著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかん

世界せかい各国かっこくを著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんの長ながさ別べつに分類ぶんるいした地図ちず

著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかん（ちょさくけんのほごきかん）とは、著作ちょさく権けんの発生はっせいから消滅しょうめつまでの期間きかんをいう。

この期間きかんにおいて著作ちょさく権けんは保護ほごされ、著作ちょさく権けん者しゃは権利けんりの対象たいしょうである著作ちょさく物ぶつを、原則げんそくとして独占どくせん排他はいた的てきに利用りようすることができる。具体ぐたい的てきな期間きかんは各国かっこくの国内こくない法令ほうれいに委ゆだねられているが、時代じだいが下くだるごとに延長えんちょうされる傾向けいこうにあり、今日きょうでは著作ちょさく者しゃの生存せいぞん期間きかん及および著作ちょさく者しゃの死後しご70年ねんとする国くにが多数たすうである。なお、世界せかい181か国こく（2022年ねん現在げんざい）が締結ていけつする文学ぶんがく的てき及および美術びじゅつ的てき著作ちょさく物ぶつの保護ほごに関かんするベルヌ条約じょうやく（ベルヌ条約じょうやく）が、著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんとして「著作ちょさく者しゃの生存せいぞん期間きかん及および著作ちょさく者しゃの死後しご50年ねん」（同どう条約じょうやく7条じょう(1)）を原則げんそくとしていることから、これを下回したまわる期間きかんを設定せっていしている国くにはほとんど存在そんざいしない。

なお、実演じつえんやレコード、放送ほうそうなどの著作ちょさく隣接りんせつ権けんに係かかる保護ほご期間きかんは、著作ちょさく権けんに係かかるそれと比較ひかくして各国かっこくの国内こくない法ほうや条約じょうやくにおける取扱とりあつかいに差異さいがあり法的ほうてき根拠こんきょを異ことにする。国際こくさい条約じょうやくとしては、実演じつえん家か、レコード製作せいさく者しゃ及および放送ほうそう機関きかんの保護ほごに関かんする国際こくさい条約じょうやく（略称りゃくしょう：実演じつえん家か等とう保護ほご条約じょうやく、ローマ条約じょうやく）と許諾きょだくを得えないレコード複製ふくせいからのレコード製作せいさく者しゃの保護ほごに関かんする条約じょうやく（略称りゃくしょう：レコード保護ほご条約じょうやく）がある。

総説そうせつ

著作ちょさく権けんの意義いぎと保護ほご期間きかん

著作ちょさく者しゃの権利けんりの保護ほごの目的もくてきは、大おおきく分わけて二ふたつの立場たちばから説明せつめいされることが多おおい。一ひとつは著作ちょさく物ぶつに対たいする著作ちょさく者しゃの自然しぜん権けんとして捉とらえる立場たちばであり、ヨーロッパを中心ちゅうしんとした大陸たいりく法ほう圏けんの国くににおいて発展はってんしてきた考かんがえ方かたである。もう一ひとつは、著作ちょさく者しゃに著作ちょさく物ぶつの独占どくせん的てき利用りよう権けんを与あたえることによって、著作ちょさく者しゃに正当せいとうな利益りえきが分配ぶんぱいされることを促うながし、その結果けっかとして創作そうさく活動かつどうへのインセンティブを高たかめることをその存在そんざいする理由りゆうとする考かんがえ方かたであり、イギリスやアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくを中心ちゅうしんとした英えい米べい法ほう圏けんに由来ゆらいする考かんがえ方かたである。

期間きかんの設定せっていに際さいしては、著作ちょさく物ぶつの独占どくせん利用りようによる著作ちょさく者しゃの創作そうさく意欲いよくの向上こうじょうという社会しゃかい的てき利益りえきと、著作ちょさく物ぶつの利用りよう促進そくしんによる社会しゃかい的てき利益りえきの均衡きんこうを図はかるために、著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんは適切てきせつな期間きかんに調整ちょうせいされるべきである。そして、この「適切てきせつな期間きかん」をめぐってさまざまな立場たちばが存在そんざいすることになる。

著作ちょさく権けん消滅しょうめつの特徴とくちょう

起算きさん

著作ちょさく権けんの消滅しょうめつ時期じきを定さだめる法制ほうせいには、死亡しぼう時じ起算きさん主義しゅぎと公表こうひょう時じ起算きさん主義しゅぎがある。死亡しぼう時じ起算きさん主義しゅぎは著作ちょさく者しゃの死亡しぼう時じを起算きさん時じとして著作ちょさく権けんの消滅しょうめつ時期じきを決定けっていする主義しゅぎであり、公表こうひょう時じ起算きさん主義しゅぎは、著作ちょさく物ぶつの公表こうひょう日びを起算きさん日びとして著作ちょさく権けんの消滅しょうめつ時期じきを決定けっていする主義しゅぎである。

ベルヌ条約じょうやくは死亡しぼう時じ起算きさん主義しゅぎを原則げんそくとしている（ベルヌ条約じょうやく7条じょう(1)）。ただし、無名むめいや変名へんめい、団体だんたい名義めいぎの著作ちょさく物ぶつについては、著作ちょさく者しゃの死亡しぼう時じを客観きゃっかん的てきに把握はあくすることが困難こんなんであるため、公表こうひょう時じ起算きさんを適用てきようすることを容認ようにんしている（ベルヌ条約じょうやく7条じょう(4)）。また、映画えいがの著作ちょさく物ぶつについても、公表こうひょう時じ起算きさんを適用てきようすることを容認ようにんしている（ベルヌ条約じょうやく7条じょう(2)）。

保護ほご期間きかん

ベルヌ条約じょうやく7条じょう(1)によれば、加盟かめい国こくは、著作ちょさく権けんの消滅しょうめつまでの期間きかんを最低さいていでも著作ちょさく者しゃの死亡しぼうから50年ねんとしなければならない。著作ちょさく者しゃの死後しご50年ねんまで著作ちょさく権けんを保護ほごする趣旨しゅしは、著作ちょさく者しゃ本人ほんにんおよびその子孫しそん2代だいまでを保護ほごするためであるとされている。

もっとも、より長ながい保護ほご期間きかんを与あたえることも認みとめられている（ベルヌ条約じょうやく7条じょう(6)）ことから、今日きょうでは多数たすうの加盟かめい国こくが様々さまざまな要因よういんによって期間きかんを延長えんちょうしており、原則げんそく通どおり50年ねんの保護ほご期間きかんを設定せっていしている国くには少数しょうすう派はになりつつある。なお、ベルヌ条約じょうやくにおいては保護ほご期間きかんの延長えんちょうの上限じょうげんについての記述きじゅつは存在そんざいしない。

条約じょうやく

文学ぶんがく的てき及および美術びじゅつ的てき著作ちょさく物ぶつの保護ほごに関かんするベルヌ条約じょうやく

文学ぶんがく的てき及および美術びじゅつ的てき著作ちょさく物ぶつの保護ほごに関かんするベルヌ条約じょうやく7条じょうは、加盟かめい国こくが定さだめるべき著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんの要件ようけんを以下いかのとおり規定きていしている。ただし、加盟かめい国こくは、より長期間ちょうきかんの保護ほご期間きかんを認みとめることができる（ベルヌ条約じょうやく7条じょう(6)）。

1. 著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかんを、著作ちょさく者しゃの生存せいぞん期間きかんおよび著作ちょさく者しゃの死後しご50年ねんとする（7条じょう(1)）。
2. 映画えいがの著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかんを、公衆こうしゅうへの提供ていきょう時じから50年ねん、またはこの期間きかんに公表こうひょうされないときは、製作せいさく時じから50年ねんとすることができる（7条じょう(2)）。
3. 無名むめいまたは変名へんめいの著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかんは、公衆こうしゅうへの提供ていきょう時じから50年ねんで満了まんりょうする。ただし、この期間きかん内ないに、著作ちょさく者しゃが用もちいた変名へんめいが、その著作ちょさく者しゃを示しめすことが明あきらかになったとき、無名むめいまたは変名へんめいの著作ちょさく者しゃがその著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく者しゃであることを明あきらかにしたときは、著作ちょさく者しゃの死後しご50年ねんとする（7条じょう(4)）。
4. 写真しゃしんの著作ちょさく物ぶつおよび応用おうよう美術びじゅつの著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかんは、各かく同盟どうめい国こくが独自どくじに定さだめることができる。ただし、保護ほご期間きかんは、著作ちょさく物ぶつの製作せいさく時じから25年ねんより短みじかくしてはならない（7条じょう(4)）。
5. 著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかんは、著作ちょさく者しゃの死亡しぼうおよび上記じょうきの事実じじつ（公衆こうしゅうへの提供ていきょう、製作せいさく）が発生はっせいした時ときから始はじまる。ただし、これらの事実じじつが発生はっせいした年としの翌年よくねんの1月がつ1日にちから計算けいさんする（7条じょう(5)）。
6. 著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかんは、保護ほごが要求ようきゅうされる同盟どうめい国こくの法令ほうれいが定さだめるところによる。ただし、その国くにの法令ほうれいに別段べつだんの定さだめがない限かぎり、保護ほご期間きかんは、著作ちょさく物ぶつの本国ほんごくにおいて定さだめられる保護ほご期間きかんを超こえることはない（相互そうご主義しゅぎ）（7条じょう(8)）。

著作ちょさく権けんに関かんする世界せかい知的ちてき所有しょゆう権けん機関きかん条約じょうやく

著作ちょさく権けんに関かんする世界せかい知的ちてき所有しょゆう権けん機関きかん条約じょうやく（WIPO著作ちょさく権けん条約じょうやく）の締約ていやく国こくは、ベルヌ条約じょうやく1条じょう〜21条じょうの規定きていを遵守じゅんしゅしなければならないことを規定きていし（WIPO著作ちょさく権けん条約じょうやく1条じょう(4)）、著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかんに関かんするベルヌ条約じょうやく7条じょうの規定きていもその中なかに含ふくまれる。しかし、写真しゃしんの著作ちょさく物ぶつについては、ベルヌ条約じょうやく7条じょう(4)の規定きていの適用てきようを除外じょがいしている（WIPO著作ちょさく権けん条約じょうやく9条じょう）。したがって、WIPO著作ちょさく権けん条約じょうやくの締約ていやく国こくは、写真しゃしんの著作ちょさく物ぶつに対たいして、他たの一般いっぱん著作ちょさく物ぶつと同期どうき間あいだの保護ほご期間きかんを与あたえなければならない。

日本にっぽん国こくも、WIPO著作ちょさく権けん条約じょうやく9条じょうの規定きていに倣ならう形かたちで、写真しゃしんの著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかんを公表こうひょう後ご50年ねんまでとしていた著作ちょさく権けん法ほう55条じょうを、1996年ねん12月の著作ちょさく権けん法ほう改正かいせいによって削除さくじょした。

知的ちてき所有しょゆう権けんの貿易ぼうえき関連かんれんの側面そくめんに関かんする協定きょうてい

知的ちてき所有しょゆう権けんの貿易ぼうえき関連かんれんの側面そくめんに関かんする協定きょうてい（世界せかい貿易ぼうえき機関きかんを設立せつりつするマラケシュ協定きょうてい附属ふぞく書しょ1C、TRIPS協定きょうてい）は、著作ちょさく権けんを含ふくむ知的ちてき財産ざいさん権けんの保護ほごに関かんして世界せかい貿易ぼうえき機関きかん (WTO) 加盟かめい国こくが遵守じゅんしゅすべき条件じょうけんを定さだめている。

まず、TRIPS協定きょうてい9条じょう(1)は、WTO加盟かめい国こくがベルヌ条約じょうやく1条じょう〜21条じょうの規定きていを遵守じゅんしゅしなければならないことを規定きていし、その中なかには7条じょうも含ふくまれる。したがって、WTO加盟かめい国こくは、ベルヌ条約じょうやくが定さだめる著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんの要件ようけんをまず遵守じゅんしゅしなければならない。

さらに、TRIPS協定きょうてい12条じょうは、著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかんが自然人しぜんじんの生存せいぞん期間きかんに基もとづいて計算けいさんされない場合ばあいの扱あつかいを規定きていしている。同どう条じょうによれば、WTO加盟かめい国こくは、著作ちょさく物ぶつの公表こうひょうの年としの終おわりから少すくなくとも50年間ねんかん（著作ちょさく物ぶつの製作せいさくから50年ねん以内いないに公表こうひょうが行おこなわれない場合ばあいには、製作せいさくの年としの終おわりから少すくなくとも50年間ねんかん）、著作ちょさく物ぶつを保護ほごしなければならない。

各国かっこくの状況じょうきょう

「世界せかい各国かっこくの著作ちょさく権けん保護ほご期間きかんの一覧いちらん」および「著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんにおける相互そうご主義しゅぎ」も参照さんしょう

世界せかい各国かっこくにおける著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかん、および保護ほご期間きかん延長えんちょうに関連かんれんする法ほう改正かいせいの動向どうこうについて概説がいせつする。なお、2007年ねん1月がつ現在げんざいの世界せかい最長さいちょうはメキシコの「100年ねん」であり、以下いかコートジボワール（99年ねん）、コロンビア（80年ねん）、ホンジュラス・グアテマラ・セントビンセントおよびグレナディーン諸島しょとう・サモア（各かく75年ねん）と続つづく。

欧州おうしゅう

詳細しょうさいは「著作ちょさく権けん法ほう (欧州おうしゅう連合れんごう)」を参照さんしょう

1993年ねんの欧州おうしゅう連合れんごう域内いきないにおける著作ちょさく権けん保護ほご期間きかんの調和ちょうわに関かんする指令しれいにより義務付ぎむづけられていることから、著作ちょさく者しゃの死後しご70年ねんとしている国くにが多数たすうを占しめる。その背景はいけいには、20世紀せいき半なかばにドイツでクラシック作曲さっきょく家かの子孫しそんたち（その多おおくは、作曲さっきょく家かではない）が延長えんちょう運動うんどうを行おこなった結果けっか、1965年ねんよりドイツにおいて死後しご70年ねんが採用さいようされ、EU指令しれいにおいてもドイツの保護ほご期間きかんが基準きじゅんとされたことが大おおきいといわれる。その一方いっぽう、EUでは著作ちょさく隣接りんせつ権けんを公表こうひょう後ご50年ねんから延長えんちょうすることについては2004年ねんに断念だんねんしている。

イギリス

詳細しょうさいは「イギリスにおける著作ちょさく権けん法ほう」を参照さんしょう

著作ちょさく者しゃの生存せいぞん期間きかんおよび死後しご70年ねんまでを保護ほご期間きかんの原則げんそくとする。

1996年ねん1月がつ1日にちまでは死後しご50年ねんまでであったが、1995年ねんの「著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんと実演じつえん家かの権利けんりに関かんする規則きそく」（The Duration of Copyright and Rights in Performances Regulations 1995、以下いか本節ほんぶしでは「1995年ねん規則きそく」）の施行しこうで、ドイツが用もちいていた保護ほご期間きかんの死後しご70年間ねんかんへと変更へんこうされることになった。なお、この変更へんこうは遡及そきゅう適用てきようされ、かつての法ほうによれば保護ほご期間きかんが満了まんりょうしていた著作ちょさく物ぶつの一部いちぶが著作ちょさく権けんを回復かいふくした。共同きょうどう著作ちょさく物ぶつは最後さいごに死亡しぼうした共同きょうどう著作ちょさく者しゃを起点きてんに、無名むめいの著作ちょさく物ぶつは公表こうひょう時じ（公表こうひょうされなかった場合ばあいは創作そうさく時じ）を起点きてんに算出さんしゅつする。

映画えいがの著作ちょさく物ぶつは、1956年ねん著作ちょさく権けん法ほうにおいては初演しょえん（上演じょうえんされなかった場合ばあいは1938年ねん映画えいが法ほう (Cinematograph Films Act 1938) の登録とうろく年ねん）の翌年よくねんから50年ねん存続そんぞくしていたが、1995年ねん規則きそくで改定かいていされ、最後さいごの主要しゅような映画えいが制作せいさく者しゃ（制作せいさく者しゃ・脚本きゃくほん家か・台本だいほん家か・作曲さっきょく家か）死後しご70年ねんに延長えんちょうされた。主要しゅような映画えいが制作せいさく者しゃなき映画えいがの著作ちょさく権けんは初演しょえん後ご70年ねん（上演じょうえんされなかった場合ばあいは制作せいさく後ご70年ねん）存続そんぞくする。

コンピュータを使つかって制作せいさくされた著作ちょさく物ぶつや録音ろくおんの著作ちょさく物ぶつは、制作せいさく後ご50年ねん存続そんぞくする。ただし、録音ろくおんの著作ちょさく物ぶつが前述ぜんじゅつ保護ほご期間きかんに発売はつばいされた場合ばあいは発売はつばい年ねんが起点きてんとなる。放送ほうそうもこれら著作ちょさく物ぶつと同おなじ保護ほご期間きかんを採用さいようしている。

イギリス法ほうでは活版かっぱんの配列はいれつ・工業こうぎょう品ひんの意匠いしょう（日本にっぽんでは意匠いしょう法ほうで保護ほごされる）をも保護ほご対象たいしょうとしており、その期間きかんは商品しょうひんの販売はんばいから25年ねんである。

以上いじょうに挙あげた著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく者しゃ人格じんかく権けんは著作ちょさく権けんと同おなじ期間きかんだけ存続そんぞくする。

スペイン

著作ちょさく者しゃの生存せいぞん期間きかんおよび死後しご70年ねんまでを保護ほご期間きかんの原則げんそくとする。

1879年ねんに保護ほご期間きかんを死後しご80年ねんまでと規定きていしたが、1987年ねんに死後しご60年ねんに短縮たんしゅくし、1993年ねんのEU指令しれいに基もとづき1995年ねんに死後しご70年ねんに再さい延長えんちょうした。1987年ねんにおける保護ほご期間きかん短縮たんしゅくは、ベルヌ条約じょうやく加盟かめい国こくでは唯一ゆいいつの事例じれいであるとされる。なお、保護ほご期間きかん短縮たんしゅくにともなう経過けいか措置そちでは改正かいせい法ほう施行しこう時じに生存せいぞんしている著作ちょさく者しゃが既すでに公表こうひょうしている著作ちょさく物ぶつには短縮たんしゅくされた保護ほご期間きかんが適用てきようされる一方いっぽう、既すでに故人こじんである著作ちょさく者しゃについては経過けいか措置そちとして旧法きゅうほうにおける死後しご80年間ねんかんの規定きていが維持いじされている。そのため、パブロ・ピカソ（1973年ねん没ぼつ）の保護ほご期間きかんは死後しご80年ねんの2053年ねんまでである一方いっぽう、サルバドール・ダリ（1989年ねん没ぼつ）の保護ほご期間きかんは死後しご70年ねんの2059年ねんまでである。

フランス

詳細しょうさいは「著作ちょさく権けん法ほう (フランス)#著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかん」を参照さんしょう

著作ちょさく者しゃの生存せいぞん期間きかんおよび死後しご70年ねんまでを保護ほご期間きかんの原則げんそくとする。

1997年ねん3月27日にち制定せいていの改正かいせい法ほうによって延長えんちょうされるまでは死後しご50年ねんまでであった。

ポルトガル

著作ちょさく者しゃの生存せいぞん期間きかんおよび死後しご70年ねんまでを保護ほご期間きかんの原則げんそくとする。

1948年ねんのベルヌ条約じょうやくブラッセル改正かいせいに伴ともなう調査ちょうさでは保護ほご期間きかんを「無む期限きげん」と定さだめていたことが知しられているが、この規定きていは1971年ねんのパリ改正かいせいまでに撤回てっかいされている。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく

「著作ちょさく権けん法ほう (アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく)#米国べいこく内法うちのりの主おもな改正かいせい点てん」も参照さんしょう

1978年ねん1月がつ1日にち以降いこうに創作そうさくされた著作ちょさく物ぶつについては、著作ちょさく者しゃの生存せいぞん期間きかんおよび死後しご70年ねんまでを保護ほご期間きかんの原則げんそくとする（合衆国がっしゅうこく法典ほうてん第だい17編へん第だい302条じょう 17 U.S.C. § 302(a)）。無名むめい著作ちょさく物ぶつ、変名へんめい著作ちょさく物ぶつまたは職務しょくむ著作ちょさく物ぶつの場合ばあい、最初さいしょの発行はっこう年ねんから95年間ねんかん、または創作そうさく年ねんから120年間ねんかんのいずれか短みじかい期間きかんだけ存続そんぞくする（17 U.S.C. § 302(c)前段ぜんだん）。ただし、この期間きかん内ないに無む名著めいちょ作物さくもつまたは変名へんめい著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく者しゃが記録きろくから明あきらかとなった場合ばあいは、保護ほご期間きかんは原則げんそくどおり著作ちょさく者しゃの死後しご70年ねんまでとなる（同どう後段こうだん）。

著作ちょさく権けん延長えんちょう法ほう

詳細しょうさいは「著作ちょさく権けん延長えんちょう法ほう」を参照さんしょう

1976年ねん著作ちょさく権けん法ほう (Copyright Act of 1976) の規定きていでは、著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんは著作ちょさく者しゃの死後しご50年ねんまで（最初さいしょの発行はっこう年ねんから75年ねんまで）とされていた。これを20年ねん延長えんちょうし、現在げんざいの保護ほご期間きかんである死後しご70年ねんまで（最初さいしょの発行はっこう年ねんから95年ねんまで）とした改正かいせい法ほうが、1998年ねんに成立せいりつした「ソニー・ボノ著作ちょさく権けん保護ほご期間きかん延長えんちょう法ほう (Sonny Bono Copyright Term Extension Act, CTEA)」である。「ソニー・ボノ」の名称めいしょうは、カリフォルニア州しゅう選出せんしゅつの共和党きょうわとう下院かいん議員ぎいんで、この法案ほうあんの成立せいりつに中心ちゅうしん的てき役割やくわりを果はたしたソニー・ボノ にちなむ。

1999年ねん1月がつ11日にち、元もとプログラマーであるエリック・エルドレッドは、CTEAがアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく憲法けんぽう1条じょう8節せつ8項こう（特許とっきょ、著作ちょさく権けん）及および修正しゅうせい1条じょう（表現ひょうげんの自由じゆう）に違反いはんするとして、コロンビア特別とくべつ区く連邦れんぽう地方裁判所ちほうさいばんしょに提訴ていそした（エルドレッド対たいアシュクロフト事件じけん）。しかし、2003年ねん1月がつ15日にち、合衆国がっしゅうこく最高裁判所さいこうさいばんしょは、CTEAが合憲ごうけんであるとの最終さいしゅう判断はんだんを示しめした。

日本にっぽん

「著作ちょさく権けん法ほう」も参照さんしょう

著作ちょさく者しゃの生存せいぞん期間きかんおよび死後しご70年ねんまでを保護ほご期間きかんの原則げんそくとする。

ベルヌ条約じょうやく加盟かめいに伴ともない日本にっぽんに初はじめて著作ちょさく権けん法ほうが導入どうにゅうされた1899年ねん当時とうじは、保護ほご期間きかんは死後しご30年ねんであった。ただし、無名むめいまたは周知しゅうちではない変名へんみょうの著作ちょさく物ぶつ、および団体だんたい名義めいぎの著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんは、公表こうひょう後ごないし創作そうさく後ご30年ねんまでであった。その後ご数すう度どの法ほう改正かいせいにより少すこしずつ延長えんちょうされ、1969年ねんにはこれらの期間きかんは38年ねんまでとなっていた。1970年ねんの著作ちょさく権けん法ほう全面ぜんめん改正かいせいにより死後しご50年ねんまでに延長えんちょうされた。2004年ねん1月がつ1日にち以降いこうは映画えいがの著作ちょさく物ぶつに限かぎり、公表こうひょう後ごないし創作そうさく後ご70年ねんまでに保護ほご期間きかんが延長えんちょうされた。2018年ねん12月30日にちにはTPP11協定きょうてい発効はっこうに伴ともなう改正かいせい著作ちょさく権けん法ほうが施行しこうされ、映画えいがの著作ちょさく物ぶつ以外いがいについても著作ちょさく者しゃの死後しご70年ねんまでに延長えんちょうされた。

日本にっぽん国こくにおける著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかん

日本にっぽん国こくはベルヌ条約じょうやく、万国ばんこく著作ちょさく権けん条約じょうやく、WIPO著作ちょさく権けん条約じょうやくの締約ていやく国こくである。また、TRIPS協定きょうていを遵守じゅんしゅすべきWTO加盟かめい国こくでもある。したがって、これらの条約じょうやく、協定きょうていで定さだめられた保護ほご期間きかんの要件ようけんをすべて満みたすように、国内こくない法ほうで著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんを規定きていしている。なお、本節ほんぶしにおいて日本にっぽんの著作ちょさく権けん法ほうを参照さんしょうする際さいには、特記とっきがない限かぎりその条じょう数すうのみを記載きさいする。

なお、保護ほご期間きかんについては前述ぜんじゅつのとおりである。

著作ちょさく権けんの発生はっせい（始期しき）

著作ちょさく権けんは、著作ちょさく物ぶつを創作そうさくした時ときに発生はっせいする（51条じょう1項こう）。登録とうろくを権利けんりの発生はっせい要件ようけんとする特許とっきょ権けんや商標しょうひょう権けんなどとは異ことなり、著作ちょさく権けんの発生はっせいのためには、いかなる方式ほうしき（登録とうろく手続てつづき等とう）も要ようしない（17条じょう2項こう）。ベルヌ条約じょうやくの無む方式ほうしき主義しゅぎの原則げんそく（同どう条約じょうやく5条じょう(2)）を適用てきようしたものである。

著作ちょさく権けんの消滅しょうめつ（終期しゅうき）

終期しゅうきの原則げんそく

著作ちょさく権けんは、著作ちょさく者しゃが死亡しぼうしてから70年ねんを経過けいかするまでの間あいだ、存続そんぞくする（51条じょう2項こう）。より正確せいかくには、死亡しぼうしてから70年ねんを経過けいかした年としの12月31日にちまで存続そんぞくする（著作ちょさく権けん法ほう第だい57条じょう第だい1項こう。著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかん#保護ほご期間きかんの計算けいさん方法ほうほう（暦年れきねん主義しゅぎ））。ベルヌ条約じょうやく7条じょう(1)に対応たいおうする規定きていであるが、2018年ねん12月30日にち施行しこう改正かいせい著作ちょさく権けん法ほうにより条約じょうやくよりも保護ほご期間きかんは長ながくなっている。

共同きょうどう著作ちょさく物ぶつの場合ばあい

共同きょうどう著作ちょさく物ぶつの場合ばあいは、最後さいごに死亡しぼうした著作ちょさく者しゃの死亡しぼう時じから起算きさんする（同どう項こうかっこ書しょ）。これは、最後さいごに死亡しぼうした著作ちょさく者しゃが、日本にっぽんの6条じょうに基もとづく権利けんりの享有きょうゆうが認みとめられない者もの（条約じょうやく非ひ加盟かめい国こくの国民こくみんなど）であっても同様どうようであると解げする。

また、自然人しぜんじんと団体だんたいの共同きょうどう著作ちょさく物ぶつの場合ばあい、本ほん項こうを適用てきようして自然しぜん人じんである著作ちょさく者しゃの死亡しぼう時じから起算きさんするのか、後述こうじゅつする53条じょう1項こうを適用てきようして公表こうひょう時じから起算きさんするのかが問題もんだいとなる。この場合ばあい、自然人しぜんじんである著作ちょさく者しゃの死亡しぼう時じから起算きさんするのが妥当だとうであると解げする。保護ほご期間きかんの長ながい方ほうによる方ほうが著作ちょさく権けん保護ほごの趣旨しゅしに合致がっちするし、公表こうひょう時じ起算きさんは死亡しぼう時じ起算きさんが適用てきようできない場合ばあいの例外れいがい的てき規定きていだからである。

保護ほご期間きかんの沿革えんかく

一般いっぱん的てきな著作ちょさく物ぶつ（写真しゃしんや映画えいがの著作ちょさく物ぶつを除のぞく）の原則げんそく的てきな保護ほご期間きかんは、1899年ねん7月がつ15日にちに施行しこうされた旧きゅう著作ちょさく権けん法ほう（明治めいじ32年ねん法律ほうりつ第だい39号ごう）では、著作ちょさく者しゃの死後しご30年ねんまでと規定きていされていた。その後ごは、以下いかのような変遷へんせんをたどっている。

• 1962年ねん4月がつ5日にち - 死後しご33年ねんに延長えんちょう（昭和しょうわ37年ねん法律ほうりつ第だい74号ごう、第だい1次じ暫定ざんてい延長えんちょう措置そち）
• 1965年ねん5月がつ18日にち - 死後しご35年ねんに延長えんちょう（昭和しょうわ40年ねん法律ほうりつ第だい67号ごう、第だい2次じ暫定ざんてい延長えんちょう措置そち）
• 1967年ねん7月がつ27日にち - 死後しご37年ねんに延長えんちょう（昭和しょうわ42年ねん法律ほうりつ第だい87号ごう、第だい3次じ暫定ざんてい延長えんちょう措置そち）
• 1969年ねん12月8日にち - 死後しご38年ねんに延長えんちょう（昭和しょうわ44年ねん法律ほうりつ第だい82号ごう、第だい4次じ暫定ざんてい延長えんちょう措置そち）
• 1971年ねん1月がつ1日にち - 死後しご50年ねんに延長えんちょう（著作ちょさく権けん法ほう全面ぜんめん改正かいせい）
• 2018年ねん12月30日にち - 死後しご70年ねんに延長えんちょう（平成へいせい28年ねん法律ほうりつ第だい108号ごう、TPP11整備せいび法ほう）

改正かいせいされた法律ほうりつの施行しこう前まえに著作ちょさく権けんが消滅しょうめつしていた著作ちょさく物ぶつの場合ばあい、延長えんちょうの対象たいしょうとならず、著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんは1971年ねん改正かいせいの場合ばあいなら著作ちょさく者しゃの死後しご50年ねん、2018年ねん改正かいせいの場合ばあいなら70年ねんとならないので、注意ちゅういが必要ひつようである。たとえば、芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけ、梶井かじい基次郎もとじろう、島崎しまざき藤村とうそん、太宰だざい治おさむ、藤田ふじた嗣治つぐじの作品さくひんの著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんは以下いかのとおりとなる。

• 芥川あくたがわ龍之介りゅうのすけ（1927年ねん7月がつ24日にち没ぼつ）の作品さくひんの著作ちょさく権けんは、1963年ねん1月がつ1日にちの第だい1次じ暫定ざんてい延長えんちょう措置そちが適用てきようされることなく、1957年ねん12月31日にち（死後しご30年ねん）をもって消滅しょうめつした。
• 梶井かじい基次郎もとじろう（1932年ねん3月24日にち没ぼつ）の作品さくひんの著作ちょさく権けんは、第だい1次じ〜第だい4次じ暫定ざんてい延長えんちょう措置そちが適用てきようされたが、1971年ねん1月がつ1日にちの改正かいせい法ほうの適用てきようを受うけることなく、1970年ねん12月31日にち（死後しご38年ねん）をもって消滅しょうめつした。
• 島崎しまざき藤村とうそん（1943年ねん8月がつ22日にち没ぼつ）の作品さくひんの著作ちょさく権けんは、第だい1次じ〜第だい4次じ暫定ざんてい延長えんちょう措置そちおよび1971年ねんの改正かいせい法ほうが適用てきようされたため、1993年ねん12月31日にち（死後しご50年ねん）をもって消滅しょうめつした。
• 太宰だざい治おさむ（1948年ねん6月13日にち没ぼつ）の作品さくひんの著作ちょさく権けんは、第だい1次じ〜第だい4次じ暫定ざんてい延長えんちょう措置そちおよび1971年ねんの改正かいせい法ほうが適用てきようされたため、1998年ねん12月31日にち（死後しご50年ねん）をもって消滅しょうめつした。
• 藤田ふじた嗣治つぐじ（1968年ねん1月がつ29日にち没ぼつ）の作品さくひんの著作ちょさく権けんは、第だい4次じ暫定ざんてい延長えんちょう措置そち（第だい1次じ～第だい3次じ時点じてんでは存命ぞんめいのため該当がいとうせず）および1971年ねんと2018年ねんの改正かいせい法ほうが適用てきようされたため、今後こんご保護ほご期間きかんを変更へんこうする著作ちょさく権けん法ほう改正かいせいがないものと仮定かていすれば、2038年ねん12月31日にち（死後しご70年ねん）まで存続そんぞくする。

旧きゅう著作ちょさく権けん法ほうを考慮こうりょした著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんを表ひょうにまとめると、次つぎのとおりである。

旧きゅう著作ちょさく権けん法ほうを加味かみした終期しゅうきの原則げんそく

著作ちょさく者しゃの死亡しぼう日び（日本にっぽん時間じかん）	保護ほご期間きかん	事例じれい ⇒【その保護ほご期間きかん】
1899年ねん（明治めいじ32年ねん）7月がつ14日にち以前いぜん	保護ほごなし	1899年ねん（明治めいじ32年ねん）7月がつ14日にち死去しきょの著作ちょさく者しゃ ⇒【保護ほごなし】
1899年ねん（明治めいじ32年ねん）7月がつ15日にち - 1931年ねん（昭和しょうわ6年ねん）末まつ	死後しご30年ねんまで	1899年ねん（明治めいじ32年ねん）7月がつ15日にち死去しきょの著作ちょさく者しゃ ⇒【1929年ねん（昭和しょうわ4年ねん）末まつまで】 1931年ねん（昭和しょうわ6年ねん）11月27日にち死去しきょの著作ちょさく者しゃ ⇒【1961年ねん（昭和しょうわ36年ねん）末まつまで】
1932年ねん（昭和しょうわ7年ねん）内ない	1970年ねん（昭和しょうわ45年ねん）末まつまで	1932年ねん（昭和しょうわ7年ねん）3月がつ24日にち死去しきょの著作ちょさく者しゃ ⇒【1970年ねん（昭和しょうわ45年ねん）末まつまで】
1933年ねん（昭和しょうわ8年ねん）- 1967年ねん（昭和しょうわ42年ねん）	死後しご50年ねんまで	1933年ねん（昭和しょうわ8年ねん）2月がつ3日にち死去しきょの著作ちょさく者しゃ ⇒【1983年ねん（昭和しょうわ58年ねん）末まつまで】 1967年ねん（昭和しょうわ42年ねん）11月7日にち死去しきょの著作ちょさく者しゃ ⇒【2017年ねん（平成へいせい29年ねん）末まつまで】
1968年ねん（昭和しょうわ43年ねん）以降いこう	死後しご70年ねんまで	1968年ねん（昭和しょうわ43年ねん）6月がつ10日とおか死去しきょの著作ちょさく者しゃ ⇒【2038年ねん末すえまで】

終期しゅうきの例外れいがい

無名むめいまたは変名へんめいの著作ちょさく物ぶつ

無名むめいまたは変名へんめいの著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく権けんは、その著作ちょさく物ぶつの公表こうひょう後ご70年ねんを経過けいかするまでの間あいだ、存続そんぞくする（52条じょう1項こう本文ほんぶん）。より正確せいかくには、公表こうひょうしてから70年ねんを経過けいかした年としの12月31日にちまで存続そんぞくする（著作ちょさく権けん法ほう第だい57条じょう第だい1項こう。著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかん#保護ほご期間きかんの計算けいさん方法ほうほう（暦年れきねん主義しゅぎ））。無名むめいまたは変名へんめいの著作ちょさく物ぶつでは著作ちょさく者しゃの死亡しぼう時点じてんを客観きゃっかん的てきに把握はあくすることが困難こんなんであるから、ベルヌ条約じょうやく7条じょう(4)が容認ようにんする公表こうひょう時じ起算きさんを適用てきようした。

ただし、公表こうひょう後ご70年ねんまでの間あいだに、著作ちょさく者しゃが死亡しぼうしてから70年ねんが経過けいかしていると認みとめられる著作ちょさく物ぶつは、著作ちょさく者しゃの死後しご70年ねんが経過けいかしていると認みとめられる時点じてんにおいて著作ちょさく権けんは消滅しょうめつしたものとされる（52条じょう1項こう但書ただしがき）。また、以下いかの場合ばあいには著作ちょさく者しゃの死亡しぼう時点じてんを把握はあくすることができるから、原則げんそくどおり死亡しぼう時じ起算きさん主義しゅぎが適用てきようされ、著作ちょさく権けんは著作ちょさく者しゃの死後しご70年ねんを経過けいかするまでの間あいだ存続そんぞくする（52条じょう2項こう）。

1. 変名へんめいの著作ちょさく物ぶつにおいて、著作ちょさく者しゃの変名へんめいが、著作ちょさく者しゃのものであるとして周知しゅうちである場合ばあい（同どう条じょう2項こう1号ごう）
2. 著作ちょさく物ぶつの公表こうひょう後ご70年ねんが経過けいかするまでの間あいだに、実名じつめいによる著作ちょさく者しゃ名めいの登録とうろく（75条じょう1項こう）があったとき（同どう項こう2号ごう）
3. 著作ちょさく者しゃが、著作ちょさく物ぶつの公表こうひょう後ご70年ねんが経過けいかするまでの間あいだに、その実名じつめいまたは周知しゅうちの変名へんめいを著作ちょさく者しゃ名めいとして表示ひょうじして著作ちょさく物ぶつを公表こうひょうしたとき（同どう項こう3号ごう）

ここで、「無名むめいの著作ちょさく物ぶつ」とは、著作ちょさく者しゃ名めいが表示ひょうじされていない著作ちょさく物ぶつをいう。「変名へんめい」とは「雅号がごう、筆名ひつめい、略称りゃくしょうその他た実名じつめいに代かえて用もちいられるもの」（14条じょう）であり、「その他た実名じつめいに代かえて用もちいられるもの」の例れいとしては俳号はいごう、芸名げいめい、四股しこ名めい、ニックネーム、ハンドルネームなどが挙あげられる。

また、「周知しゅうちの変名へんめい」とは、その変名へんめいが著作ちょさく者しゃ本人ほんにんの呼称こしょうであることが一般人いっぱんじんに明あきらかであって、その実在じつざい人じんが社会しゃかい的てきに認識にんしき可能かのうな程度ていどに知しられている状態じょうたいをいうものと解げする。たとえば、漫画まんが家か「手塚てづか治虫おさむ」の名なは「手塚てづか治おさむ」のペンネーム（筆名ひつめい）であるが、周知しゅうちの変名へんめいでもある。手塚てづか治おさむが「手塚てづか治虫おさむ」の名なのもとで公表こうひょうした作品さくひんの著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく権けんは、手塚てづか治おさむ（1989年ねん2月がつ9日にち没ぼつ）の死後しご70年ねんの経過けいかをもって消滅しょうめつする（法ほう52条じょう2項こう1号ごう）。したがって、手塚てづか治虫おさむ作品さくひんの著作ちょさく権けんは今後こんご保護ほご期間きかんを変更へんこうする著作ちょさく権けん法ほう改正かいせいがないものと仮定かていすれば、2059年ねん12月31日にちまで存続そんぞくする（2018年ねん改正かいせい法ほう）。

団体だんたい名義めいぎの著作ちょさく物ぶつ

1899年ねん7月がつ15日にちに施行しこうされた旧きゅう著作ちょさく権けん法ほう（明治めいじ32年ねん法律ほうりつ第だい39号ごう）では、公表こうひょう後ご30年ねんまでと規定きていされていた。その後ごは、以下いかのような変遷へんせんをたどっている。

• 1967年ねん7月がつ27日にち - 公表こうひょう後ご32年ねんに延長えんちょう（昭和しょうわ42年ねん法律ほうりつ第だい87号ごう、第だい3次じ暫定ざんてい延長えんちょう措置そち）
• 1969年ねん12月8日にち - 公表こうひょう後ご33年ねんに延長えんちょう（昭和しょうわ44年ねん法律ほうりつ第だい82号ごう、第だい4次じ暫定ざんてい延長えんちょう措置そち）
• 1971年ねん1月がつ1日にち - 公表こうひょう（または創作そうさく）後ご50年ねんに延長えんちょう（著作ちょさく権けん法ほう全面ぜんめん改正かいせい）
• 2018年ねん12月30日にち - 公表こうひょう（または創作そうさく）後ご70年ねんに延長えんちょう（平成へいせい28年ねん法律ほうりつ第だい108号ごう、TPP11整備せいび法ほう）

法人ほうじんその他た団体だんたいが著作ちょさくの名義めいぎを持もっている著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく権けんは、その著作ちょさく物ぶつの公表こうひょう後ご70年ねん（著作ちょさく物ぶつの創作そうさく後ご70年ねん以内いないに公表こうひょうされなかったときは創作そうさく後ご70年ねん）を経過けいかするまでの間あいだ、存続そんぞくする（53条じょう1項こう）。より正確せいかくには、公表こうひょう（または創作そうさく）してから70年ねんを経過けいかした年としの12月31日にちまで存続そんぞくする（著作ちょさく権けん法ほう第だい57条じょう第だい1項こう。著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかん#保護ほご期間きかんの計算けいさん方法ほうほう（暦年れきねん主義しゅぎ））。団体だんたい名義めいぎの著作ちょさく物ぶつにおいては、著作ちょさく者しゃの死亡しぼうを認定にんていできないため、公表こうひょう時じ起算きさんを例外れいがい的てきに適用てきようしている。

団体だんたい名義めいぎの著作ちょさく物ぶつとは、団体だんたいが著作ちょさく者しゃとなるいわゆる職務しょくむ著作ちょさく（15条じょう）の著作ちょさく物ぶつに限かぎらず、著作ちょさく者しゃは自然人しぜんじんであるが、団体だんたいの名なにおいて公表こうひょうされる著作ちょさく物ぶつを含ふくむ。（法ほう53条じょう3項こう）

ただし、上記じょうきの著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく者しゃである個人こじんが、上記じょうきの期間きかん内ないに、当該とうがい個人こじんの実名じつめい、あるいは周知しゅうちな変名へんめいを著作ちょさく者しゃ名めいとして著作ちょさく物ぶつを公表こうひょうしたときは、原則げんそくどおり著作ちょさく者しゃの死後しご70年ねんの経過けいかをもって著作ちょさく権けんが消滅しょうめつする（53条じょう2項こう）。

映画えいがの著作ちょさく物ぶつ

映画えいがの著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく権けんは、その映画えいがの公表こうひょう後ご70年ねんを経過けいかするまでの間あいだ、存続そんぞくする（54条じょう1項こう）。ただし、映画えいがの創作そうさく後ご70年ねんを経過けいかしても公表こうひょうされなかった場合ばあいには、創作そうさく後ご70年ねんを経過けいかするまでの間あいだ、存続そんぞくする（同どう項こう但書ただしがき）。映画えいがの著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく者しゃは「制作せいさく、監督かんとく、演出えんしゅつ、撮影さつえい、美術びじゅつ等とうを担当たんとうしてその映画えいがの著作ちょさく物ぶつの全体ぜんたい的てき形成けいせいに創作そうさく的てきに寄与きよした者もの」（16条じょう本文ほんぶん抜粋ばっすい）と規定きていされているが、映画えいがが様々さまざまなスタッフの寄与きよによって創作そうさくされる総合そうごう芸術げいじゅつであり、著作ちょさく者しゃが誰だれであるかを実際じっさいに確定かくていするのは困難こんなんであるため、ベルヌ条約じょうやく7条じょう(2)に従したがい、公表こうひょう時じ起算きさん主義しゅぎを採用さいようした。

著作ちょさく権けん法ほう（昭和しょうわ45年ねん5月がつ6日にち法律ほうりつ第だい48号ごう）の制定せいてい時じには、映画えいがの著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんは公表こうひょう時じから50年ねんであった。しかし、旧きゅう著作ちょさく権けん法ほう（明治めいじ32年ねん法律ほうりつ第だい39号ごう）では、独創どくそう性せいのある個人こじん名義めいぎの映画えいがの著作ちょさく物ぶつについては著作ちょさく者しゃの死亡しぼう時じから起算きさんして38年間ねんかん存続そんぞくすることになっていたため、保護ほご期間きかんが実質じっしつ的てきに短みじかくなる場合ばあいも生しょうじた。このため、2003年ねんの法ほう改正かいせいにより、保護ほご期間きかんが50年ねんから70年ねんに延長えんちょうされた。

また、1971年ねん（昭和しょうわ46年ねん）より前まえに製作せいさくされた映画えいが作品さくひんは、旧きゅう著作ちょさく権けん法ほうの規定きていと比くらべ長ながい方ほうの期間きかんになるので注意ちゅういが必要ひつようである。

ただし、例たとえば、旧法きゅうほう下かにおける会社かいしゃ名義めいぎや、戦時せんじ中ちゅうの国策こくさく団体だんたいなどの名義めいぎによる「記録きろく映画えいが」の類るいについては、必かならずしも長ながくなるとは言いえない場合ばあいも出でてくる可能かのう性せいもある。

写真しゃしんの著作ちょさく物ぶつ

著作ちょさく権けん法ほう（昭和しょうわ45年ねん5月がつ6日にち法律ほうりつ第だい48号ごう）では、写真しゃしんの著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかんを他たの著作ちょさく物ぶつを区別くべつして特別とくべつに定さだめる規定きていは存在そんざいしない。したがって、一般いっぱんの著作ちょさく物ぶつと同様どうように、写真しゃしんの著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかんは死亡しぼう時じ起算きさんの原則げんそくにより決定けっていされる（51条じょう2項こう）。また、写真しゃしんが無名むめい・変名へんめいおよび団体だんたい名義めいぎで公表こうひょうされた場合ばあいは、公表こうひょう後ご70年ねんが適用てきようされる（52条じょう1項こう、53条じょう1項こう）。

写真しゃしんの著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかんは、旧きゅう著作ちょさく権けん法ほう（明治めいじ32年ねん法律ほうりつ第だい39号ごう）では発行はっこう後ご10年ねん（その写真しゃしんが発行はっこうされなかった場合ばあいは製作せいさく後ご10年ねん）と規定きていされていた。その後ごは、以下いかのような変遷へんせんをたどっている。

• 1967年ねん7月がつ27日にち - 発行はっこう後ご12年ねん（未み発行はっこうの場合ばあいは製作せいさく後ご12年ねん）に延長えんちょう（昭和しょうわ42年ねん法律ほうりつ第だい87号ごう、暫定ざんてい延長えんちょう措置そち）
• 1969年ねん12月8日にち - 発行はっこう後ご13年ねん（未み発行はっこうの場合ばあいは製作せいさく後ご13年ねん）に延長えんちょう（昭和しょうわ44年ねん法律ほうりつ第だい82号ごう、暫定ざんてい延長えんちょう措置そち）
• 1971年ねん1月がつ1日にち - 公表こうひょう後ご50年ねんに延長えんちょう（著作ちょさく権けん法ほう全面ぜんめん改正かいせい）
• 1996年ねん3月がつ25日にち - 原則げんそく著作ちょさく者しゃの死後しご50年ねんに変更へんこう（WIPO著作ちょさく権けん条約じょうやくへの対応たいおう）
• 2018年ねん12月30日にち - 原則げんそく著作ちょさく者しゃの死後しご70年ねんに延長えんちょう（平成へいせい28年ねん法律ほうりつ第だい108号ごう、TPP11整備せいび法ほう）

上記じょうきによれば、1956年ねん（昭和しょうわ31年ねん）12月31日にちまでに発行はっこうされた写真しゃしんの著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく権けんは1966年ねん（昭和しょうわ41年ねん）12月31日にちまでに消滅しょうめつし、翌年よくねん7月がつ27日にちの暫定ざんてい延長えんちょう措置そちの適用てきようを受うけられなかったことから、著作ちょさく権けんは消滅しょうめつしている。また、1946年ねん（昭和しょうわ21年ねん）12月31日にちまでに製作せいさくされた写真しゃしんについても、未み発行はっこうであれば1956年ねん12月31日にちまでに著作ちょさく権けんは消滅しょうめつするし、その日ひまでに発行はっこうされたとしても、遅おそくとも1966年ねん12月31日にちまでには著作ちょさく権けんは消滅しょうめつするので、1967年ねん7月がつ27日にちの暫定ざんてい延長えんちょう措置そちの適用てきようは受うけられない。したがって、著作ちょさく権けんは消滅しょうめつしている。いずれの場合ばあいも、著作ちょさく者しゃが生存せいぞんしていても同様どうようである。

このように、写真しゃしんの著作ちょさく物ぶつは他たの著作ちょさく物ぶつと比くらべて短みじかい保護ほご期間きかんしか与あたえられてこなかったため、保護ほごの均衡きんこうを失しっするとして、日本にっぽん写真しゃしん著作ちょさく権けん協会きょうかいなどは消滅しょうめつした著作ちょさく権けんの復活ふっかつ措置そちを政府せいふに対たいして要望ようぼうしていた。しかし、既すでに消滅しょうめつした著作ちょさく権けんを復活ふっかつさせることは法的ほうてき安定あんてい性せいを害がいし、著作ちょさく物ぶつの利用りよう者しゃとの関係かんけいで混乱こんらんを招まねくなどの理由りゆうから、平成へいせい11年ねん度どの著作ちょさく権けん審議しんぎ会かいは、復活ふっかつ措置そちを見送みおくる答申とうしんを行おこなっている。

さらに、1996年ねん12月の著作ちょさく権けん法ほう改正かいせいによって（翌年よくねん3月がつ25日にち施行しこう）、写真しゃしんの著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかんを公表こうひょう後ご50年ねんまでとしていた著作ちょさく権けん法ほう55条じょうが削除さくじょされ、写真しゃしんの著作ちょさく物ぶつに対たいしても、他たの一般いっぱん著作ちょさく物ぶつと同等どうとうの保護ほご期間きかんが適用てきようされることになった。これは、1996年ねん12月の世界せかい知的ちてき所有しょゆう権けん機関きかん (WIPO) 外交がいこう会議かいぎによってWIPO著作ちょさく権けん条約じょうやくが採択さいたくされたことを受うけたものであり、同どう条約じょうやく9条じょうは、写真しゃしんの著作ちょさく物ぶつに対たいして他たの一般いっぱん著作ちょさく物ぶつと同期どうき間あいだの保護ほご期間きかんを与あたえることを義務ぎむづけているからである。改正かいせい以前いぜんまでは公表こうひょう後ご50年ねんであったため、著作ちょさく者しゃが生存せいぞん中ちゅうに著作ちょさく権けんが切きれてしまうことが数多かずおおく発生はっせいした。この改正かいせいによって他たの著作ちょさく物ぶつと同等どうとうの扱あつかいを受うけるようになった。

継続けいぞく的てき刊行かんこう物ぶつ、逐次ちくじ刊行かんこう物ぶつ等とうの公表こうひょう時じ

著作ちょさく物ぶつを、冊さつ、号ごうまたは回かいを追おって公表こうひょうする場合ばあい、著作ちょさく物ぶつを一部いちぶ分ぶんずつを逐次ちくじ公表こうひょうする場合ばあい、それぞれ公表こうひょう時じをいつとすべきかについて、56条じょうは以下いかの通とおり規定きていしている。

継続けいぞく的てき刊行かんこう物ぶつ

冊さつ、号ごうまたは回かいを追おって公表こうひょうされる著作ちょさく物ぶつについて、公表こうひょう時じを起算きさん時じとして著作ちょさく権けんが消滅しょうめつする場合ばあい、その「公表こうひょう時じ」とは、毎まい冊さつ、毎号まいごうまたは毎回まいかいの公表こうひょう時期じきとされる（56条じょう1項こう）。

「冊さつ、号ごうまたは回かいを追おって公表こうひょうされる著作ちょさく物ぶつ」の例れいとしては、新聞しんぶん、雑誌ざっし、年報ねんぽう、メールマガジンのような、継続けいぞく的てきに刊行かんこう、公表こうひょうされる編集へんしゅう著作ちょさく物ぶつ、各回かくかいでストーリーが完結かんけつするテレビの連続れんぞくドラマなどが挙あげられる。たとえば、テレビアニメ『タイムボカン』（1975年ねん10月4日にちから1976年ねん12月25日にちにかけて放送ほうそう）は毎まい放送ほうそう回かいでストーリーが完結かんけつする映画えいがの著作ちょさく物ぶつである。したがって、第だい1話わの著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく権けんの消滅しょうめつ時期じきは、公表こうひょう時じを1975年ねん10月がつ4日にち（第だい1話わ公表こうひょう時じ）として計算けいさんされる（著作ちょさく権けん法ほう56条じょう1項こう前段ぜんだん）。そうすると、『タイムボカン』の第だい1話わが自由じゆうに利用りよう可能かのうになるのは、今後こんご保護ほご期間きかんを変更へんこうする著作ちょさく権けん法ほう改正かいせいがないものと仮定かていすれば、公表こうひょうから70年ねん経過けいか後ごの2046年ねん1月がつ1日にち午前ごぜん0時じからである。

逐次ちくじ的てき刊行かんこう物ぶつ

一部分いちぶぶんずつを逐次ちくじ公表こうひょうして完成かんせいする著作ちょさく物ぶつについて、公表こうひょう時じを起算きさん点てんとして著作ちょさく権けんが消滅しょうめつする場合ばあい、その「公表こうひょう時じ」は最終さいしゅう部分ぶぶんの公表こうひょう時じとされる（56条じょう1項こう）。

「一部分いちぶぶんずつを逐次ちくじ公表こうひょうして完成かんせいする著作ちょさく物ぶつ」の例れいとしては、文学ぶんがく全集ぜんしゅう、新聞しんぶん連載れんさい小説しょうせつ、ストーリーが連続れんぞくして最終さいしゅう回かいに完結かんけつするテレビドラマなどが挙あげられる。たとえば、NHKの連続れんぞくテレビ小説しょうせつ『おしん』は最終さいしゅう回かいにストーリーが完結かんけつするものである。したがって、第だい1話わをみても、その著作ちょさく権けんの消滅しょうめつ時期じきは、公表こうひょう時じを1984年ねん3月がつ31日にち（最終さいしゅう話はなしの公表こうひょう時じ）として計算けいさんされる（著作ちょさく権けん法ほう56条じょう1項こう後段こうだん）。そうすると、『おしん』の第だい1話わが自由じゆうに利用りよう可能かのうになるのは、今後こんご保護ほご期間きかんを変更へんこうする著作ちょさく権けん法ほう改正かいせいがないものと仮定かていすると、2055年ねん1月がつ1日にち午前ごぜん0時じからである。

なお、直近ちょっきんの公表こうひょう時じから3年ねんを経過けいかしても次回じかいの公表こうひょうがない場合ばあいは、直近ちょっきんの公表こうひょう時じを最終さいしゅう部分ぶぶんの公表こうひょう時じとみなす（56条じょう2項こう）。公表こうひょう間隔かんかくを長ながくすることにより、著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんが不当ふとうに延長えんちょうされることを防ふせぐためである。

保護ほご期間きかんの計算けいさん方法ほうほう（暦年れきねん主義しゅぎ）

上述じょうじゅつした「死後しご70年ねん」、「公表こうひょう後ご70年ねん」、「創作そうさく後ご70年ねん」の期間きかんの計算けいさん方法ほうほうには、いわゆる暦年れきねん主義しゅぎが採用さいようされている（著作ちょさく権けん法ほう第だい57条じょう第だい1項こう）。すなわち、「70年ねん」の起算きさん点てんは、著作ちょさく者しゃが死亡しぼうした日ひ、または著作ちょさく物ぶつの公表こうひょう日び・創作そうさく日びが属ぞくする年としの翌年よくねん1月がつ1日にちとなる（57条じょう、民法みんぽう140条じょう但書ただしがき、民法みんぽう141条じょう）。暦年れきねん主義しゅぎを採用さいようしたのは、保護ほご期間きかんの計算けいさんが簡便かんべんにできること、著作ちょさく者しゃの死亡しぼう時じや著作ちょさく物ぶつの公表こうひょう、創作そうさく時じがはっきりとしない例れいが多おおいことによる。

たとえば、作家さっか池波いけなみ正太郎しょうたろう（1990年ねん5月3日にち没ぼつ）の作品さくひんの著作ちょさく権けんは、TPP11整備せいび法ほうによる保護ほご期間きかん延長えんちょうの適用てきようを受うけるので、2060年ねん5月がつ3日にちをもって消滅しょうめつするのではなく、1991年ねん1月がつ1日にちから起算きさんして70年ねん後ごである、2060年ねん12月31日にちをもって消滅しょうめつする。したがって、著作ちょさく権けんによる制限せいげんなく自由じゆうな利用りようが可能かのうとなるのは今後こんご保護ほご期間きかんを変更へんこうする著作ちょさく権けん法ほう改正かいせいがないものと仮定かていすれば2061年ねん1月がつ1日にち午前ごぜん0時じからである。

相互そうご主義しゅぎに基もとづく保護ほご期間きかんの特例とくれい

詳細しょうさいは「著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんにおける相互そうご主義しゅぎ#日本にっぽんの状況じょうきょう」を参照さんしょう

58条じょうは、ベルヌ条約じょうやく7条じょう(8)、TRIPS協定きょうてい3条じょう(1)但書ただしがきの規定きていが容認ようにんする相互そうご主義しゅぎを採用さいようしている。したがって、著作ちょさく権けん法ほうは、ベルヌ条約じょうやく同盟どうめい国こくまたは世界せかい貿易ぼうえき機関きかん (WTO) の加盟かめい国こく（日本にっぽん国こくを除のぞく）を本国ほんごくとする著作ちょさく物ぶつに対たいして、それらの本国ほんごくの国内こくない法ほうが定さだめる著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんが、51条じょう〜55条じょうが定さだめる保護ほご期間きかんよりも短みじかいときは、それらの国内こくない法ほうが定さだめる保護ほご期間きかんしか与あたえない（58条じょう）。

たとえば、日本にっぽん国こくではないベルヌ条約じょうやく同盟どうめい国こくであるA国こくの国内こくない法ほうが、映画えいがの著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかんを公表こうひょう後ご50年ねんと定さだめているとする。「公表こうひょう後ご50年ねん」は、日本国にっぽんこく著作ちょさく権けん法ほうが定さだめる映画えいがの著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかん（公表こうひょう後ご70年ねん、著作ちょさく権けん法ほう54条じょう）よりも短みじかい。したがって、A国こくを本国ほんごくとする（A国こくで第だい一いち発行はっこうされた）映画えいがの著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかんは、日本国にっぽんこく著作ちょさく権けん法ほうにおいても公表こうひょう後ご50年ねんまでしか保護ほごされない。

ただし、日本にっぽん国民こくみんの著作ちょさく物ぶつに対たいしては、58条じょうは適用てきようしない（同どう条じょうかっこ書しょ）。したがって、日本にっぽん国民こくみんの著作ちょさく物ぶつは、第だい一いち発行はっこう国こくによらず、51条じょう〜55条じょうが定さだめる保護ほご期間きかんが満期まんきで与あたえられる。

戦時せんじ加算かさん

詳細しょうさいは「戦時せんじ加算かさん (著作ちょさく権けん法ほう)」を参照さんしょう

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせんにおける連合れんごう国こく（アメリカ、イギリス、カナダなど）やその国民こくみんが有ゆうする著作ちょさく権けんであって、日本にっぽん国こくと当該とうがい連合れんごう国こくとの間あいだで平和へいわ条約じょうやくが発効はっこうした日ひの前日ぜんじつ以前いぜんに取得しゅとくされた著作ちょさく権けんに対たいしては、上述じょうじゅつの通とおり認みとめられる通常つうじょうの著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんに加くわえて、日本にっぽん国こくとの平和へいわ条約じょうやく第だい15条じょう(c)の規定きてい及および連合れんごう国こく及および連合れんごう国民こくみんの著作ちょさく権けんの特例とくれいに関かんする法律ほうりつにより、いわゆる戦時せんじ加算かさんによる保護ほご期間きかんの加算かさんが認みとめられる。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中ちゅうは、連合れんごう国こくや連合れんごう国民こくみんの著作ちょさく権けん保護ほごに、日本にっぽん国こくは十分じゅうぶんに取とり組くんでいなかったと考かんがえられたためである。加算かさんされる期間きかんは以下いかのとおりとなる。

• 太平洋戦争たいへいようせんそうの開戦かいせん日びの前日ぜんじつである1941年ねん12月7日にちに連合れんごう国こくおよび連合れんごう国民こくみんが有ゆうしていた著作ちょさく権けん
  • 1941年ねん12月8日にちから、日本にっぽん国こくと当該とうがい連合れんごう国こくとの間あいだの平和へいわ条約じょうやく発効はっこう日びの前日ぜんじつまでの期間きかんが加算かさんされる（4条じょう1項こう）。たとえば、イギリス、オーストラリア、カナダ、フランス、アメリカまたはその国民こくみんの著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんには3794日にちが加算かさんされる。この場合ばあい、通常つうじょうの保護ほご期間きかんによれば1978年ねん12月31日にちをもって保護ほご期間きかんが満了まんりょうする著作ちょさく権けんは、3794日にちの加算かさんによって、1989年ねん5月21日にちまで存続そんぞくする。
• 1941年ねん12月8日にちから、日本にっぽん国こくと連合れんごう国こくとの間あいだの平和へいわ条約じょうやく発効はっこう日びの前日ぜんじつまでに当該とうがい連合れんごう国こくおよび連合れんごう国民こくみんが取得しゅとくした著作ちょさく権けん
  • 著作ちょさく権けんの取得しゅとく日びから、日本にっぽん国こくと連合れんごう国こくとの間あいだの平和へいわ条約じょうやく発効はっこう日びの前日ぜんじつまでの期間きかんが加算かさんされる（4条じょう2項こう）。たとえば、1944年ねん8月がつ1日にちに、上記じょうき連合れんごう国こくまたはその国民こくみんが取得しゅとくした著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんには2827日にちが加算かさんされる。この場合ばあい、通常つうじょうの保護ほご期間きかんによれば1978年ねん12月31日にちをもって保護ほご期間きかんが満了まんりょうする著作ちょさく権けんは、2827日にちの加算かさんによって、1986年ねん9月がつ27日にちまで存続そんぞくする。

著作ちょさく権けん消滅しょうめつの効果こうか

詳細しょうさいは「パブリックドメイン」を参照さんしょう

著作ちょさく権けんが消滅しょうめつすると、著作ちょさく権けんによる制限せいげんなしに、原則げんそくとして誰だれでも自由じゆうに利用りようすることができる。

ただし、保護ほご期間きかんが著作ちょさく者しゃの死後しご70年ねんとなる場合ばあいを除のぞいては、著作ちょさく権けんの消滅しょうめつ後ごも著作ちょさく者しゃが生存せいぞんし、著作ちょさく者しゃ人格じんかく権けんが存続そんぞくしている場合ばあいもある。その場合ばあい、著作ちょさく者しゃ人格じんかく権けんを侵害しんがいする態様たいようで著作ちょさく物ぶつを利用りようすることはできない（18条じょう〜20条じょう）。また、著作ちょさく者しゃが死亡しぼうし著作ちょさく者しゃ人格じんかく権けんが消滅しょうめつしても、著作ちょさく者しゃが生存せいぞんしているならば著作ちょさく者しゃ人格じんかく権けんの侵害しんがいとなるような利用りよう行為こうい、著作ちょさく者しゃの声望せいぼう名誉めいよを害がいする方法ほうほうによる著作ちょさく物ぶつの利用りよう行為こういは引ひき続つづき禁止きんしされる（60条じょう、113条じょう6項こう）。

二に次じ的てき著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく権けんとの関係かんけい

著作ちょさく物ぶつを翻訳ほんやく、編曲へんきょく、変形へんけい、翻案ほんあんして創作そうさくされた二に次じ的てき著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんは、原著げんちょ作物さくもつの著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんとは独立どくりつして認みとめられる。すなわち、創作そうさく（翻訳ほんやく、編曲へんきょく、変形へんけい、翻案ほんあん）のときに著作ちょさく権けんが発生はっせいし、著作ちょさく者しゃ（翻訳ほんやく、編曲へんきょく、変形へんけい、翻案ほんあんした者もの）の死亡しぼう時期じき、その二に次じ的てき著作ちょさく物ぶつの公表こうひょう時期じき、あるいは創作そうさく時期じきを起算きさん時じとして著作ちょさく権けんの消滅しょうめつ時期じきが決定けっていされる。

したがって、原著げんちょ作物さくもつの著作ちょさく権けんが保護ほご期間きかん満了まんりょう等とうの事由じゆうにより消滅しょうめつしていても、二に次じ的てき著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく権けんが消滅しょうめつしているとは限かぎらない。

たとえば、アメリカ民謡みんよう『My Grandfather's Clock』（邦題ほうだい『大おおきな古こ時計とけい』）の作詞さくし者しゃであるヘンリー・クレイ・ワークは1884年ねんに死去しきょしたから、歌詞かしの著作ちょさく権けんは存在そんざいしない。一方いっぽう、保富ほとみ康やすし午うま（1984年ねん9月19日にち没ぼつ）による著名ちょめいな日本語にほんご訳詞やくしの著作ちょさく権けんは今後こんご保護ほご期間きかんを変更へんこうする著作ちょさく権けん法ほう改正かいせいがないものと仮定かていすれば、2054年ねん12月31日にちまで存続そんぞくする。したがって、2006年ねん現在げんざい、英語えいごによる原はら歌詞かしは自由じゆうに利用りよう可能かのうであるが、保富ほとみ康やすし午うまの日本語にほんご歌詞かしを利用りようするには、著作ちょさく権けん法ほうで定さだめられた例外れいがいを除のぞいて著作ちょさく権けん者しゃ（2006年ねん6月がつ現在げんざい、日本音楽著作権協会にほんおんがくちょさくけんきょうかい）の許諾きょだくが必要ひつようである。

逆ぎゃくに、保護ほご期間きかんの相違そういなどから、原著げんちょ作物さくもつの著作ちょさく権けんが存続そんぞくしたままの状態じょうたいで、二に次じ的てき著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく権けんが先さきに消滅しょうめつする場合ばあいもある。この場合ばあい、当該とうがい二に次じ的てき著作ちょさく物ぶつを利用りようするには当該とうがい原著げんちょ作物さくもつの著作ちょさく権けん者しゃの許諾きょだくが必要ひつようであり、原著げんちょ作物さくもつの著作ちょさく権けんが消滅しょうめつするまでは、二に次じ的てき著作ちょさく物ぶつを自由じゆうに利用りようすることはできない（28条じょう）。ただし、映画えいがの著作ちょさく物ぶつの利用りようについては、次節じせつのような特別とくべつな規定きていが存在そんざいする。

映画えいがの著作ちょさく物ぶつの場合ばあい

映画えいがの著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく権けんが保護ほご期間きかん満了まんりょうによって消滅しょうめつしても、その映画えいがにおいて翻案ほんあんされている著作ちょさく物ぶつ（脚本きゃくほんや、原作げんさくとなった小説しょうせつや漫画まんが等ひとし）の著作ちょさく権けんは存続そんぞくしている場合ばあいがある。この場合ばあい、その映画えいがの利用りように関かんするそれらの原著げんちょ作物さくもつの著作ちょさく権けんは、映画えいがの著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく権けんとともに消滅しょうめつしたものとされる（54条じょう2項こう）。したがって、その映画えいがの著作ちょさく物ぶつを利用りようする限かぎりにおいては、脚本きゃくほんや、原作げんさくとなった小説しょうせつや漫画まんが等とうに係かかる著作ちょさく権けん者しゃの許諾きょだくを得える必要ひつようはない。この規定きていは、著作ちょさく権けんが消滅しょうめつした映画えいがの円滑えんかつな利用りようを促進そくしんすることをねらいとする。

ただし、著作ちょさく権けんが消滅しょうめつしたものと扱あつかわれる著作ちょさく物ぶつは、映画えいがにおいて翻案ほんあんされたものに限かぎられ、録音ろくおん、録画ろくがされているに過すぎない著作ちょさく物ぶつ（字幕じまく、映画えいが音楽おんがく、美術びじゅつ品ひん等ひとし）の著作ちょさく権けんは消滅しょうめつしたものとされない。したがって、映画えいがの著作ちょさく物ぶつを利用りようするためには、字幕じまく、映画えいが音楽おんがく、美術びじゅつ品等ひんとうに係かかる著作ちょさく権けん者しゃの許諾きょだくを得える必要ひつようがある。

著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんに関かんする裁判さいばん例れい

1953年ねんに公表こうひょうされた団体だんたい名義めいぎの独創どくそう性せいを有ゆうする映画えいがの著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかん

詳細しょうさいは「1953年ねん問題もんだい」を参照さんしょう

「ローマの休日きゅうじつ」事件じけん、「シェーン」事件じけん

2004年ねん1月がつ1日にちに施行しこうされた改正かいせい著作ちょさく権けん法ほうは、映画えいがの著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかんを公表こうひょう後ご50年ねんから公表こうひょう後ご70年ねんへ延長えんちょうする規定きていを含ふくんでいた。ただし、施行しこう前まえに著作ちょさく権けんが消滅しょうめつした映画えいがの著作ちょさく物ぶつに対たいしては、遡さかのぼって新法しんぽうを適用てきようして著作ちょさく権けんを復活ふっかつさせることはない。

この新法しんぽうの解釈かいしゃくに関かんする文化庁ぶんかちょうの見解けんかいは、「2003年ねん12月31日にち午後ごご12時じと2004年ねん1月がつ1日にち午前ごぜん0時じは同時どうじ」という理由りゆうから、1953年ねんに公表こうひょうされた映画えいがの著作ちょさく物ぶつは、新法しんぽうの適用てきようを受うけて2023年ねん12月31日にちまで保護ほごされるというものである。これに対たいし、新旧しんきゅう両りょう法ほうの文理ぶんり解釈かいしゃくからすれば、1953年ねん公表こうひょうの映画えいがの保護ほご期間きかんは2003年ねん12月31日にちまでであり、2004年ねん1月がつ1日にちには消滅しょうめつするという反対はんたいの見解けんかいもあった。これらの見解けんかいの対立たいりつは1953年ねん問題もんだいともよばれている。

2006年ねん5月がつ、『ローマの休日きゅうじつ』（1953年ねん公開こうかい）などの著作ちょさく権けん者しゃであるパラマウント・ピクチャーズ・コーポレーション（パラマウント社しゃ）が、1953年ねんに公開こうかいされた映画えいがの著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく権けんは2023年ねん12月31日にちまで存続そんぞくすると主張しゅちょうし、同どう作品さくひんの格安かくやすDVDを製造せいぞう販売はんばいしているファーストトレーディング社しゃに対たいし、同どう作品さくひんの格安かくやすDVDの製造せいぞう販売はんばいの差止さしとめを求もとめて、東京とうきょう地裁ちさいに仮処分かりしょぶんの申請しんせいを行おこなった。さらに、同年どうねん公開こうかいの映画えいが『シェーン』についても、別べつの2社しゃを相手取あいてどり、DVDの製造せいぞう販売はんばいの差止さしとめを求もとめて東京とうきょう地方裁判所ちほうさいばんしょに提訴ていそした。

同年どうねん7月がつ、東京とうきょう地方裁判所ちほうさいばんしょは「ローマの休日きゅうじつ」の仮処分かりしょぶん申請しんせいに対たいし、1953年ねんに公表こうひょうされた映画えいがの著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく権けんは2003年ねん12月31日にちまで存続そんぞくし、2004年ねん1月がつ1日にちには消滅しょうめつしているとして、パラマウント社しゃの申請しんせいを却下きゃっかした。また、10月には「シェーン」に対たいしても同様どうようの理由りゆうによってパラマウント社しゃの請求せいきゅうを棄却ききゃくする判決はんけつをい渡いわたした。

「ローマの休日きゅうじつ」の仮処分かりしょぶん申請しんせい却下きゃっかを不服ふふくとするパラマウント社しゃは即時そくじ抗告こうこくを行おこなったが、10月に「シェーン」で敗訴はいそしたことを受うけて「ローマの休日きゅうじつ」については抗告こうこくを取とり下さげた。パラマウント社しゃは「シェーン」についてのみ、知的ちてき財産ざいさん高等こうとう裁判所さいばんしょに控訴こうそしたが、同どう裁判所さいばんしょは2007年ねん3月がつ29日にち、著作ちょさく権けんは2003年ねん12月31日にちをもって消滅しょうめつしたとする一いち審しん判決はんけつを支持しじし、パラマウント社しゃの控訴こうそを棄却ききゃくする判決はんけつをい渡いわたした。

パラマウント社しゃは最高裁判所さいこうさいばんしょへ上告じょうこくしたものの、2007年ねん12月18日にち最高裁さいこうさいは一いち審しん、二に審しんの判決はんけつを支持しじ。「1953年ねん公表こうひょうの団体だんたい名義めいぎの独創どくそう性せいを有ゆうする 映画えいがの著作ちょさく物ぶつの著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんは2003年ねん12月31日にちまで」という結論けつろんで、この問題もんだいは決着けっちゃくした。

自然人しぜんじんを著作ちょさく者しゃとする映画えいがの著作ちょさく物ぶつの保護ほご期間きかん

「モダン・タイムス」事件じけん

2006年ねん7月がつ、チャーリー・チャップリンの映画えいがの著作ちょさく権けんを管理かんりするリヒテンシュタインの法人ほうじんが、『モダン・タイムス』（1936年ねん製作せいさく）など複数ふくすうタイトルのチャップリン映画えいがの格安かくやすDVDを販売はんばいする東京とうきょうの2社しゃに対たいし、格安かくやすDVDの販売はんばい差止さしどめと約やく9400万まん円えんの損害そんがい賠償ばいしょうを求もとめて、東京とうきょう地方裁判所ちほうさいばんしょに提訴ていそした。

原告げんこくの主張しゅちょうによれば、被告ひこく2社しゃは『モダン・タイムス』など原告げんこくが著作ちょさく権けんを保持ほじ管理かんりする9作品さくひんについて、原告げんこくの許諾きょだくを得えずに格安かくやすDVDを販売はんばいしたことにより、原告げんこくの著作ちょさく権けんを侵害しんがいしたとする。

原告げんこくは、著作ちょさく権けん存続そんぞくの法的ほうてき根拠こんきょについて、旧きゅう著作ちょさく権けん法ほう（明治めいじ32年ねん法律ほうりつ第だい39号ごう。新しん著作ちょさく権けん法ほう（昭和しょうわ45年ねん法律ほうりつ第だい48号ごう）の施行しこうにより、昭和しょうわ46年ねん1月がつ1日にち廃止はいし。）22条じょうノ3、3条じょう1項こう、52条じょう1項こう、および新しん著作ちょさく権けん法ほうの昭和しょうわ45年ねん附則ふそく7条じょうにより、著作ちょさく権けん保護ほご期間きかんは著作ちょさく者しゃの死後しご38年ねんであることなどを挙あげる。すなわち、原告げんこくの主張しゅちょうによれば、9作品さくひんのうち7作品さくひんはチャップリン個人こじんの作品さくひんであるため、チャップリンが死亡しぼうした1977年ねんから著作ちょさく権けん保護ほご期間きかんが起算きさんされ、それから38年ねん経過けいか後ごの2015年ねんまで著作ちょさく権けんが保護ほごされることになる。

なお、文化庁ぶんかちょうは『平成へいせい18年度ねんど著作ちょさく権けんテキスト』の中なかで、著作ちょさく権けんが保護ほごされる「映画えいがの著作ちょさく物ぶつ」（独創どくそう性せいのあるもの）として、「昭和しょうわ11年ねん（1936年ねん）から昭和しょうわ27年ねん（1952年ねん）までに公表こうひょうされた実名じつめいの著作ちょさく物ぶつのうち、昭和しょうわ40年ねん（1965年ねん）に著作ちょさく者しゃが生存せいぞんしていたもの」を挙あげ、原告げんこくの主張しゅちょうに沿そう見解けんかいを示しめしている。

2007年ねん8月がつ29日にち、東京とうきょう地裁ちさいは原告げんこく側がわの主張しゅちょうを全面ぜんめん的てきに認みとめ『モダン・タイムス』など7タイトルは旧法きゅうほうの規定きていに伴ともないチャップリンの個人こじん著作ちょさく物ぶつと認みとめられ、著作ちょさく権けん保護ほご期間きかんは経過けいか措置そちにより2015年ねんまで有効ゆうこうであると判断はんだん。さらに『殺人さつじん狂きょう時代じだい』（1947年ねん製作せいさく）及および『ライムライト』（1952年ねん製作せいさく）については2003年ねん改正かいせい法ほうの附則ふそく第だい2条じょう（旧法きゅうほうと現行げんこう法ほうのどちらかで保護ほご期間きかんが異ことなる場合ばあいは、より長ながい方ほうを適用てきようする）に基もとづき、公表こうひょう後ご70年ねんが適用てきようされると判断はんだん。『殺人さつじん狂きょう時代じだい』は2017年ねん、『ライムライト』は2022年ねんまで保護ほご期間きかんが存続そんぞくするとし、被告ひこく側がわに対たいし9タイトルの販売はんばい禁止きんしと在庫ざいこの全量ぜんりょう及およびDVD製作せいさくに使用しようしたマスターの廃棄はいき・約やく1053万まん円えんの損害そんがい賠償ばいしょうを命めいじた。発売はつばい業者ぎょうしゃは知ち財ざい高裁こうさいに控訴こうそしたが、2008年ねん2月がつ28日にちに控訴こうそ棄却ききゃくの判決はんけつを下くだした。

さらに、発売はつばい業者ぎょうしゃは最高裁さいこうさいに上告じょうこくしたが、2009年ねん10月がつ8日にち、最高裁さいこうさいは上告じょうこくを棄却ききゃくし、1、2審しん判決はんけつが確定かくていした。この上告じょうこく審しん判決はんけつにおいて最高裁さいこうさいは、旧きゅう著作ちょさく権けん法ほうにおける映画えいがの著作ちょさく者しゃを「映画えいがの創作そうさくに全体ぜんたい的てきに寄与きよした者もの」と規定きていし、9タイトルの著作ちょさく者しゃをチャップリン個人こじんと認定にんていした。その上うえで、「著作ちょさく者しゃが実名じつめいで表示ひょうじされた場合ばあいには、たとえ団体だんたい名義めいぎの著作ちょさく物ぶつの表示ひょうじがあっても、著作ちょさく者しゃの死亡しぼう時じから著作ちょさく権けん保護ほご期間きかんが起算きさんされる」との初はつ判断はんだんを示しめした。

参考さんこう文献ぶんけん

• ティナ・ハート、リンダ・ファッツァーニ、サイモン・クラーク 著ちょ、早川はやかわ良子りょうこ 訳やく『イギリス知的ちてき財産ざいさん法ほう』牧野まきの和夫かずお監訳かんやく（第だい1版はん）、雄松おまつ堂どう出版しゅっぱん、2007年ねん9月がつ15日にち（原著げんちょ2006年ねん10月がつ13日にち）。ISBN 978-4-8419-0463-5。OCLC 676199595。全国ぜんこく書誌しょし番号ばんごう:21293666。 
• 矢野やの輝雄てるお (2012-02-01). 知的ちてき財産ざいさん権けんの考かんがえ方かた・活いかし方かた－Ｑ＆Ａきゅーあんどえー－. オおーム社むしゃ. ISBN 978-4-274-21169-0. OCLC 816890114. https://books.google.com/books?id=dyjfGYfnjikC&pg=PA37 

関連かんれん項目こうもく

• 著作ちょさく物ぶつ
• 著作ちょさく権けん
• 著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんにおける相互そうご主義しゅぎ
• 永久えいきゅう著作ちょさく権けん
• 戦時せんじ加算かさん (著作ちょさく権けん法ほう)
• 権利けんりの所在しょざいが不明ふめいな著作ちょさく物ぶつ
• 青空あおぞら文庫ぶんこ
• プロジェクト・グーテンベルク

外部がいぶリンク

• 著作ちょさく権けんの保護ほご期間きかんはどれだけ？ - 著作ちょさく権けん情報じょうほうセンター
• 著作ちょさく物ぶつ等とうの保護ほご期間きかんの延長えんちょうに関かんするQ&A - 文化庁ぶんかちょう