空気 くうき (くうき)とは、地球 ちきゅう の大気圏 たいきけん の最 さい 下層 かそう を構成 こうせい している気体 きたい で、人類 じんるい が暮 く らしている中 なか で身 み の回 まわ りにあるものをいう[1] 。
一般 いっぱん に空気 くうき は、無色 むしょく 透明 とうめい で、複数 ふくすう の気体 きたい の混合 こんごう 物 ぶつ からなり、その組成 そせい は約 やく 8割 わり が窒素 ちっそ 、約 やく 2割 わり が酸素 さんそ でほぼ一定 いってい である。また水蒸気 すいじょうき が含 ふく まれるがその濃度 のうど は場所 ばしょ により大 おお きく異 こと なる。工学 こうがく など空気 くうき を利用 りよう ・研究 けんきゅう する分野 ぶんや では、水蒸気 すいじょうき を除 のぞ いた乾燥 かんそう 空気 くうき (かんそうくうき, dry air )と水蒸気 すいじょうき を含 ふく めた湿潤 しつじゅん 空気 くうき (しつじゅんくうき, wet air )を使 つか い分 わ ける。
地球 ちきゅう を覆 おお う気体 きたい の層 そう を「大気圏 たいきけん 」といい[2] 、その気体 きたい そのものを日常 にちじょう 会話 かいわ や工業 こうぎょう 分野 ぶんや などでは「空気 くうき 」[1] 、気象 きしょう 学 がく など地球 ちきゅう 科学 かがく の分野 ぶんや では「大気 たいき 」[3] とも呼 よ ぶ。普通 ふつう 日常 にちじょう 会話 かいわ で「空気 くうき 」という場合 ばあい には、人間 にんげん が暮 く らしている中 なか で身 み の回 まわ りに存在 そんざい する地上 ちじょう の空気 くうき を指 さ し、場合 ばあい によっては飛行機 ひこうき が航行 こうこう する高度 こうど のような上空 じょうくう の空気 くうき を指 さ す。一方 いっぽう 、地球 ちきゅう 科学 かがく においては同 おな じものを「大気 たいき 」という。なお、日本語 にほんご における「空気 くうき 」には、その場 ば にいる人々 ひとびと の気分 きぶん やその場 ば の雰囲気 ふんいき という意味 いみ もある[4] 。
乾燥 かんそう した空気 くうき 1 L の重 おも さ は、セ氏 せし 0度 ど 、1気圧 きあつ (1 atm )のときに1.293 g である[1] 。1 Lで1 gというと一見 いっけん 小 ちい さいようであるが、垂直 すいちょく に数 すう 十 じゅう kmも積 つ み重 かさ なることで、地表 ちひょう 付近 ふきん の空気 くうき には大 おお きな重 おも さ (圧力 あつりょく )がかかる。1気圧 きあつ は1.033 kgf/cm2 なので、地表 ちひょう では1 cm2 あたりおよそ1 kg の物体 ぶったい が乗 の っているような力 ちから が圧力 あつりょく として加 くわ わっている。1平方 へいほう メートルあたりでは10トン、つまり土砂 どしゃ を積 つ んだダンプカーが乗 の っているような大 おお きな力 ちから になる。これは月 つき と違 ちが って地球 ちきゅう には厚 あつ い大気 たいき の層 そう があるためであり、地表 ちひょう 付近 ふきん ではこの圧力 あつりょく のために空気 くうき は密集 みっしゅう した状態 じょうたい になっていて、真空 しんくう 状態 じょうたい とは違 ちが った様々 さまざま な影響 えいきょう がある。
(例 れい )
風速 ふうそく 、つまり空気 くうき の移動 いどう 速度 そくど が大 おお きくなるにつれ、衝突 しょうとつ する空気 くうき の総量 そうりょう が増 ふ え、大 おお きな風圧 ふうあつ が生 しょう じることになる。帆船 はんせん 、ヨット 、ウィンドサーフィン などはこれを利用 りよう して大 おお きな推力 すいりょく を得 え ているわけであるし、台風 たいふう などでは巨大 きょだい な破壊 はかい 力 りょく となる。
また、空気 くうき は流体 りゅうたい であり、空気 くうき の中 なか を進 すす む物体 ぶったい には揚力 ようりょく や抗力 こうりょく (空気 くうき 抵抗 ていこう )が生 しょう じる。鳥 とり や飛行機 ひこうき の翼 つばさ は大 おお きな揚力 ようりょく を得 え ることで空気 くうき 中 ちゅう を飛揚 ひよう する。
密度 みつど (0 ℃ 1 atm)
1.293 kg/m3
平均 へいきん モル質量 しつりょう
28.966 g/mol
熱 ねつ 膨張 ぼうちょう 率 りつ (100 ℃ 1 atm)
0.003671 /K [注 ちゅう 1]
常温 じょうおん 、常 つね 圧 あつ の空気 くうき はほぼ理想 りそう 気体 きたい として振 ふ る舞 ま い、t [℃]における空気 くうき の密度 みつど ρ ろー [kg/m3 ]は、大気 たいき 圧 あつ をP [atm]、水蒸気 すいじょうき 圧 あつ をe [atm]とすると、
ρ ろー
=
1.293
P
1
+
t
/
273.15
(
1
−
0.378
e
P
)
{\displaystyle \rho ={\frac {1.293P}{1+t/273.15}}\left(1-{\frac {0.378e}{P}}\right)}
と表 あらわ せる[5] 。
また、セ氏 せし 0度 ど 、1気圧 きあつ の乾燥 かんそう 空気 くうき における音速 おんそく は331.45 m/s [6] 、セ氏 せし 15度 ど では約 やく 340 m/sである。
1気圧 きあつ における近似 きんじ 的 てき な値 ね だが、乾燥 かんそう 空気 くうき の熱 ねつ 伝導 でんどう 率 りつ はセ氏 せし 0度 ど - 25度 ど の間 あいだ で約 やく 0.024 W・m-1 ・K-1 とほとんど変 か わらない[7] [8] [9] 。
また、1気圧 きあつ の乾燥 かんそう 空気 くうき の電気 でんき 伝導 でんどう 率 りつ (導 しるべ 電 でん 率 りつ )はエアロゾル の量 りょう により大 おお きく変 か わり、2.9× 10−15 (エアロゾル濃 こ ) - 7.88× 10−15 (エアロゾル薄 うす ) Ω おめが -1 ・m-1 (または S/m)程度 ていど であるという研究 けんきゅう 報告 ほうこく がある[10] 。
乾燥 かんそう 大気 たいき の組成 そせい を示 しめ す円 えん グラフ。下 した の円 えん は微量 びりょう 成分 せいぶん の詳細 しょうさい 。
地球 ちきゅう の大気 たいき は窒素 ちっそ 、酸素 さんそ のほか多数 たすう の微量 びりょう 成分 せいぶん で構成 こうせい される。1cm3 当 あ たり3×1019 個 こ の分子 ぶんし が含 ふく まれる。[11] 以下 いか に国際 こくさい 標準 ひょうじゅん 大気 たいき (1975)[12] における、海面 かいめん 付近 ふきん (1気圧 きあつ )の、エアロゾル 等 ひとし の微粒子 びりゅうし を除 のぞ いた清浄 せいじょう な乾燥 かんそう 空気 くうき の組成 そせい を解説 かいせつ する。
(*)を付 つ けた成分 せいぶん は、呼吸 こきゅう や光合成 こうごうせい などの生物 せいぶつ の活動 かつどう 、車 くるま や工場 こうじょう の排気 はいき ガスなどの産業 さんぎょう 活動 かつどう 、空気 くうき 中 ちゅう で起 お こる光化学 こうかがく 反応 はんのう に伴 ともな う合成 ごうせい ・分解 ぶんかい により、場所 ばしょ により大 おお きく変動 へんどう する。
実際 じっさい の空気 くうき 中 ちゅう で最 もっと も変動 へんどう するのは水蒸気 すいじょうき であり、最大 さいだい で4%程度 ていど 、低 ひく いときは0%近 ちか くまで低下 ていか する。全 ぜん 球 たま 地表 ちひょう 平均 へいきん では約 やく 0.4%となる。(下表 かひょう には含 ふく まない)
(+)をつけた成分 せいぶん は、人為 じんい 的 てき に排出 はいしゅつ される成分 せいぶん であり、濃度 のうど が近年 きんねん 著 いちじる しく変化 へんか しているものである。主 おも に産業 さんぎょう 革命 かくめい 以降 いこう 完全 かんぜん に人為 じんい 的 てき に排出 はいしゅつ されて大気 たいき 中 ちゅう に残存 ざんそん した成分 せいぶん と、元々 もともと 自然 しぜん 界 かい で排出 はいしゅつ されていたが産業 さんぎょう 革命 かくめい 以降 いこう 人為 じんい 的 てき に大量 たいりょう に排出 はいしゅつ されて濃度 のうど が高 たか まった成分 せいぶん とがある。
数値 すうち の右 みぎ の(>)は、その値 ね が通常 つうじょう の空気 くうき における最大 さいだい 値 ち であることを示 しめ す。「1ppm>」であれば、最大 さいだい 1ppm、通常 つうじょう はそれ以下 いか であることを意味 いみ している。
表 ひょう 1: 乾燥 かんそう 空気 くうき の主 おも な組成 そせい (国際 こくさい 標準 ひょうじゅん 大気 たいき 、1975年 ねん )
成分 せいぶん
化学 かがく 式 しき
体積 たいせき 比 ひ 割合 わりあい (vol%)
ppm
ppb
備考 びこう
窒素 ちっそ
N2
78.084
780,840
-
[12]
酸素 さんそ
O2
20.9476
209,476
-
[12]
アルゴン
Ar
0 0.934
00 9,340
-
[12]
二酸化炭素 にさんかたんそ
CO2
0 0.041
000, 410
-
+*2018年 ねん の値 ね [13] [12] [注 ちゅう 2] [14]
ネオン
Ne
0 0.001818
000,0 18.18
-
[12]
ヘリウム
He
0 0.000524
000,00 5.24
-
[12]
メタン
CH4
0 0.000181
000,00 1.81
1813±2
+2011年 ねん の値 ね [13] [12] [注 ちゅう 3]
クリプトン
Kr
0 0.000114
000,00 1.14
-
[12]
二酸化 にさんか 硫黄 いおう
SO2
0 0.0001>
000,00 1>
-
*[12]
水素 すいそ
H2
0 0.00005
000,00 0.5
-
[12]
一酸化 いっさんか 二 に 窒素 ちっそ
N2 O
0 0.000032
000,00 0.32
0 324.2±0.1
+*2011年 ねん の値 ね [13] [12] [注 ちゅう 4]
キセノン
Xe
0 0.0000087
000,00 0.087
00 87
[12]
オゾン
O3
0 0.000007>
000,00 0.07>
00 70>
*[注 ちゅう 5] [12]
二酸化 にさんか 窒素 ちっそ
NO2
0 0.000002>
000,00 0.02>
00 20>
*[12]
ヨウ素 もと
I2
0 0.000001>
000,00 0.01>
00 10>
*[12]
地球 ちきゅう 大気 たいき がこのような
成分 せいぶん に
至 いた った
経緯 けいい については「
地球 ちきゅう の大気 たいき 」を
参照 さんしょう
産業 さんぎょう 用 よう として圧縮 あっしゅく 空気 くうき は様々 さまざま な場面 ばめん で利用 りよう される。圧縮 あっしゅく 空気 くうき を原動力 げんどうりょく として用 もち いる機械 きかい を空 そら 圧 あつ 機械 きかい というが、圧縮 あっしゅく 機 き を用 もち いたり使用 しよう 者 しゃ が手動 しゅどう で行 おこな ったりといくつかの方式 ほうしき がある。
また純粋 じゅんすい な空気 くうき の利用 りよう では、ボンベ 等 ひとし に充填 じゅうてん した圧縮 あっしゅく 空気 くうき 、低温 ていおん 下 か で液化 えきか させた液体 えきたい 空気 くうき も製造 せいぞう される。常 つね 圧 あつ ではおよそ-190℃で液化 えきか し、液体 えきたい 酸素 さんそ の影響 えいきょう から液体 えきたい の空気 くうき は淡 あわ い青 あお 味 あじ を帯 お びた色 いろ をしている[17] 。ボンベに充填 じゅうてん する空気 くうき は一般 いっぱん 的 てき に、水蒸気 すいじょうき や微粒子 びりゅうし 成分 せいぶん を取 と り除 のぞ いた乾燥 かんそう 空気 くうき である。
スキューバ・ダイビング で使用 しよう するタンクには圧縮 あっしゅく 空気 くうき が充填 じゅうてん されているが、50m程度 ていど まで潜水 せんすい する場合 ばあい は、窒素 ちっそ 酔 よ い を避 さ けるため、窒素 ちっそ 分 ぶん をヘリウム と置換 ちかん した空気 くうき を用 もち いる。
また、窒素 ちっそ 、酸素 さんそ 、二酸化炭素 にさんかたんそ のほか、アルゴン、クリプトン、キセノン、ネオンなどの大気 たいき 中 ちゅう に含 ふく まれる成分 せいぶん は、空気 くうき を利用 りよう して冷却 れいきゃく ・圧縮 あっしゅく 、化学 かがく 吸着 きゅうちゃく 、膜 まく 分離 ぶんり 等 とう の方法 ほうほう で産業 さんぎょう 用 よう に製造 せいぞう されるものがある。
同軸 どうじく ケーブル の絶縁 ぜつえん 体 たい には当初 とうしょ 空気 くうき が使 つか われており、最適 さいてき な特性 とくせい を探 さぐ った結果 けっか 、特性 とくせい インピーダンスが約 やく 75Ω おーむ という値 ね となり、ポリエチレン に変更 へんこう された現在 げんざい でも数値 すうち が維持 いじ されている。
空気 くうき と大気 たいき の理解 りかい [ 編集 へんしゅう ]
四 よん 元素 げんそ 説 せつ における元素 げんそ の関係 かんけい 図 ず
古代 こだい ギリシャ では空気 くうき は4つの元素 げんそ (四 よん 大 だい 元素 げんそ :水 みず 、地 ち 、火 ひ 、空気 くうき )の1つとされていた(四 よん 元素 げんそ 説 せつ )[18] 。
18世紀 せいき 後半 こうはん になるとイギリスで空気 くうき の化学 かがく (pneumatic chemistry)に関心 かんしん が高 たか まった[18] 。ジョゼフ・ブラック は固定 こてい 空気 くうき (二酸化炭素 にさんかたんそ )の研究 けんきゅう を通 とお して気体 きたい の特異 とくい 性 せい を識別 しきべつ し、空気 くうき の化学 かがく の基礎 きそ 的 てき な研究 けんきゅう に貢献 こうけん した[18] 。また、ジョゼフ・プリーストリー は脱 だつ フロギストン空気 くうき (dephlogisticated air)という気体 きたい (酸素 さんそ )を研究 けんきゅう し、一酸化 いっさんか 窒素 ちっそ 、酸化 さんか 二 に 窒素 ちっそ 、塩化 えんか 水素 すいそ 、アンモニア、二酸化 にさんか 硫黄 いおう 、四 よん フッ化 か ケイ素 けいそ 、酸素 さんそ の研究 けんきゅう について「様々 さまざま な種類 しゅるい の空気 くうき に関 かん する実験 じっけん と観察 かんさつ 」(Experiments and Observation on Different Kinds of Air)を出版 しゅっぱん した[18] 。
なお、ガス(gas)という語 かたり はヤン・ファン・ヘルモント がギリシャ語 ご で混沌 こんとん を意味 いみ するchaosから作 つく った語 かたり である[18] 。
鉛直 えんちょく 構造 こうぞう としての大気 たいき は高所 こうしょ に行 い く必要 ひつよう があり空気 くうき の研究 けんきゅう に比 くら べると遅 おく れた[18] 。1648年 ねん 、ブレーズ・パスカル はピュイ・ド・ドーム 火山 かざん にガラス管 かん と水銀 すいぎん を持 も って山 やま に登 のぼ り、高度 こうど ごとの水銀柱 すいぎんちゅう の高 たか さを測定 そくてい して高度 こうど により異 こと なり、温度 おんど が同 おな じであれば高度 こうど が低 ひく くなるほど圧力 あつりょく が増 ま すことを発見 はっけん した[18] 。
日本 にっぽん での空気 くうき 認識 にんしき と「空気 くうき 」という言葉 ことば の歴史 れきし [ 編集 へんしゅう ]
沢庵 たくあん 和尚 おしょう の実験 じっけん [ 編集 へんしゅう ]
日本 にっぽん で初 はじ めて空気 くうき の存在 そんざい を科学 かがく 的 てき に証明 しょうめい する実験 じっけん を示 しめ したのは、江戸 えど 時代 じだい 初期 しょき の禅宗 ぜんしゅう 僧 そう の沢庵 たくあん 和尚 おしょう (1573 - 1645)である。沢庵 たくあん は『理学 りがく 之 の 捷径 しょうけい (りがくのしょうけい)』(1621)[注 ちゅう 6] の中 なか で、「気 き は形 かたち なけれども歴々 れきれき としてあるしるしには、気 き が動 うご けば風 ふう が吹 ふ くなり。人 ひと の強 つよ く走 はし りて気 き が動 うご けば、息 いき は強 つよ くなるごとくなり」などと、空気 くうき の存在 そんざい を説明 せつめい した後 のち 、「桶 おけ の底 そこ におき(火 ひ がついた炭 すみ )を糊 のり にてつけて、これを水 みず の上 うえ に伏 ふ せて、まっすぐに水 みず の中 なか に押 お し込 こ むに、桶 おけ の内 うち に水 みず いらずして、火 ひ が消 き えざるなり。これは桶 おけ の内 うち にも気 き がいっぱい満 み ちてある故 ゆえ に、内 うち がふさがりて水 みず の入 はい るべきところなく、桶 おけ の内 うち は何 なに もなく空 そら なれど、気 き のある証拠 しょうこ なり」という実験 じっけん を示 しめ した。
沢庵 たくあん は「日本 にっぽん で最初 さいしょ の空気 くうき の存在 そんざい を証明 しょうめい した実験 じっけん 」を行 おこな ったが、沢庵 たくあん は戦国 せんごく 末期 まっき から江戸 えど 時代 じだい 初期 しょき の堺 さかい や京都 きょうと で活動 かつどう していた多数 たすう のキリスト教 きりすときょう 宣教師 せんきょうし からアリストテレスの自然 しぜん 学 がく の講釈 こうしゃく を知 し り、自分 じぶん の説教 せっきょう に利用 りよう したと考 かんが えられる。
沢庵 たくあん は『東海 とうかい 夜話 やわ 』(1859)[注 ちゅう 7] の中 なか で竹 たけ 鉄砲 てっぽう という紙 かみ 玉 だま 鉄砲 てっぽう のおもちゃを紹介 しょうかい しているが、その飛 と ぶ理由 りゆう として「先 さき の玉 たま と後 ご の玉 たま の間 あいだ は空 そら なれども、その間 あいだ には気 き が満 み ちてあるゆえなり」と書 か いている。
沢庵 たくあん は終始 しゅうし 、「気 き 」という言葉 ことば を用 もち いているが、それは儒学 じゅがく の理 り 気 き 論 ろん でいう「気 き 」一般 いっぱん の実在 じつざい を証明 しょうめい したかったからである。沢庵 たくあん はそれらの「気 き 」と空気 くうき の同一 どういつ 性 せい を証明 しょうめい したかったので「気 き 」以外 いがい の言葉 ことば を考 かんが えることは全 まった く無 な かった。
井原 いはら 西鶴 さいかく の『好色 こうしょく 一 いち 代 だい 男 おとこ 』[ 編集 へんしゅう ]
「空気 くうき 」という言葉 ことば をはじめて用 もち いたのは井原 いはら 西鶴 さいかく (1642 - 1693)の『好色 こうしょく 一 いち 代 だい 男 おとこ 』(1682)である。西鶴 さいかく は巻 まき 七 なな の「口 くち 添へて酒 さけ 軽 けい 籠 かご 」の条 じょう で「今 いま この目 め からは空気 くうき のようにおもはれはべる」と書 か いている。しかし、これは「うつけもの」(馬鹿者 ばかもの 、間抜 まぬ け)という意味 いみ の言葉 ことば であった。江戸 えど 時代 じだい には「空気 くうき 」と書 か いて「うつけ」と理解 りかい する人々 ひとびと がいたと考 かんが えられる。
明 あかり 暦 れき 五 ご (1659)年 ねん の『乾坤 けんこん 弁 べん 説 せつ 』にも「空気 くうき 」の語 かたり が出 で てくるが、それはヨーロッパの四 よん 元素 げんそ 説 せつ を論 ろん じたものであって、今日 きょう の空気 くうき を指 さ す言葉 ことば ではなかった。
空気 くうき の語 かたり の初出 しょしゅつ [ 編集 へんしゅう ]
今日 きょう 使 つか う意味 いみ での「空気 くうき 」の語 かたり の初出 しょしゅつ は前野 まえの 良沢 りょうたく (1723 - 1803)の『管 かん 蠡秘言 げん 』(かんれいひげん)(1777)である。そこには「空気 くうき の地球 ちきゅう を包 つつ む者 もの にして、その厚 あつ さ地平 ちへい より上 うえ 四 よん 十 じゅう 五 ご 度 ど の分 ぶん に及 およ ぶ。これを空 そら の体 からだ と号 ごう す」とあって、今日 きょう の空気 くうき をさしている。良沢 りょうたく は「空間 くうかん を占 し める気 き 」の意味 いみ で「空気 くうき 」という言葉 ことば を使 つか った。良沢 りょうたく は最初 さいしょ の蘭学 らんがく 者 しゃ と呼 よ べる人 ひと で、オランダの学問 がくもん を知 し って「空気 くうき 」と儒学 じゅがく 等 とう の「気 き 」を区別 くべつ するために「空気 くうき 」という言葉 ことば を作 つく った。
空気 くうき を中国 ちゅうごく 伝来 でんらい の理 り 気 き 論 ろん の「気 き 」と区別 くべつ する別 べつ の語 かたり として「游 ゆう 気 き (ゆうき)」も使 つか われた。游 ゆう 気 き は中国 ちゅうごく の游 ゆう 子 こ 六 ろく の書 か いた『天 てん 経 けい 或 ある 問 とい 』で使 つか われた言葉 ことば で、オランダ科学 かがく 書 しょ を通 とお して、日本 にっぽん ではじめて近代 きんだい ヨーロッパの科学 かがく を学 まな んだ志筑 しづき 忠雄 ただお (1760 - 1806)が著書 ちょしょ の中 なか で多用 たよう した。志 こころざし 築 ちく は游 ゆう 気 き を水蒸気 すいじょうき の意味 いみ でも用 もち いており、今日 きょう の空気 くうき と全 まった く同 おな じというわけではなかった。志 こころざし 築 ちく は中国 ちゅうごく の陰陽 いんよう 五 ご 行 ぎょう 説 せつ の影響 えいきょう も残 のこ していた。
1800年代 ねんだい 初期 しょき の科学 かがく 関係 かんけい 書 しょ [ 編集 へんしゅう ]
前野 まえの 良沢 りょうたく や志 こころざし 築 ちく 忠雄 ただお の著書 ちょしょ は写本 しゃほん として伝 つた わっただけであったが、1800年 ねん 前後 ぜんこう になると蘭学 らんがく 関係 かんけい の本 ほん がかなり出版 しゅっぱん されるようになった。文政 ぶんせい 元 もと (1818)年 ねん にオランダの空気 くうき 銃 じゅう を見 み て、それを複製 ふくせい した国友 くにとも 董 ただし 兵衛 ひょうえ (1778 - 1840)は『気 き 砲 ほう 記 き 』を書 か いて、空気 くうき のことを「気 き 」と書 か いている。当時 とうじ の蘭学 らんがく 関係 かんけい 書 しょ では、「気 き 」「空気 くうき 」「游 ゆう 気 き 」の3つの語 かたり がまちまちに使 つか われていた。
大気 たいき という言葉 ことば [ 編集 へんしゅう ]
蘭学 らんがく 者 しゃ 達 たち は空気 くうき を表 あらわ す言葉 ことば として「大気 たいき 」という言葉 ことば も作 つく った。幕府 ばくふ の命令 めいれい でオランダ語 ご の家庭 かてい 百科 ひゃっか 事典 じてん を訳 やく した『厚生 こうせい 新編 しんぺん 』(1821,1824)[注 ちゅう 8] には空気 くうき を意味 いみ する言葉 ことば として「大気 たいき 」が出 で てくる。訳者 やくしゃ は大槻 おおつき 玄沢 げんたく と宇田川 うだがわ 玄真 げんしん となっている。彼 かれ らは「空気 くうき 」という訳語 やくご を不適 ふてき と見 み なして「大気 たいき 」という訳語 やくご を作 つく った。「大気 たいき 」の語 かたり はその後 ご 多 おお くの蘭学 らんがく 者 しゃ 達 たち に支持 しじ されて、江戸 えど 幕府 ばくふ 末期 まっき の科学 かがく 書 しょ の中 なか で最 もっと も一般 いっぱん 的 てき に使 つか われるようになった。日本 にっぽん に初 はじ めてラボアジェ の化学 かがく を紹介 しょうかい した宇田川 うだがわ 榕庵 ようあん は『舎 しゃ 密 みつ 開 ひらけ 宗 むね 』(1837)の中 なか で空気 くうき を一貫 いっかん して「大気 たいき 」と訳 やく している。榕庵 ようあん は大気 たいき の他 ほか に「瓦斯 がす 」という言葉 ことば も区別 くべつ しており、その「大気 たいき 」概念 がいねん は近代 きんだい 科学 かがく の「空気 くうき 」の概念 がいねん と全 まった く同 おな じである。
幕末 ばくまつ の「空気 くうき 」という言葉 ことば の普及 ふきゅう [ 編集 へんしゅう ]
江戸 えど 時代 じだい には「大気 たいき 」という言葉 ことば は「器 うつわ が大 おお きい」という意味 いみ でも用 もち いられていたため、それを気 き にした人 ひと は「大気 たいき 」よりも「空気 くうき 」という言葉 ことば を好 この んで使用 しよう した。宇田川 うだがわ 榕庵 ようあん の『舎 しゃ 密 みつ 開 ひらけ 宗 むね 』の1年 ねん 以上 いじょう 後 ご (1837年 ねん 以後 いご )に出版 しゅっぱん された鶴 つる 峯 みね 戊 つちのえ 申 さる (つるみねぼしん)(1788 - 1858)の『三 さん 才 さい 究理 きゅうり 頌(さんさいきゅうりしょう)』では、「空気 くうき 」の語 かたり を用 もち いている。鶴 づる 峯 みね は蘭学 らんがく の地動説 ちどうせつ と日本 にっぽん 神話 しんわ を結 むす びつけて宇宙 うちゅう 論 ろん を展開 てんかい し、「絶 ぜっ 気 き (窒素 ちっそ )七 なな 分 ふん 、清 きよし 気 き (酸素 さんそ )三 さん 分 ふん 相 しょう 交 まじ わりて、空気 くうき は整 ととの いたり」などと出 で てくる。元治 もとはる 二 に (1865)年 ねん ボイス著 ちょ ・大場 おおば 雪 ゆき 斎 とき 訳 わけ の『民間 みんかん 格 かく 致問答 もんどう 』という日本 にっぽん 最初 さいしょ の本格 ほんかく 的 てき な科学 かがく 読 よ み物 もの が出版 しゅっぱん され、その中 なか では「空気 くうき 」の語 かたり が最初 さいしょ から最後 さいご まで用 もち いられ、明治維新 めいじいしん 後 ご の科学 かがく 啓蒙 けいもう 書 しょ 出版 しゅっぱん ブームに大 おお きな影響 えいきょう を与 あた えた。
明治 めいじ 元 もと (1868)年 ねん 以後 いご [ 編集 へんしゅう ]
明治 めいじ 元年 がんねん から7年 ねん 頃 ごろ まで、各種 かくしゅ の科学 かがく 啓蒙 けいもう 書 しょ が書 か かれ「窮理 きゅうり 熱 ねつ 」というブームになった。福沢 ふくさわ 諭吉 ゆきち が書 か いた『(訓蒙 くんもう )窮理 きゅうり 図解 ずかい 』では、「空気 くうき の事 こと 」の中 なか で「空気 くうき は人 ひと の目 め には見 み えざれども、この世界 せかい を囲 かこえ 擁 よう して万物 ばんぶつ の内 うち に充満 じゅうまん せり」と書 か かれている。この本 ほん の影響 えいきょう で多 おお くの啓蒙 けいもう 書 しょ が「空気 くうき 」の語 かたり を採用 さいよう したが、専門 せんもん 書 しょ では「大気 たいき 」の語 かたり を使 つか うことが多 おお かった。
文部省 もんぶしょう の学制 がくせい の空気 くうき 概念 がいねん [ 編集 へんしゅう ]
文部省 もんぶしょう が明治 めいじ 五 ご 年 ねん の学制 がくせい によって教科書 きょうかしょ を出版 しゅっぱん したために、明治 めいじ 7年 ねん 以降 いこう は民間 みんかん の科学 かがく 啓蒙 けいもう 書 しょ 出版 しゅっぱん 運動 うんどう である窮理 きゅうり 熱 ねつ は急速 きゅうそく にしぼんでしまった。明治 めいじ 五 ご 年 ねん に文部省 もんぶしょう が出 だ した教科書 きょうかしょ では「空気 くうき 」と「大気 たいき 」が併用 へいよう されていた。その後 ご も明治 めいじ 五 ご 年 ねん から8年 ねん にかけて作 つく られた教科書 きょうかしょ では、「大気 たいき 」のみだったり、「空気 くうき 」のみだったり一貫 いっかん しなかった。明治 めいじ 10年代 ねんだい までの教科書 きょうかしょ 以外 いがい の科学 かがく 書 しょ では「空気 くうき 」が「大気 たいき 」よりも優勢 ゆうせい になっていたが、統一 とういつ されてはいなかった。
物理 ぶつり 学 がく 訳語 やくご 会 かい による統一 とういつ [ 編集 へんしゅう ]
「空気 くうき 」の「大気 たいき 」に対 たい する勝利 しょうり を確定 かくてい 的 てき にしたのは、東京 とうきょう 数学 すうがく 物理 ぶつり 学会 がっかい の物理 ぶつり 学 がく 訳語 やくご 会 かい であった。訳語 やくご 会 かい の明治 めいじ 18年 ねん の議事 ぎじ 録 ろく には結論 けつろん として「Air 空気 くうき 」として異論 いろん がなかったことが記録 きろく されている。訳語 やくご 会 かい は福沢 ふくさわ 諭吉 ゆきち などの大衆 たいしゅう 的 てき な科学 かがく 啓蒙 けいもう 書 しょ が「空気 くうき 」という言葉 ことば を大衆 たいしゅう 化 か したため、それをそのまま認 みと めたと考 かんが えられる。明治 めいじ 21年 ねん に訳語 やくご 会 かい は最終 さいしゅう 結果 けっか を印刷 いんさつ 公表 こうひょう し、これ以後 いご は「空気 くうき 」の語 かたり で統一 とういつ された。
我々 われわれ は空気 くうき に依存 いぞん し、空気 くうき の中 なか で生活 せいかつ しているが、日常 にちじょう 生活 せいかつ の中 なか でそれを意識 いしき することはあまりない。同様 どうよう に生活 せいかつ に欠 か かせない水 みず がその手応 てごた えや感触 かんしょく から、普段 ふだん からはっきり意識 いしき されるのとは好 こう 対照 たいしょう である。
ただし空気 くうき は、それに流 なが れがある時 とき には意識 いしき される傾向 けいこう があり、「風 ふう 」と呼 よ ばれるようになる[注 ちゅう 9] 。
また、その成分 せいぶん については、閉 し め切 き った部屋 へや 、(洞窟 どうくつ の中 なか など)換気 かんき が不十分 ふじゅうぶん な場所 ばしょ など(現在 げんざい の観念 かんねん で言 い えば、酸素 さんそ が不十分 ふじゅうぶん だったり、余計 よけい なガス が混 ま じった状態 じょうたい )では意識 いしき されていて、古 ふる くから「腐 くさ った空気 くうき 」「空気 くうき が腐 くさ る」といった表現 ひょうげん がされてきた。また、香 かお り や臭 くさ い が漂 ただよ ったり、化学 かがく 物質 ぶっしつ により刺激 しげき を感 かん じるような場合 ばあい も意識 いしき されるようになる。
^ ほぼ絶対温度 ぜったいおんど の逆数 ぎゃくすう に等 ひと しい。
^ 産業 さんぎょう 革命 かくめい 前 まえ の1750年 ねん 比 ひ で1.4倍 ばい に増加 ぞうか している。国際 こくさい 標準 ひょうじゅん 大気 たいき (1975)では314 ppmとして示 しめ されている。
^ 産業 さんぎょう 革命 かくめい 前 まえ の1750年 ねん 比 ひ で2.6倍 ばい に増加 ぞうか している。国際 こくさい 標準 ひょうじゅん 大気 たいき (1975)では2 ppmと丸 まる めて示 しめ されている。
^ 産業 さんぎょう 革命 かくめい 前 まえ の1750年 ねん 比 ひ で1.2倍 ばい に増加 ぞうか している。国際 こくさい 標準 ひょうじゅん 大気 たいき (1975)では0.5 ppmと丸 まる めて示 しめ されている。
^ 冬 ふゆ は20 ppb>程度 ていど まで低下 ていか する。
^ 初 はじ めて出版 しゅっぱん されたのは沢庵 たくあん が正保 まさやす 二 に (1645)年 ねん に亡 な くなった後 のち の正保 しょうほう 三 さん (1646)年 ねん であるが、江戸 えど 時代 じだい を通 とお して文政 ぶんせい 七 なな (1824)年 ねん まで何 なん 度 ど も刊行 かんこう されている。
^ 安政 あんせい 六 ろく 年 ねん に初 はじ めて刊行 かんこう された。
^ 江戸 えど 時代 じだい には幕府 ばくふ の命令 めいれい で印刷 いんさつ できず、1937年 ねん に初 はじ めて印刷 いんさつ 出版 しゅっぱん された。
^ なお、人 ひと は空気 くうき の動 うご きを全身 ぜんしん の体 からだ 表面 ひょうめん の毛 け (体毛 たいもう )の毛根 もうこん あたりの感覚 かんかく 器 き で(体毛 たいもう の動 うご きを感 かん じて)直接的 ちょくせつてき に感 かん じている、と指摘 してき している研究 けんきゅう がある。体毛 たいもう を剃 す ってしまったりすると、感度 かんど が落 お ちるという。
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^ Yahoo! Japan 辞書 じしょ (大辞泉 だいじせん )たいき‐けん【大気圏 たいきけん 】
^ Yahoo! Japan 辞書 じしょ (大辞泉 だいじせん )たい‐き【大気 たいき 】
^ 新村 しんむら 出 いずる 編 へん 「空気 くうき 」『広辞苑 こうじえん 』(第 だい 5版 はん )岩波書店 いわなみしょてん 、1998年 ねん 、744頁 ぺーじ 。ISBN 4-00-080111-2 。
^ 牛山 うしやま 泉 いずみ 『風車 かざぐるま 工学 こうがく 入門 にゅうもん 』(2版 はん )森北 もりきた 出版 しゅっぱん 、2013年 ねん 、27頁 ぺーじ 。ISBN 978-4-627-94652-1 。
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