池田いけだ屋や事件じけん

池田いけだ屋や事件じけん
池田いけだ屋や跡あと（2010年ねん4月がつ）
場所ばしょ	京都きょうと三条さんじょう木屋こや町まち
座標ざひょう	北緯ほくい35度ど0分ふん32.2秒びょう 東経とうけい135度ど46分ふん11.6秒びょう
日付ひづけ	元治もとはる元年がんねん6月5日にち（1864年ねん7月がつ8日にち）
概要がいよう	旅籠はたごの池田いけだ屋やで会合かいごう中ちゅうの長州ちょうしゅう藩はん・土佐とさ藩はん・肥後ひご藩はん等ひとしの尊王そんのう攘夷じょうい派は志士ししを新選しんせん組ぐみが殺傷さっしょう、捕縛ほばく。
原因げんいん	古こ高こう俊太郎しゅんたろうの自白じはくによる京都きょうと放火ほうか計画けいかく等とうの発覚はっかく（異説いせつあり）
攻撃こうげき手段しゅだん	刀かたな、槍やり
攻撃こうげき側がわ人数にんずう	一覧いちらん
死亡しぼう者しゃ	一覧いちらん

池田いけだ屋や事件じけん（いけだやじけん）は、幕末ばくまつの元治もとはる元年がんねん6月5日にち（1864年ねん7月がつ8日にち）に、京都きょうと三条さんじょう木屋こや町まち（三条小橋さんじょうこばし）の旅籠はたご・池田いけだ屋やに潜伏せんぷくしていた長州ちょうしゅう藩はん・土佐とさ藩はんなどの尊王そんのう攘夷じょうい派は志士ししを、京都きょうと守護しゅご職しょく配下はいかの治安ちあん維持いじ組織そしきである新選しんせん組ぐみが襲撃しゅうげきした事件じけん。

池田いけだ屋やの変へん、池田いけだ屋や事変じへん、池田いけだ屋や騒動そうどうともいわれている。近藤こんどう勇いさむは書面しょめんで洛陽らくよう動乱どうらんと名なづけている。

経緯けいい

古こ高こう俊太郎しゅんたろう邸てい跡あと（京都きょうと市し下京しもぎょう区く西にし木屋こや町まち四条しじょう上のぼる）

幕末ばくまつの京都きょうとは政局せいきょくの中心ちゅうしん地ちとして、尊王そんのう攘夷じょうい（尊攘そんじょう）・勤王きんのうなどの各種かくしゅ政治せいじ思想しそうを持もつ諸もろ藩はんの浪士ろうしが潜伏せんぷくし、活動かつどうしていた。会津あいづ藩はんと薩摩さつま藩はんによる「八はち月がつ十じゅう八はち日にちの政変せいへん」で長州ちょうしゅう藩はんが失脚しっきゃくし、朝廷ちょうていでは公武こうぶ合体がったい派はが主流しゅりゅうとなっていた。尊攘そんじょう派はが勢力せいりょく挽回ばんかいを目論もくろんでいたため、京都きょうと守護しゅご職しょくは新選しんせん組ぐみを用もちいて、京都きょうと市内しないの警備けいびや捜索そうさくを行おこなわせた。

5月下旬げじゅんごろ、新選しんせん組ぐみ諸しょ士し調ちょう役やく兼けん監察かんさつの山崎やまざき丞すすむ・島田しまだ魁いさおらが、四条しじょう小橋おばせ上あがル真しん町まちで炭すみ薪たきぎ商しょうを経営けいえいする枡ます屋や喜右衛門きうえもん（古こ高こう俊太郎しゅんたろう）の存在そんざいを突つき止とめ、会津あいづ藩はんに報告ほうこく。捜索そうさくによって、武器ぶきや長州ちょうしゅう藩はんとの書簡しょかんなどが発見はっけんされた。

元もと治ち元年がんねん（1864年ねん） 6月がつ5日にち早朝そうちょう、古いにしえ高だかを逮捕たいほした新選しんせん組ぐみは、土方ひじかた歳三としぞうの拷問ごうもんにより古いにしえ高だかを自白じはくさせた。自白じはく内容ないようは、「祇園祭ぎおんまつりの前まえの風かぜの強つよい日ひを狙ねらって御所ごしょに火ひを放はなち、その混乱こんらんに乗じょうじて中川なかがわ宮みや朝彦親王あさひこしんのうを幽閉ゆうへい、一橋ひとつばし慶喜よしのぶ・松平まつだいら容保かたもりらを暗殺あんさつし、孝明天皇こうめいてんのうを長州ちょうしゅうへ動座どうざさせる（連つれ去さる）」というものであった。しかし、自白じはくしたのは自分じぶんの本名ほんみょうが古こ高こう俊太郎しゅんたろうであることのみ、という説せつもあり、古いにしえ高だかについて述のべられた日誌にっしには自白じはく内容ないようの記述きじゅつがされていないことから自白じはくは本名ほんみょうのみであった可能かのう性せいも高たかい。

これにより、尊攘そんじょう派はの浪士ろうしらが時ときをおかず会合かいごうを行おこなうとみた新選しんせん組ぐみは、会津あいづ藩はんに報告ほうこくのうえ徹底てっていした市中しちゅう探索たんさくを提案ていあん。5日にち夕刻ゆうこく、会津あいづ藩はんの援軍えんぐんを待またず単独たんどくで三さん条じょう〜四条しじょう方面ほうめんの捜索そうさくを開始かいしした。

戦闘せんとう

京都きょうと市し 池田いけだ屋や跡あと
（2005年ねん時点じてんではパチンコ屋やだった）

池田いけだ屋や跡あと
（2009年ねん9月がつ現在げんざい、居酒屋いざかやとなっている）

亥いの刻こく（22時じごろ）すぎ、近藤こんどう隊たいは池田いけだ屋やで謀議ぼうぎ中ちゅうの尊攘そんじょう派は志士ししを発見はっけんした。近藤こんどう隊たいは数すう名めいで突入とつにゅうし、真夜中まよなかの戦闘せんとうとなった。20数すう名めいの尊攘そんじょう派はに対たいし当初とうしょ踏ふみ込こんだのは近藤こんどう勇いさむ・沖田おきた総司そうし・永倉ながくら新八しんぱち・藤堂とうどう平助へいすけの4名めいで、残のこりは屋外おくがいを固かためた。屋内おくないに踏ふみ込こんだ沖田おきたは奮戦ふんせんしたが、戦闘せんとう中ちゅうに病やまいに倒たおれ戦線せんせんから離脱りだつした。また1階かいの藤堂とうどうは油断ゆだんして鉢はち金きんを取とったところで額がくを斬きられ、血液けつえきが目めに入はいり戦線せんせん離脱りだつした。

襲撃しゅうげきを受うけた宮部みやべ鼎かなえ蔵ぞうら志士ししたちは応戦おうせんしつつ、現場げんばからの脱出だっしゅつを図はかった。裏口うらぐちを守まもっていた安藤あんどう早さ太郎たろう・奥沢おくさわ栄助えいすけ・新田にった革かわ左衛門さえもん達いたるのところに土佐とさ藩はん脱藩だっぱん・望月もちづき亀ひさし弥太やたら浪士ろうしが脱出だっしゅつしようと必死ひっしで斬きりこみ逃亡とうぼう。これにより奥沢おくさわは死亡しぼうし、安藤あんどう・新田にったも1か月げつ後ごに死亡しぼうした。望月もちづきは負傷ふしょうしつつも長州ちょうしゅう藩邸はんてい付近ふきんまで逃にげ延のびたが、追おっ手てに追おいつかれ自刃じじんした。同おなじく戦闘せんとうの末すえに脱出だっしゅつに成功せいこうした土佐とさ藩はん・野老山ところやま吾われ吉郎よしろうの調書ちょうしょが、2009年ねんに高知こうち県けんが購入こうにゅうした土佐とさ京都きょうと藩邸はんてい資料しりょう（高知こうち県立けんりつ坂本さかもと龍馬りょうま記念きねん館かん蔵くら）から見みつかり、事件じけん前後ぜんこうの様子ようすが明あきらかとなった。太刀たちや袴はかまを失うしない、同僚どうりょうの石川いしかわ潤じゅん次郎じろうが現場げんばで闘たたかえ死ししていたことにも気きづいていなかったことから戦闘せんとうの激はげしさが偲しのばれる。

新選しんせん組ぐみ側がわは一時いちじは近藤こんどう・永倉ながくらの2人ふたりとなるが、土方どかた隊たいの到着とうちゃくにより戦局せんきょくは新選しんせん組ぐみに有利ゆうりに傾かたむき、方針ほうしんを「斬きり捨すて」から「捕縛ほばく」に変更へんこう。9名めい討うち取とり4名めい捕縛ほばくの戦果せんかを上あげた。会津あいづ・桑名くわな藩はんの応援おうえんは戦闘せんとう後ごに到着とうちゃくした。

この戦闘せんとうで数すう名めいの尊攘そんじょう派はは逃走とうそうしたが、続つづく翌朝よくあさの市中しちゅう掃討そうとうで会津あいづ・桑名くわな藩はんらと連携れんけいし、20名めいあまりを捕縛ほばくした。この市中しちゅう掃討そうとうも激戦げきせんとなり、会津あいづ藩はんは5名めい、彦根ひこね藩はんは4名めい、桑名くわな藩はんは2名めいの即死そくし者しゃを出だした。

その後ご、新選しんせん組ぐみは、夜よるのうちに帰かえると闇討やみうちちの恐おそれがあるために夜よるが明あけるまで待機たいきし、翌日よくじつの正午しょうご、壬生みぶ村むらの屯所とんしょに帰還きかんした。沿道えんどうは野次馬やじうまであふれていたという。

桂かつら小五郎こごろう（のちの木戸きど孝允たかよし）は、会合かいごうへの到着とうちゃくが早はやすぎたため、一旦いったん池田いけだ屋やを出でて対馬つしま藩邸はんていで大島おおしま友之ともゆき允まことと談話だんわしており難なんを逃のがれた。談話だんわ中ちゅうに外そとの騒さわぎで異変いへんに気きづいた桂かつらは、現場げんばに駆かけつけようとしたが、大島おおしまに制止せいしされたため思おもい留とどまったと、桂かつらの回想かいそう録ろく『桂かつら小五郎こごろう京都きょうと変動へんどうノ際さい動静どうせい』には記しるされている。ただし、鳥取とっとり藩はん士し・安達あだち清風きよかぜの日記にっきによれば、大島おおしまは事件じけん前まえの5月28日にち（7月がつ1日にち）に京都きょうとを離はなれ、6月5日にち（7月がつ8日にち）の当日とうじつには江戸えどにおり、6月13日にち（7月がつ16日にち）になって事件じけんのことを知しったとされており、大島おおしまが桂かつらを止とめたというのは事実じじつでない可能かのう性せいがある。それとは別べつに、京都きょうと留守居るすい役やくであった乃美のみ織江おりえは、手記しゅきに「桂かつら小五郎こごろう義ぎは池田いけだ屋やより屋根やねを伝つたい逃のがれ、対馬つしま屋敷やしきへ帰かえり候こう由ゆかり…」と書かき残のこしているが、それに先立さきだって「桂かつら小五郎こごろうが殺ころされた」との誤報ごほうを藩はんに伝つたえ藩はん内ないをさらに混乱こんらんさせたこともあり、また池田いけだ屋やから対馬つしま藩邸はんていまで逃にげられるような屋根やねが池田いけだ屋やに無ないなどの点てんから、乃美のみの記述きじゅつは信用しんようできないという指摘してきもある。

影響えいきょう

三条さんじょう大橋おおはしの擬宝珠ぎぼうしゅ刀がたな傷跡きずあと。池田いけだ屋や事件じけんの時ときのものとされる。

御所ごせ焼やき討うちの計画けいかくを未然みぜんに防ふせぐことに成功せいこうした新選しんせん組ぐみの名なは天下てんかに轟とどろいた。逆ぎゃくに尊攘そんじょう派はは、吉田よしだ稔みのる麿まろ・北きた添佶摩ま・宮部みやべ・大高おおだか又次郎またじろう・石川いしかわ潤じゅん次郎じろう・杉山すぎやま松助まつすけ・松田まつだ重助しげすけらの逸材いつざいが戦死せんしし、大だい打撃だげきを受うける。落命らくめいした志士ししたちは、三条さんじょう大橋おおはし東ひがしの三さん縁えん寺てらに運はこばれて葬ほうむられた。

長州ちょうしゅう藩はんは、この事件じけんをきっかけに激高げっこうした強硬きょうこう派はに引ひきずられる形かたちで挙兵きょへい・上洛じょうらくし、7月がつ19日にち（8月がつ20日はつか）に禁門きんもんの変へんを引ひき起おこした。

新選しんせん組ぐみはこの事件じけんにより知名度ちめいどが上あがったため、土方どかたや斎藤さいとうらが自みずから江戸えどへ向むかい隊たい士しを募集ぼしゅうするなど勢力せいりょく拡大かくだいに動うごくこととなった。

異説いせつ

近年きんねんの研究けんきゅうでは、「御所ごしょ放火ほうか計画けいかく」「松平まつだいら容保かたもり暗殺あんさつ」「天皇てんのう拉致らち」などの志士しし側がわの陰謀いんぼうは、会津あいづ藩はん・桑名くわな藩はん・新選しんせん組ぐみなど幕府ばくふ方かたによる主張しゅちょうであり、会津あいづ藩はん・桑名くわな藩はん・新選しんせん組ぐみの実力じつりょく行使こうし正当せいとう化かや尊攘そんじょう派はの信用しんよう失墜しっついを狙ねらったものであると言いう説せつもある。その理由りゆうとして、これらの計画けいかくは幕府ばくふ側がわの記録きろくにはあるものの、志士しし側がわの記録きろくには一切いっさいなく、桂かつら小五郎こごろうが記しるした『木戸きど孝允たかよし日記にっき』にも、池田いけだ屋やでの会合かいごうは"新選しんせん組ぐみに逮捕たいほ監禁かんきんされている仲間なかま（古こ高こう俊太郎しゅんたろう）を救すくうための会合かいごう"としか記しるされていない。

ただし池田いけだ屋や事件じけんの前年ぜんねん、文久ぶんきゅう三さん年ねん(1863)八はち月がつ十じゅう八はち日にちの政変せいへん以降いこう、長州ちょうしゅうに都落みやこおちしていた尊攘そんじょう派は公家くげの三条さんじょう実美みみ・久留くる米べい藩はんの真木まき和泉いずみ・長州ちょうしゅう藩はんの来島くるしま又兵衛またべえらにより「武力ぶりょくをもって京都きょうとに進発しんぱつし長州ちょうしゅうの無実むじつを訴うったえる」という進発しんぱつ論ろんが盛さかんに唱となえられていた。

この進発しんぱつ論ろんへの令れいは池田いけだ屋や事件じけんの前日ぜんじつ、6月4日にちに長州ちょうしゅう藩はんより発はっせられている。

新選しんせん組ぐみが古こ高こう俊太郎しゅんたろう邸ていを襲撃しゅうげきした目的もくてきは、当初とうしょ、古高ふるたか邸ていを京きょうの定宿じょうやどとしていた宮部みやべ鼎かなえ蔵ぞうの捕縛ほばくであったが、宮部みやべは新選しんせん組ぐみに踏ふみ込こまれる一いち歩ほ手前てまえで古いにしえ高だかにより逃にがされてしまった事ことで、新選しんせん組ぐみは急遽きゅうきょ捕縛ほばく対象たいしょうを宮部みやべから古高ふるたか1人ひとりに切きり替かえ、拷問ごうもんで宮部みやべの逃亡とうぼう先さきを割出わりだそうとしたが、古いにしえ高だかは宮部みやべの逃亡とうぼう先さきまでは把握はあくしていなかった。

それゆえ永倉ながくら新八しんぱちの証言しょうげん通どおり、数かず隊たいに分わかれ四よん条じょうから三さん条じょうの旅籠はたご等とうを虱潰しらみつぶしに探索たんさくし、結果けっか近藤こんどう隊たいの約やく7〜10名めいが旅籠はたご池田いけだ屋やで宮部みやべ鼎かなえ蔵ぞうと、共ともに居いた志士しし達たちを偶然ぐうぜん発見はっけんした。

桂かつらの手記しゅきによると、池田いけだ屋やでの会合かいごうは古高ふるたか捕縛ほばく後ごに急遽きゅうきょ決定けっていされたもので、事前じぜんに新選しんせん組ぐみが場所ばしょを察知さっちしていたとは考かんがえにくい。永倉ながくら新八しんぱちは手記しゅき『浪士ろうし文久ぶんきゅう報国ほうこく記事きじ』で「片かたっ端ぱしから」探索たんさくした旨むねを述のべており、また事件じけん直前ちょくぜんに祇園ぎおんの井筒屋いづつやに新選しんせん組ぐみが探索たんさくを行おこなった記録きろくがあるため、実際じっさいには会合かいごう場所ばしょがどこであるかは把握はあくしておらず、多おおくの場所ばしょを探索たんさくしていたと考かんがえられる。

近藤こんどうの書簡しょかんや永倉ながくらの手記しゅきによると、当日とうじつは近藤こんどう隊たい10名めい、土方どかた隊たい12名めい、井上いのうえ隊たい12名めいの三さん手てに別わかれて探索たんさくを行おこなっており、応援おうえんに駆かけつけたのは井上いのうえ隊たいである。

近藤こんどうの書簡しょかんによると、池田いけだ屋やに乗込のりこんだのは近藤こんどう、沖田おきた、永倉ながくら、藤堂とうどう、近藤こんどう周平しゅうへいの5名めいということになっているが、永倉ながくらの手記しゅきや、事件じけん後ごの褒賞ほうしょう者しゃ名簿めいぼから推定すいていすると、近藤こんどう、沖田おきた、永倉ながくら、藤堂とうどう、奥沢おくさわ、安藤あんどう、新田にった、谷たに万太郎まんたろう、武田たけだ観かん柳やなぎ斎ひとし、浅野あさの薫かおるの10名めいである。

また、近藤こんどうは書簡しょかんの中なかで、当日とうじつは病人びょうにんが多おおく人手ひとでが少すくなかったとしているが、事件じけん直前ちょくぜんに脱走だっそう者ものが多おおく出でていたためとする説せつがある。

司馬しば遼りょう太郎たろうの小説しょうせつ『竜馬りょうまがゆく』などでは、山崎やまざきが薬屋くすりやに変装へんそうし事前じぜんに池田いけだ屋やに潜入せんにゅうして探索たんさくし、突入とつにゅう前まえに戸との錠じょうを開あけたことになっている。しかし、山崎やまざきの確報かくほうがあったならば最初さいしょから主力しゅりょくを池田いけだ屋やに差さし向むけたはずであり、山崎やまざきの名なは褒賞ほうしょう者もの名簿めいぼにはないことから、実際じっさいは屯所とんしょ残留ざんりゅう組ぐみであったと推定すいていされる。

新選しんせん組ぐみ出動しゅつどう隊たい士し一覧いちらん

池田いけだ屋や事件じけんに出動しゅつどうした新選しんせん組ぐみ隊たい士しは以下いかの通とおり（諸説しょせつ有あり）

近藤こんどう隊たい（10名めい）

• 近藤こんどう勇いさむ
• 沖田おきた総司そうし
• 永倉ながくら新八しんぱち
• 藤堂とうどう平助へいすけ（重傷じゅうしょう）
• 武田たけだ観かん柳やなぎ斎ひとし
• 谷たに万太郎まんたろう
• 浅野あさの薫かおる（藤太郎ふじたろう）
• 安藤あんどう早さ太郎たろう（重傷じゅうしょう、のち死亡しぼう）
• 奥沢おくさわ栄助えいすけ（重傷じゅうしょう、当日とうじつに死亡しぼう）
• 新田にった革かわ左衛門さえもん（重傷じゅうしょう、のち死亡しぼう）

土方どかた隊たい（12名めいか24名めい）

• 土方ひじかた歳三としぞう
• 井上いのうえ源三郎げんざぶろう
• 斎藤さいとう一はじめ
• 原田はらだ左ひだり之の助すけ
• 島田しまだ魁いさお
• 谷たに三十郎さんじゅうろう
• 川島かわしま勝司しょうじ
• 葛山かつらやま武たけ八郎はちろう
• 蟻あり通どおり勘かん吾われ
• 篠塚しのづか峰ほう三さん
• 林はやし信太郎しんたろう
• 三品みしな仲治なかじ

松原まつばら隊たい（12名めい）

諸説しょせつ有あり。井上いのうえ隊たいとも、土方どかた隊たいとも。

• 松原まつばら忠司ただし
• 宿院しゅくいん良蔵りょうぞう
• 伊木いぎ八郎はちろう
• 中村なかむら金吾きんご
• 尾関おぜき弥四郎やしろう
• 佐々木ささき蔵之助くらのすけ
• 河合かわい耆三郎さぶろう
• 酒井さかい兵庫ひょうご
• 木内きうち峰みね太ふとし
• 松本まつもと喜次郎きじろう
• 竹内たけうち元太郎げんたろう
• 近藤こんどう周平しゅうへい

屯所とんしょ守備しゅび

• 山南さんなん敬助けいすけ
• 尾関おぜき雅まさ次郎じろう
• 柳田やなぎだ三さん二に郎ろう
• 山崎やまざき丞すすむ
• 尾形おがた俊太郎しゅんたろう
• 山野やまの八十八やそはち

なお、当時とうじ所属しょぞくしていた馬うま詰つめ信しんじ十じゅう郎ろう・馬うま詰つめ柳太郎りゅうたろうはこの日ひに脱走だっそうした為ために不参加ふさんか。

尊王そんのう攘夷じょうい派は志士しし

池田いけだ屋や事件じけんで襲撃しゅうげきされた主おもな志士しし

• 宮部みやべ鼎かなえ蔵ぞう（肥後ひご藩はん。池田いけだ屋やで自刃じじん）
• 北きた添佶摩ま（土佐とさ藩はん。池田いけだ屋やで自刃じじん。子母澤しもざわ寛ひろしの創作そうさく中ちゅうの階段かいだん落おちで有名ゆうめい）
• 淵上ふちがみ郁太郎いくたろう（久留くる米べい藩はん。脱出だっしゅつ）
• 大高おおだか又次郎またじろう（林田はやしだ藩はん。池田いけだ屋やで闘たたかえ死し）
• 石川いしかわ潤じゅん次郎じろう（土佐とさ藩はん。池田いけだ屋やで闘たたかえ死し）
• 松田まつだ重助しげすけ（肥後ひご藩はん。池田いけだ屋やで闘たたかえ死し）
• 伊藤いとう弘ひろし長ちょう（土佐とさ藩はん。池田いけだ屋やで闘たたかえ死し）
• 福岡ふくおか祐次ゆうじ郎ろう（伊予いよ松山まつやま藩はん。池田いけだ屋やで闘たたかえ死し）
• 越智おち正之まさゆき（土佐とさ藩はん。池田いけだ屋やで闘たたかえ死し）
• 広岡ひろおか浪なみ秀しゅう（長州ちょうしゅう藩はんの神職しんしょく。池田いけだ屋やで闘たたかえ死し）
• 吉田よしだ稔みのる麿まろ（長州ちょうしゅう藩はん。脱出だっしゅつ後ご自刃じじん）
• 望月もちづき亀ひさし弥太やた（土佐とさ藩はん。脱出だっしゅつ後ご自刃じじん）
• 杉山すぎやま松助まつすけ（事件じけんを知しり長州ちょうしゅう藩邸はんていから駆かけつけるが会津あいづ藩はん兵へいに斬きられ、後のちに死亡しぼう）
• 野老山ところやま吾われ吉郎よしろう（土佐とさ藩はん。戦闘せんとうの後のち、脱出だっしゅつ。儒学じゅがく者しゃ・板倉いたくら槐えんじゅ堂どうを頼たより、後のちに長州ちょうしゅう藩邸はんていで自刃じじん）
• 藤崎ふじさき八郎はちろう（土佐とさ藩はん。三条小橋さんじょうこばしで負傷ふしょう後ご自刃じじん、あるいは大坂おおさか土佐とさ藩邸はんていに送おくられた後のち死亡しぼうとも）
• 近江おうみ屋やまさ（近江おうみ屋や女将おかみ（42歳さい）。近江おうみ屋やで殺害さつがいされる。「ふさ」とも）
• 酒井さかい金三郎きんざぶろう（長ちょう府ふ藩はん。縄手なわて後ごで殺ころされる）
• 内山うちやま太郎たろう右みぎ衛門えもん（長州ちょうしゅう藩はんの無給むきゅう通どおり士し。捕縛ほばくされ、7月がつ20日はつか（8月がつ21日にち）に刑死けいし）
• 佐伯さえき稜りょう威雄たけお（長州ちょうしゅう藩はんの神職しんしょく。捕縛ほばくされ、慶応けいおう元年がんねん6月4日にち（1865年ねん7月がつ26日にち）に刑死けいし）
• 佐藤さとう一郎いちろう（長州ちょうしゅう藩はん京都きょうと藩邸はんてい吏。捕縛ほばくされ、7月がつ20日はつか（8月がつ21日にち）に刑死けいし）
• 山田やまだ虎之助とらのすけ（長州ちょうしゅう藩はんの無給むきゅう通どおり士し。いったん脱出だっしゅつ。後のちに捕縛ほばく）
• 大高おおだか忠兵衛ちゅうべえ（林田はやしだ藩はん。大高おおだか又次郎またじろうの弟おとうと。いったん脱出だっしゅつ。後のちに捕縛ほばくされ、7月がつ4日にち（8月がつ5日にち）に獄死ごくし）
• 北村きたむら善吉ぜんきち（又次郎またじろうの門人もんじん。槍やり傷きずを負おうが、池田いけだ屋や裏うらから川辺かわべに逃のがれ、舟入ふないりの中なかへ潜ひそんで助たすかる）
• 瀬尾せお幸さいわい十郎じゅうろう（捕縛ほばく）
• 安藤あんどう鉄てつ馬ば（捕縛ほばくされるが逃のがれる）
• 沢井さわい帯刀たてわき（捕縛ほばく）
• 大中おおなか主膳しゅぜん（捕縛ほばく）
• 森もり主計かずえ（京きょう。捕縛ほばく）
• 西川にしかわ耕造こうぞう（京きょう。一旦いったん脱出だっしゅつ。10日とおか後ごに捕縛ほばくされ、元治もとはる2年ねん2月がつ11日にち（1865年ねん3月8日にち）に獄死ごくし）
• 木村きむら甚五郎じんごろう（京きょう。久坂くさか玄げん瑞みずと間違まちがわれ、捕縛ほばく）
• 今井いまい三郎さぶろう右みぎ衛門えもん（豊岡とよおか藩はん（46歳さい）。捕縛ほばくされ、刑死けいし）
• 村上むらかみ俊平しゅんぺい（上野うえの佐さ位い郡ぐん出身しゅっしん。捕縛ほばくされ、刑死けいし）
• 河田かわた佐たすく久馬きゅうま（因いん州しゅう。脱出だっしゅつ）
• 高木たかぎ元もと右みぎ衛門えもん（肥後ひご藩はん。脱出だっしゅつして長州ちょうしゅう藩邸はんていへ逃のがれる）
• 宮部みやべ春はる蔵ぞう（肥後ひご藩はん。鼎かなえ蔵ぞうの弟おとうと。長州ちょうしゅう藩邸はんていへ逃のがれる）
• 岩佐いわさ某ぼう（丹波たんば。池田いけだ屋やの風呂ふろ桶おけの中なかに隠かくれて助たすかる）
• 有吉ありよし熊次郎くまじろう（長州ちょうしゅう藩はん。長州ちょうしゅう藩邸はんていに脱出だっしゅつ）
• 大沢おおさわ逸平いっぺい（長州ちょうしゅう藩はん。池田いけだ屋やの風呂ふろ桶おけの中なかに隠かくれて助たすかり、長州ちょうしゅう藩邸はんていに脱出だっしゅつ）
• 松山まつやま良造りょうぞう（越後えちご国こく。松山まつやま高だか吉きちの従兄弟いとこ、元もと新選しんせん組ぐみとも。脱出だっしゅつ）
• 田中たなか長ちょう九郎くろう（京きょう。捕縛ほばく）
• 吉田よしだ五郎ごろう（越前えちぜん出身しゅっしん。捕縛ほばく）
• 南雲なぐも平ひら馬うま（上野うえの利根とね郡ぐん沼田ぬまた村むら出身しゅっしん。捕縛ほばく）
• 国重くにしげ正文せいぶん（長州ちょうしゅう藩はん。脱出だっしゅつ）
• 錦織にしきおり有無うむ之の助すけ（尾張おわり藩はん。二に階かい南側みなみがわより逃走とうそう、水戸みと藩はん邸やしきに逃にげるも追おい出だされ、捕縛ほばくされ、刑死けいし）

池田いけだ屋や事件じけんで捕縛ほばくされた一般人いっぱんじん

• 入江いりえ惣そう兵衛ひょうえ（池田いけだ屋や主人しゅじん。獄死ごくし）
• 入江いりえ彦助（惣そう兵衛ひょうえの弟おとうと）
• 近江おうみ屋や宇兵衛うへえ（近江おうみ屋や主人しゅじん）
• 近江おうみ屋やきん（近江おうみ屋やの人ひと）
• 近江おうみ屋やとき（近江おうみ屋やの人ひと）
• 和泉屋いずみや重助しげすけ（和泉屋いずみや主人しゅじん。刑死けいし）
• 幸次郎こうじろう（和泉屋いずみや手代てだい。刑死けいし）
• 丹波屋たんばや次郎じろう兵衛ひょうえ（丹波屋たんばや主人しゅじん。刑死けいし）
• 丹波屋たんばや万まん助すけ（次郎じろう兵衛ひょうえの子こ。刑死けいし）
• 松下まつした喜三郎きさぶろう（町人ちょうにん）
• 吉よし兵衛ひょうえ（町人ちょうにん）
• 勇いさむ助すけ（長州ちょうしゅう藩邸はんてい門番もんばん）

など

事件じけん後ごの池田いけだ屋や

事件じけん後ご、尊攘そんじょう派は志士ししをかくまっていたとして、池田いけだ屋や主人しゅじんの池田いけだ屋や惣そう兵衛ひょうえが捕縛ほばくされ、獄死ごくし。池田いけだ屋やも7か月げつ間あいだの営業えいぎょう停止ていしとなった。その後ご、親類しんるいにより近在きんざいで営業えいぎょうを再開さいかいしたが、のちに廃業はいぎょうし、現存げんそんしない。

元もとの池田いけだ屋やは人手ひとでに渡わたり、別べつの経営けいえい者しゃが佐々木ささき旅館りょかんとして営業えいぎょうしていたが、廃業はいぎょうした。1960年ねんごろまでは当時とうじの建物たてものも残のこっていたが、その後ご取とり壊こわされ、跡地あとちはテナントビル（1978年ねんごろはケンタッキーフライドチキンの店舗てんぽ）やパチンコ店てんなど転々てんてんとして、2009年ねんに、居酒屋いざかやチェーンのチムニーが、新選しんせん組ぐみをテーマにした居酒屋いざかや「海鮮かいせん茶屋ちゃや 池ち田屋たや はなの舞まい」を開業かいぎょうしている。

当地とうちには、佐々木ささき旅館りょかんの縁者えんじゃが建立こんりゅうした「池田いけだ屋や騒動そうどう之これ址し」と刻きざまれた石碑せきひがある。

参考さんこう文献ぶんけん

• 伊東いとう成郎しげお『新選しんせん組ぐみは京都きょうとで何なにをしていたか』、KTC中央ちゅうおう出版しゅっぱん
• 菊地きくち明あきら『新選しんせん組ぐみの真実しんじつ』、PHP研究所けんきゅうじょ
• 中村なかむら武生たけお『池田いけだ屋や事件じけんの研究けんきゅう』、講談社こうだんしゃ現代新書げんだいしんしょ
• 原口はらぐち清きよし「禁門きんもんの変へんの一いち考察こうさつ」『名城めいじょう商学しょうがく』46巻かん2号ごう〜3号ごう、名城大学めいじょうだいがく商しょう学会がっかい

関連かんれん項目こうもく

• 明保野あけぼの亭てい事件じけん
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外部がいぶリンク

• 『池田いけだ屋や事件じけん』 - コトバンク