、イノシシ の隠 かく れ場所 ばしょ を減 へ らすことで結果 けっか 的 てき にイノシシの農作物 のうさくもつ に対 たい する食害 しょくがい を減 へ らす試験 しけん も行 おこな われている。副次的 ふくじてき な効果 こうか として、日本 にっぽん ではヤギの飼育 しいく 自体 じたい が珍 めずら しくなっているので近隣 きんりん 住民 じゅうみん の見物 けんぶつ や自治体 じちたい や団体 だんたい による山羊 やぎ とのふれあいイベントなどで、地域 ちいき 住民 じゅうみん のコミュニュケーション活性 かっせい 化 か につながるとの報告 ほうこく もあがっている[29] 。2010年代 ねんだい 頃 ごろ から商業 しょうぎょう 農家 のうか や企業 きぎょう によるヤギの販売 はんばい やレンタルサービスが増 ふ えるに連 つ れて採用 さいよう される例 れい が徐々 じょじょ に増加 ぞうか している。
しかし、生物 せいぶつ である以上 いじょう 好 す き嫌 きら いもあり葉 は は食 た べても固 かた い茎 くき や根 ね などは残 のこ す、毒草 どくそう などを誤 あやま 食 しょく しないように除草 じょそう エリアの確認 かくにん 、草刈 くさか り機 き に比 くら べてムラが出 で るといった事 こと を考慮 こうりょ する必要 ひつよう がある。除草 じょそう の際 さい には監 かん 視 し や囲 がこ いなどでヤギを管理 かんり しないと脱走 だっそう や花壇 かだん の花 はな など意図 いと しない植物 しょくぶつ を食害 しょくがい してしまったり、糞 くそ 害 がい 等 とう の問題 もんだい が発生 はっせい した事例 じれい も存在 そんざい する[30] 。一 いち 匹 ひき では寂 さび しがってよく鳴 な くようになるので、騒音 そうおん とヤギのメンタルヘルスの観点 かんてん からも複数 ふくすう 頭 あたま で放牧 ほうぼく することが推奨 すいしょう される。
セーム革 かわ として拭 ふ き物 ぶつ や布 ぬの として用 もち いられる。山羊 やぎ 皮 がわ 、シェーブルレザー (ドイツ語 ご 版 ばん ) (子 こ ヤギ皮 がわ )はバックや靴 くつ などにも使 つか われる。
代表 だいひょう 的 てき な品種 ひんしゅ [ 編集 へんしゅう ]
ザーネン 種 たね
スイス 西部 せいぶ のザーネン谷原 やはら 産 さん の乳 ちち 用 よう 種 しゅ 。
ヤギの種 たね では最 もっと も一般 いっぱん 的 てき で、多 おお くの人々 ひとびと がヤギと聞 き いて真 ま っ先 さき にイメージするものである。
毛色 けいろ は白 しろ で、乳房 ちぶさ が発達 はったつ している。日本 にっぽん のヤギのほとんどはこの種 たね もしくはその雑種 ざっしゅ である。(日本 にっぽん ザーネン )雌雄 しゆう 共 ども に角 かく がないものも見 み られ無 む 角 かく が遺伝子 いでんし 的 てき に優性 ゆうせい でこの無 む 角 かく 遺伝子 いでんし と間 あいだ 性 せい は深 ふか い関 かか わりがうかがえる。搾乳 さくにゅう 目的 もくてき の無 む 角 かく 山羊 やぎ を飼 か う場合 ばあい は注意 ちゅうい が必要 ひつよう である。逆 ぎゃく にペット山羊 やぎ としては間 あいだ 性 せい 山羊 やぎ は必 かなら ず無 む 角 かく であり、発情 はつじょう 期 き の悲鳴 ひめい が無 な い事 こと から注目 ちゅうもく される。
トッケンブルグ種 しゅ
スイス原産 げんさん の乳 ちち 用 よう 種 しゅ 。毛色 けいろ は褐色 かっしょく 。目 め の上 うえ から鼻 はな にかけて2本 ほん の白線 はくせん があり、これはオリジナル3種 しゅ の幼 よう 獣 じゅう には全 すべ て見 み られる。雌 めす はそのまま成長 せいちょう し、雄 ゆう の白線 はくせん は消失 しょうしつ する。相当 そうとう 変異 へんい する遺伝 いでん 的 てき 特徴 とくちょう と思 おも われる。この特徴 とくちょう は狭義 きょうぎ のスイスマークとして知 し られ、アルパイン種 しゅ 、ヌビアン種 しゅ 、ピグミー種 しゅ などの有色 ゆうしょく 山羊 やぎ にまま見 み られる。
アルパイン種 しゅ
スイス・フランス のアルプス 地方 ちほう 原産 げんさん 、ヨーロッパ、北 きた アメリカなど世界 せかい 各地 かくち で飼養 しよう されている。ブリティッシュおよびフレンチ・アルパインが代表 だいひょう 的 てき だが、近年 きんねん アメリカン・アルパインが作出 さくしゅつ された。同種 どうしゅ の乳 ちち 器 き 改良 かいりょう により、乳牛 にゅうぎゅう 用 よう 搾乳 さくにゅう 機 き の利用 りよう が可能 かのう になっている。
ヌビアン種 しゅ
アフリカ東部 とうぶ ヌビア 地方 ちほう 原産 げんさん 、アフリカ、ヨーロッパなどで飼養 しよう されている。ヌビアンにはアングロ・ヌビアンとスーダン・ヌビアンがいるが、通常 つうじょう ヌビアンというのは前者 ぜんしゃ のことを指 さ す。毛色 けいろ は黒 くろ 、褐あるいは黄 き 褐を基調 きちょう としてそれぞれの斑紋 はんもん など多様 たよう である。無 む 角 かく で長 なが い垂 だ れ耳 みみ の山羊 やぎ の代表 だいひょう 種 しゅ 、乳 ちち 量 りょう が600-800キログラムと言 い う文献 ぶんけん もあり周 しゅう 年 ねん 繁殖 はんしょく 種 しゅ としては出色 しゅっしょく で詳 くわ しい情報 じょうほう が待 ま たれる。
マンバー種 しゅ
中東 ちゅうとう の砂漠 さばく 地帯 ちたい で遊牧民 ゆうぼくみん などに飼 か われる。毛色 けいろ は黒 くろ 。毛 け をテント やロープ の材料 ざいりょう として用 もち いるほか、乳 ちち を食用 しょくよう とする。
カシミア種 しゅ
中国 ちゅうごく の新疆 しんきょう ウイグル自治 じち 区 く や内モンゴル自治 うちもんごるじち 区 く 、モンゴル国 こく で飼育 しいく されている。産毛 うぶげ はカシミア ウールとしてニット製品 せいひん に用 もち いられている。
アンゴラ種 しゅ
トルコ 、アナトリア半島 はんとう のアンカラ (古称 こしょう アンゴラ)地方 ちほう 原産 げんさん 。毛 け はモヘア 織 お りの原料 げんりょう となる。
ジャムナバリ種 しゅ
インド 、東南 とうなん アジア で飼育 しいく される。白地 しろじ に褐色 かっしょく や黒 くろ の斑点 はんてん をもつ。耳 みみ が垂 しだ れ、盛 も り上 あ がった鼻筋 はなすじ が特徴 とくちょう 。食肉 しょくにく 用 よう や乳 ちち 用 よう にされる。
シバヤギ
体重 たいじゅう 20–30キログラムの小型 こがた のヤギ。長崎 ながさき 県 けん 西岸 せいがん や五島列島 ごとうれっとう で昔 むかし から飼育 しいく されていたものから、明治 めいじ 以降 いこう に品種 ひんしゅ 改良 かいりょう を進 すす めて作 つく り出 だ された。周 しゅう 年 ねん 繁殖 はんしょく 、すなわち季 き 節 ぶし を問 と わず1年 ねん 中 ちゅう 繁殖 はんしょく が可能 かのう 。雌雄 しゆう ともに角 かく があり、オスの方 ほう が角 かく が太 ふと くより後方 こうほう に伸 の びる。近年 きんねん 、飼育 しいく 頭数 とうすう が減 へ っており、現在 げんざい は東京大学 とうきょうだいがく 農学部 のうがくぶ 付属 ふぞく 牧場 ぼくじょう 、農 のう 研 けん 機構 きこう 、長野 ながの 牧場 ぼくじょう などで小 ちい さな集団 しゅうだん が維持 いじ されているのみである。また、日本 にほん テレビ の『ザ!鉄腕 てつわん !DASH!! 』の「DASH村 むら 」(福島 ふくしま 県 けん 双葉 ふたば 郡 ぐん 浪江 なみえ 町 まち 、現在 げんざい は東日本 ひがしにっぽん 大震災 だいしんさい による福島 ふくしま 第 だい 一 いち 原子力 げんしりょく 発電 はつでん 所 しょ 放射能 ほうしゃのう 事故 じこ より他 た 県 けん に避難 ひなん 中 ちゅう )で飼育 しいく されている八木橋 やぎはし 一家 かずや (現在 げんざい はその子 こ や孫 まご のみ)もこのシバヤギである。トカラ列島 れっとう の鹿児島 かごしま 県 けん 十島 としま 村 むら で飼育 しいく されていたトカラヤギ は、シバヤギよりさらに小 ちい さく、成 なり 雌 めす で20 kg以下 いか である。
ピグミーゴート
北 きた アフリカ西部 せいぶ 原産 げんさん 小型 こがた のヤギ。最初 さいしょ にヨーロッパに持 も ち込 こ まれ、次 つ いでアメリカに渡 わた りミルクの搾 しぼ れるペット山羊 やぎ として人気 にんき があり、この地 ち でピグミーゴートと呼 よ ばれだしたと考 かんが えられる。愛好 あいこう 会 かい による品評 ひんぴょう 会 かい が盛 さか んなためか、インナーブリードによると思 おも われる特異 とくい な個体 こたい (反転 はんてん スイスマーク個体 こたい 、体 からだ の前 まえ と後 うし ろで色 しょく が異 こと なる個体 こたい )が散見 さんけん され、同時 どうじ に交雑 こうざつ が進 すす んでいる。
元来 がんらい ピグミーゴートはオリジナルのベゾアールに一番 いちばん 近 ちか い形体 けいたい が残 のこ っていたと思 おも われ、純粋 じゅんすい に近 ちか い両親 りょうしん からは全 すべ て同 おな じ柄 がら (体 からだ 色 しょく に濃淡 のうたん の変化 へんか はあるが全身 ぜんしん にスイスマーク)の子供 こども が生 う まれ、メスはそのまま成獣 せいじゅう となりオスは一 いち 年 ねん から二 に 年 ねん で全 まった く別 べつ の体 からだ 色 しょく の成獣 せいじゅう となる。
一部 いちぶ によくシバヤギやトカラヤギと体重 たいじゅう 、体高 たいこう を比較 ひかく されるが、普通 ふつう は一回 ひとまわ り大 おお きい。しかしヤギの体重 たいじゅう はほとんど一生 いっしょう 増 ふ え続 つづ け、適度 てきど な飼料 しりょう と微量 びりょう 要素 ようそ を与 あた えるとシバヤギで100キログラムを越 こ えた例 れい 、ヤクヤギ(トカラヤギが移入 いにゅう )で90キログラムを越 こ えた例 れい も見 み られ、比較 ひかく にあまり意味 いみ はない。
ヤギによる環境 かんきょう 破壊 はかい [ 編集 へんしゅう ]
ヤギは厳 きび しい環境 かんきょう にもよく耐 た え、繁殖 はんしょく 力 りょく も強 つよ いので特 とく に厳 きび しい環境 かんきょう 下 か では貴重 きちょう な家畜 かちく である。しかし、乾燥 かんそう 地帯 ちたい や冬場 ふゆば で、餌 えさ となる植物 しょくぶつ の葉 は や芽 め の部分 ぶぶん を食 た べ尽 つ くしてしまうと、ヒツジ等 とう とは異 こと なり、残 のこ った樹皮 じゅひ や樹 き 根 ね も食 た べてしまうため、植物 しょくぶつ が再生 さいせい することができず、森林 しんりん 破壊 はかい 等 とう の原因 げんいん となることがある。
ノヤギによる影響 えいきょう [ 編集 へんしゅう ]
オーストラリアを闊歩 かっぽ するノヤギ。
ここで言 い うノヤギ (野 の ヤギ)は、家畜 かちく ヤギ が野生 やせい 化 か した個体 こたい である。家畜 かちく 化 か の歴史 れきし の項 こう で述 の べたように、船乗 ふなの りたちは昔 むかし から必要 ひつよう 時 じ の肉 にく 資源 しげん として、孤島 ことう などにヤギを放 はな して利用 りよう してきた。このほか過疎 かそ 化 か 等 ひとし によって無人 むじん 化 か した孤島 ことう に、家畜 かちく のヤギが取 と り残 のこ されて野生 やせい 化 か することもある。
近年 きんねん 、このようなヤギ(ノヤギ)の増殖 ぞうしょく による生態 せいたい 系 けい の破壊 はかい が問題 もんだい となっている。ことにかつて船乗 ふなの りたちがヤギを置 お き去 ざ りにした大洋 たいよう の離島 りとう においては、離島 りとう 産 さん の固有 こゆう 植物 しょくぶつ がヤギにより著 いちじる しく食害 しょくがい され絶滅 ぜつめつ を危惧 きぐ されるまでに至 いた っているため、ヤギは世界 せかい の侵略 しんりゃく 的 てき 外来 がいらい 種 しゅ ワースト100 の1種 しゅ に選定 せんてい されている。
日本 にっぽん では、南西諸島 なんせいしょとう 、小笠原諸島 おがさわらしょとう の無人島 むじんとう の聟島列島 むこじまれっとう や、伊豆諸島 いずしょとう の無人島 むじんとう である八丈小島 はちじょうこじま 、尖閣諸島 せんかくしょとう などでノヤギの数 かず が増 ふ え、植生 しょくせい 破壊 はかい や農業 のうぎょう 被害 ひがい 及 およ び土壌 どじょう 流失 りゅうしつ による周辺 しゅうへん 漁場 ぎょじょう への悪影響 あくえいきょう 等 とう の問題 もんだい が起 お こっており、外来 がいらい 種 しゅ による生態 せいたい 系 けい 破壊 はかい の中 なか でも最 もっと も深刻 しんこく なケースの一 ひと つとなっている。小笠原諸島 おがさわらしょとう では、当初 とうしょ は動物 どうぶつ 愛護 あいご の観点 かんてん から捕 と 殺 ころせ ではなく、ヤギを生 い け捕 ど りにして、ヤギを食 た べる習慣 しゅうかん のある沖縄 おきなわ へ送 おく っていたが、長旅 ながたび のストレスにより多 おお くのヤギが死亡 しぼう したため、生 い け捕 ど り後 ご 安楽 あんらく 殺 ころせ (薬殺 やくさつ )という手段 しゅだん に変更 へんこう した[31] 。八丈 はちじょう 町 まち は捕獲 ほかく したヤギを八丈島 はちじょうじま に保護 ほご ・収容 しゅうよう して里親 さとおや を募集 ぼしゅう したこともある。尖閣諸島 せんかくしょとう の魚釣島 うおつりしま では、日本 にっぽん の右翼 うよく 団体 だんたい によって1978年 ねん に与那国島 よなぐにじま からヤギ(ザーネン種 しゅ )(雄 お 雌 めす 各 かく 1頭 とう )が持 も ち込 こ まれ、300頭 とう を超 こ えるまでに爆発 ばくはつ 的 てき に増加 ぞうか した[31] 。各地 かくち のヤギ対策 たいさく は現在 げんざい も続 つづ いている(聟島列島 むこじまれっとう では完全 かんぜん に根絶 こんぜつ した[32] )。
家畜 かちく のヤギによる影響 えいきょう [ 編集 へんしゅう ]
中国 ちゅうごく 、モンゴル 等 ひとし 、東 ひがし アジアの乾燥 かんそう 地帯 ちたい では、ヒツジ よりも利益 りえき 率 りつ の高 たか いカシミア 種 たね のヤギの飼育 しいく 数 すう が増 ふ え、砂漠 さばく 化 か が進 すす む一因 いちいん ともなっている。また、中近東 ちゅうきんとう などでの砂漠 さばく の拡大 かくだい にも、ヤギが影響 えいきょう していると考 かんが えられている。
ヤギは古 ふる くから家畜 かちく 化 か されていたため、文化 ぶんか の中 なか に様々 さまざま な形 かたち で登場 とうじょう する。
神話 しんわ ・伝承 でんしょう の中 なか のヤギ[ 編集 へんしゅう ]
犠牲 ぎせい (生贄 いけにえ )のヤギ[ 編集 へんしゅう ]
ヤギは古 ふる くから犠牲 ぎせい にささげる獣 しし (生贄 いけにえ )として使 つか われることが多 おお い。古代 こだい のユダヤ教 きょう では年 とし に1度 ど 、2匹 ひき の牡 おす ヤギを選 えら び、くじを引 ひ いて1匹 ひき を生贄 いけにえ とし、もう1匹 ひき を「アザゼルのヤギ 」(贖罪 しょくざい 山羊 やぎ )と呼 よ んで荒野 あらの に放 はな った(旧約 きゅうやく 聖書 せいしょ レビ記 き 16章 しょう )。贖罪 しょくざい 山羊 やぎ は礼拝 れいはい 者 しゃ の全 すべ ての罪 つみ を背負 しょ わされ、生 い きたまま捨 す てられる点 てん で生 い け贄 にえ と異 こと なる。特定 とくてい の人間 にんげん に問題 もんだい の責任 せきにん を負 お わせ犠牲 ぎせい とすることをスケープゴート (scapegoat 、生 い け贄 にえ のヤギ)と言 い うのは、これにちなんだ表現 ひょうげん である。
現代 げんだい 的 てき 表現 ひょうげん の例 れい としては、アメリカ のヤングアダルト 小説 しょうせつ の旗手 きしゅ であるブロック・コール 『ヤギ・ゲーム』(邦訳 ほうやく 徳間書店 とくましょてん 、中川 なかがわ 千尋 ちひろ 訳 わけ )が挙 あ げられる。
悪魔 あくま の象徴 しょうちょう としてのヤギ[ 編集 へんしゅう ]
エリファス・レヴィ によるバフォメット
新約 しんやく 聖書 せいしょ (マタイによる福音 ふくいん 書 しょ )では、(特 とく に「羊 ひつじ =良 よ きものの象徴 しょうちょう 」との対比 たいひ で)ヤギを「悪 あ しきものの象徴 しょうちょう 」として扱 あつか うくだりがある。ヨーロッパやアメリカなどのキリスト教 きりすときょう 文化 ぶんか において、ヤギには悪魔 あくま の象徴 しょうちょう としてのイメージが強 つよ いが、これは、ギリシャ神話 しんわ のパンやエジプト神話 しんわ のアモン のような山羊 やぎ 神 しん 、あるいは、祭司 さいし が角 かく のついた仮面 かめん をかぶって獣 しし の扮装 ふんそう をして踊 おど り、豊穣 ほうじょう な獲物 えもの を願 ねが うような素朴 そぼく なシャーマン信仰 しんこう における森林 しんりん 神 かみ 等 とう 、キリスト教 きょう の公 おおやけ 教化 きょうか とともに駆逐 くちく された先行 せんこう 宗教 しゅうきょう の、邪神 じゃしん 化 か された“異教 いきょう ”神 かみ たちのイメージから来 き たものであろう。古代 こだい ローマ ではヤギは欲望 よくぼう と性的 せいてき 快楽 かいらく の象徴 しょうちょう とみなされていた。ここからやがて、バフォメット のようなヤギ頭 あたま の悪魔 あくま が考 かんが え出 だ され、悪魔 あくま 崇拝 すうはい 者 しゃ が好 この んでヤギの仮面 かめん をかぶったりする。また、中世 ちゅうせい では、悪魔 あくま の化身 けしん としてのヤギに乗 の って空 そら を飛 と ぶ魔女 まじょ の版画 はんが などもある。
古 ふる くはイソップ 寓話 ぐうわ にも見 み るように、オオカミ などに食 た べられる被 ひ 捕食 ほしょく 者 しゃ としての弱々 よわよわ しいイメージをもつが、その一方 いっぽう で、中国 ちゅうごく では、角 かく の形 かたち から、ねじくれた性格 せいかく の象徴 しょうちょう にもなっている。
(西洋 せいよう の)文化 ぶんか 的 てき に、山羊 やぎ と羊 ひつじ は、対比的 たいひてき に扱 あつか われる。
「先頭 せんとう の山羊 やぎ 」とは、羊 ひつじ の群 ぐん を制御 せいぎょ するさいに混 ま ぜる山羊 やぎ のことである。羊 ひつじ はおとなしいので、性格 せいかく の激 はげ しい山羊 やぎ を混 ま ぜてやると、山羊 やぎ が先頭 せんとう に立 た ち、羊 ひつじ はその後 ご について行 い く。牧人 ぼくじん は山羊 やぎ を制御 せいぎょ すれば、羊 ひつじ の群 む れ全体 ぜんたい を制御 せいぎょ できることになる。
中部 ちゅうぶ アフリカ に位置 いち するルワンダ では、女性 じょせい はヤギの肉 にく を食 た べてはならないとされている。口 くち にするとヒゲ を生 は やしてしまうと考 かんが えられているためである。同 どう 地域 ちいき では、女性 じょせい は幼 おさな い頃 ころ からヤギの肉 にく を避 さ けるべきであるとされている[33] 。
文学 ぶんがく ・芸術 げいじゅつ 作品 さくひん の中 なか のヤギ[ 編集 へんしゅう ]
地中海 ちちゅうかい での子 こ ヤギは無力 むりょく ・役 やく にたない人 ひと を例 たと える言葉 ことば であり、人差 ひとさ し指 ゆび と小指 こゆび を立 た てるジェスチャーは相手 あいて をそのような意味 いみ で揶揄 やゆ ・侮辱 ぶじょく するものとされる[34] 。
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