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多言語による生活相談 ~コロナ禍での2020年度報告~ (前編) – mafga

(公財)箕面市国際交流協会MAFGA

2021.07.01

多言たげんによる生活せいかつ相談そうだん ~コロナでの2020年度ねんど報告ほうこく~ (前編ぜんぺん

(めろん No.166掲載けいさい

 幅広はばひろ事業じぎょうすすめる協会きょうかいだが、外国がいこくじん市民しみんのもっとも切実せつじつ困難こんなんなやみにむという意味いみでも、また、そこからえてくる地域ちいき社会しゃかい課題かだい協会きょうかいっていくためにも、「外国がいこくじん市民しみんのための生活せいかつ相談そうだん」はその基礎きそをなす事業じぎょうってよいだろう。では、協会きょうかいにはどんな相談そうだんせられ、どのようにこれに対応たいおうしているのか。コロナウィルスの感染かんせんつづいた 2020年度ねんど事業じぎょう報告ほうこくからおつたえする。
 

年間ねんかん 934 けん相談そうだん多言たげん対応たいおう

 協会きょうかいでは毎週まいしゅう火曜日かようび午前ごぜん 11 から午後ごご 2 30 ふんまで英語えいご中国ちゅうごく韓国かんこく朝鮮ちょうせん隔週かくしゅうでベトナム、ポルトガル)の相談そうだんいん待機たいきしている。外国がいこくじん市民しみんならだれでも相談そうだんすることができ、相談そうだん内容ないようおうじて日本語にほんご書類しょるいかく言語げんご説明せつめいしたり、ネットでの検索けんさく機関きかんへのわせをおこなう、なやみをいて課題かだい整理せいりするなどの対応たいおうおこなっている。また、それ以外いがい時間じかんには職員しょくいん相談そうだん対応たいおうする。ほぼすべての職員しょくいん日本語にほんごくわえて1しゅ以上いじょう言語げんごはなすことができる。2020 年度ねんど相談そうだん集計しゅうけいによると、これらのスタッフが日本語にほんご英語えいご中国ちゅうごく韓国かんこく朝鮮ちょうせん、ポルトガルフランス語ふらんすご、ベトナム、トルコ、ヒンディー、モンゴル、スペインで、合計ごうけい 934 けん相談そうだん対応たいおうした。
 

相談そうだん事業じぎょうあゆ

 協会きょうかいでは設立せつりつ以来いらい職員しょくいん英語えいご日本語にほんご中心ちゅうしん外国がいこくじん市民しみんからの問合といあわせに対応たいおうしていたが、2006 年度ねんどからは 5言語げんご相談そうだんいんによるしゅうかい定例ていれい事業じぎょう開始かいしされた。せられる質問しつもん情報じょうほう提供ていきょうし、なやみをいていっしょにかんがえる、という活動かつどうからはじまったが、その協会きょうかいせられる相談そうだん次第しだい増加ぞうかし、また多様たよう複雑ふくざつしていった。 「仕事しごとうしな所持しょじきんそこをついた」、「今日きょう場所ばしょがない」、などの緊急きんきゅうせいたか相談そうだんどもへの虐待ぎゃくたい家族かぞくないでの暴力ぼうりょくなど、情報じょうほう提供ていきょう傾聴けいちょうするだけではすまない相談そうだんせられるようになった。また、相談そうだんしゃ背景はいけいにこうしたふくあいてき課題かだいからまるケースもえた。それらの相談そうだん言語げんご文化ぶんかかべかさなるため、機関きかんいでも、機関きかん相談そうだんしゃもうまくつながれない…。こうした経験けいけんから、機関きかん連携れんけいしながら、協会きょうかい職員しょくいん課題かだい解決かいけつけて伴走ばんそうする協会きょうかい相談そうだん事業じぎょうのスタイルを模索もさくしてきた。
 2011 年度ねんど箕面みのおはじまった「パーソナルサポートサービス事業じぎょう」では、協会きょうかいもその推進すいしん協議きょうぎかい参加さんかし、機関きかん連携れんけい・ケースワークについて機関きかんとの連携れんけいのなかでおおくのことをおしえられた。現在げんざい協会きょうかいは「箕面みのお生活せいかつ困窮こんきゅうしゃ自立じりつ支援しえん推進すいしん協議きょうぎかい」、「箕面みのおよう保護ほご児童じどう対策たいさく協議きょうぎかい」などに参加さんかしている。2020 年度ねんどからは法務省ほうむしょう実施じっしする「文化ぶんか共生きょうせい総合そうごう相談そうだんワンストップセンター」として位置付いちづけられた。
 

一般いっぱん相談そうだんとケース相談そうだん

 こうした経験けいけんから、協会きょうかいではせられる相談そうだんおおきくふたつにけた対応たいおうおこなっている。ひとつは、相談そうだんしゃ質問しつもんにそのですぐに、またはネットや電話でんわわせなどをおこない、回答かいとうしたり、なやみをいて一緒いっしょかんがえたりする一般いっぱん相談そうだん。1かい相談そうだんで「ひとまずの解決かいけつ」をはかるものだ。 もうひとつは、継続けいぞくして面談めんだんおこなったり、相談そうだん機関きかんなどに同行どうこうするなどしながら時間じかんをかけて対応たいおうするケース相談そうだんだ。件数けんすう対応たいおう回数かいすう)でみると、昨年度さくねんど一般いっぱん相談そうだんが558 けん、ケース相談そうだんが 376 けんとなっている。相談そうだん受付うけつけ方法ほうほうでは、電話でんわが 422 けん来館らいかんでの相談そうだんが 414 けん、メールが56 けん、そのが 42 けんである。 では、どんな相談そうだんせられているのか。その概況がいきょうかいにわたっておつたえする。今回こんかいは、一般いっぱん相談そうだんのカテゴリーからその内容ないようてみよう。
 

せられる多様たよう相談そうだん

 生活せいかつ一般いっぱん多岐たきにわたる。たとえば、転入てんにゅう電気でんきやガスなどの手続てつづき、オンラインショッピ
ングでのトラブル、国勢調査こくせいちょうさや NHK の集金しゅうきんなど自宅じたくとど郵便ゆうびんぶつかんするわせ、バスのかた遺言ゆいごんしょ準備じゅんびなど、多種たしゅ多様たよう相談そうだんせられている。教育きょういくでは、小中学校しょうちゅうがっこうでのわたりどもへのサポートや通訳つうやく高校こうこう進学しんがくについての相談そうだんおおく、どもや保護ほごしゃ学校がっこう関係かんけいしゃからも相談そうだんせられている。医療いりょうでは、病院びょういんへの同行どうこう通訳つうやく適切てきせつ病院びょういんをどうやってえらんだらよいか、といった相談そうだんおおいが、短期たんき滞在たいざいちゅう手術しゅじゅつ必要ひつよう状態じょうたいとなり、健康けんこう保険ほけん適応てきおうがいであることから高額こうがく医療いりょう支払しはらえない、といった相談そうだんせられる。雇用こよう労働ろうどうでは、仕事しごとさがしについての内容ないようおおい。協会きょうかいでは相談そうだんしゃ状況じょうきょう希望きぼうをききとりながら、インターネットじょう求人きゅうじん情報じょうほう一緒いっしょたり、外国がいこくじんけのハローワークなど機関きかん紹介しょうかいするなどしている。また、職場しょくばでのハラスメントや同僚どうりょうとのトラブルなどについての相談そうだんもある。そのどもの発達はったつ育児いくじなやみ、母国ぼこく支払しはらった年金ねんきん制度せいど日本にっぽん年金ねんきん合算がっさん手続てつづきについて、隣人りんじんとのトラブル、転入てんにゅう世帯せたい合併がっぺいなどの手続てつづきについてなど、その内容ないよう多岐たきにわたる。
 

新型しんがたコロナウィルスの影響えいきょう

 また、昨年度さくねんどはコロナの影響えいきょうによる案件あんけんおおかった。収入しゅうにゅう減少げんしょうし、家賃やちんはらえない、生活せいかつ資金しきんけをけたい、特別とくべつ定額ていがく給付きゅうふきん手続てつづきのサポート、個人こじん事業じぎょう収入しゅうにゅうるための情報じょうほうがほしい、コロナの影響えいきょう母国ぼこくからの送金そうきんまり大学だいがく学費がくひ支払しはらえない、などのおかねにまつわるこまごと。また、感染かんせん不安ふあんから、どこで検査けんさけられるか、また入院にゅういんした場合ばあい通訳つうやく費用ひようはどうしたらよいか、こん発熱はつねつしているがどこにけばよいか、などの相談そうだんなどもせられている。こうした相談そうだんは、外国がいこくじん市民しみんからだけでなく、外国がいこくじん市民しみん利用りようする病院びょういんや NPO、社会しゃかい福祉ふくし協議きょうぎかいなどの支援しえん機関きかんからもせられた。
 

相談そうだんしゃちから社会しゃかいかべ

 相談そうだん対応たいおうにあたってもっとも大切たいせつにしているのは、「相談そうだんしゃのエンパワメント」という視点してんだ。なにが「課題かだい」であるかをめ、「解決かいけつ」するのはほかならぬ相談そうだんしゃ自身じしんだ。みずからの人生じんせいちから相談そうだんしゃのなかにある。だが、社会しゃかいてき制約せいやくがそれをはばむ。相談そうだんいん役割やくわりは、その社会しゃかいてき制約せいやくあきらかにし、相談そうだんしゃ必要ひつよう社会しゃかい資源しげんにアクセスできるよう条件じょうけん整備せいびおこなって、本来ほんらいちから発揮はっきできるようにサポートすることだ。「解決かいけつ」の代行だいこうは、こうした相談そうだんしゃちから過小かしょう評価ひょうかしたり、それをうばうことにもつながる。あくまで相談そうだんしゃ中心ちゅうしんに。相談そうだんいん伴走ばんそうしゃである。 またそのためには、わたしたちがらす社会しゃかいにある「かべ」について理解りかいしておく必要ひつようもある。それはことばのかべだけではない。自己じこ責任せきにんもとめる風潮ふうちょうくに都合つごう運用うんようされる在留ざいりゅう管理かんり制度せいど申請しんせい主義しゅぎ前提ぜんていとする福祉ふくし行政ぎょうせい、つながりがうすれていく地域ちいき社会しゃかい様々さまざまかたちでの外国がいこくじん差別さべつ…。そこには個人こじんちからだけでは容易よういえられないかべがある。相談そうだんしゃはなし傾聴けいちょうし、社会しゃかい現実げんじつにともにう。選択肢せんたくし一緒いっしょさがし、相談そうだんしゃつぎいちをサポートをする。「こたえ」も大切たいせつだが、そこにいたるプロセスそのものが相談そうだんしゃをエンパワメントするものであることはもっと大切たいせつだ。

相談そうだんしゃ視点してんから社会しゃかいをみる

 ある相談そうだんしゃは、持病じびょうくすりをもらうために、かつてんでいた場所ばしょにある病院びょういんに、なんねんものあいだなんあいだもかけて毎月まいつきかよっていた。日本語にほんごでの会話かいわができず、あたらしい病院びょういんうつるとおなやくがもらえなくなるのではないか、という不安ふあんからだ。なにじゅうねん日本にっぽんらしていても、言葉ことば文化ぶんかかべのために「わからない」ことはおおいが、しかし、社会しゃかいは「わかっている」ひと基準きじゅんうごいている。どこの窓口まどぐちも「いたらこたえてはくれる」が、なにいたらよいのか、一緒いっしょかんがえてくれるひとはいない。さらに、そこに差別さべつてきなことばやつめたい対応たいおうをされた経験けいけんかさなる。孤立こりつした状態じょうたいのなかでかぎられた情報じょうほうをもとに、しかしそれぞれの知恵ちえ努力どりょく相談そうだんしゃきている。 相談そうだん事業じぎょうでは、相談そうだんとおして出会であ行政ぎょうせい支援しえん機関きかん関係かんけいしゃ外国がいこくじん市民しみん経験けいけん直面ちょくめんしている社会しゃかい課題かだいつたえ、かちう。「あぁ、(外国がいこくじん市民しみんは)そんなふうこまるんですねぇ」とおどろかれることもおおい。そうした地道じみちなやりとりのなかで、地域ちいきのなかに理解りかい変化へんかひろげていく。それが相談そうだん事業じぎょうのもうひとつの大事だいじ側面そくめんだとかんがえている。
 次回じかい後編こうへんではケース相談そうだんについて報告ほうこくする。(河合かわい