F-117 (航空機こうくうき)

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アメリカ合衆国の旗F-117 ナイトホーク

F-117とは、ロッキードしゃげんロッキード・マーティンしゃ)が開発かいはつした、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくステルス攻撃こうげき英語えいごではエフ・ワン・セブンティーンばれ、愛称あいしょうナイトホーク(Nighthawk)。

配備はいびされるF-117

概要がいよう[編集へんしゅう]

世界せかいはつ実用じつようてきステルスとして1981ねんはつ飛行ひこうおこなった、アメリカ空軍くうぐん攻撃こうげきである。レーダーから発見はっけんされにくくするため、平面へいめん構成こうせいされた独特どくとく多面体ためんたい機体きたい形状けいじょうをしている。これにより空気くうき力学りきがくてき不安定ふあんてい形状けいじょうとなっているが、操縦そうじゅうフライ・バイ・ワイヤ採用さいようし、姿勢しせい制御せいぎょコンピュータ介在かいざいさせることで安定あんていせい確保かくほした。1982ねんには部隊ぶたい配備はいびはじまっていたが、アメリカ国防総省こくぼうそうしょう1988ねん11月に不鮮明ふせんめい写真しゃしん公開こうかいするまで、詳細しょうさいはおろか存在そんざい自体じたい極秘ごくひあつかいとされていた。

機体きたいくろ一色いっしょく塗装とそうされ、おも夜間やかん作戦さくせん使用しようされることから、アメリカヨタカ意味いみする「ナイトホーク(Nighthawk)」の愛称あいしょうあたえられた[注釈ちゅうしゃく 1]

1983ねん実戦じっせん配備はいびがスタートし、1990ねんまでにぜん59配備はいび完了かんりょうした。攻撃こうげきとしておも重要じゅうよう施設しせつへの空爆くうばく任務にんむとしており、湾岸わんがん戦争せんそうをはじめいくつかの実戦じっせん使用しようされたが、撃墜げきついによる損失そんしつコソボ紛争ふんそうにおける1のみとされている。

運用うんよう維持いじコストのたかさから2008ねん4がつ22にちをもってぜん退役たいえきし、現在げんざい研究けんきゅう訓練くんれんサポートとうかぎられた用途ようと使用しようされている。

2016ねん12月23にち米国べいこく議会ぎかい可決かけつされた2017ねん国防こくぼう授権ほう(NDAA)により、今後こんご毎年まいとし4のペースで廃棄はいき処分しょぶんすることが決定けってい飛行ひこう可能かのう機体きたいのこしつつ、部品ぶひんおろしをおこないながら段階だんかいてき廃棄はいきすすめていくことがあきらかになった。[1]

1たりの価格かかくやく4,500まんドル(2006ねん上半期かみはんき)。技術ぎじゅつ流出りゅうしゅつふせぐため、輸出ゆしゅつおこなわれなかった。

歴史れきし[編集へんしゅう]

1970年代ねんだい中期ちゅうき国防こくぼう高等こうとう研究けんきゅう計画けいかくきょく(DARPA)は、アメリカ国内こくない航空機こうくうきメーカー5しゃたいステルス戦闘せんとう形態けいたい研究けんきゅう契約けいやく締結ていけつした。当初とうしょロッキードしゃは、1960年代ねんだい以降いこう戦闘せんとう開発かいはつ経験けいけん皆無かいむであったことを理由りゆう参入さんにゅう見送みおくられていたが、同社どうしゃスカンクワークス部長ぶちょうベン・リッチの主導しゅどうのもと自主じしゅ開発かいはつ研究けんきゅうおこない、国防こくぼう高等こうとう研究けんきゅう計画けいかくきょくはたらきかけ追加ついか参入さんにゅう成功せいこうさせた。

1975ねん8がつノースロップおよびロッキードしゃ招聘しょうへいされ、XST:Experimental Survivable Testbedのプランが提示ていじされた。これにおうじてロッキードしゃスカンクワークスのトップであったディック・シーラーは電磁気でんじきがくのスペシャリストのデニス・オーバーホルザーに"えない戦闘せんとう"の開発かいはつ可能かのうであるかどうか打診だしん。オーバーホルザーは可能かのうであるとの見解けんかいしめし、コードネーム「Echo1」とわれるレーダー物体ぶったい表面ひょうめんでの反射はんしゃ計算けいさんするソフトウェアをつくげ、引退いんたいしていたスカンクワークスの数学すうがくしゃであったビル・シュローダーからのアドバイスと、50ねんまえソビエト連邦れんぽうでピョートル・ユフィンチェフによって発表はっぴょうされていた電磁波でんじは進行しんこう方向ほうこう反射はんしゃめん形状けいじょうから予測よそくする論文ろんぶんもとにプロトタイプ開発かいはつした[2]

ノースロップとロッキード両社りょうしゃのプロトタイプは小型こがた単座たんざしきという共通きょうつうてんはあったが外観がいかんおおきくことなり、ノースロップしゃものはレーダー乱反射らんはんしゃ低減ていげんさせるためにまるみを機体きたい鋭角えいかくしょうじさせない形状けいじょうで、当時とうじからサンディエゴのシーパークで有名ゆうめいだったシャチにていることから"Shamu"とあだされたのにたいし、ロッキードしゃもの当初とうしょからレーダーを特定とくてい方向ほうこうにのみ反射はんしゃさせるために角張かくばった形状けいじょうっていた。軍配ぐんばいはロッキードにがり、1976ねんの4がつから開発かいはつ開始かいしされた[3]多面体ためんたいから構成こうせいされた機体きたい形状けいじょうはその飛行ひこう特性とくせい危惧きぐされたが、風洞ふうどうでの実験じっけんでは予想よそうがい良好りょうこう結果けっかられた[4]

開発かいはつ考慮こうりょ事項じこう
ロッキードしゃによれば、F-117を開発かいはつするさい以下いかてん考慮こうりょされた。
  1. 目視もくしによる発見はっけん
  2. レーダーによる探知たんち
  3. 飛行ひこう騒音そうおん
  4. 自身じしんからの電波でんぱ放射ほうしゃ
  5. 赤外線せきがいせんによる探知たんち
  6. 排気はいきガスや飛行機雲ひこうきぐもやボルテックスによる発見はっけん
ステルス性能せいのうかたるとき2.と5.が注目ちゅうもくされがちだが、性能せいのう必要ひつようとされる。1.にかんしては機体きたい黒色こくしょく夜間やかんのみ飛行ひこうする、4.にかんしてはレーダーを搭載とうさいせず、離陸りりく無線むせん交信こうしんおこなわない、6.にかんしては雨天うてんふくこう湿度しつど環境かんきょう飛行ひこうしない、といったものである。F-117を昼間ひるま作戦さくせん投入とうにゅうする実験じっけんとして灰色はいいろ迷彩めいさい塗装とそうした"デイホーク"による試験しけん飛行ひこうおこなわれたが、結局けっきょく運用うんようコストに見合みあうだけの成果せいかられず、ぜん退役たいえきへのみちあゆむこととなった。

ハブ・ブルー[編集へんしゅう]

Have Blue
F-117との各所かくしょ寸法すんぽうちがいの比較ひかく

試作しさく開発かいはつには、国防こくぼう高等こうとう研究けんきゅう計画けいかくきょく予算よさんからやく3,000まんドルが支出ししゅつされた。性質せいしつじょう、この予算よさんおおやけにする必要ひつようがないものとされた。試作しさくには「ハブ・ブルー(Have Blue)」のコードネームがあたえられ、飛行ひこうテストではT-2Bバックアイゼネラル・エレクトリックしゃせいJ85-GE-4Aエンジン転用てんようした。

最初さいしょ飛行ひこうそらりょく実験じっけんHB1001(1号機ごうき)は、J85-GE-4Aエンジンの排気はいきこうからの赤外線せきがいせん放射ほうしゃ最小さいしょうにすることに主眼しゅがんいて設計せっけいされた。細長ほそなが形状けいじょうっていたが、全体ぜんたいてき細身ほそみおおきさが量産りょうさんやく60%の縮小しゅくしょうモデルであったため重量じゅうりょうは4,173-5,669Kgとばくげきとしてはかるく、垂直すいちょく尾翼びよく内側うちがわ傾斜けいしゃするひとし量産りょうさんがたとは形状けいじょうがややことなる。F-5着陸ちゃくりくようギアやF-16FBW転用てんようされたことで、試作しさく2ようした予算よさんは3,700まんドルにおさえられたという。

ハブ・ブルーのスペックは以下いかとおり。

  • 全長ぜんちょう:38ft(やく11.6m)
  • 全幅ぜんぷく:22ft(やく6.7m)
  • 主翼しゅよくぜんえん後退こうたいかく:72.5(F-117は67.5
  • そう重量じゅうりょうやく12,000ポンド(5,433kg)きゅう
  • 乗員じょういん:1めい

飛行ひこう試験しけん試作しさく損失そんしつ[編集へんしゅう]

1977ねん11月4にちに、ロッキードしゃのバーバンクの施設しせつ最初さいしょエンジンテストがおこなわれた。その空港くうこう閉鎖へいさされた真夜中まよなか限定げんていしたうえで、カモフラージュようのネットがかぶせられて実験じっけんかえされた。近隣きんりんからはその騒音そうおんによる苦情くじょうがあったが機密きみつ保持ほじされ、のちネバダグルームいぬいにそのうつされた。

契約けいやく締結ていけつからわずか20ヶ月かげつしかっていない1977ねん12月1にちはつ飛行ひこうテストが敢行かんこうされる。35かいのテスト飛行ひこう無事ぶじおこなわれたが、1978ねん5月6にちおこなわれた36かいのテストで着陸ちゃくりく失敗しっぱいみぎぬしあし途中とちゅうまでみ、ロックができないと判断はんだんされたため、高度こうど3,000mまで上昇じょうしょうしたのち燃料ねんりょう完全かんぜん消費しょうひパイロット射出しゃしゅつ座席ざせきにより脱出だっしゅつした。エンジンが停止ていししたHB1001は、背面はいめん姿勢しせいのまま地上ちじょう落下らっか大破たいはした。また、ロッキードしゃのテストパイロットのビル・パークは射出しゃしゅつ座席ざせき正常せいじょう分離ぶんりせず降下こうか重傷じゅうしょうい、引退いんたい余儀よぎなくされた。

事故じこまえから製作せいさくはじまっていた2のHB1002が、1978ねん7がつ20日はつか同年どうねん3がつから4がつにはすではつ飛行ひこうおこなったとのせつあり)にはつ飛行ひこうし、試験しけん飛行ひこういだ。のちに52かい飛行ひこうおこなわれたが53かい飛行ひこうちゅう油圧ゆあつ系統けいとう故障こしょうによりエンジンから発火はっか炎上えんじょうした。この2破損はそんした実験じっけん極秘ごくひうら処分しょぶんされ、F-117およびB-2といったステルス公開こうかいされるようになった現在げんざいでもトップシークレットあつかいで、わずかに公開こうかいされた写真しゃしんのぞき、その詳細しょうさい不明ふめいのままである[3]

両機りょうきともうしなわれたハブ・ブルーであったが、飛行ひこう試験しけんちゅうアメリカ空軍くうぐんほこE-3早期そうき警戒けいかい管制かんせいですらきわめて近距離きんきょりでの状況じょうきょう以外いがい探知たんちはできなかったなど、ステルスとしての性能せいのうせつけた。

1978ねん11月、アメリカ議会ぎかい極秘ごくひ実用じつようがたステルス戦闘せんとう開発かいはつ承認しょうにん本格ほんかくてき開発かいはつ移行いこうした。

F-117の誕生たんじょう[編集へんしゅう]

ばくだん投下とうかするF-117

実用じつようであるF-117のはつ飛行ひこうは、1981ねん6月18にちにグルームレイクでおこなわれた。ロッキードしゃはF-117を、カリフォルニアしゅうパームデールのスカンクワークスがアメリカ空軍くうぐん工場こうじょう42ごう(ロッキード工場こうじょう10ごう)で製作せいさくしたのち極秘ごくひにグルームレイクに輸送ゆそうてをおこなっている。

機体きたい形状けいじょうは、レーダーなみ特定とくてい方向ほうこう反射はんしゃさせる反射はんしゃかくたせるためひしがたになっている。当時とうじのコンピュータの能力のうりょくでは曲面きょくめんのシミュレートは事実じじつじょう無理むりがあり、シミュレーションが容易よういかくばった機体きたいとなった。航空こうくう力学りきがくてきには飛行ひこう不向ふむきな形状けいじょうであるため、飛行ひこう姿勢しせいは4じゅう管理かんりされたデジタル・フライ・バイ・ワイヤによりコンピュータ制御せいぎょされることによりはじめて飛行ひこう可能かのう機体きたいといえる。

直線ちょくせん基調きちょう機体きたいであり最初さいしょ公表こうひょうされた1まいきりの写真しゃしん機体きたい各部かくぶ角度かくどりにくい方向ほうこうから撮影さつえいされていたため、それをもと作成さくせいされた非公式ひこうしき三面さんめんは、実機じっきとはかなりちが寸詰すんづまりなものとなっていた。のちに正式せいしき三面さんめん発表はっぴょうされて、やっとその間違まちがいに気付きづくほど、当時とうじ情報じょうほう公開こうかいすくなかった。

部隊ぶたい編成へんせい[編集へんしゅう]

F-117の実機じっき完成かんせいすらしていなかった1980ねん1981ねんせつあり)から、すでアメリカ空軍くうぐん戦術せんじゅつ航空こうくう軍団ぐんだん直轄ちょっかつ部隊ぶたいとしてトノパー・テストレンジ(Tonopah Test Range:TTR)にステルス戦闘せんとう部隊ぶたいだい4450戦術せんじゅつぐん(the 4450th Tactical Group)」を編成へんせいしている。このだい4450戦術せんじゅつぐんしただい4450戦術せんじゅつ戦闘せんとう飛行ひこうたい編成へんせいし、F-117の随伴ずいはん英語えいごばんA-7D攻撃こうげき配置はいちした。

当初とうしょF-16配置はいち予定よていされたが、機体きたい価格かかくたかさからA-7Dに決定けっていされた。これは同時どうじに、まだステルス存在そんざい秘密ひみつであった初期しょきのころはだい4450戦術せんじゅつ部隊ぶたいを"A-7飛行ひこうたい"として秘匿ひとくすることにも役立やくだった。カモフラージュとしてもちいられたA-7Dはのちによりやす経費けいひ維持いじ可能かのうT-38タロンえられたが、転換てんかん訓練くんれんおこなうパイロットはA-7Dで慣熟かんじゅく飛行ひこうおこなっていた[3]

最初さいしょのF-117の配属はいぞく決定けっていしたのは1982ねん5がつであり、ジェームス S. アレン大佐たいさ指揮しきることとなった。大佐たいさ1983ねん8がつ23にち部隊ぶたいによるF-117のはつ飛行ひこう自身じしんおこなっている。部隊ぶたいは1983ねん10月28にち稼働かどうしたが、十分じゅうぶんなF-117はまだ配備はいびされていなかった。このためパイロットの飛行ひこう時間じかん維持いじすることが課題かだいとなり、飛行ひこう特性とくせいているとわれるA-7Dを使つかってパイロットの飛行ひこう時間じかんばした。

おおやけとなったステルス[編集へんしゅう]

1988ねん1がつ、アメリカの老舗しにせ軍事ぐんじ情報じょうほうである『Armed Forces Journal』(英語えいごばん)同月どうげつ発行はっこうされたごう[5]にて「"F-19"として存在そんざいうわさされている機体きたい実際じっさい存在そんざいしているが、形式けいしきめいはF-19ではなく"F-117"であり、“ナイトホーク(Night Hawk)”というニックネームもあたえられている」との記事きじ掲載けいさいした。

それまでも1980年代ねんだいとおして「アメリカぐんではレーダーにうつらない特殊とくしゅ性能せいのうった戦闘せんとうが"F-19"の名称めいしょう極秘ごくひ開発かいはつされている」として様々さまざま推測すいそく憶測おくそくがマスメディアを中心ちゅうしんかたられていたが(後述こうじゅつ#「F-19」とプラスチックモデル」のふし参照さんしょう)この時期じきになると、メディアに掲載けいさいされる推測すいそく多分たぶん実態じったいせまったものになってきており、さらには並行へいこうして開発かいはつすすめられていたATB(Advanced Technology Bomber. 先進せんしん技術ぎじゅつ爆撃ばくげきB-2ステルス爆撃ばくげきとして結実けつじつしたもの)およびあらたなステルス戦闘せんとう開発かいはつ計画けいかくであるATF(先進せんしん戦術せんじゅつ戦闘せんとう計画けいかく)のりょう計画けいかく情報じょうほう非公開ひこうかい状態じょうたいすすめることがむずかしい段階だんかいすすんでおり、B-2の公表こうひょう決断けつだんされていたため、すで実戦じっせん配備はいびされているF-117の存在そんざいあわせて“ステルス”についての情報じょうほう秘匿ひとくすることが不可能ふかのうだと判断はんだんしたアメリカ国防総省こくぼうそうしょうは、情報じょうほう公開こうかい決定けっていした[6]

ステルスについての情報じょうほう公開こうかいするにあたり、国防総省こくぼうそうしょう当初とうしょ発表はっぴょう時期じきを1988ねん10がつない予定よていしていたが、このとし大統領だいとうりょう選挙せんきょ1988ねんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく大統領だいとうりょう選挙せんきょ)がおこなわれるため、上院じょういん軍事ぐんじ委員いいんかい(SASC. United States Senate Committee on Armed Services)からは情報じょうほう公開こうかいによる政治せいじてき混乱こんらん回避かいひすることがもとめられ、選挙せんきょ終了しゅうりょうする同年どうねん11がつ8にち以降いこう情報じょうほう公開こうかい時期じきとしてさだめられた。国防総省こくぼうそうしょう事前じぜん与野党よやとう議員ぎいんやNATOをはじめとする同盟どうめい各国かっこくとう関係かんけいかく方面ほうめん内密ないみつ打診だしんしたうえ準備じゅんびすすめ、1988ねん11月10にち会見かいけんおこなわれた[6]

このときあきらかにされた項目こうもく以下いかとおりである。

  • アメリカ空軍くうぐんロッキードしゃによる開発かいはつで、F-117はすでに実用じつよう段階だんかいとなり昼間ひるま飛行ひこうおこな段階だんかいたっしたこと
  • 開発かいはつ計画けいかく1978ねん開始かいしされたこと
  • はつ飛行ひこう日時にちじ1983ねん初期しょき運用うんよう段階だんかいたっしたこと
  • この計画けいかく終始しゅうし、アメリカ議会ぎかい委員いいんかいとく超党派ちょうとうはから支持しじけたこと
  • 機体きたいはVがた尾翼びよくゆうする双発そうはつであること
  • 59発注はっちゅうがなされ、すでに52納入のうにゅう
  • トノパー基地きちだい4450戦術せんじゅつぐん配備はいびされ、運用うんよう段階だんかい移行いこうしていること
  • だい4450戦術せんじゅつぐんには練習れんしゅうとしてA-7Dが20配備はいび使用しようされていること
  • 過去かこに2墜落ついらくし、乗員じょういん2めい死亡しぼうしていること

このとぼしい内容ないよう記者きしゃたちは質問しつもんびせたが、国防総省こくぼうそうしょう報道ほうどうかんは「ノーコメント」を連発れんぱつしている。回答かいとう拒否きょひした項目こうもく以下いかとおりであった。

  • 下請したう会社かいしゃエンジンメーカー
  • 搭載とうさいへいそう搭載とうさい電子でんし機器きき
  • だい4450戦術せんじゅつぐん任務にんむ内容ないよう
  • ふくがた有無うむ
  • 外国がいこくでの作戦さくせん参加さんか有無うむ

下請したう会社かいしゃ秘匿ひとくとしたのは、そこから情報じょうほうれることを危惧きぐしたためとされる。また、戦術せんじゅつ戦闘せんとうという抽象ちゅうしょうてき任務にんむしか公表こうひょうしていないため、搭載とうさいへいそう部隊ぶたい任務にんむなどは当然とうぜんながら極秘ごくひとされた。

この発表はっぴょうは「実際じっさいの“ステルス戦闘せんとう”はこれまで推測すいそくされていたものとはまったことなる外形がいけいをしている」ことがメディアをはじめとしたかく方面ほうめんおおきな衝撃しょうげきあたえた。なお、F-117の情報じょうほう公開こうかいされたさい、アメリカぐん軍事ぐんじ専門せんもんにF-117の機体きたい形状けいじょうからレーダー反射はんしゃ効率こうりつ推計すいけいすることを依頼いらいしたが、いずれの専門せんもん回答かいとう実際じっさいのF-117のものよりもはるかにおおきく見積みつもられた数値すうち提示ていじされていたという[7]。これはアメリカぐんが「限定げんていてき情報じょうほう公開こうかいであればF-117の性能せいのうや“ステルス”についての正確せいかく技術ぎじゅつ情報じょうほう秘匿ひとくつづけられる」として情報じょうほう公開こうかい問題もんだいなしと判断はんだんする根拠こんきょになった[7]

参加さんか作戦さくせん[編集へんしゅう]

  • 実戦じっせんはつ参加さんか1989ねん12月19にちおこなわれた「ジャスト・コーズ作戦さくせん(Operation Just Cause)」の支援しえんである。当初とうしょこの作戦さくせんパナマ一大いちだい麻薬まやく組織そしき結託けったくする独裁どくさいしゃマヌエル・ノリエガ誘拐ゆうかいであり、2のF-117が参加さんかしたが途中とちゅう作戦さくせん目標もくひょうがリオ・ハトのパナマ防衛ぼうえいぐん(PDF:Panamanian Defence Force)を混乱こんらんさせることに変更へんこうされ、バックアップのために急遽きゅうきょべつの2作戦さくせん参加さんか最終さいしゅうてきさらに2追加ついかされ、合計ごうけい6作戦さくせんくわわった。この編隊へんたいネバダのトノパーから出撃しゅつげきし、5かい空中くうちゅう給油きゅうゆけて目標もくひょう飛行ひこう、2,000lb GBU-27A/BおよびBLU-109B/I-2000を投下とうかしたが目標もくひょう兵舎へいしゃからすうひゃくフィートもはずれて着弾ちゃくだんし、作戦さくせんのち議会ぎかいから失敗しっぱいだったとたたかれた。なお、このとき最初さいしょばくだん投下とうかおこなったのはグレッグ・フィースト少佐しょうさで、のちに「砂漠さばくあらし作戦さくせん参加さんかし、イラクでのばくげきおこなっている[3]
  • F-117が一躍いちやく有名ゆうめいとなったのは1991ねん湾岸わんがん戦争せんそうさいである。ばくだん命中めいちゅうするシーンの映像えいぞうなどが連日れんじつテレビでながされ、ハイテク戦争せんそう印象いんしょうけた戦争せんそうではあったが、実際じっさいにはF-117以外いがい一般いっぱん部隊ぶたいはコストの問題もんだいから誘導ゆうどうばくだん使つかわれた比率ひりつすくなく、ほとんどは誘導ゆうどうばくだん使つかわれた。一方いっぽう、F-117の部隊ぶたいにおいては終始しゅうしGBU-27誘導ゆうどうばくだん使用しようしている。湾岸わんがん戦争せんそうでは44参加さんか。42日間にちかん合計ごうけい1,271ソーティのばくげき遂行すいこうし、1被害ひがいさなかった[3]

唯一ゆいいつ撃墜げきついれい[編集へんしゅう]

展示てんじされる撃墜げきついされたF-117のキャノピーと搭乗とうじょういんヘルメット

コソボ空爆くうばくにおいて、1999ねん3月27にちにセルビアの首都しゅとベオグラード近郊きんこう上空じょうくう[8]べい空軍くうぐんだい49戦闘せんとう航空こうくうだん[8]所属しょぞくする1、コールサイン「ヴェガ31」[9]、シリアルナンバー「82-0806」(1982ねん会計かいけい発注はっちゅうの22号機ごうき[8][9]撃墜げきついされている。同機どうきは、1984ねん8がつ20日はつかすすむむなして同年どうねん9月12にち空軍くうぐんわたされており[8]湾岸わんがん戦争せんそうではだい415戦術せんじゅつ戦闘せんとう飛行ひこうたい所属しょぞくし39かい出撃しゅつげきしている[8]撃墜げきつい当日とうじつ同機どうきは僚機とともにネヴァダの基地きちから発進はっしん大西洋たいせいよう横断おうだんし、すうかい空中くうちゅう給油きゅうゆのち地中ちちゅう海上かいじょう最後さいご空中くうちゅう給油きゅうゆのちベオグラード近郊きんこうまですすんだところで撃墜げきついされた。撃墜げきついパイロット緊急きんきゅう脱出だっしゅつし、数時間すうじかん救助きゅうじょされている。同機どうきキャノピーのフレームには「ケン・"ウィズ"・デュエル大尉たいい」と記載きさいされているが[9]どうパイロットは当時とうじ除隊じょたいひかえているためアメリカ本土ほんど[8]当初とうしょはパイロットの名前なまえ階級かいきゅう公表こうひょうされなかったが、Dale Selko(デール・ゼルコ)大尉たいい当時とうじ2007ねんとき中佐ちゅうさ)が当日とうじつ操縦そうじゅうしていたことがあきらかになっている[8][9]。また、撃墜げきついされたときにパイロットが、僚機(「ヴェガ32」)ひとしおよ管制かんせいけてはっした、「Mayday! Mayday! Mayday! Vega 31 …」との連呼れんこした救助きゅうじょコールと、それに呼応こおうする音声おんせいおよつづいて発信はっしんされたF-117の遭難そうなん信号しんごうおんとう傍受ぼうじゅされ録音ろくおんのこっている。のレーダーもはずし、僚機との交信こうしんひかえて隠密おんみつ作戦さくせんをするF-117であるが、墜落ついらくにはてきがわにも傍受ぼうじゅ可能かのうウォーキートーキー使つかって救助きゅうじょ発信はっしんおこなった。

事件じけん当初とうしょ様々さまざませつがあったものの、そのアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくセルビアがわ双方そうほう公表こうひょうされ、当事とうじしゃのインタビュー記事きじなどもあり、概容がいよう判明はんめいしている[8]迎撃げいげきしたのはユーゴスラビア防空ぼうくうぐんだい250対空たいくうミサイル旅団りょだんセルビアばん英語えいごばんだいさん中隊ちゅうたい[8]で、どう部隊ぶたい開戦かいせん同時どうじ従来じゅうらいのミサイル基地きちから秘密ひみつ基地きち移動いどうしており、開戦かいせん数日すうじつ従来じゅうらいのミサイル基地きちにやってきた3はつ巡航じゅんこうミサイルからの被爆ひばく回避かいひしていた。F-117の撃墜げきつい時刻じこく任務にんむ分担ぶんたんについていた8めいはん指揮しきかんはダニ・ゾルタン中佐ちゅうさ[8]撃墜げきつい利用りようされた兵器へいき1960年代ねんだい初期しょき登場とうじょうしたなかひく高度こうどよう対空たいくうミサイルS-125N ネヴァー西側にしがわ名称めいしょうSA-3ゴア)[8]である。当時とうじのS-125の射撃しゃげき管制かんせいシステムは、目標もくひょう捕捉ほそくレーダー追跡ついせき管制かんせいレーダー、高角こうかくレーダー、TV追跡ついせきシステムからなり[8]、このだいさん中隊ちゅうたいでは西側にしがわ新鋭しんえい軍用ぐんよう対応たいおうするために射撃しゃげき管制かんせいシステムを改良かいりょうしており、レーダーの送受信そうじゅしん改造かいぞうして長波ちょうはちょうてい周波数しゅうはすう電波でんぱ利用りようしてF-117の探知たんち可能かのうにしていたとされる[8]。F-117にたいして発射はっしゃされた2はつ対空たいくうミサイルうち一発いっぱつがF-117の左翼さよく直撃ちょくげきし、F-117は墜落ついらくした[8]。パイロットは当日とうじつ作戦さくせんについて最初さいしょから撃墜げきついされることを危惧きぐしており、当日とうじつ現地げんち天候てんこうあめ模様もようだったことも、撃墜げきついされた原因げんいんひとつとしてげている。いずれにせよ「えないはずのばくげき」を「ねらち」できたわけである。この教訓きょうくんからか最近さいきんのロシア戦闘せんとうは、Su-57はじめとして、機首きしゅ装備そうびしているXバンドレーダーだけでなく、主翼しゅよくぜんえんスラットにLバンドレーダー(N036L-1-01)を装備そうびし、たいステルス対策たいさくとしているとのせつもある[よう出典しゅってん]

セルビアの山中さんちゅう墜落ついらくした機体きたい残骸ざんがいは、ベオグラードの航空こうくう博物館はくぶつかん展示てんじされている。紛争ふんそう当時とうじのクロアチア陸軍りくぐん参謀さんぼう総長そうちょうだったドマゼット=ロソクロアチアばんは、一部いちぶ残骸ざんがいスロボダン・ミロシェヴィッチ政権せいけん時代じだいからセルビアと友好国ゆうこうこくである中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく提供ていきょうされ、殲20といったステルス戦闘せんとうなどが開発かいはつされたと主張しゅちょうした[10]。これについて「撃墜げきついされたF-117の部品ぶひん入手にゅうしゅした中国ちゅうごくにとって、最大さいだいのステルス技術ぎじゅつ収穫しゅうかくは、F-117が木製もくせい飛行機ひこうきだったことだ。」とのわらばなし中国ちゅうごく情報じょうほうささやかれたという[11][12]

退役たいえき一部いちぶ運用うんよう復帰ふっき[編集へんしゅう]

たかステルスせいF-22 ラプターB-2 スピリット配備はいびされたことにくわえ、たか機動きどうせいつステルス戦闘せんとうであるF-35 ライトニング II将来しょうらい配備はいびされる予定よていであることと、これらのステルスが「1時間じかんぶと30あいだメンテナンスが必要ひつよう」とべい議会ぎかい質問しつもんされたように、F-117も機体きたい表面ひょうめんのステルス能力のうりょく維持いじ時間じかんがかかり、費用ひようたかくつくことから、2008ねん4がつ22にちをもってぜん退役たいえきした。

退役たいえきネバダしゅうにあるトノパー・テストレンジモスボールにて保管ほかんされ、必要ひつようしょうじれば復帰ふっきすることもあるという[13]。また、機密きみつ情報じょうほう保持ほじしたまま解体かいたいする最適さいてき方法ほうほうさぐるため、2008ねん8がつ26にちに1どう実験じっけんじょう解体かいたい実験じっけんきょうされた[14]

しかし、2014ねんごろにアメリカ・ネバダしゅうのトノパ・テストレンジにてF-117が飛行ひこうしているところを目撃もくげきされたことから、べい空軍くうぐんはいまだなんらかの用途ようと飛行ひこう可能かのうなF-117をすう保存ほぞんしている可能かのうせい浮上ふじょう[15]。2018ねん7がつにはネバダしゅう空軍くうぐん飛行場ひこうじょう飛行ひこうしている機体きたい目撃もくげきされたほか[16]、2019ねん2がつ26・27にちにもカリフォルニアしゅうパナミント山脈さんみゃくちかくのパナミント・バレーで、2のF-16ととも飛行ひこうしている姿すがた撮影さつえいされており、レーダ反射はんしゃだん面積めんせきのデータ収集しゅうしゅうをしているものと推測すいそくされた[17]。 2021ねん7がつにはネリス空軍くうぐん基地きちおよびネリス試験しけん訓練くんれんじょう開催かいさいされているレッドフラッグ 21-3演習えんしゅうにて、垂直すいちょく尾翼びよくに「TR」のテールコードがしるされた2のF-117が飛行ひこうしている姿すがた鮮明せんめい撮影さつえいされており、現在げんざいでもステルス能力のうりょく仮想かそうてきとして運用うんようされているとかんがえられていた[18]

そのべい空軍くうぐんは2021ねん9がつ20日はつかに「現在げんざいでもF-117を研究けんきゅう訓練くんれんサポートなどのかぎられた目的もくてき使用しようしている」としたうえで、同月どうげつ13にちに2のF-117をフレズノ・ヨセミテ国際こくさい空港くうこう(フレズノ空軍くうぐん基地きち)へ展開てんかいし、機種きしゅあいだ空戦くうせん訓練くんれんおこなっていると発表はっぴょうした[19]

今後こんご概要がいよう項目こうもくすんでじゅつとおり、博物館はくぶつかんへの収蔵しゅうぞうとう目的もくてき保存ほぞんされる機体きたいのぞいてぜん廃棄はいき処分しょぶんされることが決定けっていしている。オハイオしゅうデイトンのライトパターソン空軍くうぐん基地きち隣接りんせつする国立こくりつアメリカ空軍くうぐん博物館はくぶつかんに1収蔵しゅうぞう展示てんじされている。

特徴とくちょう[編集へんしゅう]

それまでの航空機こうくうきにはない、独特どくとく形状けいじょうである

F-117はてきレーダー発見はっけんされにくいステルス技術ぎじゅつ全面ぜんめんてきれた世界せかいはつ航空機こうくうきであり、従来じゅうらい航空機こうくうきのイメージをくつがえ多面体ためんたい形状けいじょうをしているのが特徴とくちょうであるが、一部いちぶにおいては既存きそんジェット機じぇっとき技術ぎじゅつ採用さいようされており、操縦そうじゅう系統けいとうF-16から、コックピット機能きのうF/A-18から、ナビゲーションシステムはB-52から採用さいようしている。

レーダーや赤外線せきがいせんなどではできるだけてき発見はっけんされないように以下いか対策たいさくほどこされている。

レーダー対策たいさく[編集へんしゅう]

てきレーダーなみ照射しょうしゃげん方向ほうこう反射はんしゃさせないために、いくつかの工夫くふうおこなわれている。

形状けいじょう制御せいぎょ
てきレーダーに発見はっけんされにくくするために多面体ためんたい形状けいじょうをしている。機体きたい全体ぜんたいひらたいエイのようなかたち機体きたい下面かめんはほぼ1まい平面へいめん構成こうせいされている。操縦そうじゅうせきエンジンふくめた機体きたい中央ちゅうおう多角たかく形状けいじょう上方かみがたふくらんでいる。これはステルス技術ぎじゅつ形状けいじょう制御せいぎょからまれたかたちであり、レーダー入射にゅうしゃ散乱さんらんおよ後方こうほう背面はいめんとすることによってレーダー反射はんしゃだん面積めんせき(RCS)をげる機体きたい形状けいじょうとなっている。機体きたい表面ひょうめんから突起とっきぶつ可能かのうかぎらしたり、エンジンの吸入きゅうにゅう効率こうりつげてまでエアインテーク電波でんぱ侵入しんにゅうふせ金属きんぞくせいグリッドを装着そうちゃくして内部ないぶ多様たよう反射はんしゃめん露出ろしゅつおさえている。
へいそう機内きない搭載とうさい
形状けいじょう制御せいぎょ一環いっかんとして、へいそう機体きたい下部かぶ2箇所かしょ兵器へいきくら収納しゅうのうする。搭載とうさい可能かのう兵器へいきMk.84 2,000lb通常つうじょうばくだん、もしくはGBU-27またはGBU-10の種類しゅるいのレーザー誘導ゆうどうばくだんかく兵器へいきくらに1はつずつ搭載とうさいできるが、GBU-29,30,31,32JDAMAGM-154 JSOWなどばくだん搭載とうさい可能かのうAGM-65そら対地たいちミサイルAGM-158巡航じゅんこうミサイルAGM-88たいレーダーミサイルAIM-9Lそら対空たいくうミサイルなども運用うんよう出来できるとされる。
RAM
機体きたい表面ひょうめんRAM(Radar Absorbent Material)とばれるレーダー吸収きゅうしゅうする材料ざいりょうであるグラファイト/エポキシふくごうざいおおわれており、機体きたい内部ないぶにも電波でんぱ反射はんしゃすくない非金属ひきんぞく素材そざい使用しようされている。
キャノピー
いかにステルスを重視じゅうしした形状けいじょうであってもパイロットが様々さまざま機器きき配置はいちされているコックピットは、レーダーむと乱反射らんはんしゃかえした挙句あげく不用意ふようい方向ほうこうへそれをかえしてしまいかねない。たとえばパイロット装着そうちゃくするヘルメット球体きゅうたいちかく、あらゆる方向ほうこうにレーダー反射はんしゃしうる。
そこでF-117では機体きたい延長線えんちょうせん沿った(曲面きょくめんではない)いたじょうキャノピーパネルを採用さいよう意図いとした方向ほうこうへとレーダーらすように設計せっけいされ、また、かね蒸着じょうちゃくすることでコックピット内部ないぶにレーダーはいむことをふせいでいる。しかし、この形状けいじょうのために視界しかい前方ぜんぽうよんほんふといピラー(はしら)がもうけられているため、前方ぜんぽう視界しかい戦闘せんとうくらべて劣悪れつあくきわめる。後方こうほう視界しかいまったい。

これらの工夫くふうによってたかいステルス性能せいのう獲得かくとくできた一方いっぽうで、ステルスせいさい重視じゅうしした機体きたい形状けいじょうそら力学りきがくてきすぐれた形状けいじょうとはえず、最高さいこう巡航じゅんこう速度そくどF-4などの主力しゅりょく戦闘せんとうくらべておとる。1997ねん9月14にちにアメリカのメリーランドしゅうボルチモア航空こうくうショーでのデモ飛行ひこうさい、アクロバティックな旋回せんかい機動きどうかえしたために主翼しゅよく負荷ふかかり、飛行ひこうちゅう突然とつぜんひだり主翼しゅよく部分ぶぶん大破たいは機体きたい近隣きんりん住宅じゅうたく墜落ついらく、パイロットは脱出だっしゅつしたものの住宅じゅうたくむね全焼ぜんしょうするという被害ひがいこしている。[20]これをカバーするため、よんじゅうのデジタル・フライ・バイ・ワイヤ技術ぎじゅつにより安定あんていした飛行ひこう可能かのうとしている。また特殊とくしゅ形状けいじょう機体きたいであるがゆえに、戦闘せんとうもうけられている格納かくのうしきのラダー(梯子はしご)を機体きたいむことができず、導入どうにゅうたってはパイロットの乗降じょうこう整備せいびのために専用せんようのタラップを運用うんようする基地きち調達ちょうたつする必要ひつようせまられるなどの弊害へいがいしょうじた。

赤外線せきがいせん対策たいさく[編集へんしゅう]

F-117ではレーダー以外いがいセンサーたいするステルスせい考慮こうりょされている。たとえばエンジンはアフターバーナー搭載とうさいのF404-GE-F1D2を使用しようし、排気はいきこう機体きたい上面うわつらもうけるなど、できるだけ赤外線せきがいせんによって発見はっけんされる危険きけんらす工夫くふうおこなっている。

レーダー能力のうりょく放棄ほうき[編集へんしゅう]

使用しようしていないあいだでも外部がいぶからの電波でんぱをよく反射はんしゃさせ、使用しようすればてきレーダー警戒けいかい装置そうち(RWR)によって探知たんちされる危険きけんたかいために、F-117ではあえて機上きじょうレーダー搭載とうさいせず、目標もくひょう探知たんち捕捉ほそくなどには、機体きたい下面かめんぜんあしにある目標もくひょう指示しじようのレーザー目標もくひょう指示しじ装置そうち機首きしゅ最前さいぜんにあるFLIR前方ぜんぽう監視かんし赤外線せきがいせん装置そうち)、機首きしゅにあるしきDLIR下方かほう監視かんし赤外線せきがいせん装置そうち)などを使用しようしている。

夜間やかん飛行ひこう専用せんよう[編集へんしゅう]

機体きたいくろいのは夜間やかん飛行ひこうすることでひと肉眼にくがんでの視認しにんけるよう、夜間やかん飛行ひこうとくした塗装とそうおこなわれているためである。 また、2003ねん12月23にちにはシリアルナンバー「85-0835」(1985年度ねんど会計かいけい発注はっちゅうの51号機ごうき)が試験しけんてきにコンパス・ゴーストグレイ主体しゅたい昼間ひるまロービジ塗装とそうほどこしてロールアウトし、2004ねん5月からだい53航空こうくうだん英語えいごばんだい53試験しけん評価ひょうか航空こうくうぐん英語えいごばんだい1分遣ぶんけんたいドラゴンチームで運用うんよう評価ひょうか試験しけんおこなわれたこともあり、評価ひょうか試験しけんちゅう機体きたいぞくに「Dayhawk」(ひるたか)やドラゴンチームにちなんで「Grey Dragon」(灰色はいいろりゅう)とばれた[21]

量産りょうさん体制たいせい移行いこうするまえ試作しさくされた機体きたいうちいち号機ごうき当初とうしょスカンクワークスのベン・リッチの発案はつあんによって迷彩めいさい塗装とそうほどこされていたが、のちあきら灰色はいいろえられた。そのF-117Aが夜間やかん運用うんようされることがまったさいくろ一色いっしょくえられている[注釈ちゅうしゃく 2]

2008ねん3月11にちエドワーズ空軍くうぐん基地きち開催かいさいされた航空こうくうショーで、退役たいえきさいしておこなわれたF-117Aの退役たいえきセレモニーでは、機体きたい底面ていめんアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく国旗こっきである星条旗せいじょうきをペイントした特別とくべつ塗装とそう機体きたいがデモ飛行ひこうおこない、引退いんたいはなえている。

対地たいち攻撃こうげき飛行ひこう[編集へんしゅう]

飛行ひこうルート[編集へんしゅう]

対地たいち攻撃こうげき任務にんむおおくの時間じかんは、あらかじめ設定せっていされたルートを自動じどう操縦そうじゅう装置そうちにより飛行ひこうする。編隊へんたい飛行ひこうはせずに、原則げんそくとして単独たんどく飛行ひこう任務にんむ遂行すいこうする。

飛行ひこう特性とくせい[編集へんしゅう]

全般ぜんぱんてき特性とくせいデルタつばさのそれとほぼおなじである。その形状けいじょうによりそらりょく特性とくせいわるく、一般いっぱんてき戦闘せんとう攻撃こうげきくらべて機動きどうせいおとり、フライ・バイ・ワイヤの使用しようによって無理むりばしているともえる。そのため離着陸りちゃくりく速度そくど比較的ひかくてきたかく、なが滑走かっそう必要ひつようとする。そのため、着陸ちゃくりくにはドラッグシュートをもちいてタッチダウン着陸ちゃくりく速度そくどげている。音速おんそくでは機首きしゅがり、きゅう旋回せんかいすると速度そくど大幅おおはば低下ていかして高度こうどがり、墜落ついらく事故じここしている。また前述ぜんじゅつとおり、アクロバット飛行ひこう主翼しゅよく負荷ふかけたために主翼しゅよく破損はそんして墜落ついらくする事故じこきていることから、機動きどう特性とくせいくないとかんがえられている。

エンジン整流せいりゅうばんいているので飛行ひこうおん非常ひじょうしずかか。また、前述ぜんじゅつ理由りゆうと、アフターバーナー装備そうびしていないためにちょう音速おんそく飛行ひこうはできない。

へいそう[編集へんしゅう]

そら対空たいくうミサイルについては、自衛じえいようとしてAIM-9L サイドワインダー搭載とうさい可能かのうではあるが、機体きたい試験しけん搭載とうさい発射はっしゃをしたのみで、F-117の訓練くんれんにAIM-9の発射はっしゃ訓練くんれんふくまれておらず、実戦じっせん部隊ぶたい装備そうびされた記録きろくい。また、機関きかんほうなどは搭載とうさいされていない。

Fナンバー[編集へんしゅう]

F-117は戦闘せんとうあらわすFナンバーをかんしている。しかし当時とうじ技術ぎじゅつりょくステルスせい限界げんかいまで優先ゆうせんした機体きたい設計せっけいのためにきびしい機動きどう制限せいげんがあり、またさい高速度こうそくど音速おんそくまるため、実戦じっせんでの空戦くうせん能力のうりょくいにひとしい。このため、F-15F-16のようなせいそら迎撃げいげきではなく、対地たいち攻撃こうげき偵察ていさつもちいられる。そのため、ほん項目こうもくでは戦闘せんとう明記めいきしたが、実際じっさい運用うんようじょう攻撃こうげき分類ぶんるいされる。

命名めいめい当時とうじアメリカ空軍くうぐん攻撃こうげきしめすAナンバーを使つか習慣しゅうかんがなかった[注釈ちゅうしゃく 3]という説明せつめいがなされているものの、べい空軍くうぐんすでA-10 サンダーボルトII というAナンバーを機体きたい導入どうにゅうしているため、信憑しんぴょうせいひく[注釈ちゅうしゃく 4]

一説いっせつには、このようなさい新鋭しんえい操縦そうじゅうするようなパイロット軍用ぐんよう花形はながたたる戦闘せんとうりたがる傾向けいこうがあり、するどくとがったきん未来みらいてき形状けいじょうわせて「F」ナンバーをけたという談話だんわがあるとされている。

さらにF-117という制式せいしきコードも、センチュリーシリーズにおいて直前ちょくぜん機体きたいF-111であって、112-116までの番号ばんごうばしてこの名称めいしょうにしている。これについては、117の名称めいしょう偵察ていさつ衛星えいせい音響おんきょう監視かんしシステムなどの画期的かっきてき製品せいひんにあやかってあえてこの番号ばんごうをつけたというせつがある。もしくは、アメリカ秘密裏ひみつり保有ほゆうするソビエトせい戦闘せんとうにF-112-116がてられており、まんいち外部がいぶ情報じょうほうれたとき、F-117もまた、そういう機体きたいだとミスリードするのが目的もくてきだったなど、いろいろなせつがある。

航空こうくう関係かんけいしゃあいだでは、F-117は政治せいじてき偽装ぎそう名称めいしょう真実しんじつ制式せいしきコードはF-19であることにうたがいをものはほとんどないとわれるほどだが、いまのところ当事とうじしゃべい空軍くうぐんからは両者りょうしゃ関係かんけいについてなんの説明せつめいもない。117という数字すうじ搭載とうさいエンジン型式けいしきだというせつもある。

正式せいしき公開こうかい以前いぜんは、おなじく欠番けつばんになっている「F-19」がこのステルスではないかとするせつ有力ゆうりょくだった。また、この機体きたい(F-117またはF-19)の姿すがた公表こうひょうされるまでは、実際じっさい機体きたいとはせい反対はんたい電波でんぱ特定とくてい方向ほうこう反射はんしゃしない曲面きょくめん構成こうせいされているとわれ、まる曲面きょくめんからなる想像そうぞうがいくつか流布るふした。これをもとにしたプラモデルイタレリしゃの「F-19 Stealth」など)も発売はつばいされ、「フリスビー」という愛称あいしょうもつけられた。小説しょうせつで、当該とうがいげるさいに「フリスビー部隊ぶたい」とぶものがある。

派生はせいがた[編集へんしゅう]

F-117N シーホーク
ロッキードから提案ていあんされたF-117の海軍かいぐんがた。エンジンをF414変更へんこう、バブルキャノピー採用さいよう尾翼びよく追加ついか主翼しゅよく大型おおがたちゃくかん装置そうちおよび構造こうぞう強化きょうかがされる予定よていであった。しかし、このかた採用さいよう[22]となっている。

逸話いつわなど[編集へんしゅう]

レーダーの乱反射らんはんしゃ[編集へんしゅう]

存在そんざい発表はっぴょうされる以前いぜんステルスレーダーうつらないとわれていた。レーダーは照射しょうしゃした電波でんぱ物体ぶったい反射はんしゃされてかえってくるのを感知かんちして対象たいしょうおおきさや距離きょりなどを測定そくていするので、ステルス照射しょうしゃされた電波でんぱをさまざまな方向ほうこう乱反射らんはんしゃさせてレーダーにうつらない程度ていどよわめる、まるみをびた形状けいじょうであると想像そうぞうされていた。

しかし、実際じっさい電波でんぱ特定とくてい方向ほうこうにのみ反射はんしゃさせることで探知たんち方向ほうこう制限せいげんさせるという、予想よそうとはまったぎゃく方式ほうしきもちいていた。つまりレーダーにまったうつらないのではなく、偶然ぐうぜんにも特定とくてい方向ほうこう反射はんしゃしたレーダーがキャッチされてしまう場合ばあいもありえる。しかしそれはごく短時間たんじかんわってしまい、レーダーじょう反映はんえいされるかげ飛行機ひこうき判別はんべつされないほどまったことなったものとなってしまう。この関係かんけいからレーダーじょうでのかげかずあるアメリカ空軍くうぐん機密きみつなかでもさい重要じゅうよう軍事ぐんじ機密きみつとなっている。これはF-117にかぎったことではなく、B-2F-22などのほかのステルスについても同様どうようである。

また、特定とくてい方向ほうこう以外いがい反射はんしゃされるレーダー皆無かいむというわけではなく、きわめて微弱びじゃくでRCSが極端きょくたんちいさいというだけである。そのため湾岸わんがん戦争せんそうときには単機たんき侵入しんにゅうしたF-117も、ユーゴスラビア介入かいにゅうさいにはソ連それんせい濃密のうみつ防空ぼうくうシステムをかいくぐるためにEA-6B電子でんし戦機せんき電子でんしせん支援しえんけていたといわれる。また、この事実じじつは、「さまざまな方向ほうこう乱反射らんはんしゃ」という手法しゅほうでは、ステルス能力のうりょく不十分ふじゅうぶんであることをしめしている(反射はんしゃするレーダー総量そうりょうおなじであれば、当然とうぜんながら『さまざまな方向ほうこう乱反射らんはんしゃさせたレーダー』と『特定とくてい方向ほうこうにのみ反射はんしゃ制限せいげんし、その方向ほうこう以外いがいへの微弱びじゃく反射はんしゃレーダー』を比較ひかくすれば、前者ぜんしゃのレーダーのほうがつよくなる)。

レーダー・リフレクター[編集へんしゅう]

レーダーがないため単独たんどくでは周辺しゅうへん飛行ひこうまったくわからない。平時へいじにこのまま飛行ひこうすれば友軍ゆうぐん民間みんかん航空機こうくうきなどもF-117のステルス特性とくせいのためにおたがいがレーダーでえないので非常ひじょう危険きけんである。このため基地きちから基地きちへのフェリーなど戦闘せんとう行動こうどうには、レーダー・リフレクターばれる突起とっき胴体どうたい側面そくめんけ、レーダーへの反射はんしゃ確保かくほする。

撮影さつえい制限せいげん[編集へんしゅう]

エンジン排気はいきこう機密きみつとされ、従来じゅうらい後方こうほうからの撮影さつえい禁止きんしされていたが、現在げんざいでは一般いっぱん雑誌ざっしなどでもることが出来できる。排気はいきこうしつぶされたように極端きょくたんよこ方向ほうこうひろげられており、整流せいりゅうフィンが内部ないぶならんだハーモニカこうのような形状けいじょうしている。これにくわえて排気はいきこう真下ましたに吸熱タイルを配置はいちして排気はいき温度おんどげる工夫くふうがされている[2]

木材もくざい使用しよう[編集へんしゅう]

レーダー探知たんち極力きょくりょくけるために非金属ひきんぞく素材そざい多用たようされているとわれ、コソボ紛争ふんそう撃墜げきついされた機体きたいへん写真しゃしんでは木材もくざい使つかわれているのが確認かくにんできる。

ステルスと直線ちょくせんデザイン[編集へんしゅう]

F-117の直線ちょくせんてきデザインはいままでの航空機こうくうきにはいものであり、かく方面ほうめんおおきな衝撃しょうげきあたえた。そのためいち時期じきは、この独特どくとく形状けいじょうステルス設計せっけい必須ひっすのものであると解釈かいしゃくされたこともある。ただし上記じょうきでもべたとおり、これは当時とうじ設計せっけいようコンピューターの能力のうりょくによる限界げんかいのため、このような単純たんじゅん設計せっけいでしかレーダーなみ反射はんしゃのシミュレーションができなかったからである。

ノースロップのステルス技術ぎじゅつ原型げんけいとなったタシット・ブルー

一方いっぽう、ロッキードほどのコンピューターをたなかったノースロップは、ステルス技術ぎじゅつ開発かいはつもとヒューズしゃのレーダー技術ぎじゅつしゃであるジョン・キャッセンの経験けいけんにより乱反射らんはんしゃ低減ていげんおも目的もくてきにし機体きたい凹凸おうとつ鋭角えいかくつくらないことを根幹こんかんとして、粘土ねんど使つかった模型もけいによる実験じっけんによりおこなわれ、さらにノースロップB-2ばくげき設計せっけいには技術ぎじゅつ進歩しんぽしたコンピューターを使用しようし、曲面きょくめんでのシミュレーションを可能かのうにしている。

ただし、表面ひょうめん形状けいじょう維持いじするための整備せいび平面へいめんよりも曲面きょくめんのほうがはるかに困難こんなんになるため、B-2の曲面きょくめん設計せっけい同時どうじ整備せいびコストがおおきくなるという問題もんだいしょうじさせた。

パーソナルマーク[編集へんしゅう]

実戦じっせん使用しようされる戦闘せんとう攻撃こうげきにはパーソナルマークやパイロットのTACネームを機体きたいにペイントする慣例かんれいがあるが、F-117ではステルスせいそこなうことを理由りゆう上層じょうそうから許可きょかがおりなかった。しかし現場げんばへいは、色々いろいろ思案しあんしたすえばく弾倉だんそうのドア内面ないめんにペイントをほどこした。ステルスせい重視じゅうししてつくられたF-117とはいえ、ばく弾倉だんそう内側うちがわ塗装とそうはごく普通ふつうのオフホワイト塗装とそうになっていたからである。

また、F-117退役たいえきセレモニーのさいにはおおくの関係かんけいしゃたちがこのドア内側うちがわにサインやメッセージをんだ。

パイロットの負担ふたん[編集へんしゅう]

湾岸わんがん戦争せんそうにおいてF-117パイロット非常ひじょう負担ふたんいられたが、これはその秘匿ひとくせいおよ整備せいびせいとその長時間ちょうじかん飛行ひこうるところがおおきい。

通常つうじょう攻撃こうげきならばげられる戦線せんせんにともなって発進はっしんする基地きち前方ぜんぽう移動いどうできるため、ばくげきポイントと基地きちでの距離きょりがそうわることはないが、F-117の場合ばあい機密きみつ整備せいび満足まんぞくできる基地きちがそうおおくあるわけもなく、結果けっかとして開戦かいせん当初とうしょから戦闘せんとう終結しゅうけつまでおな基地きち使用しようせざるをなかった。

F-117につきまとう単座たんざ音速おんそく飛行ひこうそして夜間やかん限定げんていという条件じょうけんともに、日々ひびばくげきポイントがとおざかってゆくなかでいちかい攻撃こうげきにかかる時間じかんびていき、最終さいしゅうてきには5あいだえる長時間ちょうじかんミッションになってしまった。

そのGPS誘導ゆうどうシステムなどを充実じゅうじつさせることで負担ふたん軽減けいげんされたものの、パイロット不足ふそくなどの関係かんけいから近年きんねんF-15Eでも同種どうしゅ長時間ちょうじかんミッション問題もんだい発生はっせいしている。

「F-19」とプラスチックモデル[編集へんしゅう]

実機じっきこそ確認かくにんされていなかったが、「アメリカぐん秘密裏ひみつりにステルス戦闘せんとう開発かいはつしており、すで実用じつよう存在そんざいしている」として、その存在そんざい1980年代ねんだいなかばには公然こうぜん秘密ひみつとなっていたため、かく軍事ぐんじ関係かんけい書籍しょせきなどでは「F-19」と仮定かていされたステルス想像そうぞう数種類すうしゅるい発表はっぴょうされていた。共通きょうつうしていたのは、機体きたい各部かくぶ曲線きょくせん構成こうせいされており垂直すいちょく尾翼びよく内側うちがわいているといったてんで、おなロッキードせい軍用ぐんようであるSR-71小型こがたしたようなデザインであった。

テスター/イタレリばんの「F-19のプラモデル」をもとえがかれた"F-19"の3めん
この多少たしょう簡略かんりゃくされているが、一見いっけんしてわかるように実際じっさいのF-117とはまったておらず、共通きょうつうてんがない

「F-19」という一人ひとりあるきをはじめた原因げんいんひとつが、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくイリノイしゅう本拠ほんきょをおく模型もけいメーカー、テスター(Testor)しゃ同社どうしゃのデザイナーによって創作そうさくして模型もけいした[23]、「F-19」のプラスチックせいスケールモデルキット存在そんざいである[24]。このキットは、「アメリカ開発かいはつした極秘ごくひのステルス独自どくじ情報じょうほうげんにより再現さいげんした」とうたわれていた。また、当時とうじつたえられていたステルス技術ぎじゅつ反映はんえいして、「ミサイルなどは機体きたいない搭載とうさいする」、「機体きたい曲線きょくせん構成こうせいされ、まい垂直すいちょく尾翼びよく内側うちがわ傾斜けいしゃしている」といった形状けいじょうをしていた。上記じょうきのようなステルス戦闘せんとうたいする関心かんしん憶測おくそくもあり、このモデルはマスコミなどにはやされ、発売はつばいねんクリスマス商戦しょうせん目玉めだま商品しょうひんとなったことから、ベストセラーとなった。

このモデルは実際じっさいのF-117とはまったていなかったが、これについて記者きしゃ国防総省こくぼうそうしょうのスポークスマンにコメントをもとめたところ、「ある程度ていど航空機こうくうきについての知識ちしきゆうするものならば、この程度ていど形状けいじょう想像そうぞうるだろう」という、肯定こうてい否定ひていもしない返答へんとうであった。この「否定ひてい」されない返答へんとうぞう拍車はくしゃをかけたとされる。この"F-19"について、F-117の開発かいはつおこなっていた時期じきスカンクワークス責任せきにんしゃだったベン・リッチは引退いんたい自著じちょなかで「このインチキ戦闘せんとう社内しゃない内紛ないふんのせいで、ロッキードしゃ機密きみつ保持ほじ問題もんだいがあるとしたアメリカ議会ぎかい公聴こうちょうかいされそうになった」(本人ほんにん出席しゅっせきまぬかれたが、当時とうじのロッキードしゃ社長しゃちょう出席しゅっせきしている)と記載きさいしている。

上述じょうじゅつプラモデルはテスターしゃほか同社どうしゃ提携ていけい関係かんけいにあったイタリアイタレリしゃからも発売はつばいされ、両者りょうしゃ製品せいひんはパッケージ以外いがい同一どういつのものであったが[注釈ちゅうしゃく 5]、イタレリしゃほう世界せかいてき販路はんろひろかったため、このF-19のプラモデルは“イタレリの製品せいひん”として著名ちょめいである。このほか宇宙うちゅう開発かいはつ技術ぎじゅつ企業きぎょう人工じんこう衛星えいせい製造せいぞう手掛てがけるロラールしゃ[注釈ちゅうしゃく 6]広報こうほうようイラストにえがいたものをもとにしたプラスチックモデルキットもモノグラムしゃから発売はつばいされていた。日本にっぽんではアリイがテスター/イタレリのモデルのデザインをもと独自どくじのデザインとして商品しょうひんしたものを発売はつばいしており、同社どうしゃ独自どくじの「訓練くんれんようふくがた」といったバリエーションモデルも発売はつばいされていた。

F-117の公表こうひょう実機じっき資料しりょうもとづいたF-117のモデルキットが航空機こうくうきモデルをあつかかく模型もけいメーカーより発売はつばいされ、上述じょうじゅつの「F-19のプラモデル」はいずれもはいばんもしくは絶版ぜっぱんとなり、商品しょうひんによってはプレミア価格かかく取引とりひきされている。

仕様しよう[編集へんしゅう]

  • 全長ぜんちょう:19.4m
  • 全幅ぜんぷく:13.2m
  • 全高ぜんこう:3.9m
  • 最高さいこう速度そくどM0.85
  • 航続こうぞく距離きょり:1,200km
  • エンジン:F404-GE-F1D2 ターボファン×2
  • 推力すいりょく:4,990kg×2
  • 空虚くうきょ重量じゅうりょう:13,380kg
  • 最大さいだい離陸りりく重量じゅうりょう:23,625kg
  • ペイロード:2,000kg
  • 乗員じょういん:1めい
  • 製造せいぞう単価たんか:3,800まんドル

登場とうじょう作品さくひん[編集へんしゅう]


脚注きゃくちゅう出典しゅってん[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ アメリカヨタカ(New World nighthawks)に由来ゆらいするもので、たかタカ)との関係かんけいい。英名えいめいうGrey nightjarにたる日本にっぽん夜鷹よたかとは同類どうるいではあるが別種べっしゅとりである。
  2. ^ この機体きたいはアメリカ空軍くうぐん納入のうにゅうされるまえにグルームレイクでのテストちゅうにトラブルで墜落ついらくし、現存げんそんしない。
  3. ^ もともと攻撃こうげき:Aナンバーは海軍かいぐん使用しようしており、空軍くうぐんばくげき:Bナンバーを使用しようしていた(1963ねんから空軍くうぐんもAカテゴリーを導入どうにゅう)
  4. ^ もと海軍かいぐんであるA-7攻撃こうげき近接きんせつ航空こうくう支援しえん目的もくてき空軍くうぐん導入どうにゅうすることとなり、その後継こうけいであるA-10にも空軍くうぐんでありながらAナンバーが付与ふよされた
  5. ^ テスターしゃのF-19の生産せいさんはイタレリしゃがイタリア国内こくないおこなっていた。
  6. ^ つづりは"Loral"で、日本にっぽんでは「ローラル」と表記ひょうきされているれいもある。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 52存在そんざいする伝説でんせつのF-117が本当ほんとう引退いんたい
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  5. ^ "Armed Forces Journal. January 1988"
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  7. ^ a b Airpower Journal - Fall 1991 Volume V, No. 3|JIM CUNNINGHAM|"CRACKS IN THE BLACK DIKE SECRECY, THE MEDIA, AND THE F-117A." - "Did Published Reports on the Stealth Fighter Compromise Its Operational Capability? - ウェイバックマシン(2008ねん3がつ6にちアーカイブぶん) ※2022ねん2がつ4にち閲覧えつらん
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  24. ^ ワールドフォトプレス(へん)『ステルス (光文社こうぶんしゃ文庫ぶんこ―ミリタリー・イラストレイテッド)』光文社こうぶんしゃ、1991ねん、51ぺーじISBN 978-4334713843 

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • 『ステルス戦闘せんとう―スカンク・ワークスの秘密ひみつ』ベン・R. リッチ (ちょ)、増田ますだ 興司こうじ (わけ) 講談社こうだんしゃ (1997ねん1がつ) ISBN 4-06-208544-5
  • 『ミリタリー・イラストレイテッド28「ステルス」ワールドフォトプレスへん光文社こうぶんしゃ (1991ねん8がつ) ISBN 4-334-71384-X 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]