性別せいべつ

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性別せいべつ(せいべつ、えい:sex(セックス))、おも生物せいぶつがくてき性差せいさ[1]男性だんせい女性じょせいべつ[2]オスメスべつ[2]

生物せいぶつがくてきな)性別せいべつ様式ようしき多様たようである。遺伝いでんてき染色せんしょくたい決定けっていしているたね乳類にゅうるい一般いっぱん)、発生はっせい周囲しゅうい温度おんどなど環境かんきょうによって決定けっていするたねカメワニなど虫類ちゅうるいおおく)、個体こたいおおきさによって決定けっていするたねウラシマソウテンナンショウなど)、よわいによって決定けっていするたねメロンキュウリなど)、まわりに存在そんざいする同種どうしゅ個体こたいとの相互そうご関係かんけいにより決定けっていするたねクマノミホンソメワケベラ)などがられている。くわしくはせい決定けってい参照さんしょうのこと。

人間にんげんおとこおんなイメージ画像がぞう

ヒト・人間にんげんせい[編集へんしゅう]

人間にんげん場合ばあいはそれぞれを「男性だんせい」「女性じょせい」あるいは「おとこ」「おんな」や「男子だんし」「女子じょし」などとぶ。人間にんげん場合ばあいは、生物せいぶつとしての性別せいべつ前提ぜんていとしながら、くわえて精神せいしんてき文化ぶんかてきに、また社会しゃかいてき立場たちばとしてもことなった存在そんざいとして成長せいちょうする。この意味いみでのせい区別くべつ生物せいぶつがくてきなそれとは区別くべつしてジェンダーぶこともある。

生物せいぶつてきせいせい自認じにんいちじるしくずれたり反転はんてんしているケースが性別せいべつ不快ふかい症候群しょうこうぐんせい同一どういつせい障害しょうがい生物せいぶつがくてきせい形成けいせいそのものが定型ていけいてきでないケースがせい分化ぶんか疾患しっかんである。くわしくは個々ここ項目こうもく参照さんしょう

染色せんしょくたい[編集へんしゅう]

人間にんげん性別せいべつは、根本こんぽんてきには男性だんせいうなが遺伝子いでんし有無うむ由来ゆらいし、受精じゅせい瞬間しゅんかんにほぼ決定けっていされる。人間にんげんの23つい染色せんしょくたいのうちの1ついせい染色せんしょくたいばれほかつね染色せんしょくたいとは区別くべつされる。このせい染色せんしょくたいかたX染色せんしょくたいY染色せんしょくたいわせ)によって、性別せいべつ発達はったつじょおおきく左右さゆうされる。これは、Y染色せんしょくたいうえに、精巣せいそう形成けいせい誘導ゆうどう男性だんせいをもたらすSRY遺伝子いでんしっているためである。

典型てんけいれい[編集へんしゅう]

せい染色せんしょくたいかたとしては、つぎの2つが典型てんけいてきである。

XYがた
X染色せんしょくたいとY染色せんしょくたいをそれぞれ1つずつゆうする。通常つうじょう男性だんせいとして発育はついくする。
XXがた
せい染色せんしょくたいとしてX染色せんしょくたいを2つゆうする。通常つうじょう女性じょせいとして発育はついくする。

典型てんけいれい常例じょうれい[編集へんしゅう]

典型てんけいてきれいとして、つぎのようなものがある。これらのおおくは、精子せいし卵子らんし生産せいさん減数げんすう分裂ぶんれつ失敗しっぱいしたことによる。

XXY、XXXY、XXXXYがたクラインフェルター症候群しょうこうぐん、クラインフェルター男性だんせい
過剰かじょうなX染色せんしょくたいっている。発生はっせいりつは1000にん1人ひとりおおくは発現はつげん形質けいしつ男性だんせいであり、そと性器せいきはほぼ正常せいじょう男性だんせいえる。以前いぜん精子せいしすくなく、精子せいし奇形きけいおおいことから自然しぜんてき受精じゅせい無理むりだったが、現在げんざい人工じんこう授精じゅせいでの受精じゅせい可能かのう。X染色せんしょくたいかずおおいほど障害しょうがいつよい。骨粗鬆症こつそしょうしょうになりやすく、女性じょせい更年期こうねんき障害しょうがい症状しょうじょうていすることもある。
XYY、XYYY、XYYYYがたちょうゆう;スーパー男性だんせい
Y染色せんしょくたい過剰かじょうである。発生はっせいりつは1000にん1人ひとりそと性器せいき完全かんぜん男性だんせいであり、生殖せいしょく能力のうりょくもある。XYがた男性だんせいくらべて精子せいしすくないというせつもある。凶悪きょうあく犯罪はんざいおおいという意見いけん一方いっぽう非常ひじょう知能ちのうてきであるという意見いけんもある。
XXYYがた
クラインフェルターの一種いっしゅとも、ちょうゆう一種いっしゅともわれる。
XXがた男性だんせい
せい染色せんしょくたいはXXがたであるが、変異へんいしたY染色せんしょくたいのかけらが染色せんしょくたい結合けつごうし、そのうえのSRY遺伝子いでんしはたらいている。発生はっせいりつすうじゅうまん - すうひゃくまんにん1人ひとり見積みつもられている。そと性器せいきはほぼ男性だんせいであるが、尿道にょうどうきれられることもある。生殖せいしょく能力のうりょくはない。思春期ししゅんきには女性じょせいとしての性徴せいちょうをすることもある。せいホルモン投与とうよにより男性だんせいうながさなければ、次第しだい女性じょせいしていく。
XOがたターナー症候群しょうこうぐん、ターナー女性じょせい
せい染色せんしょくたいとしてはX染色せんしょくたいを1つだけつ。まれに破損はそんしたY染色せんしょくたいのかけらをっていることもある。発生はっせいりつは2000にん - 3000にん1人ひとりである。発現はつげん形質けいしつ女性じょせいであり、そと性器せいき形成けいせい変異へんいはない。子宮しきゅう欠落けつらくすることもある。性徴せいちょう欠落けつらくするため、治療ちりょう必要ひつようとする。全体ぜんたいてい身長しんちょうであり、月経げっけい不順ふじゅんなどがあることもある。腫瘍しゅよう糖尿とうにょうびょう危険きけんせいたかい。知能ちのう障害しょうがいすくない。
XXXがたちょうめす
X染色せんしょくたいを3つつ(トリプルX)。発現はつげん形質けいしつ女性じょせい知的ちてき障害しょうがいともな場合ばあいがある。やや肥満ひまんがたおおい。スーパー女性じょせいともばれる。
カルマン症候群しょうこうぐん
X染色せんしょくたい一部いちぶ欠損けっそんしている。嗅覚きゅうかく異常いじょうられる。
モザイクがた
通常つうじょう個体こたいすべての細胞さいぼうまった同一どういつ遺伝子いでんしセットをっているが、まれに細胞さいぼうごとにことなっている場合ばあいがある。これがせい染色せんしょくたいかんして発生はっせいすると、XO/XY混在こんざいがた, XO/XX混在こんざいがたなどとなる。クラインフェルター男性だんせいのうちの特殊とくしゅなものとしてXY/XXY混在こんざいがたがあるが、かれらは精子せいし生産せいさんすることができ、生殖せいしょく能力のうりょくゆうする。3種類しゅるい以上いじょうせい染色せんしょく体型たいけい混在こんざいしている場合ばあいもある。きわめてまれであり、その状況じょうきょう多様たようであるため、発生はっせいりつは10おくにん - 100おくにん1人ひとり推定すいていされている。

また、うえではSRY遺伝子いでんし重視じゅうししてべたが、Y染色せんしょくたいじょうほかのいくつかの遺伝子いでんし男性だんせいがねとして重要じゅうようだというせつもある。

X染色せんしょくたい生命せいめい維持いじ必須ひっすであるため、Y染色せんしょくたい1つのみをつYOがた出生しゅっしょうされず、受精じゅせい直後ちょくご致死ちしとなるとかんがえられている。

性腺せいせん[編集へんしゅう]

妊娠にんしんだい4しゅうほどに卵黄らんおう嚢に発生はっせいした原始げんし生殖せいしょく細胞さいぼうは、だい6しゅうには下腹かふく生殖せいしょく隆起りゅうき移動いどうして原始げんし生殖せいしょくせん形作かたちづくる。この時点じてんでは原始げんし生殖せいしょくせん精巣せいそうにも卵巣らんそうにもなりうる。

だい7しゅうになって、SRY遺伝子いでんし存在そんざいして正常せいじょう機能きのうする場合ばあいには性腺せいせん原器げんき精巣せいそう分化ぶんかする。

どう遺伝子いでんし存在そんざいしなかったり正常せいじょう機能きのうできないために精巣せいそうへの分化ぶんかこらないままであると、だい11しゅう以降いこう卵巣らんそう分化ぶんかしていく。

このさい多数たすう因子いんしとその受容じゅようたい作用さようしているので、なんらかの障害しょうがいにより精巣せいそう決定けっていせい遺伝子いでんし有無うむ性腺せいせん分化ぶんかちがうこともある。うえげたような染色せんしょくたい変異へんいにより、精巣せいそう卵巣らんそうなかあいだてきかたち分化ぶんかしたり、2つの原始げんし生殖せいしょくせんのうち一方いっぽう精巣せいそう他方たほう卵巣らんそうにと分化ぶんかすることもある。

化学かがく物質ぶっしつ生産せいさん[編集へんしゅう]

精巣せいそう形成けいせいされると、そのなかのライディヒあいだ細胞さいぼう活発かっぱつテストステロン生産せいさんし、セルトリー細胞さいぼうはミューラーかん抑制よくせい因子いんし生産せいさんする。

卵巣らんそうは、エストラジオールなどを生産せいさんする。

生殖せいしょく細胞さいぼう[編集へんしゅう]

原始げんし生殖せいしょくせん精巣せいそう分化ぶんかした場合ばあい原始げんし生殖せいしょく細胞さいぼう思春期ししゅんきまで休眠きゅうみんする。思春期ししゅんきになると、これらは活発かっぱつ分裂ぶんれつはじめて精子せいし生産せいさんする。

卵巣らんそう分化ぶんかした場合ばあい妊娠にんしんだい3ヶ月かげつから7ヶ月かげつにかけて原始げんし生殖せいしょく細胞さいぼう減数げんすう分裂ぶんれつはじめ、いちたまごはは細胞さいぼうつくられていく。ここから9ヶ月かげつまでのあいだ原始げんし卵胞らんぽう形成けいせいされ、原始げんし卵胞らんぽう思春期ししゅんきまで休眠きゅうみんする。

思春期ししゅんきまでに99.9%の原始げんし卵胞らんぽう卵胞らんぽう閉鎖へいさする。のこったもののうち、いくつかが月経げっけい周期しゅうきごとになんらかの機構きこうによって選択せんたくされ成長せいちょうし、そのうちの1つがグラーフ卵胞らんぽうへと成長せいちょうして排卵はいらんこす。

この機構きこう卵巣らんそう脳下垂体のうかすいたいあいだのフィードバックによって調整ちょうせいされる種種しゅじゅ化学かがく物質ぶっしつ支配しはいされていることはられているが、詳細しょうさい機構きこう不明ふめいてんおおい。

生殖せいしょくかん[編集へんしゅう]

性腺せいせん形成けいせい平行へいこうして、ちゅうじんかんウォルフかん)に沿ったかたちちゅうじんはたかんミュラーかん)が形成けいせいされる。妊娠にんしんだい7しゅう以降いこう性腺せいせん分泌ぶんぴつする物質ぶっしつ依存いぞんしてこれらのかん生殖せいしょくかん分化ぶんかしていく。

典型てんけいれいつぎの2つである。

性腺せいせん完全かんぜん男性だんせいがた精巣せいそう)である場合ばあい
テストステロンによってウォルフかん維持いじうながされ、精巣せいそう上体じょうたい輸精かんせい分化ぶんかする。また、ミュラーかん抑制よくせい因子いんしによってミュラーかん退化たいか消失しょうしつする。ただし、一部いちぶ精巣せいそう輸出ゆしゅつかんとなり、ウォルフかん開口かいこうする。
性腺せいせん男性だんせいがたでない場合ばあい
テストステロンが十分じゅうぶんでないことによりウォルフかん維持いじできずに、退化たいか消失しょうしつする。また、ミュラーかん抑制よくせい因子いんし存在そんざいしないので、ミュラーかん発達はったつ子宮しきゅう輸卵管ゆらんかん分化ぶんかする。このことから、女性じょせいうち性器せいき分化ぶんか卵巣らんそう直接的ちょくせつてきには必要ひつようでない。

典型てんけいれいとしてはつぎのような場合ばあいもある。

  • 遺伝子いでんし変異へんいにより、上記じょうきのような両性りょうせい生殖せいしょくかん発達はったつ混在こんざいしたり、不完全ふかんぜんになる場合ばあいもある。
  • 精巣せいそうゆうするがミュラーかん抑制よくせい因子いんし十分じゅうぶんでなかったり、あるいは抑制よくせい因子いんし受容じゅようたい不全ふぜんである場合ばあいには、ウォルフかん・ミュラーかん両方りょうほう発達はったつし、両性りょうせいうち性器せいきあわ場合ばあいもある。
  • 外部がいぶからの化学かがく物質ぶっしつ影響えいきょうにより、生殖せいしょくかん性腺せいせんとはことなったかたち分化ぶんかする場合ばあいもある。流産りゅうざん防止ぼうしのための母親ははおやへのホルモン投与とうよなどが影響えいきょうするというせつもある。

そと性器せいき[編集へんしゅう]

そと性器せいき分化ぶんかテストステロン有無うむしたがう。原始げんし生殖せいしょくせん精巣せいそう分化ぶんかしてテストステロンを生産せいさんしている場合ばあいには男性だんせいがたに、そうでない場合ばあいには女性じょせいがた分化ぶんかする。

テストステロンのある場合ばあい
テストステロンは酵素こうそによって還元かんげんされジヒドロステロンとなる。それに曝露ばくろされたそと性器せいきだい10しゅうからだい12しゅうにかけて男性だんせいがた分化ぶんかする。生殖せいしょく結節けっせつ急速きゅうそく発達はったつしてかめあたま陰茎いんけいとなり、生殖せいしょく隆起りゅうき癒合ゆごうして陰嚢ふぐりに、尿道にょうどうヒダは尿道にょうどう海綿かいめんたいとなる。陰嚢ふぐり表面ひょうめんられるじょう構造こうぞうはこの癒合ゆごう痕跡こんせきである。
ない場合ばあい
ジヒドロステロン曝露ばくろこらないままだい20しゅうになると、これらは自然しぜん女性じょせいがい性器せいき変化へんかする。生殖せいしょく結節けっせつわずかに発達はったつしてかげかく分化ぶんか生殖せいしょく隆起りゅうきだいかげくちびる尿道にょうどうヒダは小陰こかげくちびるをとなる。また、尿にょう生殖せいしょくほら上皮じょうひがミュラーかん由来ゆらい子宮しきゅうかんむすびついて増殖ぞうしょく内部ないぶ空洞くうどうしょうじてちつ形成けいせいされる。これより、女性じょせいがい性器せいき形成けいせい卵巣らんそう必要ひつようでない。

典型てんけいてきれいとしては、つぎのようなものがある。

染色せんしょくたい異常いじょう
染色せんしょくたい異常いじょうにより、生殖せいしょく結節けっせつ活発かっぱつ増殖ぞうしょくする一方いっぽう生殖せいしょく隆起りゅうき癒合ゆごう十分じゅうぶんこらない場合ばあいがある。外見がいけんじょう男女だんじょ両方りょうほうそと性器せいきゆうするようにえる。
  • せい染色せんしょくたいはXXがたであることがおおいがXX/XYモザイクがた場合ばあいもある。
  • ちつ形成けいせい十分じゅうぶんでないことがおおい。
真性しんせいはん陰陽いんよう
真性しんせいはん陰陽いんようでは、その性器せいき状態じょうたいひとそれぞれであり、またその要因よういんいま解明かいめいされていない。人体じんたいに2つある性腺せいせんのどちらか一方いっぽう睾丸こうがん、もう一方いっぽう卵巣らんそうである場合ばあいと、睾丸こうがんまたは卵巣らんそう左右さゆうそろい、さらにそれらとはぎゃくだいさん性腺せいせん場合ばあいとがあるとされる。
染色せんしょくたい構造こうぞうは46,XXについで46,XYがおおく、46,XX/46,XYモザイクもおお男性だんせいがたでは尿道にょうどうきれ女性じょせいがたではかげかく肥大ひだいかげくちびる癒合ゆごう
性腺せいせん形成けいせいしょうそと陰部いんぶ女性じょせいがたとなる。
混合こんごうせい性腺せいせん形成けいせいしょう染色せんしょくたい分析ぶんせきで45,XO/46,XYなどのモザイクをしめそと性器せいき男女だんじょ中間なかまがたしめ
男性だんせい仮性かせいはん陰陽いんよう
性腺せいせん精巣せいそう分化ぶんかした場合ばあいであっても、テストステロンを還元かんげんする酵素こうそけていたり、受容じゅようたい十分じゅうぶんでない場合ばあいにはそと性器せいき男性だんせい発生はっせいしない(精巣せいそうせい女性じょせい症候群しょうこうぐん)。そのままだい20しゅうになると、そと性器せいき女性じょせいがた分化ぶんかする。その遺伝子いでんし変異へんいによりしょうじる場合ばあいもある。
  • 還元かんげん酵素こうそ遺伝子いでんしはX染色せんしょくたいじょうにあるため劣性れっせい遺伝いでんである。
  • かげかく肥大ひだいられることもあるが、外見がいけんじょうはほぼ女性じょせいがたである場合ばあいおおい。ただしちつ奥行おくゆきが十分じゅうぶんでないこともある。また成長せいちょうになっても陰毛いんもうしょうじない。
  • 通常つうじょうはミュラーかん退化たいかこっており、子宮しきゅう卵管らんかんたない。
  • 精巣せいそうは、子宮しきゅうにあたる部位ぶいにある場合ばあいと、あし付近ふきんまでりてきている場合ばあいがある。
  • 卵巣らんそう子宮しきゅうたないため、月経げっけい
男性だんせい仮性かせいはん陰陽いんよう不完全ふかんぜんがた
男性だんせいはん陰陽いんようのうち、思春期ししゅんきになると男性だんせいしょうずるものがある。出生しゅっしょうには男性だんせいとみなされることもあるが、おおくは女性じょせいとしてあつかわれる。思春期ししゅんき精巣せいそうのテストステロン生産せいさん活発かっぱつすることによってかげかく急速きゅうそく発達はったつして陰茎いんけいのようになり、へんごえひげはつこる。このため、見掛みかじょう女児じょじ男性だんせいわったようにえる。
このケースの発生はっせいりつ民族みんぞくによる差異さいおおきく、日本人にっぽんじんではほとんられない。1954ねんインドネシア発見はっけんされたほか、1980年代ねんだいカリブ海かりぶかいしま多数たすう発見はっけんされた。カリブのれいでは全員ぜんいんがある1人ひとり人物じんぶつ子孫しそんであったことから、なんらかの遺伝いでんてき要因よういんがあるものとかんがえられている。
女性じょせい仮性かせいはん陰陽いんよう
性腺せいせん卵巣らんそう分化ぶんかした場合ばあいであっても、先天せんてんせい副腎ふくじん皮質ひしつ形成けいせいなどによってテストステロンが過剰かじょう分泌ぶんぴつされ、結果けっかとしてそと性器せいき男性だんせいする場合ばあいがある。
  • かげかくがやや肥大ひだいする程度ていどのものから、そと性器せいき完全かんぜん男性だんせいがたになるものまで多様たようである。
  • 尿道にょうどうきれがみられる場合ばあいおおい。

のう[編集へんしゅう]

のうにも性差せいさ存在そんざいする。のうせい分化ぶんか決定けっていするのはアンドロゲンである。のう科学かがく研究けんきゅう成果せいかによると、男児だんじまれた直後ちょくごの2にちぐらいから生後せいご6ヶ月かげつぐらいまでのあいだ成人せいじん半分はんぶんぐらいりょうのアンドロゲンが分泌ぶんぴつされ、またテストステロン受容じゅようたいのうないでの分布ぶんぷじょう性差せいさがエストロゲンとおなじく、海馬かいばひらたもも体内たいないがわかくはら内側うちがわかくとうられる。アンドロゲンには左脳さのう発達はったつおさえるはたらきがあり、このため少年しょうねんのう少女しょうじょよりも発達はったつおそい。女性じょせい男性だんせいのうよりものうはりという右脳うのう左脳さのうつな神経しんけいおおい。また、男性だんせい女性じょせい肉体にくたいおおきさにちがいがあるように、のう男性だんせい女性じょせいのうくらべてやく12~3%おおきい[よう出典しゅってん]

性徴せいちょう[編集へんしゅう]

乳児にゅうじ以降いこうでは視床ししょう下部かぶのネガティブフィードバックによりせいホルモンの分泌ぶんぴつ抑制よくせいされているが、だいいち性徴せいちょうわり、だい性徴せいちょう思春期ししゅんきになるとこの抑制よくせいのう低下ていかはじめ、これにより男女だんじょそれぞれに特徴とくちょうてき身体しんたい発達はったつしょうじるとともに、性的せいてき欲求よっきゅう性的せいてき興奮こうふん頻度ひんど急激きゅうげきたかまる。

典型てんけいれいとしてはつぎのものがある。

精巣せいそうゆうする場合ばあい
  • 精巣せいそう容量ようりょう増大ぞうだい
  • 陰茎いんけい発達はったつ
  • 陰毛いんもうはつ
  • 精通せいつう
  • へんごえ
卵巣らんそうゆうする場合ばあい
  • 骨盤こつばん発達はったつ皮下脂肪ひかしぼう増大ぞうだい
  • 乳房ちぶさ発達はったつ
  • 陰毛いんもうはつ
  • 月経げっけい開始かいし

典型てんけいれいとしては前述ぜんじゅつ仮性かせいはん陰陽いんようなどのほか思春期ししゅんき発症はっしょう男子だんし9さい未満みまん女子じょし7さい未満みまん性徴せいちょう思春期ししゅんきはじまる)と思春期ししゅんきおそはつ男子だんし14さい女子じょし12さいになっても性徴せいちょう思春期ししゅんきはじまらない)がある[3]

せい指向しこう性的せいてき指向しこう[編集へんしゅう]

性的せいてき指向しこう(sexual orientation)はだれきになるかという「性愛せいあい恋愛れんあい対象たいしょう」である。ここでう「きになる」は「恋愛れんあい感情かんじょういだく」「同棲どうせいしたいとおもう」「性交せいこうしたいとおもう」などの感情かんじょうであるが、そのレベルはひとによってさまざまである。たんに「性交せいこうしたい」というせい交渉こうしょう欲求よっきゅうのみをひと存在そんざいし、「性交せいこうしたいのは女性じょせいだが、一緒いっしょらしたいのは男性だんせい」といったひともいる。

一般いっぱんてき多数たすうだとされる異性愛者いせいあいしゃ(heterosexual)は、男性だんせい女性じょせいを、女性じょせい男性だんせい恋愛れんあい対象たいしょうとする。しかし同性どうせい恋愛れんあい対象たいしょうとする同性愛どうせいあいしゃ(homosexual)とばれる人々ひとびとふるくから一般いっぱんてき存在そんざいし、男性だんせい男性だんせいきになるひとゲイ(gay)、女性じょせい女性じょせいきになるひとレズビアン(lesbian)とぶ。日本にっぽんでは男性だんせい男性だんせいきになるケースを「ホモ」、女性じょせい女性じょせいきになるケースを「レズ」とぞくんでいたが、この言葉ことばはいずれも差別さべつ侮辱ぶじょくてきであるとしてけられる傾向けいこうにある。とく最近さいきん女性じょせい同性愛どうせいあいしゃたち自分じぶんたちのせい指向しこうをビアンとんでいる。同性愛どうせいあいがないひとノンケう(non+、で日本語にほんご)。アメリカでは男女だんじょ区別くべつせずにゲイともばれる傾向けいこうがある。

なかには、男性だんせいでも女性じょせいでもきになるひとおおりょう性愛せいあい(bisexual)とばれている。りょう性愛せいあいひとなかにも男女だんじょひとしくあいするタイプもあれば、どちらかというと異性いせいあいだが、同性どうせいでも魅力みりょくてきひとがいればきになるというタイプもあり、その程度ていどはさまざまである。また、自分じぶんでは性愛せいあいおもっているひと実際じっさい機会きかいがなかっただけで、りょう性愛せいあい素質そしつがある場合ばあいおおいのではないか、というせつもある[よう出典しゅってん]

基本きほんてきには異性愛者いせいあいしゃであるもの特定とくてい環境かんきょうした異性いせいすくない戦場せんじょう刑務所けいむしょ同性どうせいのみの学生がくせいりょうなど)で同性どうせい恋愛れんあいとセックスの対象たいしょう選択せんたくする場合ばあいもあり、機会きかいてき同性愛どうせいあいばれる。この場合ばあい除隊じょたい釈放しゃくほう卒業そつぎょうなどにより環境かんきょうわることで、同性愛どうせいあい傾向けいこう消滅しょうめつする場合ばあいもある。つまり、機会きかいてき同性愛どうせいあい根源こんげんてき性的せいてき指向しこう自体じたいによるものではなく、環境かんきょうにおいて一時いちじてき形成けいせいされる性的せいてき嗜好しこう(sexual preference)となすことができる[よう出典しゅってん]

このほか、男性だんせいおよび女性じょせいのどちらも恒常こうじょうてき性欲せいよく対象たいしょうとしない、つまりせい指向しこうたないという場合ばあい性愛せいあい(asexuality)とばれ、これをせい指向しこうなか分類ぶんるいすることもできる。

また、男性だんせい女性じょせいやその2ふんほうもとづいたせい分類ぶんるい適合てきごうしない人々ひとびとふくめ、あらゆる人々ひとびとこいをしたり、性的せいてき願望がんぼういたりする人々ひとびと。さらに、性別せいべつとらわれず、特定とくてい人間にんげんこいすることができるものなどの要素ようそ人々ひとびとぜん性愛せいあいという。

せい指向しこう次項じこうせい自認じにん独立どくりつのものである。くわしくは次項じこう参照さんしょう

せい同一どういつせいせい自認じにん[編集へんしゅう]

詳細しょうさいは「せい同一どういつせいせい自認じにん)」を参照さんしょう

せい同一どういつせい(gender identity)は、せい自認じにん、ジェンダー・アイデンティティなどともばれ、自身じしんジェンダー性別せいべつ)をどのように認識にんしきしているかをす。出生しゅっしょう身体しんたいてき特徴とくちょうからあてられた性別せいべつせい同一どういつせい一致いっちするシスジェンダーひとと、一致いっちしないトランスジェンダーひとがいる。UCLAのウィリアムズ研究所けんきゅうじょ研究けんきゅうでは、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく成人せいじんの0.9%がトランスジェンダーであると自認じにんしている[4]

トランスジェンダーのひと戸籍こせき対外たいがいてき性別せいべつ自身じしんせい同一どういつせい不一致ふいっちによりしょうじる性別せいべつ違和いわ(Gender Dysphoria, GD)を解消かいしょうするために、社会しゃかいてき性別せいべつ移行いこう使用しようする名前なまえ変更へんこう服装ふくそうなどのせい表現ひょうげん変更へんこう)や医学いがくてき方法ほうほうもちいた身体しんたいてき性別せいべつ移行いこうおこなうことがある[5]:745以前いぜん国際こくさいてきせい同一どういつせい障害しょうがい(Gender Identity Disorder, GID)との名称めいしょう精神せいしん疾患しっかんとしてあつかわれていたが、WHOICD-11アメリカ精神せいしん学会がっかいDSM-5において性別せいべつ違和いわだつ病理びょうりおこなわれ、疾患しっかんではなく「性別せいべつ違和いわ」や「性別せいべつごう」という状態じょうたい呼称こしょう変更へんこうされた[6]

ひとせい自認じにん(ジェンダーアイデンティティ)は連続れんぞくたいでありグラデーションである。そのため、Xジェンダーをはじめとしたさまざまなアイデンティティが存在そんざいする。

現代げんだい日本にっぽんではおも出生しゅっしょうそと性器せいき外観がいかん医師いしによって性別せいべつ判定はんていされて、出生しゅっしょうとどけかいして戸籍こせき登録とうろくされる[7]物心ぶっしんころから出生しゅっしょうてられた性別せいべつ違和感いわかんかんじ、「自分じぶんせい反対はんたいのものであったらかったのに」とおもったり、「自分じぶん本来ほんらいせい反対はんたいのものである」と確信かくしんしていたりするひとがいる。しかし出生しゅっしょうのにてられた性別せいべつちが性別せいべつ生活せいかつすることには偏見へんけん障害しょうがいおおい。

せい自認じにんせい指向しこう独立どくりつしたものとして明瞭めいりょう区別くべつされてかんがえられるが、あやまった認識にんしきにより混同こんどうされているケースも依然いぜんとして散見さんけんされる。トランスジェンダー女性じょせい場合ばあいせい指向しこうとしては男性だんせいきになるのであろうと他者たしゃからおもわれる場合ばあいもあるが、シスジェンダーのひと同様どうよう女性じょせい恋愛れんあい対象たいしょうとする同性愛どうせいあいしゃもいる。もちろん、男性だんせい恋愛れんあい対象たいしょうであるトランスジェンダー男性だんせいもいる。

ことばのうえでも「ゲイ」は本来ほんらい同性愛どうせいあいとりわけ男性だんせい同性愛どうせいあいしゃ意味いみするのに、日本にっぽんで「ゲイボーイ」というと酒場さかば女装じょそうして給仕きゅうじをするひとのことをすのが普通ふつうであった。また「おかま」という言葉ことば(この言葉ことば本来ほんらい女装じょそう男娼だんしょう意味いみ侮辱ぶじょくてきである)も女装じょそうしゃ意味いみ使用しようしたり男性だんせい同性どうせいあいだ性交せいこう意味いみ使用しようしたりして、やはり言葉ことば混乱こんらんしょうじている。

そもそも出生しゅっしょうてきせいせい指向しこうせい自認じにんは「連動れんどうしやすい」ものではあるが「完全かんぜん連動れんどうする」ものではないのである。条件じょうけんを「せい指向しこう男女だんじょどちらか一方いっぽう、または男女だんじょ両方りょうほう」「せい嗜好しこう考慮こうりょれない」とすれば下記かきの12種類しゅるいのパターンが存在そんざいするとかんがえられる。[よう出典しゅってん]

せい自認じにん性的せいてき指向しこうの12パターン
出生しゅっしょうせい せい自認じにん 性的せいてき指向しこう 概要がいよう
おとこ おとこ おとこ 男性だんせい同性愛どうせいあいしゃシスジェンダー男性だんせいかつゲイ
おとこ おとこ おんな 男性だんせい異性愛者いせいあいしゃ:シスジェンダー男性だんせいかつ男性だんせいヘテロセクシュアル
おとこ おとこ 男女だんじょ両方りょうほう 男性だんせいりょう性愛せいあいしゃ:シスジェンダー男性だんせいかつ男性だんせいバイセクシュアル
おとこ おんな おとこ 女性じょせい異性愛者いせいあいしゃトランスジェンダー(MtF)かつ女性じょせいヘテロセクシュアル
おとこ おんな おんな 女性じょせい同性愛どうせいあいしゃ:トランスジェンダー(MtF)かつレズビアン
おとこ おんな 男女だんじょ両方りょうほう りょう性愛せいあいせい転換てんかんしゃ:トランスジェンダー(MtF)かつ女性じょせいバイセクシュアル
おんな おとこ おとこ 男性だんせい同性愛どうせいあいしゃ:トランスジェンダー(FtM)かつゲイ
おんな おとこ おんな 男性だんせい異性愛者いせいあいしゃ:トランスジェンダー(FtM)かつ男性だんせいヘテロセクシュアル
おんな おとこ 男女だんじょ両方りょうほう りょう性愛せいあいせい転換てんかんしゃ:トランスジェンダー(FtM)かつ男性だんせいバイセクシュアル
おんな おんな おとこ 女性じょせい異性愛者いせいあいしゃ:シスジェンダー女性じょせいかつ女性じょせいヘテロセクシュアル
おんな おんな おんな 女性じょせい同性愛どうせいあいしゃ:シスジェンダー女性じょせいかつレズビアン
おんな おんな 男女だんじょ両方りょうほう 女性じょせいりょう性愛せいあいしゃ:シスジェンダー女性じょせいかつ女性じょせいバイセクシュアル

これはほんの一部いちぶであり、すべてではない。それほどさまざまなせい自認じにん性的せいてき指向しこう存在そんざいする。

せい指向しこう出生しゅっしょうてられた性別せいべつではなく、せい自認じにんから判断はんだんする。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ だい70かい 性差せいさ:ジェンダーとセクスのちがい - 内閣ないかく”. 内閣ないかくホームページ. 2023ねん1がつ18にち閲覧えつらん
  2. ^ a b 広辞苑こうじえん だいはん p.1479「性別せいべつ
  3. ^ 思春期ししゅんき発現はつげん大山おおやま建司けんじ
  4. ^ Flores, Andrew (2016ねん6がつ). “How Many Adults Identify as Transgender in the United States”. Williams Institute UCLA School of Law. 2020ねん10がつ19にち閲覧えつらん
  5. ^ Victoria Maizes, Integrative Women's Health (2015, ISBN 0190214805), "Many transgender people experience gender dysphoria—distress that results from the discordance of biological sex and experienced gender (American Psychiatric Association, 2013). Treatment for gender dysphoria, considered to be highly effective, includes physical, medical, and/or surgical treatments [...] some [transgender people] may not choose to transition at all."
  6. ^ せい同一どういつせい障害しょうがい 精神せいしん疾患しっかん対象たいしょうがい WHO”. 毎日新聞まいにちしんぶん. (2018ねん6がつ20日はつか). https://mainichi.jp/articles/20180620/ddm/012/040/041000c 2020ねん10がつ19にち閲覧えつらん 
  7. ^ 家永いえながのぼる (2017). “性別せいべつ確定かくてい出生しゅっしょうした性別せいべつ決定けってい : 「せいべつ段階だんかいせい」および「せいべつ相対そうたいせい」の視点してんから”. 専修せんしゅう法学ほうがく論集ろんしゅう 131. 

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 『セクシュアルマイノリティ ― 同性愛どうせいあいせい同一どういつせい障害しょうがい、インターセックスの当事とうじしゃかた人間にんげん多様たようせい教職員きょうしょくいんネットワーク、ISBN 4-7503-1695-4

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]