コピーレフト

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コピーレフトのシンボル(🄯)としてしばしば使つかわれるアイコン。Cの文字もじ左右さゆうぎゃくになっている。

コピーレフトえい: copyleft)は、著作ちょさくけんえい: copyright)にたいするかんがかたで、著作ちょさくけん保持ほじしたまま、てき著作ちょさくぶつふくめて、すべてのもの著作ちょさくぶつ利用りようさい配布はいふ改変かいへんできなければならないというかんがかたである[1]リチャード・ストールマンフリーソフトウェア運動うんどう一環いっかんとして熱心ねっしんひろめたかんがえである[2]コンピュータプログラムとくバイナリ変換へんかんされることを前提ぜんていとしたソースコードについてのものであったが、そのCC BY-SAなどをもちいてソースコード以外いがい著作ちょさくぶつにも適用てきようしようといううごきがある[3]。なお、1990年代ねんだい前半ぜんはん日本にっぽんにおいて、コピーレフトを「ひだりとなりひとからソフトウェアのコピーをもとめられたさいことわってはならないという意味いみである」と解説かいせつしている一部いちぶ書籍しょせきったがあやまりである。

概念がいねん[編集へんしゅう]

コピーレフトのかんがえでは、著作ちょさくけんしゃはそのコピー(複製ふくせいもの)の受取うけとりじんたいして撤回てっかい出来できないライセンスみとめ、販売はんばいふくさい配布はいふ許可きょかし、翻案ほんあん改変かいへん)されることも可能かのうとする必要ひつようがある[1]ぎゃくに、コピーレフトを利用りようするがわでは、このライセンスのものをコピーや変更へんこうさい配布はいふするときにはこのライセンスをそのまま適用てきようし、それを明確めいかくしめさなければならない。

コピーレフトの定義ていぎをまとめるとつぎのようになる。

  • 著作ちょさくぶつ利用りようコピーさい配布はいふ翻案ほんあん制限せいげんしない
  • 改変かいへんしたもの(てき著作ちょさくぶつ)のさい配布はいふ制限せいげんしない
  • てき著作ちょさくぶつ利用りよう、コピー、さい配布はいふ翻案ほんあん制限せいげんしてはならない
  • コピー、さい配布はいふさいには、その利用りよう翻案ほんあん制限せいげんいよう、すべての情報じょうほうふくめる必要ひつようがある(ソフトウェアではソースコードふくむ)
  • 翻案ほんあん制限せいげんされない反面はんめん原著げんちょ作物さくもつてき著作ちょさくぶつにも同一どういつのコピーレフトのライセンスを適用てきようし、これを明記めいきしなければならない

コピーレフトという概念がいねんについて、フリーソフトウェア財団ざいだんおよびどう代表だいひょうリチャード・ストールマンフリーソフトウェア運動うんどう一環いっかんとして普及ふきゅう推進すいしんしている[2]

コピーレフト以外いがいにもフリーソフトウェアのライセンスは数多かずおお存在そんざいし、BSDライセンスMIT licenseなどの、オープンソースソフトウェア適用てきようされているものがある。これらはてき著作ちょさくぶつへのライセンス適用てきようや、使用しよう可能かのうなソースコードのコピーを義務ぎむづけていないため、コピーレフトではない[4]。よく議論ぎろんされることに、これらのライセンスとコピーレフトのどちらがより自由じゆうなライセンスであるのか?というものがある[よう出典しゅってん]。これは視点してん問題もんだいで、のライセンスでは制作せいさくしゃなど、現在げんざいのライセンス保持ほじしゃ自由じゆう最大限さいだいげんにしたもので、コピーレフトでは今後こんごのライセンス保持ほじしゃ自由じゆう最大限さいだいげんにしたものだとかんがえることができる[よう出典しゅってん]

歴史れきしてき背景はいけい[編集へんしゅう]

リチャード・ストールマンcopyleft というかたりったのは、1984ねんドン・ホプキンスリチャード・ストールマンてておくった「Copyleft — all rights reversed」(コピーレフト―すべてのright(ここではみぎ)はさかさにされている)というフレーズに由来ゆらいする[5]

これは著作ちょさくけん表示ひょうじによく使つかわれる「Copyright — all rights reserved」(著作ちょさくけんすべての権利けんり留保りゅうほされている)というのもじりである。このあるしゅのミームは、1980ねんごろのコンピュータ文化ぶんか(1960年代ねんだいまれのミニコンピュータ文化ぶんかと70年代ねんだいまれのマイクロコンピュータ文化ぶんか渾然こんぜんとしていた)のうらはぐくまれていたもので、1976ねん発表はっぴょうされたLi-Chen WangによるTiny BASICインタプリタのソースコードにられるのが、今日きょうられている確認かくにんれいである[6][7]

rightに「ただしい」という意味いみがあることにけてそれをぎゃくにした「all wrongs reversed」(すべての間違まちがいはさかさにされている)というバージョンもある[よう出典しゅってん]

思想しそうてき背景はいけい[編集へんしゅう]

著作ちょさくぶつ利用りようけん共有きょうゆう[編集へんしゅう]

インセンティヴろんもとづく著作ちょさくけん制度せいどという議論ぎろんはあるものの、著作ちょさくぶつ特定とくてい多数たすうもの利用りようできるようにすることは、著作ちょさくぶつをより発展はってんさせるための有用ゆうよう手段しゅだんとなる場合ばあいがある。これは典型てんけいてき商業しょうぎょうソフトウェアが制作せいさく流布るふされるさいに、複製ふくせい内的ないてき構造こうぞう研究けんきゅうリバースエンジニアリング)や改変かいへんきんじられているために、既存きそんのソフトウェアを改良かいりょうしてあたらしいよりすぐれたソフトウェアを開発かいはつする可能かのうせいざされている、というてんかんがえるとかりやすい。あるいは、インターネットささえる基礎きそてき技術ぎじゅつはソフトウェアを共有きょうゆう改良かいりょううことで発展はってんしてきたということをかんがえてもい。

一般いっぱんに、芸術げいじゅつ作品さくひん評論ひょうろん解説かいせつぶん、コンピュータプログラムなどをふく著作ちょさくぶつは、その作者さくしゃ著作ちょさくけんっている。そのため、作者さくしゃ許可きょかなければ改変かいへんしたり、(個人こじんてきなバックアップをのぞいて)複製ふくせいしたり、配布はいふ販売はんばいすることはできない。しかし、このような制度せいど枠組わくぐみは、作品さくひん共有きょうゆうして多人数たにんずう共同きょうどうてき創造そうぞう活動かつどうおこなさいにはかえってさまたげとなる場合ばあいがある。

そのためにまず最初さいしょおこなわれたのは、明示めいじてき著作ちょさくけん放棄ほうきしたり(パブリックドメイン)、放棄ほうきはしないが「だれでも自由じゆう使つかってい」と宣言せんげんしたり、というかたち共有きょうゆうする方法ほうほうであった。

ところが、本当ほんとうだれでも自由じゆう使つかえることにしてしまうと、共有きょうゆう発展はってんという作者さくしゃ意図いとはんするような利用りようおこなわれることもある。パブリックドメインの状態じょうたいにある著作ちょさくぶつ改変かいへんした場合ばあいてき著作ちょさくぶつパブリックドメインになるわけではなく、改変かいへんしゃ著作ちょさくけん帰属きぞくすることになるためである。

このような問題もんだいをストールマンが経験けいけんしたさいに、コピーレフトという発想はっそうまれた。シンボリックスしゃから、ストールマンが作成さくせいしたLISPインタプリタを使つかいたいと打診だしんされたさい、ストールマンはかれ作品さくひんパブリックドメインはん提供ていきょうした。シンボリックスしゃはそのプログラムを拡張かくちょうしてさら強力きょうりょくなものにした。そして、かれのもともとのプログラムにたいして拡張かくちょうした部分ぶぶんせてくれるようもとめたときに、シンボリックスしゃはそれを拒否きょひした。これは法的ほうてきにはどうすることもできなかった。

共有きょうゆう状態じょうたい維持いじ拡大かくだい[編集へんしゅう]

このような経緯けいいのため、以降いこうのソフトウェアの公開こうかいさいしてストールマンは、著作ちょさくけん主張しゅちょう利用りようするさいまりをライセンスにくようになり、これがコピーレフトへとつながっていった。

つまり、利用りようけん共有きょうゆうするための仕組しくみとして、著作ちょさくけん放棄ほうきするのではなく、ライセンス(利用りよう許諾きょだく)のかたち共有きょうゆう共同きょうどうてき創造そうぞう活動かつどう保護ほごする方法ほうほうる。すなわち、「著作ちょさくけんわたしゆうしていて複製ふくせい改変かいへん配布はいふ販売はんばい)にはわたし許可きょかがいるのだが、ソフトウェアを共有きょうゆうして発展はってんさせるという意図いとはんしないならば、いつでもだれたいしても利用りよう許可きょかする」という形態けいたいる。

そのよう仕組しくみには、

  • 「コピー/改変かいへんした共有きょうゆうぶつ共有きょうゆうてき状態じょうたいから、独占どくせんてき状態じょうたい移行いこうさせること」を一定いってい条件じょうけんもとだれにでもゆるすパブリックドメインにちか仕組しくみと、
  • 独占どくせんてき状態じょうたいへの移行いこうゆるさない」よりつよ共有きょうゆうてき仕組しくみがある。

後者こうしゃの「独占どくせんてき状態じょうたいへの移行いこうゆるさない」つよ共有きょうゆう仕組しくみは、とくフリーソフトウェア財団ざいだん (FSF) によって(コピーライトたいする)コピーレフトばれている。 しかしながら、ライセンスにはんするかたち利用りようされ、著作ちょさくけん侵害しんがいされる事例じれいたない。

法的ほうてき技術ぎじゅつてき背景はいけい[編集へんしゅう]

ライセンスのコピーライト制約せいやく強度きょうどひだりパブリックドメインゆるく、みぎ企業きぎょう秘密ひみつきびしい

コピーレフトライセンス構成こうせいするときに基本きほんとなる法的ほうてきかんがかたは、独占どくせんてきなライセンスを構成こうせいする場合ばあいおなじく、著作ちょさくぶつさい配布はいふ制限せいげんもうけるコピーライトである。この制限せいげんきびしくして著作ちょさくぶつ作成さくせいまで阻害そがいしているのが独占どくせんてきなライセンスであり、著作ちょさくぶつのライセンスの変質へんしつゆるし、自己じこのライセンスの適用てきようれい縮小しゅくしょうさい生産せいさんされるほどゆるいのがパブリックドメインである。

コピーレフトにいては、以降いこう著作ちょさくぶつにもいち著作ちょさくぶつ同一どういつのライセンスが適用てきようされる という性質せいしつ(「ウイルスせい」「ライセンス感染かんせん」などとばれる)が確保かくほされるように、さい配布はいふ制限せいげんをコピーライトによってもうける。この「ウイルスせい」「ライセンス感染かんせん」の性質せいしつにより、自己じこ複製ふくせい能力のうりょく獲得かくとくした生物せいぶつ増殖ぞうしょくするのと同様どうように、自己じこのライセンスを拡大かくだいさい生産せいさんしてひろげるちからをコピーレフトはる。

その法的ほうてき強制きょうせいりょく根拠こんきょ独占どくせんてきなライセンスとおなじくコピーライトであり、コピーライトしにはコピーレフトは効力こうりょくない。独占どくせんてきなライセンス以外いがい使用しようほうしめし、コピーライトのあらたな可能かのうせい発見はっけんしたこの方法ほうほうは「コピーライト・ハック」ともばれる[8]

しかし以上いじょうはある意味いみで、「ほう(ルール)に、その精神せいしんにではなく、文字通もじどおりにしたがう」という行為こういであり、もし将来しょうらいかりに「コピーレフトこそがただしい」ということになって現行げんこう著作ちょさくけん制度せいど部分ぶぶんてき解体かいたいされたとするならば、それと同時どうじ瓦解がかいする。したがって、ジャーゴンファイルの「hack」のこう[9]だい1にある「a quick job that produces what is needed, but not well.」そのとおりの意味いみの「ハック」ともえる。

ライセンス種別しゅべつ[編集へんしゅう]

コピーレフトのかんがえが導入どうにゅうされているライセンスには以下いかのようなものがある。

コピーレフトではないライセンスのれいとしては以下いかのものがある。

また、コピーレフトの概念がいねんプログラム以外いがいのものに適用てきようしているライセンスには以下いかのようなものがある。

文字もじコード[編集へんしゅう]

記号きごう Unicode JIS X 0213 文字もじ参照さんしょう 名称めいしょう
🄯 U+1F12F - 🄯
🄯
COPYLEFT SYMBOL

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ 現行げんこうQtはGPLv3と商用しょうようライセンスなどとのマルチライセンス形式けいしき採用さいようしている。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b Free Software Foundation (2018ねん1がつ1にち). “What is Copyleft?”. 2018ねん2がつ9にち閲覧えつらん
  2. ^ a b Richard Stallman, Free Software, and Copyleft”. University of California, Santa Barbara. 2018ねん3がつ1にち閲覧えつらん
  3. ^ Attribution-ShareAlike 4.0 International (CC BY-SA 4.0)”. Creative Commons. Creative Commons. 2015ねん8がつ14にち閲覧えつらん
  4. ^ GNU Porject (2018ねん2がつ10日とおか). “Various Licenses and Comments about Them”. 2018ねん2がつ9にち閲覧えつらん
  5. ^ Stallman, Richard (2008ねん1がつ21にち). “About the GNU Project”. Free Software Foundation. 2008ねん8がつ23にち閲覧えつらん
  6. ^ Wang, Li-Chen (May 1976). “Palo Alto Tiny BASIC”. Dr. Dobb's Journal of Computer Calisthenics & Orthodontia, Running Light Without Overbyte 1 (5): 12–25.  (NB. Source code begins with the following six lines. "TINY BASIC FOR INTEL 8080; VERSION 1.0; BY LI-CHEN WANG; 10 JUNE, 1976; @COPYLEFT; ALL WRONGS RESERVED". The June date in the May issue is correct. The magazine was behind schedule, the June and July issues were combined to catch up.)
  7. ^ Rauskolb, Roger (December 1976). “Dr. Wang's Palo Alto Tiny BASIC”. Interface Age 2 (1): 92–108.  (NB. The source code begins with the following nine lines: "TINY BASIC FOR INTEL 8080; VERSION 2.0; BY LI-CHEN WANG; MODIFIED AND TRANSLATED TO INTEL MNEMONICS; BY ROGER RAUSKOLB; 10 OCTOBER, 1976 ; @COPYLEFT; ALL WRONGS RESERVED")
  8. ^ The essential freedoms”. OCL4Ed. 2018ねん3がつ1にち閲覧えつらん
  9. ^ http://catb.org/jargon/html/H/hack.html

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]