余震よしん

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スマトラ島すまとらとうおき地震じしん2004ねん)の余震よしん経過けいかしめすグラフ。よこじく時間じかんたてじくがマグニチュード(M-T)。

余震よしん(よしん、えい: aftershock)とはおおきな地震じしんのちに、近接きんせつ地域ちいきつづいて多数たすう発生はっせいする地震じしんである。最初さいしょおおきな地震じしん本震ほんしんい、本震ほんしんよりまえ発生はっせいする地震じしん前震ぜんしんという。震源しんげんあさ規模きぼおおきな地震じしんのほとんどは、余震よしんともなう。平均へいきんてきには最大さいだい余震よしんマグニチュード本震ほんしんのそれよりも1程度ていどちいさいとされるが、本震ほんしんちかいものや、まれ上回うわまわ規模きぼ余震よしん発生はっせいすることもある。

余震よしん回数かいすう規模きぼ[編集へんしゅう]

からだかんじる余震よしん回数かいすうすうじゅうかいから5000かいまであり、東北とうほく地方ちほう太平洋たいへいようおき地震じしんでは10,000かいえた。期間きかん数日すうじつからすうげつ巨大きょだい地震じしんではとし単位たんい地震じしんによりまちまちである。ごく小規模しょうきぼ余震よしん本震ほんしん発生はっせいから100ねん以上いじょうつづくこともあり、現在げんざいでも1891ねん地震じしん1945ねん三河みかわ地震じしん余震よしん観測かんそくされている。

明治めいじ大正たいしょう地震じしん学者がくしゃ大森おおもり房吉ふさきちは、この地震じしん観測かんそくから本震ほんしんからの経過けいか時間じかんともな余震よしん回数かいすう減少げんしょうあらわ大森おおもり公式こうしき発表はっぴょうしている。現在げんざい宇津うつ徳治とくじがこれを改良かいりょうして発表はっぴょうした、以下いか改良かいりょう大森おおもり公式こうしき大森おおもり宇津うつ公式こうしき)が使用しようされている。

  • n(t):余震よしん発生はっせいりつ。tは本震ほんしん経過けいか時間じかん
  • K:余震よしんおおさ。
  • c:本震ほんしん直後ちょくご余震よしんすくなさ。0.1ぐらいのをとる場合ばあいおおい。
  • p:時間じかん経過けいかともな減衰げんすい。1ぐらいのをとる場合ばあいおおい。

この公式こうしきによって算出さんしゅつされた数値すうちグラフあらわす。りょう対数たいすうグラフあらわした場合ばあい直線ちょくせんちかかたちとなる。グラフに実際じっさい観測かんそくされた地震じしんのデータをせると、ほぼかさなる。グラフからしたおおきくはずれた実測じっそくがあると余震よしん回数かいすう規模きぼなどがすくないことをあらわしておりエネルギーが蓄積ちくせきされている状態じょうたいだとかんがえられ、こののちおおきな余震よしん発生はっせいする可能かのうせいたかいとされている。

余震よしんのメカニズム[編集へんしゅう]

福岡ふくおかけん西方にしほうおき地震じしん2005ねん)の本震ほんしんほししるし)と震域しんいきあか・オレンジしょく部分ぶぶん

原因げんいんは、本震ほんしん解放かいほうされきれなかったエネルギーが放出ほうしゅつされるためとみられる。

地震じしんプレートちからくわわってできたゆがみが断層だんそう発散はっさんされることによりこるが、とくだい地震じしん場合ばあいいち本震ほんしんながふか断層だんそうすべうごいてしまうわけではなくりょうはし下部かぶっかかったままの部分ぶぶんのこり、そこにあらたにちから集中しゅうちゅうはじめる。そうして連鎖れんさてき周囲しゅうい断層だんそううごいてゆがみが解消かいしょうするときに余震よしん発生はっせいする。

余震よしん活動かつどうちゅう発生はっせいした余震よしんなか最大さいだい規模きぼのものを最大さいだい余震よしんとよぶ。最大さいだい余震よしんのマグニチュードは、本震ほんしんのマグニチュードよりも1程度ていどちいさいことが経験けいけんてきられている。また、余震よしんは、本震ほんしん震源しんげんあさいほどおお発生はっせいする傾向けいこうにある[1]

余震よしん発生はっせいする範囲はんい震域しんいきという。これは、だい地震じしんにおける断層だんそうのずれの範囲はんいである震源しんげんいきとほぼ一致いっちする。だい地震じしん発生はっせいしたとき、震源しんげんからかなりはなれた地域ちいき地震じしんこっても余震よしんとはばない。余震よしんぶのはだい地震じしんなど時間じかんてき空間くうかんてきにまとまった地震じしん発生はっせいしたとき、その範囲はんいないにある地震じしんかぎられる。余震よしんいきおおむ本震ほんしん断層だんそうめん付近ふきんにあり、本震ほんしんのマグニチュードがおおきいほど震域しんいきひろくなる傾向けいこうがあり、その面積めんせきについてつぎしきつとされる[2]

  • S:あまり震域しんいき面積めんせき(km²)
  • M:マグニチュード
余震よしん域外いきがい地震じしん

だい地震じしんのち震域しんいきとはことなる地域ちいきおおきな地震じしん地殻ちかく変動へんどう発生はっせいすることがある。これらは、本震ほんしんによる振動しんどうつたわったり地下ちかゆがかたわったりすることによって地震じしん誘発ゆうはつされたとかんがえられ、だい地震じしん本震ほんしんによるこう変動へんどうふくめたり、誘発ゆうはつ地震じしんとして余震よしんとはべつ独立どくりつした地震じしんとみなされる[ちゅう 1]れいとしては、2004ねん12月のスマトラ島すまとらとうおき地震じしんのち発生はっせいした2005ねん3がつスマトラ島すまとらとうおき地震じしん2011ねん3月の東北とうほく地方ちほう太平洋たいへいようおき地震じしん発生はっせいした長野ながのけん北部ほくぶ地震じしん静岡しずおかけん東部とうぶ地震じしんなどがある。

余震よしんによる災害さいがい[編集へんしゅう]

地震じしん災害さいがい発生はっせいしたのち建物たてもの耐久たいきゅうせいちている可能かのうせいがあり、規模きぼちいさな地震じしんでも損壊そんかい倒壊とうかい危険きけんがある。そのため、余震よしんによる災害さいがい注意ちゅういする必要ひつようがある。2004ねん新潟にいがたけん中越なかこし地震じしん・2011ねん東北とうほく地方ちほう太平洋たいへいようおき地震じしん宮城みやぎけんおき地震じしん茨城いばらきけんおき地震じしん福島ふくしまけんはまどお地震じしんなど)のように余震よしんでも震度しんど6じゃく以上いじょうれを記録きろくすることがあるほか、東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいでは津波つなみともな余震よしん発生はっせいしている。このように余震よしん単独たんどくでも災害さいがいこりうる。

また余震よしんつづくと、被災ひさいしゃ不眠症ふみんしょう地震じしん精神せいしんてきストレスなやまされる。本震ほんしんによるストレスよりも、ながつづ余震よしんによるストレスのほうがおおきいとされる。東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいによる主観しゅかんてき健康けんこう悪化あっか余震よしん関連かんれんすることがしめされている[3]

防災ぼうさい情報じょうほうでの「余震よしん」という表現ひょうげん問題もんだいてん[編集へんしゅう]

おおきな地震じしん発生はっせい直後ちょくごには一連いちれん地震じしん活動かつどう本震ほんしん余震よしんがた最初さいしょ発生はっせいした地震じしん最大さいだい規模きぼである地震じしん発生はっせい様式ようしき)であるかどうか見極みきわめることは困難こんなんである[4]

2016ねん発生はっせいした熊本くまもと地震じしんでは4がつ14にち地震じしん発生はっせい気象庁きしょうちょうは「今後こんご3日間にちかん震度しんど6じゃく以上いじょう余震よしんきる可能かのうせいは20%」と公表こうひょうした。このように気象庁きしょうちょうでは最初さいしょ発生はっせいした地震じしん(M6.5)を本震ほんしんとみなして余震よしんかくりつ発表はっぴょうしたが、実際じっさいには16にちにM7.3の地震じしん発生はっせいして時間じかん経過けいかとともに当初とうしょ地震じしん活動かつどういき拡大かくだいする経過けいかをたどった[4]

2016ねん熊本くまもと地震じしんにおける地震じしん見通みとおしにかんする情報じょうほうについてはつぎのような課題かだい指摘してきされた。

  1. 内陸ないりく地殻ちかくない発生はっせいするM6.4以上いじょう地震じしんについては、従来じゅうらい本震ほんしん余震よしんがた一連いちれん地震じしん活動かつどうにおいて、最初さいしょ発生はっせいした地震じしん最大さいだい規模きぼである地震じしん発生はっせい様式ようしき)にたいする余震よしんかくりつ評価ひょうか手法しゅほう地震じしん調査ちょうさ委員いいんかい、1998ねん)の判定はんてい条件じょうけん妥当だとうしないとみられること[4]
  2. 余震よしん」という言葉ことばには、最初さいしょ地震じしんより規模きぼおおきな地震じしんつよれは発生はっせいしないという印象いんしょう情報じょうほうあたえる可能かのうせいがあること[4]
  3. 余震よしんかくりつ確率かくりつ)が、通常つうじょう生活せいかつ感覚かんかくからは、かなりひくかくりつであると解釈かいしゃくされ、安心あんしん情報じょうほうとしてられた可能かのうせいがあること[4]
    20%というかくりつ平常へいじょうときくらべると非常ひじょうたかく、十分じゅうぶん注意ちゅういする必要ひつようがあったが、住民じゅうみんなかにはぎゃくに「わずか20%」と解釈かいしゃくしそのまま自宅じたくにとどまるひとおおかった。そのため、16にち発生はっせいした本震ほんしん家屋かおく下敷したじきになるなどの死傷ししょうしゃ多発たはつする結果けっかまねいた。

気象庁きしょうちょう熊本くまもと地震じしん教訓きょうくんにした地震じしん報道ほうどう発表はっぴょう見直みなおしを同年どうねん8がつ19にちった。これにともない、誤解ごかいしょうじさせやすいだい地震じしん発生はっせいの「余震よしん」という表現ひょうげんと「余震よしんかくりつ」の発表はっぴょう廃止はいしすると発表はっぴょうし、震度しんど5じゃく以上いじょう地震じしん発生はっせいの1週間しゅうかんおな規模きぼ地震じしんへの警戒けいかいびかけ、その状況じょうきょうおうじて「震度しんど6じゃく以上いじょうとなる地震じしん発生はっせいかくりつ平時へいじの30ばい」などと公表こうひょうするように見直みなおされた[5]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ ただし、総称そうしょうして「広義こうぎ余震よしん」とばれる場合ばあいもある。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 長谷川はせがわあきら佐藤さとう春夫はるお西村にしむらふとしこころざし地震じしんがく共立きょうりつ出版しゅっぱん現代げんだい地球ちきゅう科学かがく入門にゅうもんシリーズ〉,2015ねん
  2. ^ 宇津うつ徳治とくじ地震じしんがく(だい3はん)』共立きょうりつ出版しゅっぱん,2001ねん
  3. ^ Aftershocks Associated With Impaired Health Caused by the Great East Japan Disaster Among Youth Across Japan: A National Cross-Sectional Survey. Interact J Med Res 2013;2(2):e31 doi: 10.2196/ijmr.2585
  4. ^ a b c d e だい地震じしん地震じしん活動かつどう見通みとおしにかんする情報じょうほうのありかた”. 地震じしん調査ちょうさ研究けんきゅう推進すいしん本部ほんぶ 地震じしん調査ちょうさ委員いいんかい (2016ねん8がつ19にち). 2016ねん10がつ21にち閲覧えつらん
  5. ^ 気象庁きしょうちょう地震じしん予測よそく余震よしん使つかわず 熊本くまもと地震じしん”. 2016ねん9がつ6にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]