Yak-36 (航空機こうくうき)

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Yak-36(Як-36)

Yak-36(ロシア: Як-36ヤーク・トリーッツァチ・シェスチ)は、ソビエト連邦れんぽうヤコヴレフ設計せっけいきょく開発かいはつされた試作しさく垂直すいちょく離着陸りちゃくりく(VTOL)である。

北大西洋きたたいせいよう条約じょうやく機構きこう(NATO)によるNATOコードネームは“Freehand”(フリーハンド)。

概要がいよう[編集へんしゅう]

1950年代ねんだい後半こうはん各国かっこく垂直すいちょく離着陸りちゃくりく(VTOL)の研究けんきゅう開発かいはつさかんにおこなわれるようになると、ソビエトでもそれらVTOLたいする研究けんきゅう開発かいはつはじめられた[1]運用うんよう思想しそうじょう前線ぜんせん仮設かせつした野戦やせん飛行場ひこうじょうから航空機こうくうき発着はっちゃくさせることを重視じゅうししているソビエトぐんにとって、同種どうしゅ機体きたい最適さいてきであるとかんがえられたためである。また、アメリカにたいして機動きどう部隊ぶたい戦力せんりょくおおきくおくれており、本格ほんかくてき固定こていつばさ運用うんよう可能かのう航空こうくう母艦ぼかんいま保有ほゆう出来できていないソビエト海軍かいぐんにとっても、海上かいじょう航空こうくう戦力せんりょくうえおおきな存在そんざいとなると期待きたいされていた。

かく航空機こうくうき設計せっけいきょくなかでもヤコブレフ設計せっけいきょく率先そっせんして研究けんきゅう開発かいはつ着手ちゃくしゅし、試作しさく迎撃げいげき戦闘せんとうであるYak-30改造かいぞうして垂直すいちょく離陸りりく専用せんようのジェットエンジン(リフトエンジン)を延長えんちょうした機体きたい内部ないぶ収納しゅうのうした実験じっけん製作せいさくし、「Yak-30V」の名称めいしょう開発かいはつすすめたが、ソビエト航空こうくう当局とうきょく興味きょうみくことができず、ヤコブレフ設計せっけいきょくではYak-30Vの開発かいはつ一時いちじ中断ちゅうだんし、しゅジェットエンジンのエンジンノズルを可動かどうさせることによって垂直すいちょく離着陸りちゃくりくおこな方式ほうしき機体きたい開発かいはつ着手ちゃくしゅした。

この新型しんがたあんはYak-30VとおなじくYak-30をあらため設計せっけいする方向ほうこうすすめられ、エンジンを並列へいれつに2装備そうびして双発そうはつとし、Lがた可変かへんノズルを装備そうびする機体きたいとしてデザインがまとめられた。

開発かいはつ[編集へんしゅう]

あらたに開発かいはつされた双発そうはつ可変かへんノズルがた垂直すいちょく離着陸りちゃくりく設計せっけい開発かいはつさい優先ゆうせんすすめられ、当局とうきょくによって採用さいようされYak-36(Як-36)として完成かんせいした。設計せっけいあん採用さいようただちに試作しさく製作せいさくめいじられ、Yak-30Vとはことなり改造かいぞうではなく新規しんき製造せいぞうとして地上ちじょう試験しけん専用せんようの1ふくめ4製作せいさくされた。

飛行ひこう試作しさく1963ねん1がつ9にちにはホバリングに成功せいこうし、1964ねん7がつ27にちには滑走かっそうによるはつ飛行ひこうおこなった。1966ねんには試作しさく3号機ごうきがホバリングから水平すいへい飛行ひこうへ、また水平すいへい飛行ひこうからホバリングへの移行いこうによる完全かんぜん垂直すいちょく離着陸りちゃくりく成功せいこうし、ソビエトは垂直すいちょく離着陸りちゃくりく開発かいはつ成功せいこうしたという実績じっせきた。

Yak-36は初期しょき試作しさくいで若干じゃっかん増加ぞうか試作しさくおこなわれ、地上ちじょう基地きち野戦やせん飛行場ひこうじょうほか1123「コンドル」がた航空こうくう巡洋艦じゅんようかん(モスクワきゅうヘリコプター巡洋艦じゅんようかんでの離着陸りちゃくりく運用うんよう試験しけんおこなわれた。1967ねんモスクワ航空こうくうショーはじめて一般いっぱん公開こうかいされ、このさいには主翼しゅよくにロケットだんポッドを装備そうびした“実戦じっせん仕様しよう”で公開こうかいされ、ソビエトが垂直すいちょく離着陸りちゃくりく実用じつようしていることを世界せかいにアピールした。

しかし、垂直すいちょく離着陸りちゃくりくには左右さゆう2のエンジンを完全かんぜん同調どうちょうさせなければいけないため、ホバリング飛行ひこう非常ひじょう不安定ふあんていで、機体きたい前半ぜんはんにジェットエンジンを並列へいれつ装備そうびした機体きたい構造こうぞうぜん下方かほう視界しかいおおきく制限せいげんされていたため、離着陸りちゃくりく危険きけんおおきく、パイロットの評価ひょうかかんばしいものではなかった。垂直すいちょく離陸りりくには燃料ねんりょう消費しょうひりょう膨大ぼうだいなために航続こうぞく距離きょり極端きょくたんみじかく、なによりも燃料ねんりょう満載まんさいすると機体きたいには搭載とうさい余力よりょくほとんのこされておらず、実用じつよう垂直すいちょく離着陸りちゃくりくとはうたっていたものの、「軍用ぐんよう」としての実用じつようめんにはおおきな困難こんなんかかえていた。

このため制式せいしき採用さいようはされたものの本格ほんかくてき量産りょうさん配備はいび見送みおくられることになり、ソビエトぐん当局とうきょくはヤコブレフ設計せっけいきょくたいあらたな垂直すいちょく離着陸りちゃくりく戦闘せんとう開発かいはつめいじ、ほんとYak-30Vの開発かいはつ実績じっせきもとあらたな垂直すいちょく離着陸りちゃくりく戦闘せんとう開発かいはつすすめられることになった。

このあらたな開発かいはつ計画けいかくはYak-36M(のち改名かいめいされYak-38)として完成かんせいしている。

機体きたい[編集へんしゅう]

Yak-36は上述じょうじゅつのように戦後せんごだい1世代せだい単発たんぱつジェット戦闘せんとう設計せっけい発展はってんさせたものであるため、2のエンジンを並列へいれつおさめた機体きたい前半ぜんはん異様いようふとほかMiG-15MiG-17といったソビエトの戦後せんごだい1世代せだいジェット戦闘せんとう類似るいじしている。

“カスケード”と呼称こしょうされたLがたのエンジンノズルは垂直すいちょく離着陸りちゃくりくには90下方かほうけられるようになっており、このほかにエンジン排気はいき一部いちぶりょう主翼しゅよくはしおよ機首きしゅよりブームしきばされた4箇所かしょ補助ほじょ排気はいきノズルから噴出ふんしゅつすることによって機体きたい安定あんていさせて垂直すいちょく離着陸りちゃくりくおこなう。

主翼しゅよくつばさはばみじかクリップドデルタつばさで、胴体どうたい下面かめん前後ぜんご2箇所かしょしゅあし装備そうびするほか両翼りょうよくはしにはたんあししき補助ほじょそなえる。

固定こてい武装ぶそうとして23mm、もしくは30mm機関きかんほう搭載とうさいするほか主翼しゅよくには4箇所かしょのハードポイントがあり、そら対空たいくうミサイル、ばくだん、ロケットだんポッドとう搭載とうさいする予定よていであった。

しょもと[編集へんしゅう]

Yak-36
  • 全長ぜんちょう:17 m
  • 全幅ぜんぷくつばさはば):10.5 m
  • 全高ぜんこう:4.5 m
  • 重量じゅうりょう
    • 空虚くうきょ重量じゅうりょう:4,140 kg
    • 最大さいだい離陸りりく重量じゅうりょう:8,900 kg
  • エンジン:
    • ツマンスキー R-27-300(推力すいりょく 6,350 kgf)×2
  • 最大さいだい速度そくど:1,000 km/h
  • 航続こうぞく距離きょり:370 km(垂直すいちょく離陸りりく
  • 最大さいだい運用うんよう高度こうど:12,000 m(39,350 ft
  • 武装ぶそう:30 mm もしくは23 mm 機関きかんほう予定よてい)、そら対空たいくうミサイル、ばくだんとう

乗員じょういん:1 めい

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ なお、ロシアでは「VTOL」は「ロシア: СВВПСамолет Вертикального Взлета и Посадки垂直すいちょく離陸りりくおよ着陸ちゃくりく航空機こうくうき、の)」と表記ひょうき呼称こしょうされる

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]