精霊せいれい

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精霊せいれい(せいれい)とは、草木くさき動物どうぶつひと無生物むせいぶつ人工じんこうぶつなどひとつひとつに宿やどっている、とされるちょう自然しぜんてき存在そんざい[1]に「万物ばんぶつ根源こんげんをなしている、とされる不思議ふしぎのこと」[1]精気せいき[1]や「肉体にくたいから解放かいほうされた自由じゆうれい[1]」を意味いみする場合ばあいがある。

用法ようほう[編集へんしゅう]

一言ひとことで「精霊せいれい」とっても、漢語かんごとしてもちいている場合ばあい大和言葉やまとことば漢字かんじてている場合ばあい西洋せいようのspirit や elementalの翻訳ほんやくとしてもちいられている場合ばあいなどがあり、それぞれ意味いみ内容ないようすこしずつことなっている。

スピリット[編集へんしゅう]

日本にっぽん以外いがいの、世界せかい各地かくち伝承でんしょう登場とうじょうする「spirit スピリット」(たとえば「いずみせい」や「ランプのせい」など「~のせい」とやくすほうがしっくりくるような場合ばあいのそれ)の訳語やくごとして「精霊せいれい(せいれい)」がもちいられることもある。

エレメンタル[編集へんしゅう]

英語えいご元素げんそ意味いみする「エレメント」 (element) の形容詞けいようしがた「エレメンタル」 (elemental) は「よんだい元素げんそれい」という意味いみ名詞めいしとしても使つかわれ、その訳語やくごとして「精霊せいれい」が使つかわれることがある。

漢語かんご[編集へんしゅう]

精霊せいれいせいかいというかたり同意どういもちいられる)という漢語かんご本来ほんらい意味いみでは(漢字かんじ文化ぶんかけんでの意味いみでは)、妖怪ようかい妖精ようせい死者ししゃれい鬼神きじんおにをあらわす。

しょうりょう、しょうらい、しょうろう[編集へんしゅう]

日本にっぽん神道しんとうてきなものを場合ばあいは「しょうりょう」「しょうらい」「しょうろう」などとみ、これは「故人こじんれいたましい」(霊魂れいこん)が、「うつしよ」(現世げんせい)から、「とこよ」(常世とこよつねよる死者ししゃ世界せかい黄泉よみくにさんかわこう)へ旅立たびだったものをす。

それにたいして「うつしよ」(現世げんせい)にのこった霊魂れいこんは「幽霊ゆうれい」「亡霊ぼうれい」「人魂ひとだま」などとび、精霊せいれいとはみなさない。

古代こだい日本にっぽん精霊せいれい観念かんねん[編集へんしゅう]

古代こだい日本にっぽんでは自然しぜんぶつには生物せいぶつ無生物むせいぶつ精霊せいれい(spirit) が宿やどっているとしんじ、それを「チ」とんで名称めいしょう語尾ごびにつけた[2]古事記こじき風土記ふどきなどの古代こだい文献ぶんけんにはせいを「ハツチ(づち)」、いわせいを「イワツチ(いわ)」、せいを「ノツチ(しい)」、せいを「ククノチ(久久ひさびさ能智のうち)」、みずせいを「ミツチ(みず虬)」、せい「カグツチ(軻遇突智)」、しおせいを「シオツチ(しおしい)」などとんでいたことがられている。また、自然しぜんかいちから発現はつげんはその精霊せいれいはたらきとしんじ、かみなりを「イカツヂ」、へびを「オロチ」などとんだ。こうした精霊せいれいはたらきは人工じんこうぶつ人間にんげん操作そうさにもおよび、かたなちからは「タチ」、ちからは「テナツチ(まめさとし)」あしちからは「アシナツチ(あしまめさとし)」、幸福こうふくをもたらすちからは「サチ(せま)」などとばれていた。人間にんげん生命せいめいちからみなもとが、血液けつえきの「」にあるとしんじられたところに、「チ」が起源きげんしているともわれている。(ツチ)、みち(ミチ)、ちち(チチ)もおなかんがえが表現ひょうげんされたものとることができる。また神話しんわ古代こだい氏族しぞく、とりわけ国津くにつしんけい氏族しぞく祖先そせんには「チ」を名称めいしょう語尾ごびにつけているものが見出みいだされる。神話しんわでは「オオナムチとみおもねはは)」や「オオヒルメムチ(大日だいにち孁貴)」、氏族しぞくでは物部ものべの「ウマシマチ(宇摩うま志麻しま)」や小椋おぐらの「トヨハチ(とめあずかなみ)」などである。かみめい人名じんめい語尾ごび正確せいかくには「〜かみ」、「〜いのち』のまえかたり)に「チ」がつく名前なまえもっとふる名前なまえのタイプで、草木くさきしゃべるとしんじられていた自然しぜん主義しゅぎてき観念かんねん時代じだい反映はんえいしているものとかんがえられている[3]

よんだい精霊せいれい(エレメンタル)[編集へんしゅう]

16世紀せいき錬金術れんきんじゅつパラケルススにより、みずふうよんだい元素げんそ実体じったいしたものとして、精霊せいれい以下いかのように関連かんれんづけられた。

これらのエレメンタルは、ファンタジー作品さくひんにおいては擬人ぎじんした姿すがたえがかれることもおおい。

聖霊せいれいとのちが[編集へんしゅう]

キリスト教きりすときょうにおける三位一体さんみいったいかくひとつである聖霊せいれい日本にっぽん正教会せいきょうかいではせいかみ:せいしん[4])を「精霊せいれい」とするのは誤字ごじである[5][6]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ a b c d 広辞苑こうじえん だいはん、「精霊せいれい」の項目こうもく
  2. ^ 溝口みぞぐち睦子むつこ記紀きき神話しんわ解釈かいしゃくひとつのこころみ」『文学ぶんがく』1973-4 ねん
  3. ^ マックス・ウェーバー、『宗教しゅうきょう社会しゃかいがく』、そうぶんしゃ、1971ねん
  4. ^ せいかみ”. 日本にっぽん正教会せいきょうかい The Orthodox Church in Japan. 2013ねん5がつ6にち閲覧えつらん
  5. ^ 聖霊せいれい降臨こうりんについて”. カトリック屋形やかたまち教会きょうかいのホームページ. 2013ねん5がつ6にち閲覧えつらん[リンク]
  6. ^ キリスト教きりすときょうこんにゃく問答もんどうX「聖霊せいれい”. 日本にっぽんキリスト教団きょうだん 行人こうじんざか教会きょうかい (2012ねん2がつ24にち). 2013ねん5がつ6にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]