３月がつ 20日はつか開催かいさい ＠ comm cafe
（めろんNo.164掲載けいさい）

　カフェ事業じぎょうの始はじまりは 2010 年ねん。2013 年ねん 5 月がつに多た文化ぶんか交流こうりゅうセンターがオープンする 3 年ねん前まえまでさかのぼる。この 3 月がつで、これまで約やく 7 年間ねんかん、カフェを担当たんとうしてきた金きむ姫ひめ廷さんが退職たいしょくすることもあり、これまでの過程かていを知しり、今後こんごのあり方かたをともに考かんがえるイベントを開催かいさいしたので報告ほうこくする。

コムカフェのもつ多彩たさいな側面そくめん

　コムカフェは火曜日かようびから土曜日どようびまで「ワンデイシェフ・システム」のもと、これまで 40 カ国かこく 80 名めいの外国がいこく人じんシェフが 1 日にちオーナーになり、のべ 80 名めいにのぼるボランティアの協力きょうりょくを得えながら世界せかいの家庭かてい料理りょうりを提供ていきょうしてきた。今いまではランチ営業えいぎょうは広ひろく知しられるようになってきたが、今回こんかいスタッフが一番いちばん伝つたえたかったのは、お客きゃくさんからは普段ふだん見みえない「コムカフェのもつ（飲食いんしょく業ぎょう以外いがいの）４よっつのはたらき」についてだ。

①人材じんざい育成いくせい（外国がいこく人じん市民しみんをエンパワメントし、主体性しゅたいせいを引ひき出だす機能きのう）
②コミュニティづくり（「食しょく」や「語学ごがく」をキーワードに、さまざまなグループを生うみ出だす機能きのう）
③啓発けいはつ（メディアからの取材しゅざい依頼いらいや講演こうえん依頼いらいが多数たすう寄よせられ、独自どくじのノウハウや実践じっせんのポイントを多方面たほうめんに発信はっしんする機能きのう）
④相談そうだん窓口まどぐち、「フードドライブ」などセーフティネットとしての役割やくわり（キッチンでの作業さぎょう中ちゅうや賄まかないの時間じかんに悩なやみや不安ふあんを様々さまざまな国籍こくせき・世代せだいのスタッフに相談そうだんできる機能きのう）

　後半こうはんの「一いち問もん一いち答とうタイム」では活発かっぱつなやり取とりが続つづき、それぞれ自分じぶんの言葉ことばでカフェに対たいする思おもいを語かたった。「すごく効率こうりつの悪わるいことをやっているようにみえて、実じつは確実かくじつに『共生きょうせい』の実践じっせんのためのノウハウを蓄積ちくせきさせているのが面白おもしろい」（初はじめてカフェに来きた方ほう）、「このカフェでなら、母語ぼごで大おおきな声こえで話はなしていても誰だれも私わたしを見みない。自分じぶんたち親子おやこにとって、素もとのままでいられる、本当ほんとうに貴重きちょうな場ば」（常連じょうれんのお客きゃくさん）、「最初さいしょはこのカフェでおこなわれていることの意味いみがよくわからず、もやもやすることが多おおかったけど、だんだんそのことに慣なれて、いまではこの場ばにとても親したしみを感かんじている」（ボランティア）。

カフェを通とおして、変かわったこと

　最後さいごは約やく 7 年ねんカフェを担当たんとうしてきた金きむ姫ひめ廷さんがスピーチ。「このカフェを通とおして本当ほんとうに沢山たくさんの出会であいを得えて、自分じぶん自身じしんも随分ずいぶん変かわった。これまで地域ちいきで生活せいかつする中なかで、夫おっとの通つう名めい（日本にっぽん式しきの名前なまえ）を名乗なのるか、本名ほんみょうにするか、悩なやみながらもその場ばその場ばで使つかい分わけてきた。でもこのカフェで働はたらくことで、自分じぶんも堂々どうどうと本名ほんみょうを名乗なのることが出来できた」。7 年間ねんかん、現場げんばで運営うんえいを担になってきた中なかでの言葉ことばに、じんときた人ひとが多おおくいた。

　長年ながねん、カフェを支ささえてくれた「チーム・シカモ（コムカフェの運営うんえいをサポートしている外国がいこく人じん市民しみんグループ）」のタナヤさん、アルバイトのオリガさんも、3 月がつ末まつで大阪おおさかを離はなれるのであいさつした。タナヤさん曰いわく、「最初さいしょは何なにをやるのも緊張きんちょうして恥はずかしがり屋やだった私わたしが、このカフェを通つうじてとても積極せっきょく的てきになった。イベント企画きかくやマルシェ、出で講こうなど、やりたいと思おもったことをここですべて実現じつげんできたことはまるで奇跡きせき」。

まだまだ道みちのりは続つづく

　コムカフェへ来きてくれるお客きゃくさん、シェフ、ボランティア、スタッフ、多様たような事業じぎょう関係かんけい者しゃ・・・。支援しえんする側がわ、される側がわ（＝多数たすう派はと少数しょうすう派はの関係かんけい性せい）が時ときに入いれ替かわり、互たがいの線引せんひきがあいまいになることも、この場ばが放はなつ不思議ふしぎな磁力じりょくとなっている。

　今年度こんねんどからは新あたらしいスタッフ 2 人にん（エネビシさん、金きむ梨花りかさん）が加くわわり、新あらたなメンバーで次つぎの展開てんかいを模索もさく中ちゅう。日替ひがわりランチの営業えいぎょうだけにとどまらず、もっといろいろな人ひとがこのカフェに関かかわり、いかに多角たかく的てきな展開てんかいを生うみ出だせるのか、次つぎなるチャレンジだ。　毎日まいにち多様たような立場たちばの人ひとたちが関かかわる性質せいしつ上じょう、それぞれ思おもい通どおりにならないことが本当ほんとうに多おおく、時ときにしんどくなることも。参考さんこうになる事例じれいが他たにないかとあちこち調しらべたが、コムカフェみたいな場所ばしょは世界せかいのどこにもない、ということもわかってきた。

　コロナや気候きこう変動へんどうなどで社会しゃかいの状況じょうきょうが大おおきく変かわる中なか、多様たような人ひとたちがともにはたらき、苦労くろうを共有きょうゆうしながら、いかに豊ゆたかな地域ちいきを築きずいていけるか。未来みらいを先取さきどりしたようなこのカフェの求心力きゅうしんりょくや可能かのう性せいを、改あらためて感かんじた会かいだった。カフェはこの 5月で丸まる 8年ねん。GW明あけまでは、テイクアウトのみの営業えいぎょうを行おこなう予定よていだったが、緊急きんきゅう事態じたい宣言せんげんの発出はっしゅつで、5 月がつ 11 日にちまでは閉店へいてんが決きまっている。閑散かんさんとした店内てんないが寂さびしいが、しばらくは参加さんか者しゃの皆みなさんから寄よせられたメッセージや、当日とうじつのスライド資料しりょうを掲示けいじしているので、センター再開さいかい後ごは、ぜひのぞいて見みてほしい。（岩城いわき）